ガジュマルを元気に育てるには、適した土作りと、植え替え(定植)が必要です
特徴的な愛らしい樹形が心を和ませてくれるガジュマルは、初心者でも育てやすい観葉植物として人気があります。しかし、成長スピードが早いため根詰まりを起こしやすく、定期的な植え替えが必要です。そこで、ガジュマルを元気に育てるために必要な土作りや植え替え作業について、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
ガジュマルを育てる前に知っておきたいこと
ガジュマルを育てるうえで知っておきたい、基本的なデータを紹介します。
ガジュマルの基本データ
学名:Ficus microcarpa
科名:クワ科
属名:フィカス属
原産地:東南アジア、台湾、日本、インド、オーストラリア
和名: ガジュマル
英名:Chinese Banyan、Malayan Banyan
開花期:4月中旬~5月下旬
発芽適温:20~30℃
生育適温:5℃以上
ガジュマルは、沖縄地方では「精霊が宿る木」といわれ、古くから人々に愛されてきました。根や樹皮、葉には薬効があり、のどの腫れや傷み、関節痛や神経痛に効果があるとされています。
家庭では、インテリアプランツとして、鉢植えで育てるのが一般的です。根をあえて太く丸く育てた品種「ニンジンガジュマル」が主流で、最近ではミニ観葉植物として、100円ショップでも販売されています。
よい土は、水はけ、水もちに優れています
植物を育てるために用いる土を「用土」といいます。用土にはさまざまな種類があり、それらを何種類かブレンドしたものが「培養土」です。
植物を育てるとき、よい土の条件には、水はけと水もちのよさが必ず挙げられます。植物の根は土の中で呼吸し、生きるための水を吸収しているので、乾きすぎても過湿すぎても枯れてしまうことがあります。
水はけや水もちのほか、通気性や保肥性、適正なpHなどの条件が整った土が、植物の栽培に適しているとされます。土の構造は、微小な粒子の土が小さな固まりを作って重なった、団粒構造になっています。粒子同士や団粒同士の間に小さな隙間があり、それらの隙間が、必要な水や栄養を蓄えると同時に、通気に役立つのです。
団粒構造の土を作るには、腐葉土などの有機物を土に混ぜることが重要で、こうすることで病害虫の発生を抑える効果もあります。
ガジュマルの土作りを行う際にも、この団粒構造を念頭に置くようにしましょう。
種類を知ることが、適した土作りへの近道
植物を育てる土には、他の種類が混ざっていない「単体用土」と、複数の単体用土をブレンドした「培養土」があります。市販の培養土には、肥料などが入ったものや特定の植物専用に配合されたものがあります。園芸初心者は、育てる植物に合った、これらの培養土を選ぶとよいでしょう。
単体用土にはそれぞれ特徴があります。好みのブレンドで土作りをすることは、園芸の醍醐味でもあります。ここでは、一般的な土の種類や特徴について解説します。
【基本用土】
土をブレンドするときに、ベースになるものです。
黒土
関東ローム層の表層から採れる火山灰土の一種で、見た目にも黒くふかふかとしています。有機質を多く含み、水もちや肥料もちは優れていますが、水はけはよくありません。リン酸を吸着する性質があるので、リン酸を多く必要とする植物には不向きです。
赤玉土
関東ローム層から採取した土。水はけ、水もち、肥料もちのバランスがよいことから、ガーデニングや園芸で主流となる土です。褐色で粒状の土は肥料成分を含まず、虫や菌を寄せつける心配がありません。
鹿沼土
栃木県鹿沼地方の関東ローム層で採れる、黄色味を帯びた白い粒状の玉土です。赤玉土と似た特徴をもち、土質は酸性に傾いています。サツキなどのように、酸性土を好む植物の栽培に多く使われる土です。
【改良用土】
基本用土をよりよい性質にするために、加えるものです。
腐葉土
広葉樹の枯れ葉や枝などを発酵させたもので、水はけや通気性、肥料もちに優れています。有機物に富み、痩せた土を蘇らせる効果があるほか、暑さや寒さ対策のためのマルチング材としても使用できます。鉢植え、地植えを問わず利用される土です。
ピートモス
湿地など水分の多いところで育った植物を粉砕し、乾燥させたものです。主にコケ類が使われ、土を柔らかくし、水もちをよくする効果があります。強い酸性を示すため、酸度を嫌う植物への使用は注意が必要です。
堆肥
落ち葉などの植物や動物の糞、生ごみなどを、微生物によって分解したものです。土よりも肥料としての役割が強く、原料によって、バーク堆肥や生ごみ堆肥などの種類があります。牛糞や鶏糞なども、この堆肥の一種です。主に、庭土の改良に使われ、水はけや水もちをよくする効果があります。
【調整用土】
砂
砂には、川砂と山砂の2種類があります。
川砂:白川砂や朝明砂など、産地ごとの種類がある川砂は、川底や河川敷に積もった砂の総称です。多肉植物や山野草の栽培などによく用いられ、水はけや通気性をよくする目的で使用します。
