現在ブームのコーヒーは、観葉植物としても人気です。室内で育てて楽しむには最適で、意外と簡単に白く香りのよい花と美しい赤い実を楽しむことも期待できます。ここではコーヒーノキ(コーヒーの木)の植え替えや仕立て直し、適した土や土の基本知識を詳細に紹介します。
目次
コーヒーノキ(コーヒーの木)を育てる前に知っておきたいこと
コーヒーノキは主に鉢植えで育てますが、植え替えせずに根詰まりしてしまうと、生育が衰えて下の葉も落ちてしまい、見苦しい姿になってしまいます。植物の生育に大きく影響するのが土です。土について正しく知ることが、植物を育てるうえで大切です。植え替えや土について知る前に、まずコーヒーノキの基本情報を知っておきましょう。
コーヒーノキの基本データ
学名:Coffea arabica
科名:アカネ科
属名:コーヒーノキ属
原産地: エチオピア
和名:コーヒーの木
英名:Arabian Coffee
生育適温:15〜25℃
艶のある緑の葉が美しい常緑低木で、樹形が自然に整い、観葉植物として最適です。園芸店だけでなく雑貨店や100円ショップまで広く販売され、株は簡単に入手できます。また日光不足によく耐えるため、室内でよく育てられる人気の植物です。本来は日光を好みますが、暑い夏の強光線に当たると葉が傷んで茶色く枯れます。寒さには弱く戸外では越冬しませんが、中サイズ以上の株なら室内で容易に越冬します。家庭でも適切に管理すればコーヒーの実をならせて収穫できるので、自家製コーヒーを作って味わうのも十分可能でしょう。
種子がコーヒー豆として利用される種類はいくつかありますが、アラビアコーヒーノキから収穫されるコーヒー豆が、流通量の7割を占めます。一般に観葉植物として流通するのもアラビアコーヒーノキです。
白い芳香のある花は葉の付け根にまとまってつき、一度花がついた部分には再度花は咲きません。きれいな赤い果実はチェリービーンズと呼ばれ、果肉には甘味があります。果実の中に2つのタネがあり、コーヒー豆として利用されます。
種類を知ることが、適した土づくりの近道
園芸用の土には単体の用土と、単体用土がブレンドされた培養土があります。以前は赤玉土などの単体の用土に、腐葉土などの改良用土をブレンドしてよく使っていましたが、最近は手軽な培養土が人気があります。
培養土には鉢花類全般など広く使えるものから、観葉植物や多肉植物などおおまかなジャンルごとのもの、バラなど人気の植物専用の土などがあります。コーヒーノキには、観葉植物用の培養土を使うことができます。
基本用土
最も多く配合する鉢土のベースとなるものです。単品の使用より、用途や植物の種類に応じていろいろ混ぜて使うのが主流です。
赤玉土
いろいろな植物で使われる、最も一般的な用土です。関東ローム層の有機物を含まない下層の赤土からみじんを取り除いた土で、小、中、大と粒の大きさによって区別され流通しています。
鹿沼土
栃木県の鹿沼地方から採れる、酸性の黄色い軽石状の用土です。通気性と排水性に優れ、酸性用土を好む植物に最適です。市販では粒を選別したものと、無選別のタイプがあります。
真砂土
関西では一般的な用土で、粒子が細かい山砂です。粘質土的な性質があり、通気性と排水性が悪いため、有機質の腐葉土や軽石などと混ぜて使われます。
川砂
富士砂のように、産地の名が付いて販売されていることもあります。排水性と通気性に優れますが、保水性と保肥性に劣ります。多肉植物などに使われたり、ブレンドして使われます。
軽石
小さな穴が無数に空いた火山砂礫で、水に浮くほど軽いことから浮石の名もあります。排水性と通気性に優れるため、水はけを好む植物の基本用土に混ぜたり、ラン用の土や鉢底石として使います。
調整用土
用土の物理的な性質を改善するために、主に他の用土と混ぜて使います。軽石や川砂は、調整用土としてもよく使われます。
バーミキュライト
