ローズマリーは一年中緑を絶やさず庭を彩ってくれるだけでなく、肉、魚の臭み消しや風味づけなどの料理や、ナチュラルクラフトの材料に使えるハーブです。ひと鉢あると何かと重宝するローズマリー。ここではこのローズマリーをはじめとした、植物栽培の基本ともいえる、水やりについてお話しましょう。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
目次
ローズマリーを育てる前に知っておきたいこと
ローズマリーは、地中海沿岸地方原産の半耐寒性常緑低木です。学名(※)は“Rosmarinus officinalis” で、これはラテン語でそれぞれに「ros marinus(海のしずく)」と「officinalis(薬用の)」のという意味があります。
枝葉に特有の爽やかな芳香をもつローズマリーは、抗酸化作用や抗菌作用があります。古来より薬効のあるハーブとして親しまれてきた植物であることが、学名からも伺えますね。
ローズマリーの基本データ
学名:Rosmarinus officinalis
科名:シソ科
属名:マンネンロウ属
原産地: 地中海沿岸地方
和名:迷迭香(マンネンロウ)
英名:Rosemary
開花期:3~11月(品種、環境により)
花色:ピンク、白、青、紫
発芽適温:20~25℃
生育適温:20~25℃
ローズマリーを種から育てるなら、春4~5月頃か、秋9~10月頃が適期です。春と秋のガーデニングシーズンにはポット苗もよく出回っていますので、園芸ビギナーの方なら苗から育て始めるとよいでしょう。伸びた枝は、肉や魚料理の風味づけに使ったり、お茶で楽しんだり。リースなどのクラフト材料にも使えます。
※「学名」学術上、生物などを分類してつける世界共通の名称。
水やりの方法と、そのタイミング
ローズマリーの水やりのタイミングは、時間帯でいえば朝のうちがベストです。
早朝から、日が高くなる前の午前中、涼しい時間帯のうちに水やりをしてあげるのがコツです。
ローズマリーは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの仕方や頻度は異なります。次の項からは、植えつけ別の水やりを紹介しましょう。
鉢で育てている場合の、ローズマリーの水やり
水やりの頻度
ローズマリーは乾燥ぎみの土を好む性質があり、水切れよりも、むしろ過湿に注意をする必要があります。天候により土に湿り気が残っている状態であれば、しっかり乾くまで水やりは不要です。従って、毎日水やりが必要なわけではありません。
水やりのコツ
「土が乾いたら、鉢底穴から水が流れ出てくるまでたっぷりと水やり」が基本です。土の表面だけが濡れた程度の水やりでは、根まで水が届きません。ですから、ジョウロなどで水を与えるときは、底から水が流れ出ているかを、しっかり確認してください。
水やりの確認方法
水やりのタイミングを確認するには、指で土を触ってみる、あらかじめ鉢土に割り箸などを刺しておいて、引き抜いて湿り気があるか見る…といった方法があります。両手で持てる大きさの鉢植えであれば、水やり前と水やり後の鉢の重さを体感しておく、というのもひとつの手です。
なお、ローズマリーは、朝に鉢土の表面が乾いて見える程度で慌てて水やりをする必要はなく、翌朝くらいにたっぷり水やりをしてあげれば大丈夫です。「乾と湿のメリハリ」を意識して水やりしてあげましょう。
地植えの場合の、ローズマリーの水やり
水やりの頻度
地植え栽培の場合には、ローズマリーがしっかり根づいたあとは、自然に降る雨だけで、基本的に水やりは不要です。これは、土の量が鉢植えに比べて、圧倒的に多く、地中に水分が蓄えられているためです。しかし雨が降らない日が続き、極端に乾燥している場合には、我慢させて枯らしてしまう前に、土中にしっかりと水がしみ渡るように水やりしてあげましょう。
水やりのコツ
前述したとおり、水やりを行うときは、土の奥、根の先端まで水が届くように、たっぷりと与えます。
水やりの確認方法
ローズマリーは、土がすっかり乾いてしまっていても、すぐさまグッタリと見た目に変化が出るような植物ではありません。水切れすると葉が少し細くなりますが、それも毎日観察していればこそ気づける変化です。葉が乾いてカリカリになってしまってからでは株へのダメージが大きく、復活できないこともあります
極端に雨が降らない日が続いたときなど、土を掘っても湿り気が見られない場合は、水やりをしましょう。
水やりは、季節によっても多少変わります
水やりの具合は、天候のほか、植物の生育状態や季節で多少変わります。そこで、この項では季節ごとの違いを見ていきましょう。
