エーデルワイスはアルプスの星とも呼ばれている、高い山に自生する高山植物です。水はけのよい土と日当たりのよい場所を好み、石灰岩地帯や岩の割れ目などに自生しています。高温多湿を嫌うため、暖地での栽培は難しい植物です。気温が高すぎる場合、花が白くならなかったり、暑さで開花しなかったりすることもあります。そこで、上手に育てるための日々のお手入れから寄せ植えまで、育て方のコツを紹介します。
目次
エーデルワイスを育てる前に知っておきたいこと
ドイツ語で「高貴な白」を意味するエーデルワイス。映画『サウンド・オブ・ミュージック』の歌でもおなじみですね。エーデルワイスは高温多湿を嫌うため、上手に育てるためには温度管理と湿度管理が大切になります。
エーデルワイスの基本データ
学名:Leontopodium alpinum
科名:キク科
属名:ウスユキソウ属
原産地:ヨーロッパ山岳地帯(アルプス山脈、ピレネー山脈、バルカン半島)
和名:セイヨウウスユキソウ
英名:Edelweiss
開花期:5月上旬~6月中旬(自生地7月~8月)
花色:白、黄色
発芽適温:20℃前後
生育適温:15~20℃
育て方の難易度は高く上級者向けです。夏の暑さに弱く、多湿を嫌うため、ロックガーデン以外の庭植えには不向きです。基本的には一年を通して風通しがよく日当たりのよい場所を好みますが、夏場の直射日光を防ぐためにも、広葉樹の下など半日陰になる涼しい場所で育てるのが理想です。種からでも苗からでも育てることができ、園芸専門店やガーデンセンター、インターネットなどで入手することができます。暖地では春まきか秋まき、寒地ではソメイヨシノの開花にあわせてまくようにします。
鉢植えで育てる場合、根詰まりを起こしやすいので毎年植え替えをしたほうがよく育ちます。花が終わった後の休眠期に入った9月下旬~10月中旬、または3月上旬~4月上旬ごろに植え替えをします。鉢は通気性のよい素焼きのものを使うと根を傷めません。ただし、通気性がよい分、水が乾きやすくなるデメリットもあるので、水切れに注意しましょう。
エーデルワイスの種類が知りたい
ヨーロッパのアルプス山脈やピレネー山脈に生育するエーデルワイス。栽培用の園芸品種が日本でも流通しています。
エーデルワイスの仲間である、キク科ウスユキソウ属は世界に約50種があるそうですが、ここでは、日本でも見られるウスユキソウ属を紹介しましょう。
ハヤチネウスユキソウ
岩手県早池峯山特産の大型種です。茎の高さは10~30cmで、分枝はしません。自生地の花期は6月下旬~7月下旬です。
ヒナウスユキソウ
東北地方の高山に多く分布する、草丈は5~15cm程度の小型のウスユキソウです。芽が出ると同時に花芽を伸ばす特徴があります。自生地の花期は7月~8月です。
ホソバヒナウスユキソウ
ヒナウスユキソウの変種です。葉が細長いことが特徴で、草丈は10~15cm程度、全体的にスリムで締まりがよい外見をしています。自生地の花期は7月です。
チシマウスユキソウ
花が大輪で、全体的に白毛で覆われている美しい品種です。草丈10~30cm前後で、丈夫で美しいのが特徴です。また、古くから栽培されている実績があります。自生地の花期は7月~9月です。
ミネウスユキソウ
高山に生えるウスユキソウの変種です。草丈10㎝程度で締まりがよく、野趣あふれる姿が人気です。苞葉の幅が厚いという特徴があります。自生地の花期は7~8月です。
エーデルワイスを育てるときに必要な準備は?