鉱物のひる石を、高温処理して膨張させた多孔質の用土です。非常に軽く、通気性と保水性、保肥性に優れ、高温で殺菌されているため清潔です。種まきや育苗用の土としてピートモスなどに混ぜたり、単用でさし木などに使います。
パーライト
真珠眼や黒曜石を、高温、高圧処理して発砲させた人工用土です。非常に軽く、粒状のものと粉状のものがあります。粒状のタイプは様々な大きさがあり、通気性と排水性の改善に適します。粉状のタイプは保水性が高く、バーミキュライトとブレンドしてさし木の土に使うことができます。
改良用土
有機質の用土を加えることで保水性と排水性を改善し、また通気性と保肥性を高めます。また土を団粒化させ、地力のアップに欠かせません。
腐葉土
広葉樹の落ち葉が腐植化したもので、鉢植えから庭の土壌改良に定番の改良用土です。用土に入れすぎたり、質が悪く未熟な物を使うと、生育に悪影響が出るので注意してください。
ピートモス
ミズゴケが腐植化したもので、保水性に優れます。比較的清潔で軽いため、室内に置く植物には適します。酸度未調整のものは酸性で、ブルーベリーなど酸性を好む植物に適します。酸度調整済みのものはほぼ単用で鉢花類に使用されることがありますが、乾くと水分が非常に吸収されにくいので、注意してください。
バーク堆肥
樹皮を発酵させたもので、効果が長く安価な商品も多いため、よく流通しています。最近は腐葉土とブレンドされた商品もあります。土にやや馴染みにくい傾向があり、質の悪いものは悪影響が出やすいので注意してください。
もみ殻くん炭
もみ殻を炭化させたもので、通気性と排水性、保肥力を高め、酸性土壌を中和する働きもあります。カリやその他ミネラルも含まれ、日本でも古来から天然の土壌改良剤として使われてきました。用土には1割程度を混ぜて使うのが基本です。
ヤシガラ
ココヤシの実が原料で、特に海外では普及が進んでおり、近年流通量が増えた用土です。粉状のものからチップ状のものまで、様々な大きさのものがあります。粉状に粉砕されたものは、ピートモスの代用とされます。チップ状のタイプは改良用土としてブレンドして使われるほか、ランや着生植物などの基本用土として使われます。
土づくりのポイントは?
よい土の条件は?
水はけがよく、なおかつ水もちがよく、さらに通気性もよい土が理想的な土の条件です。その条件を達成するためには、土が「団粒構造」になっていることが必要です。団粒構造とは小さい土の粒子がくっつきあい、適度な大きさに固まった状態(団粒)を形成しています。団粒が水や肥料を保持する一方、団粒が水や空気の通り道になり、根が健全に発達します。
植物の性質にあった土づくり
最適な用土の配合は、植物の種類や生育段階によって違ってきます。標準的な配合例を参考にして、どの程度水分を好むかなどの条件によって配合を変えます。保水性を高めたい場合はピートモスなどの改良用土を加えます。水はけ、通気性をよくしたい場合は、パーライトや軽石などを加える他、赤玉土を小粒から中粒、または大粒に替えます。
植物の種類によって、生育に適する用土のPHが異なります。適するPHが著しく違う用土では、生育に悪影響が出やすくなります。最適な土壌酸性度を調べて、適切に用土をブレンドしてください。
生活に合わせた用土
意外と忘れがちですが、生活スタイルや飾る場所も想定して土づくりをしてください。水やりの手間をできるだけかけたくない場合は、水持ちのよい土がおすすめです。一方、水やりの手間を惜しまず、水の与えすぎで失敗しがちな場合は、水はけ重視の土がよいでしょう。鉢植えを室内に置く場合は、においやカビが発生しやすい腐葉土の使用は避けたほうが安心です。
元気に育てるためのコーヒーノキ(コーヒーの木)の土づくり
通気性と水はけのよい用土を好みますが、市販の観葉植物用の培養土などを使うのが手軽です。自分で用土を配合する場合は、赤玉土小粒に腐葉土を3割程度混ぜたような一般的な配合で問題ありません。また室内向きの清潔で軽い用土にしたい場合の配合例として、赤玉土小粒6、ピートモス3、パーライト1などがあります。乾燥しやすい小苗を植える場合は、ピートモスの割合を多くして半分くらいまでにするとよいでしょう。