春(鉢植え、地植え)
春はローズマリーの種まき適期です。種まき後は、発芽するまで土を乾かさないようにしておく必要があります。ローズマリーの種は小さいので、水やりで種が流れてしまうことも…。水を張った容器に苗床を入れて、底穴から水を吸い込ませる「底面給水(底面灌水)」というやり方があります。この方法では、土に十分水分が行き渡ったら、苗床は水から引き上げます。
なお、植え替え後のローズマリーは、活着(根づいて生長を続けること)するまで、1週間程度は、地植えであっても土の表面が白っぽく乾いたら水やりをします。
梅雨時(鉢植え)
梅雨時は水やりの心配よりも、過湿による蒸れや根腐れのほうが心配になります。鉢植えは常に雨が当たるような場所に置きっぱなしにするのでなく、軒下に避難させるなど対策をしましょう。
夏(鉢植え)
基本どおりの水やりをします。
秋(鉢植え、地植え)
秋も種まき適期となるので、種まき後は春同様に水やりします。
冬(鉢植え)
冬の間も「鉢土が乾いたら水やり」の基本は変わりませんが、ローズマリーの生育も緩慢になるので、吸い上げる水分量も減ります。鉢の置き場所など環境にもよりますが、土自体も高温期のようには乾かないので、鉢土の乾き具合に留意して「乾かしぎみ」を意識した水やりをします。
ローズマリーの水やり、注意点が知りたい
鉢植えの場合の注意点
乾燥気味を好むローズマリーですが、小さい鉢ほど土の量が少ないため乾きやすく、大鉢とは乾き具合が異なるということは頭に入れておきましょう。
鉢植えのローズマリーに勢いよく水やりすると、水は鉢の内面を伝ってすぐに流れ落ちてしまい、肝心の根に水が行き渡っていないことがあります。ジョウロで水やりをする際は、ハス口を下向きにする、または水差し状にして株元にやさしく水をあげましょう。
ローズマリーの鉢の下に鉢受け皿を置いている場合は、水やり後に鉢底から流れ出た水はそのままにしておかず、必ず捨てるようにしましょう。ローズマリーは過湿を嫌いますので、いつも鉢受け皿に水が溜まっていると根腐れしてしまうことがあります。
逆に、鉢受け皿に水が溜まるのが嫌だから、鉢底から水が流れ出す前に水やり終了!という「水のちょいやり」もNGです。『ローズマリーの植え替えに適した土の作り方』で、土の団粒構造について解説していますが、水やりをすると団粒と団粒の間の空気が押し流され、ここに水分と共に新しい酸素が供給されます。しかし「ちょいやり」では、土は湿っても、この大事な酸素を供給するまでには至りません。水やりの基本である「鉢植えでは鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと」というのには、このような理由もあるのです。
上記のほか、夏の水やりでの注意点があります。鉢土はカラカラに乾いているのに、朝にするべき水やりをウッカリ忘れていたようなとき、慌てて水やりをしてはいけません。夏の日照りの下に置いていたジョウロやホース内の水は、熱せられてお湯のようになっていることもあるからです。水やりの前に、触って手で水温を確かめるなど注意しましょう。
地植えの場合の注意点
地植えでは、庭などの水やりを一気に済ませようと、散水ホースを使うケースがあります。このとき、水の勢いが強すぎると、土が跳ね返って葉裏につき、そこから病気が発生することがあるので注意が必要です。
散水ホースで水やりをする際は、水圧が柔らかいシャワーノズルに切り替えて、やさしく水をあげましょう。
ローズマリー栽培のなかで、水やりの役割
ローズマリーに限らず植物栽培における水やりは、俗に「水やり3年(5年とも)」といわれるくらいに奥深いものです。
なぜなら、水やりは次のような役割を担っているからです。
・植物の根に水を吸収させる
・根が呼吸するのに必要な酸素を供給する
・高温期には株や土の温度を下げる
・葉に付着した埃などを落とす(葉への散水の場合)
つまり、水やりはただ毎日の日課で、漫然と植物に水をかけるという行為ではなく、以上のような役割を念頭に、植物の根がしっかりと水分や酸素を吸収できるよう、与える必要があるということです。
日々の水やりに際し、土の乾き具合を確認するとともに、花色や葉色はどうか、虫害や病気は出ていないかなど、植物の様子を観察することも日課にしたいですね。
Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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