爽やかな香りが特徴的なローズマリーは、古くから薬用に用いられてきたハーブの一種です。丈夫で育てやすく、家庭に1本あれば、料理にも重宝するという優等生。その育て方を知り、ローズマリーを暮らしに取り入れてみませんか。All Aboutガイドで、ガーデンライフアドバイザーの畠山潤子さんにお聞きしました。
目次
ローズマリーを育てる前に知っておきたいこと
ローズマリーは、緑の葉が1年中ある「常緑低木」です。原産地が地中海沿岸地方ということもあり、比較的塩害にも強い丈夫な植物。このような特性のため、街中の緑地帯などにも植え込まれ、花を咲かせているローズマリーを見かけることがあります。
ローズマリーの基本データ
学名:Rosmarinus officinalis
科名:シソ科
属名:マンネンロウ属
原産地: 地中海沿岸地方
和名:迷迭香(マンネンロウ)
英名:Rosemary
開花期:3~11月(品種、環境により)
花色:ピンク、白、青、紫
発芽適温:20~25℃
生育適温:20~25℃
ローズマリーを種から育てるなら、春4~5月頃か、秋9~10月頃が適期です。春と秋のガーデニングシーズンにはポット苗がよく出回っていますので、園芸ビギナーの方なら苗から育て始めるとよいでしょう。伸びた枝は、肉や魚料理の風味づけに使ったり、お茶で楽しんだり、リースなどのクラフト材料にも使えます。
種類を知ると、選び方がわかります
ローズマリーには大きく分けて、以下のような3つの種類があります。
立性
枝は上方向に成長し、大きいものでは高さ2メートルに及ぶこともあります。
匍匐(ほふく)性
高さは30㎝ほどで、地を這うように広がります。
半匍匐性(半立性)
立性と匍匐性をミックスしたような性質で、上にも横にも生長します。
いずれも鉢植え、地植え、どちらでも楽しめます。種袋や苗についているラベルを参考に、植え場所や生長後の姿をイメージしながら、好みのローズマリーを選びましょう。
ローズマリーを育てるときに必要な準備は?
ローズマリーは鉢植えでも、地面に直接植える露地植えでも育てることができます。育てるときは、以下のものを用意しましょう。
準備するもの(鉢植え、地植え共通)
・ローズマリーの苗または種
*鉢植えの場合は、下記のものも用意
・鉢またはプランター
・培養土
・鉢底ネット
・鉢底石(なくても可)
なお、ローズマリーは日なたを好みますので、植え場所や鉢の置き場所も考慮しておきましょう。
適した土作りが、育てるコツの第一歩
ローズマリーは丈夫な性質の植物で、あまり土質を選びません。ただし、酸性が強い土や過湿を嫌うので、その点を考慮した土を使うのが望ましいでしょう。
鉢植えの場合は、市販のハーブ用培養土、もしくは草花用培養土で問題ありません。しかし、製品によりローズマリーに対しては、水はけが悪いこともあります。そういったときは、砂やパーライトを足すことで改善されます。
自分で単用土をブレンドして作る場合には、赤玉土と腐葉土、パーライトを6:3:1の割合で混ぜてください。
地植えの場合には、あらかじめ植え場所に、堆肥や腐葉土をすき込んで耕しておきます。水はけが悪いときは、川砂も加えて水はけをよくしてください。
また酸性土の中和のために、苦土石灰を施したり、用土に籾殻くん炭や草木灰を混ぜたりするのも有効です。
いずれの場合も、あらかじめ元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
ローズマリーの育て方にはポイントがあります
ローズマリーの育て方には、市販の苗を購入して育てる方法と、種から育てる方法があります。ローズマリーは種まきから発芽までの時間がかかるので、植物栽培に慣れていない方、ローズマリーを育てるのが初めて…という方は、苗から育て始めると失敗が少ないでしょう。
ローズマリーの育て方~苗から始める~
苗の選び方
ローズマリーの苗は、園芸店やホームセンターの園芸コーナー、ネット通販などで入手することができます。まずは立性、匍匐、半匍匐のどのタイプのローズマリーにするのか選びます。さらに、苗にはそれぞれ開花イメージの写真ラベルが付いていることが多いので、それらを参考にして選んでみましょう。
売り場には同じ品種でも、たくさんの苗がトレイに並んでいると思いますが、苗にも良し悪しがあります。虫がついている、白いカビのようなものがついている…といった苗はいわずもがなですが、周囲の他の苗と比べて葉色が悪かったり、下葉が乾いてポロポロ落ちてきたりする苗は、購入の際は避けるのがベターです。
