アサガオを増やしたい！ 最適な時期と方法、注意点を知っておきましょう

アサガオを育てる前に知っておきたいこと

アサガオは比較的、育てやすい植物です。アサガオの花は、朝開いて、その日のうちに萎んで終わる「一日花」。一方で、毎日次々と新しい花を咲かせます。アサガオを使って、近年、地球温暖化対策のひとつとして注目されている、緑のカーテンを作ることもできます。アサガオについて、まずは基本的なことを知っておきましょう。

アサガオの基本データ
学名：Ipomoea nil
科名：ヒルガオ科
属名：サツマイモ属
原産地：熱帯から亜熱帯地域
和名：朝顔（アサガオ）
英名：Morning glory
開花期：7～9月
花色：赤、ピンク、白、青、紫、複色
発芽適温：20～25℃
生育適温：20～25℃

アサガオを種から育てるなら、5月の連休明けから6月いっぱいくらいまでが適期です。5月以降は、ポット苗も出回り始めます。夏の遮光に緑のカーテンを作りたい場合は、早めに植えつけましょう。

植物を増やすには、いくつかの方法があります

アサガオの増やし方を説明する前に、植物はどのようにして増やすことができるのか、その方法について知っておきましょう。

一般的な植物の増やし方は、「種子繁殖」と「栄養繁殖」とに大別できます。

「種子繁殖」とは、その名のとおり、種による繁殖方法です。

一方の「栄養繁殖」には、以下のような方法があります。

挿し木
葉、茎、根など植物の一部を切り取って、用土や水に挿して発根させ、新たな個体を得る手法。

株分け
親となる植物を根とともに分けて、複数の株を得ること。いちどに得られる株数は少ないですが、大株になったものや老化した株の更新にも用いられる手法です。

接ぎ木
植物の一部を、台木となる別の植物に接合して生育させる方法。病害に強い丈夫な個体を得るために、バラのほか、トマトやキュウリ、ナスなどの果菜類にもよく用いられます。

取り木
親となる植物の一部に傷をつけて、発根させたあとに、親株から切り離して新たな個体を得ること。挿し木でうまくいかない植物でも増やすことができます。観葉植物や樹木などで多く用いられる手法です。

球根
球根は、葉や茎、根が変化した部分に養分を蓄えたもの。変化した器官により、鱗茎、球茎、塊茎、根茎、塊根と分類されます。

このほかに、ムカゴや木子（きご）といった形で増える植物もあります。また、家庭の園芸で行なうことはまずありませんが、「組織培養」という手法で人為的に増やす方法があります。

アサガオを増やす、最適な方法と時期

前項で述べたように、植物はさまざまな方法で増やすことができます。アサガオを増やす場合は、種まき、挿し木、接ぎ木の3つの方法があり、最適な時期は方法ごとに異なります。

種まきの適期

アサガオの花後の種を採って増やす場合は、10月頃が種の採取の適期です。ただし、西洋アサガオは開花期が遅れるので、種の採取は11月頃になります。

挿し木の適期

アサガオを挿し木で増やすなら、梅雨時にあたる6月頃が適期です。

ノアサガオ（宿根アサガオ）は不稔性（種ができにくい性質）なので、挿し木や茎伏せ（挿し木の一手法）で発根させて増やします。このときの茎伏せの適期は、6～7月頃です。

接ぎ木の適期

接ぎ木は、5月中旬～6月頃が適期です。詳しくは後述しますが、同じイポメア属であるサツマイモを台木にします。少し技術を要するので、ビギナー向けではありません。の

知りたい！ アサガオの増やし方「種まき」

準備するもの

・市販のお茶パックなどの小袋（なくても可）
・保存用の袋（容器）

種を採る手順

夏の間中楽しんだアサガオの花。これまではせっせと、花後の花がらを摘んでいたことと思いますが、9月以降は花の数も少なくなってくるでしょう。ここからは種の採取に向けて、花がらは摘まずに、そのままにしておきます。

やがて花があった部分の根元に、緑色の膨らみができてきます。この中に、これから収穫するアサガオの種が入っているのです。しかし、未熟なままで採取しても発芽しないため、しばらくはこれまでどおりに、土が乾いたら水やりをして管理します。

種を覆う皮は、みずみずしい緑色から次第に枯れたような薄茶色になり、カサカサと乾いてきます。この薄皮越しに、黒い種が見えたり、皮の一部が裂けて種が顔をのぞかせたりしたら、こぼさないように種を採取します。