エーデルワイスは多湿を嫌うため、なるべく排水がよくなるように植え付ける必要があります。準備するのは以下のものです。
準備するもの
・エーデルワイスの種または苗
・苗よりも一回り大きな鉢、または横長プランター ※鉢植えの場合
・鉢底ネット
・鉢底石か軽石
・播種箱 ※種から育てる場合
・霧吹き ※種から育てる場合
・土
・肥料
根がまきやすく多湿を嫌うため、鉢はやや深めで鉢穴が大きいものを選ぶようにします。鉢の素材は通気性のよい素焼きのものがおすすめです。種から育てる場合はピートバンや播種箱である程度育ててから定植します。種の表面に土をかけないので、じょうろだと種が流れてしまいます。霧吹きを使って乾燥しない程度に水をやりましょう。土は崩れにくく通気性のよいものが適しています。肥料はあまり必要としませんが、植え込みの際に元肥として緩効性化成肥料を規定量の半分以下を施します。生育期に2週間に一度の水代わりに規定濃度の半分以下の液体肥料を施すと花付きがよくなります。
適した土作りが、育てるコツの第一歩
エーデルワイスは乾燥と多湿を嫌うため、水はけがよく保水性の高い土がおすすめです。培養土を選ぶときは、山野草を育てるのに適した配合をしている市販の山野草培養土を選ぶようにしましょう。通気性、排水性の高い粒状培養土を選ぶと、根腐れを防ぎやすくなります。保水力を高めるための赤玉土やバーミキュライト、水の腐敗を防止するゼオライトなどをバランスよく配合している商品を選ぶようにしましょう。
土を自分で買ってきてブレンドする場合は、鹿沼土中粒4:鹿沼土小粒4:赤玉土小粒2、または軽石小粒2ぐらいの割合で混ぜるか、硬質鹿沼土小粒5:日光砂小粒4:軽石小粒1くらいの割合で混ぜます。通気性をよくしつつ、しっかりと根付かせるためには、大小さまざまな粒がバランスよく交じり合っていることが大切です。元肥として緩効性化成肥料を少量加えます。地植えの場合は弱アルカリ性の土を好むため、苦土石灰を混ぜておきましょう。
エーデルワイスの育て方にはポイントがあります
エーデルワイスは、種と苗、ふたつの方法で育てることができます。風通しがよく日光がよく当たり、水はけのよい場所を好みますが、一方で乾燥も多湿も苦手な植物です。このため、寒冷地では地植えでも楽しむことができますが、暖地では鉢植えで楽しむほうが安心です。
エーデルワイスの育て方~苗から始める~
苗の選び方
苗を選ぶコツはなるべく大株のものを選ぶことです。エーデルワイスは管理が難しい花ですが、大きい苗は株がしっかりと育っているため初年度から花がつきやすく、丈夫で育てやすいというメリットがあります。逆に小さい苗は花芽がつきにくく、乾燥や多湿によって枯れやすいので避けたほうが無難です。
葉の色つやがよく元気があるか、茎がしっかり太くて立っているか、根はしっかり張って巻きすぎていないかなども確認しておきましょう。葉は上を向いているほど元気な証拠です。葉に斑点があるものや縮れているものは病気にかかっている可能性があるので避けましょう。葉の裏側もハダニやアブラムシがついていないか確認しておきます。黄色くなっているものは根詰まりの可能性があるので避けましょう。すでに虫食いや病気にかかっているものは論外です。
植え付け時期と方法
植え付けに適した時期は、春の3月上旬から4月上旬まで、または秋の9月下旬から10月中旬です。弱アルカリ性の土壌を好むため、地植えの場合は苦土石灰を混ぜておきます。鉢植えの場合は市販の山野草培養土を使うと便利ですが、こちらも少量の苦土石灰を加えておくと生育がよくなります。鉢植えの植え付け方法は以下の通りです。
①鉢の底穴に鉢底ネットを入れ、鉢底石を入れます
②土を鉢の底から1/3程度入れます
③エーデルワイスの苗を取り出し、根の周りの土を軽くもんで落とします
④黒ずんでいる根があればハサミで切り落としておきます