またヒョロヒョロと背丈だけ伸びて茎が弱々しいもの、葉と葉の間が間延びしているものは「徒長」といい、日照や栄養状態に問題があったことを示します。こういった苗も避けたほうがよいですね。
よい苗は株元がクラクラすることなくしっかり根が張り、ズングリガッシリしています。なるべく、そういった苗を選ぶようにしましょう。
購入後は、後述の「ローズマリーと仲よくなる、日々のお手入れ」と同様に管理します。
ローズマリーの育て方~種から始める~
種まき時期
ローズマリーの種は、気温20~25℃くらいが発芽しやすいです。これを「発芽適温」といいます。露地に直接まく場合は、遅霜などの心配がなくなり、地温が充分に上がった頃にまきます。地域によって差はありますが、春まきは「八重桜が咲いた頃」を、種まき時期の目安にするとよいでしょう。
発芽のコツ
ローズマリーの種は、種まきから発芽まで2週間~1か月程度と時間がかかる植物です。また他の植物に比べ、芽が出てくる割合(発芽率)も低いので、なかなか芽が出ない…と諦めてしまうケースが多いようです。
発芽率が低いことを念頭において種を多めにまく、発芽に適した温度と湿度を維持するといったことが、発芽しやすくさせるコツになります。
種まき方法
ローズマリーの種は、植え場所に直接、種をまく「直まき」と、一旦ポリポットや育苗箱に種まきしたあと、丈夫な苗を選別して植え場所に移植する「鉢まき、箱まき」ができます。
種が細かいので、厚紙に種をのせてパラパラと「ばらまき」にするか、ピンセットでひと粒ずつ種をつまむ、あるいは湿らせた爪楊枝の先にひと粒ずつ吸いつけるようにして、まき床に「点まき」にします。
ローズマリーの種は、発芽の際に光が必要な「好光性(こうこうせい)」の種です。種をまいたあとに、あまり厚く土を被せてしまうと発芽しません。種まき後は、種の上に土をふりかけるように薄く覆土します。
芽が出るまでは種が乾いてしまわないように管理しますが、発芽までの期間が長いので、ついうっかりの水切れに注意です。また直まきした場合には、どこに種をまいたのか、わかるように印をつけておくとよいでしょう。
立派に育てるための、植え替え時期と方法
種を庭に直まきにした場合は、混んだ芽の間引きのみで植え替えの必要はありません。一方、鉢まきや箱まきにした場合は、草丈が3~4㎝ほどに伸びたら、ポットに植え替えて育苗します。定植の目安は、草丈10㎝程度です。
ローズマリーは、種まきから苗の形になるまでの時間がかかりますが、本来丈夫な性質ですので、その後の手間はあまりかかりません。
生育適温は気温20~25℃くらいで、環境があえばグングン生長するでしょう。
鉢植えの場合、根詰まりを防ぐためにも1~2年に1回、植え替えをしてください。植え替えは春か秋が適期になりますが、特に春の新芽が伸びてくる頃は、その後の生育も盛んなのでベストな時期です。
なお地植えで大株になったローズマリーは、根が傷むので植え替えが困難になります。
ローズマリーと仲よくなる、日々のお手入れ
市販のローズマリーの苗を入手した場合は、できるだけ早く定植場所に植えつけしましょう。日当たり、水はけ、風通しの良い場所が適しています。
ローズマリーは、小さい苗のうちは摘心で枝数を増やし、まずは株を大きく育てるようにします。2年め以降は、枝が伸びてきたら随時切り戻しをしながら収穫ができます。また梅雨時や高温多湿の時に、あまり枝葉が混み合っていると蒸れてしまうことがあるので、枝を透かすように切ってあげましょう。通風が確保されて、蒸れを防ぐことができます。
丈夫な性質のローズマリーですが、霜には弱く、気温が0度を下回るような地域では、戸外での冬越しが難しいので、地植えの場合は一旦掘り上げて鉢に植え替え、屋内で越冬させます。
水やりのタイミング
鉢植えの場合は、基本的に「鉢土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいにたっぷりと」水やりをします。時間帯は、日が高くなる前の朝~午前のうちに済ませます。
ローズマリーは過湿を嫌いますので、まだ鉢土が湿っているのにもかかわらず、ただ漫然と日課として水やりをすることのないように注意しましょう。
苗を地植えにした場合は、定植時にたっぷりと水やりをします。苗が根づいた後は、基本的に水やりの必要はありません。
※カンカン照りのなかに置いていたジョウロやホース内の水は、予想以上に熱くなっている場合があります。水やりの前に、チェックするクセをつけておきましょう!
