エーデルワイスは5月上旬から6月中旬(自生地では7月~8月)にかけて咲くキク科の多年草です。アルプスなどの高山に生息しており、白い綿毛に覆われた星形の苞葉が花のように見えます。そのため、ドイツ語で高貴な白という意味を持っており、登山家の間では‟アルプスの星”の愛称で親しまれています。スイスとオーストラリアの国花であり、可憐さの中にも凛とした美しさを感じることができる植物です。エーデルワイスの水やりの方法や注意点について、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。水やりのタイミングや頻度に気を配り、上手に育てましょう。
目次
エーデルワイスを育てる前に知っておきたいこと
ヨーロッパで最も有名な高山植物で、歌や映画でも親しまれるエーデルワイス。春になり芽が出ると数本の茎をのばし、夏ごろから花を付けます。花が終わると茎は枯れてしまいますが、枝元から白い毛で覆われた葉が広がって休眠することで冬を越します。庭植えにはあまり向かず、鉢植えで育てるのに向いています。
エーデルワイスの基本データ
学名:Leontopodium alpinum
科名:キク科
属名:ウスユキソウ属
原産地:アルプス山脈、ピレネー山脈
和名:セイヨウウスユキソウ
英名:Edelweiss
開花期:5月上旬~6月中旬(自生地では7~8月)
花色:白、黄色
発芽適温:20℃前後
生育適温:15~20℃
育て方の難易度は高く上級者向けです。知っておきたいのは、とにかく高温多湿に弱いということです。そのため、温度管理と水やりが育て方のポイントとなります。種からでも苗からでも育てることができ、園芸専門店やガーデンセンター、インターネットなどで入手することができます。平地で種から育てられた比較的暑さに強い苗も販売しています。
種から育てる場合は、暖地では春まきか秋まき、寒地ではソメイヨシノの開花にあわせてまくようにします。このとき種に土をかける必要はありません。発芽まで20日程度時間がかかるため、乾燥させないように管理しましょう。春に芽が出れば、夏には茎をのばして花を咲かせます。
水やりの方法とそのタイミング
エーデルワイスは乾燥を嫌いますが水のやりすぎも嫌います。エーデルワイスの水やりのコツは、1日1回、土の表面が乾いたタイミングでたっぷりと与えることです。基本的には朝の涼しい時間帯に行なうようにしましょう。
エーデルワイスは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの頻度は異なります。次の項からは、植えつけ別の水やりを紹介しましょう。
鉢で育てる場合の、エーデルワイスの水やり
水やりの頻度
水やりの頻度はそれほど多くありません。乾燥を嫌いますが水のやりすぎも根腐れの原因となってしまうため、水やりは土の表面がしっかり乾いてから行うようにします。
春と秋は朝たっぷりと水を与え、夕方には乾いている程度が理想です。暑さに弱いエーデルワイスは、夏期の水やりは夕方に行います。同時に葉水もかけて植物の体温を下げるようにします。冬の水やりは朝、気温が上がってくる時間帯に行うようにします。
水やりのコツ
水やりのコツは、鉢の下から水が流れ落ちる程度までたっぷりとやることです。鉢植えの場合、表面が軽く湿る程度の水やりでは鉢の底の方まで水分が浸透せず、すぐに土の表面から水分が蒸発してしまいます。また、水の量が少なすぎると、表面の水分が蒸発するときに鉢の中の水分まで蒸発させてしまうため、より鉢内の乾燥が進んでしまうおそれがあります。中途半端な水やりを避け、鉢内の水分を入れ替えると、水分とともに新しい酸素が供給され、根も元気になります。
水やりの確認方法
水やりのタイミングを計るときの確認方法は、土の表面の状態です。手で押してみて十分に水を含んでいるようなら水やりは必要ありません。逆に、表面が軽くパラパラと乾燥した状態のときはしっかりと与えるようにしましょう。土が常に湿っていると、植物の根は水に溺れた状態になり、呼吸ができなくなってしまいます。土がしっかりと乾いてから水やりすることで、鉢内の水分がスムーズに排出され、鉢内の空気が入れ替わって水が植物のすみずみまで行き渡ることができます。
地植えの場合の、エーデルワイスの水やり
水やりの頻度
地植えの場合、植え付け後しばらくは水やりの必要がありますが、根がしっかり活着して伸びてしまえば基本的には必要ありません。しかし、空梅雨や盛夏時など、長期間雨が降らない場合は、一定の頻度で水やりを行う必要があります。茎や葉がしおれてきたら水やりをしましょう。
水やりのコツ