⑤鉢の中心になるように苗を置き、鉢の8分目まで土を入れます
⑥根の隙間まで土をなじませます
⑦鉢底から流れ出るまでたっぷり水を与えます
エーデルワイスの育て方~種から始める~
種まき時期
発芽適温は種類によって異なりますが、大体20℃前後です。種まきは春にまくのが一般的ですが、暑さに弱く寒さに強い植物のため、暖地では秋まきの方が育てやすいでしょう。寒冷地ではソメイヨシノの蕾が膨らみ始める3月下旬から4月上旬頃にまき、暖地ではススキの穂が出始める頃の9月下旬から10月中頃が適しています。
種からまく場合は花壇や鉢植えに直接まくのではなく、播種箱にまくようにします。春まきでは翌年、秋まきでも早ければ翌年の開花になります。
発芽しやすくするコツ
種をまく場合はピートバンや播種箱に種まき用の土かピートモスを入れて発芽させます。発芽までの期間は約20日間ですが、発芽率はあまり高くないためなるべく多めにまくようにしましょう。土は被せずに霧吹きでしっかり水を与えるか、または底面給水して発芽まで種の表面が乾燥しないように注意することが失敗しないコツです。乾燥を防ぐために囲いや小穴の開いたビニールなどで容器の周りを覆うのも効果的です。
種まき方法
種まきの方法は以下の通りです。
①播種箱を用意します
②種まき用の土かピートモスを入れます
③種同士が重ならないようにまきます
④土をかけずに霧吹きなどでしっかり水を与えます
⑤発芽まで、乾燥しないように管理します
⑥発芽した後はやや乾燥してから水をやるようにします
⑦ 本葉が2~3枚になったら植え替えます
エーデルワイスは気温が低く日照時間が短い環境を好みます。このため、秋の涼しい気候はエーデルワイスの生育に向いています。秋まきの場合は、芽が出たら通気性のよい場所に置き、日中は太陽をしっかり当てて育てましょう。春に種をまいた場合は、高温多湿を避けるために梅雨の長雨の間は軒下に移動する、夏の日中は半日陰に移動するなど、なるべく涼しい環境を確保することが大切です。
エーデルワイスと仲良くなる日々のお手入れ
水やりのタイミング
エーデルワイスは乾燥を嫌う植物ですが、一方で多湿な環境も嫌うため、常に土が湿っている状態だと根腐れを起こしてしまいます。このため、水やりは土がやや乾燥してから行うようにします。
春と秋は1日1回程度、朝に水やりを行いましょう。夏はやや乾燥気味に管理し、水やりは夕方~夜に。冬は土が乾いていると感じたら軽く水を与えます。ただし、完全に土が乾燥してしまうと、根が縮んでしまい、水を吸収しなくなってしまいます。土の表面が乾燥している程度で水やりを行うようにしましょう。水やりをするときは、必ず鉢底から水が溢れ出るぐらいたっぷりと水を与えます。土を湿らす程度に軽く水やりすると、土の表面だけ湿ってすぐに水分が蒸発してしまう恐れがあります。
肥料の施し方
エーデルワイスは元々あまり肥料を必要としない植物です。山野草培養土には最初から山野草に必要な成分がバランスよく配合されているので、培養土を使う場合は特に肥料を与える必要はありません。
地植えにする場合や自分で土を混ぜて作る場合でも、肥料を与えすぎると茎が細く長く伸びてしまうのでやりすぎに注意しましょう。
植え付け時に元肥として緩効性肥料を規定量の半分以下施した後は、花の咲いている時期に2~3週間に一度、規定量の半分以下にうすめた液体肥料を与えます。
さらに花付きをよくしたい場合は6月と11月に土の上に置き肥をします。しっかり根が張って葉の勢いもよい場合は、特に与えなくても問題ありません。
花が咲いたら…
夏場に枯れた下葉をそのままにしておくと、風通しが悪くなって生育が鈍ります。また、病気の原因にもなるので、枯れてしまった葉はすぐに取り除くようにしましょう。種を取らない場合は、株元に新しい根が出ていることを確認したら古い茎は除去するようにします。
立派に育てるための、植え替え時期と方法