①種に触れた際にポロポロと散らばることがないよう、お茶パックなどの小袋を種に被せます。
②実のすぐ下の茎をカットしましょう。

種の保存

採取後は薄皮を取り除き、種を乾燥させます。乾燥が甘いと、カビが発生することがあるので注意してください。

乾燥させた種は、名前と採取日を書いたクラフト封筒などに入れておきます。さらに、密閉できるジッパー袋などに入れておくと、長く保存できます。

コツと注意点

花後の種を採って、アサガオを増やすなら、熟した種を採取することが大事です。頑張ってたくさんの種を採取しても、未熟なものはうまく発芽できません。

また、採取後の種は、年数を重ねるごとに発芽率が落ちてきます。今年採取したアサガオの種は、いつまでも後生大事にとっておかず、来年忘れずにまいてあげましょう。

知りたい！ アサガオの増やし方「挿し木」

準備するもの

・鉢(浅めで広口の駄温鉢など)
・挿し木用土(赤玉土やバーミキュライトなど肥料分のない新しい土)
・ハサミ(茎の導管を潰してしまわないよう、よく切れる物)
・細い棒(挿し穂を刺す際の穴あけ用)
・発根促進剤(なくても可。小さい容器で市販されている製品、ルートンやメネデールが入手しやすい)

挿し木の手順

アサガオを挿し木にする場合は、以下の手順で行いましょう。

①挿し穂として、元気な茎（蔓）を切り取り、１時間ほど水あげしておきます
②茎についた葉のうち、土に埋まってしまう部分は切り取ります。また、上のほうの葉も、蒸散を防ぐため半分くらいに切っておきます。
③挿し木の用土は、あらかじめ充分湿らせておきます。
④挿し穂を挿し込みやすくするため、用土は細い棒で穴を開けておきましょう。
⑤発根促進剤がある場合には、用土に挿す前に、挿し穂の切り口に促進剤をつけてください。メネデールの場合は、100倍くらいに薄めた液に５分ほど浸けてから挿します。
⑥挿し穂を傷めないよう用土に挿し、隙間が生じないように、そっと土を寄せます。
⑦挿し穂を挿した鉢を、直射日光が当たらない明るい日陰に置きます。発根するまで、土が乾燥しないように管理します。

茎葉が萎れずにしゃっきりした状態を保っていれば、およそ2～3週間で根が出るでしょう。新しい葉が出てくれば、無事に発根しているサインです。根を傷つけてしまわないよう、注意しながら鉢上げをして、新しい苗として育ててください。

なお、アサガオの挿し穂を水に挿して発根させる場合には、こまめに水を取り替えるようにします。特に、高温時には水も傷みやすいので、直射日光の当たらない場所で管理しましょう。

茎伏せの手順

①元気の良い蔓を地面に引き寄せ、軽く土を被せておきます。そのままでは風などで、蔓が元に戻ってしまうので、Ｕ字に曲げたワイヤーで地面に蔓を固定しておくとよいでしょう。
②地面に接したところから根が出たら、親株から切り分けて新しい個体として育苗します。

コツと注意点

アサガオを挿し木で増やすなら、「清潔に」を心がけるのが成功のコツです。

挿し床に使う用土は、新しい清潔なものを用意します。間違っても、古い鉢土を使ってはいけません。

アサガオは、挿し穂を水につけておいて発根させることもできます。それは清潔な水があればこそ。水に雑菌が繁殖すると、挿し穂も腐ってしまうので、気をつけましょう。

また、挿し穂を準備する際の刃物にも注意してください。アサガオの挿し穂を切り取る際に、導管（水の通り道）を潰してしまうと、うまく水あげができません。挿し穂の準備には、切れ味のよいハサミやナイフを使いましょう。なお、この刃物を媒介として病気がうつる場合もあるので、この点も注意したいですね。

種の場合、親株と種から育てた株は「親と子」の間柄になります。従って、結実した種は必ずしも、親株の性質を受け継ぐわけではありません。ここに、「交配によって新しいアサガオを作出する」という、おもしろみが生まれてきます。つまり、「子孫を残す繁殖」という意味で、増やすことができます。

一方、挿し木や茎伏せで得られた苗は、親株と同じDNAを受け継ぐ、いわばクローンです。Ａという個体を複数に増やしたいのであれば、挿し木などの方法を取るとよいでしょう。

アサガオの接ぎ木に挑戦したいときは…

ここまで、種の採取や接ぎ木といった、アサガオの増やし方について見てきました。最後に、接ぎ木も試してみたい！という方のために、アサガオの接ぎ木のやり方について簡単に紹介します。

準備するもの

・台木用のサツマイモ苗
・接ぎ木するアサガオ（穂木・接ぎ穂）
・接ぎ木テープ

接ぎ木の手順

①台木用のサツマイモの茎の上部を切り落とし、∨字形に切り込みを入れます。
②穂木となるアサガオの茎の下部を、台木の切り込みの形に合わせてカット。
③台木のサツマイモと、穂木のアサガオの切り口を接合します。
④接ぎ木テープで固定します。

書き出した手順を見ると、簡単そうに思われるかもしれません。しかし、台木、接ぎ穂ともスパッときれいに切って接合しなくてはならないですし、接ぎ木テープを巻く際に大切な茎を折ってしまいそうになるので、神経を使う作業になります。チャレンジするときは、余裕をもって、何本か予備を用意しておきましょう。

Credit

記事協力

監修／畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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