山砂:火山から噴出したマグマなどが、風化により砂状になったものです。代表的な山砂に、日向砂や桐生砂、富士砂などがあり、産地ごとに特徴があります。水もちと肥料もちに優れ、山野草を育てるのによく用いられます。
パーライト
真珠岩や黒曜石など、ガラス質をもつ火山岩を高温処理して粒状にしたものです。原料の火山岩によって効果に違いがありますが、主に土の水もちをよくするために用いられます。
バーミキュライト
土壌改良に使われることが多いバーミキュライトは、蛭石(ひるいし)の原鉱石を800℃の高温で加熱風化処理したものです。細かい穴が無数に空いているため非常に軽く、水もち、肥料もち、通気性に優れています。また、pHがほぼ中性で無菌なため、挿し木や種まき用土としても重宝されています。
【特殊用土】
水ゴケ
ランや山野草の植え込み材としてなじみ深い水ゴケは、湿地帯に自生するコケを乾燥させたものです。水もちと通気性のバランスがよく、酸性を保ちやすいのが特徴です。
同じ土でも、原料によって性質が異なることがあり、発揮される効果はさまざま。土作りの際には、前述した特徴を参考にしてください。
元気に育てるための、ガジュマルの土作り
高温多湿な環境を好むガジュマルですが、土の水はけがよくないと根腐れを起こしやすくなります。元気に育てるには、できるだけ水はけのよい土作りをしましょう。
ガジュマルを初めて育てるという人なら、市販の観葉植物用の培養土を使用するのがおすすめです。
自分で用土をブレンドして作る場合は、赤玉土(小)と腐葉土を6:3の割合で混ぜ、、水はけをよくするピートモスやパーライトを1割ほど混ぜるとよいでしょう。
ガジュマルの、植え替えの時期と頻度
成長が早く根詰まりを起こしやすいガジュマルにとって、鉢植えで育てている場合の植え替えは大切な作業です。植え替えに適した時期は、5月上旬~7月上旬。株への負担を考え、猛暑日は避けるようにします。最近は特に、夏期が暑くなっていますので注意しましょう。
植え替えの頻度は、だいたい2~3年にいちどが目安です。ただし、鉢底から根が飛び出しているような株は、できるだけ早く植え替えましょう。
最低気温が10℃を下回らない地域なら、地植えにすることもできます。しかし、根が他の木に絡みついたり、コンクリートをも突き抜けたりする性質を考えると、一般家庭での地面への定植はおすすめしません。
土のほか、植え替え時に準備したいもの
植え替えを行う日を決めたら、作業に必要な以下のものを準備しましょう。
準備するもの(鉢植え)
・適した土(前述のとおり)
・植え替えするガジュマルの苗
・鉢:ひとまわり程度大きなもの
・鉢底ネット
・鉢底石
・土入れ、またはスコップ
・ジョウロ
・園芸用のハサミ(古い根の整理)
・割り箸などの細い棒
新たに用意する鉢は、株に対して大きすぎるものは避けましょう。根が吸い上げる水分量には限りがあるので、あまりに土が多すぎると乾きにくくなり、ガジュマルが根腐れを起こす危険性があります。
ガジュマルの植え替え方法が知りたい
必要な準備がすべて整ったら、実際の植え替え作業に入ります。気温と湿度共に安定した晴れた日の午前中なら、ガジュマルの根にもっとも負担をかけずに植え替えができます。雨の日や湿度があまりに高い日は、根に雑菌がつく可能性があるので避ける方がよいでしょう。
植え替え作業は、次の手順で行います。
①植え替え用の鉢に、鉢底ネットを敷きます。
②鉢底石を底が隠れる程度に入れ、植え替え用土を鉢の高さ1/3ほどまで入れます。
③ガジュマルの苗を鉢から丁寧に抜き取り、古い土を手でやさしくほぐします。腐ったり傷んだりした根がある場合はハサミで切り落とします。
④鉢の中央にガジュマルを置き、鉢の縁から2~3㎝下まで用土を入れましょう。
⑤割り箸などで土の表面をつついて根と土をなじませます。
⑥鉢底から流れ出るくらいまで、たっぷりと水やりをします。
腐葉土をブレンドした土を使用する場合、発泡煉石やチャコボールなどを敷いておけば、コバエなどの虫が発生を減らすことができます。また、ガジュマルが鉢から抜きにくい場合には、鉢横を軽く叩くと、引き抜きやすくなります。
植え替えをするときの注意点はこちらです
ガジュマルの植え替えは、適した用土と用具があればそれほど難しいことはありません。植え替えが初めてならば、市販の培養土を利用するのがいちばん簡単です。しかし、いくつか注意点があります。
植え替えで根をほぐす時には、負担を最小限にするためにも無理に力をいれず、やさしくほぐすようにしましょう。
また、植え替え直後は根が落ち着いていないため、十分に水を吸い上げることができません。1~2週間は直射日光を避け、明るい日陰で管理をするようにします。新芽が出るなどの動きを確認したら通常の環境に戻し、液体肥料などで栄養を与えてあげてください。
Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
文・ランサーズ
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