エーデルワイスは根がよく成長するため、根詰まりを起こしやすい欠点があります。そのため、毎年か少なくとも2年に一度は植え替えを行いましょう。新しい大き目の鉢と新しい土に入れ替えてやることで翌年も元気に咲くことができます。根が詰まった状態で植え替えを行わないと、そのまま枯れてしまうので気を付けましょう。植え替え時期は3月上旬~4月上旬か、9月下旬~10月中旬に行います。
植え替えの方法は以下の通りです。
①一回り大きな鉢と山野草用の培養土を用意します
②枯れた根をハサミなどで取り除いて新しい土に入れます
③ 植え付けと同じ手順で、鉢の8分目まで土を入れ、たっぷりと水をやります
剪定を行うときは、時期に注意しましょう
エーデルワイスは野趣あふれる姿が魅力なため、特に剪定を行う必要はありません。必要な手入れとしては、夏の時期に枯れた下葉や古い茎を取り除いて風通しをよくする方法です。黄色くなった葉や病気の可能性のある葉は、こまめに取り除いておきましょう。花は水揚げが可能なので、室内で楽しむこともできます。生育がいいと花茎が20cmほどに伸びるため花瓶にも飾ることも可能です。華やかな花ではありませんが、押し花や切り花、ドライフラワーとして楽しめます。
知りたい!エーデルワイスの増やし方
種の採取の時期と方法
花が終わった後に種ができます。種ができたらすぐに採取してビニール袋などに入れて冷蔵庫で保管します。種まきの時期は3月下旬~4月中旬か、9月下旬~10月中旬なので、まきたい時期がくるまで保管しましょう。栽培して育てたものから採取した種は未完塾種子が多いため、発芽率はあまり高くありません。
株分けの時期と方法
エーデルワイスは挿し木や接ぎ木で増やすことはできません。株分けで増やすことができます。株分けを行う時期は春の3月上旬~4月上旬まで、もしくは秋の9月下旬~10月中旬です。植え替えを行うときに株分けします。
株分けの方法は以下の通りです。
①新しい鉢と土を用意します
②根を付けた状態で2~3株に分けます
③ 山野草培養土を入れて苗を植え、たっぷりと水を与えます
毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです
育てるときに注意したい病気
酸性の強い土や水はけの悪い土に植えた場合、葉や茎の先端が白や黄色になって成長が止まることがあります。多湿や蒸れによる根腐れと乾きすぎによる痛みも多いので注意が必要です。特に気を付けたいのは以下の病気です。
スス病
植物の表面が黒いススのようなもので覆われる病気。アブラムシのフンを食べて繁殖します。
うどんこ病
白い粉で覆われる病気。窒素成分が多すぎるのが原因です。
育てるときに注意したい害虫
梅雨から夏の間は特に害虫に注意が必要です。発生しやすいのは以下の害虫です。
アブラムシ
春の気温が高くなったときに発生する害虫です。葉や茎を食害で枯らすため、殺虫剤を散布して駆除します。
ハダニ
アブラムシと同じように食害によって植物を枯らす害虫です。夏の乾燥する時期に発生します。ハダニ専用の駆除液を散布したり、霧吹きで水を吹きかけて湿度を高めたりすることで予防できます。
エーデルワイスと相性のよい寄せ植えの植物は?
エーデルワイスと寄せ植えをする場合は、同じように日当たりがよく、通気性のよい土を好む山野草との組み合わせは相性がよくおすすめです。丈夫で育てやすいカラミンサ(シソ科の多年草)やサルビア・ファリナセア(ブルーセージ、シソ科多年草)などもよく合います。淡いブルー系の花と合わせるとエーデルワイスの白い花を引き立て、爽やかなイメージの寄せ植えになります。
Credit

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
文・サグーワークス
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