コーヒーノキは弱酸性の土を好みますが、赤玉土や鹿沼土がベースの用土なら配慮する必要はないです。7~8号鉢以上の大株は培養土や上記の配合した用土に、軽石を1~2割程度足して水はけをよくしてください。
コーヒーノキ(コーヒーの木)の植え替えの時期と頻度
根詰まりすると生育が衰え、下葉が落ちて葉も小さくなり、株の先端付近だけに葉があるような株姿になってしまいます。最低でも2年に1回、できれば毎年植え替えを行うようにしてください。適期は5月から8月です。新しく入手した株は、ひと回り大きな鉢に植え替えたほうが水やりの手間が減り、生育も活発になります。
植え替え時に準備したいもの
準備するもの
・適した土(観葉植物用の培養土、または前述のブレンド土)
・植え替えするコーヒーノキの苗
・鉢
・鉢底ネット(鉢底の穴が一つの場合)
・肥料(肥料の含まれない土を使う場合に必要)
・土入れ、またはスコップ
・割り箸など細い棒
・ジョウロ
・園芸用のハサミ
コーヒーノキ(コーヒーの木)の植え替え方法が知りたい
そのまま一回り大きな鉢に植え替える場合
根をあまり痛めないので、失敗が少ないです。新しく入手した株も、ひと回り大きな鉢に植え替えたほうが水やりの手間が減り、生育も活発になります。
① ひと回り大きな鉢を用意します。鉢底の穴が中央に一つだけ空いている場合は、鉢底ネットを穴を塞ぐように敷きます。
② 鉢土の表面が鉢の7~8割程度の高さになるよう、鉢底部分に土を入れます。
③ 底の部分の土を少し落とし、枯れた根は切ってから、新しい土を入れた植え付け用の鉢にに置きます。入手したばかりの苗は、土を落とさずそのままでよいでしょう。
④ 鉢の空いた部分に土を入れます。鉢と根の間に隙間なく土が入るよう、棒などでつついて入れ込みます。
⑤ 鉢底から水が流れ出すまでたっぷり水を与え、完成です。
同じ鉢に植え替える場合
基本的な手順は、ひと回り大きな鉢に植え替える場合と同様です。違う点は、古い土や根を3分の1程度落とし、同じ鉢に植えます。また枝葉も、古土などと同様に3分の1程度剪定してください。
仕立て直して植え替える場合
上だけに葉がついて見苦しくなってしまった株や大きくしたくない場合は、バッサリと株元付近から切り戻し剪定をして、仕立て直すことができます。適期は5~6月の成長期の初め頃です。株元を20~50㎝くらい残して切り、葉が全く無くなってしまっても大丈夫です。
また同時に植え替えます。根鉢を半分程度まで落とし、以前よりひと回り小さな鉢に植え替えてください。
植え替えをするときの注意点は?
4号鉢から8号鉢など、いきなり大きな鉢に植え替えると過湿によって生育が衰え、根腐れを起こしやすくなります。すべての植物に言えることですが、株のサイズに応じた鉢を使うことが基本です。鉢サイズをアップする場合は、必ず1号から2号大きな鉢を使うようにしてください。
最近はテラコッタや陶器製などで、通常よりかなり背の高いおしゃれな鉢が人気です。そのような鉢をコーヒーノキで使う場合、通常の用土だけで植えると水はけが悪くなってしまい、根腐れの原因になります。通常の鉢より深い部分を軽石やパーライトの中~大粒を入れてかさ増しすると、排水よく植え付けることができます。
植え替えする時に、用土を鉢いっぱいまで入れて植える失敗例が初心者に多いようです。用土がいっぱいだと、水やりの時に水が入る空間(ウォータースペース)がなく、鉢底付近の用土まで水がうまく浸透しません。
だんだんとサイズの大きい鉢に植え替えて10号を使うくらいの大きさまで育てれば、コーヒーの花や実が楽しめるようになります。自家製コーヒーを味わうのも夢ではありません。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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