エーデルワイスの水やりは、土の表面が乾いてきたらたっぷりと、が基本です。乾燥を嫌いますが、過湿にも弱いので、雨の多い時期や夏場は特に、土の状態を注意深く観察しましょう。またエーデルワイスの周囲の除草をしっかりと行います。地植えの枯れる原因の多くは、雑草に囲まれたことによる蒸れです。注意しましょう。
水やりの確認方法
地植えの場合、水やりが必要なのは、葉や茎がしおれてなんとなく元気がないと感じたときです。土の表面が乾燥していても、葉や茎がしっかりとしている状態なら土の内部に十分水分があると考えられるので水やりの必要はありません。夏の高温期と乾燥時期は、注意が必要です。
水やりは、季節によっても多少変わります
水やりの具合は、天候のほか、植物の生育状態や季節で多少変わります。そこで、この項では季節ごとの違いを見ていきましょう。
春(鉢植え、地植え)
春は植物の成長が活発になる時期です。鉢植えの場合、1日1回、朝に鉢底から水が溢れるぐらいたっぷりと水を与えます。地植えの場合は根が定着したものなら水やりの必要はありません。植えたばかりのものは根が定着するまでの間、1日1回朝に水やりするようにしましょう。適度に乾燥させることによって根が成長するため、基本的に夕方の水やりは必要ありません。
夏(鉢植え、地植え)
夏の日中は非常に高温になり、植物体内の温度も上昇しています。このような状態のときに水をかけると、水温と植物体の温度差が大きいため、そのストレスから弱ってしまいます。そのため、鉢植えの場合も地植えの場合も、真夏の日中の水やりは避けるようにしましょう。暑さに弱いエーデルワイスは、夏期の水やりは夕方に行います。同時に葉水もかけて植物の体温を下げるようにします。
秋(鉢植え、地植え)
秋の水やりは春とさほど変わりませんが、夏に多くの水を与えられることに慣れているため、春の水やりよりも少し多めに与えるようにします。鉢植えの場合のみ、1日1回、朝たっぷり水を与えるようにしましょう。水やりが終わったら受け皿の水をしっかり捨てておくことも大切です。放っておくと根腐れやカビの原因となります。水やり後しばらくたって余分な水がすべて出たら捨てるようにします。
冬(鉢植え、地植え)
冬は休眠状態に入るので、やや乾燥気味に管理します。地植えの場合は必要ありませんが、鉢植えの場合は1日1回、朝に土が乾いていると感じたら水をやるようにしましょう。水をやるときは根元の土へ直接かけるようにすると、葉を傷めません。水の量は冬でもたっぷりと鉢底へ流れるぐらい与えます。
エーデルワイスの水やり、注意点が知りたい
鉢植えの場合の注意点
鉢植えの水やりの注意点は、必ず鉢植えの底から水が溢れるぐらいたっぷりと与えることです。一度にしっかり水を与えると、鉢の中の土は水で満たされ、鉢の中に張り巡らされた根は必要な水分を十分に吸収することができます。また、乾いてくると、今度は新鮮な空気が送り込まれ、酸素を吸って休むことができます。
こうして湿っている状態と乾燥した状態を交互に繰り返すことが、植物にとって一番快適な状態です。一度にやる量が少ない場合、表面だけが湿ってしまい、底にある根が枯れてしまいます。毎日コップ一杯の水を与えるよりも、乾燥したときにたっぷり与えたほうが植物は元気に過ごせます。
また、水をかける場所にも注意が必要です。鉢植えの上から水をかけてしまうと、葉を伝って水が鉢の外に流れてしまいます。花の咲いている時期に花に水がかかってしまうと、カビや腐る原因にもなるので注意が必要です。葉っぱの下から直接土に水をかけるようにしましょう。
地植えの場合の注意点
地植えの場合、根がしっかり張ってしまえば基本的に水やりは必要ありません。長期間雨が降らず乾燥して元気がないときは、状況に応じて水やりをするようにします。注意点として、過度な水やりは根腐れを起こす原因となるので、水やりの頻度に気を付けましょう。
種をまいて芽が出た場合は、ある程度大きくなるまで表面が乾燥しない程度に水を与えます。水の勢いが強すぎるとせっかく出た新芽が流れてしまうので、じょうろで水をやるときははす口を上にして水流を弱めるなど、水の勢いに注意しましょう。
苗から育てる場合も、根がしっかり伸びて根付くまでは水やりを行ないます。春や秋は7時から12時まで、夏は夕方から夜に与えるようにしましょう。夏は乾燥が激しいため、夕方に葉水を与えます。冬の早朝は空気が冷たく土に霜が降りていることもあるため、8時から12時の間に行うようにします。冬の夕方は水やりした水が凍結してしまうので水やりはしません。
Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
文・サグーワークス
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