肥料の施し方
ローズマリーは、苗の定植時に長くゆっくり効くタイプの「緩効性肥料」を施す程度で、あまり肥料を必要としない植物です。
鉢植えの場合は、植え替えの都度、用土に緩効性肥料を加えておきます。
株を充実させたい、花つきをよくしたいときなど、追肥として置き肥をする場合は、株際に置くのは避けます。根張りをイメージして展開した葉先の下あたりに、半分くらい埋めるような形で置いてください。
肥料は過剰に与えると、根が肥料やけを起こす場合があります。肥料を与える際には、注意書きをよく読み、使用量を守って与えるようにしましよう。
剪定を行うときは、時期に注意しましょう
ローズマリーの剪定には、脇芽を出させる「摘心」と、伸びすぎた枝を整理する「切り戻し」があります。
摘心は、定植後にしっかり根付いて枝が伸び始めたら先端を摘みます
切り戻しは生育期間中、気がついた時に傷んだ枝を取り除くとともに、枝葉が繁って混み合っている部分を透かすように切って風通しを良くします。
また、開花期間中は、咲き終わった花の花がら摘みを兼ねて、花穂ごと切り戻しを行ないます。
ローズマリーの増やし方が知りたい!
ローズマリーは、種の採取と挿し木で増やすことが可能です。前述のように種の発芽率が低く、収穫までの時間がかかることもあり、挿し木で増やすのが一般的です。
挿し木の時期と方法
ローズマリーの挿し木は、5月頃か10月頃が適期です。若い元気な枝を5~10㎝ほど挿し穂として切り、土に埋もれる部分の葉は取り除いておきます。
挿し穂は小1時間ほど水あげをしてから、湿らせた赤玉土やバーミキュライトなど肥料分のない用土に挿し、土が乾燥しないように注意して管理します。3~4週間ほどで根が出るので、根を傷めないように鉢上げをして、育てていきましょう。
毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです
ローズマリーは丈夫な性質で、あまり病虫害は出ませんが、繁りすぎて風通しが悪いような場合、葉に白い粉が吹いたようになる「うどんこ病」になることがあります。
また、葉にアブラムシがついたり、ヨトウムシや蛾の一種であるメイガによる食害が出ることがあります。
ローズマリーはハーブとして料理にも使いますから、できれば薬品を使わずに対処したいですよね。方法としては、うどんこ病対策には病気の出た枝葉は切り取って処分するとともに、繁りすぎた枝を切って風通しをよくします。アブラムシは見つけ次第こそげ落とすか、アブラムシがついた枝を切って処分します。メイガ、ヨトウムシ(夜盗虫)は捕殺しますが、ヨトウムシはその名のとおり、夜の暗い時間帯に活動し、昼間は土の中に隠れています。食害の跡が見られるのに犯人が見つからない場合は、株元の土を少し掘ってみましょう。
病虫による害は、いずれも毎日の観察が被害を広げさせないコツになります。
ローズマリーと相性のいい寄せ植え植物
ローズマリーは、株が小さいうちであれば寄せ植えの花材としても使えます。寄せ植えにするポイントとしては、似たような環境を好む植物と組み合わせることです。ローズマリーの場合は、日なたで風通しがよく、やや乾燥ぎみの場所を好む植物になります。
同じように料理などに使えるタイムやセージといったハーブと一緒に植えて、キッチンハーブのひと鉢を作ってみてもおもしろいですね。ですが、いずれも大きくなる前に、単独の鉢で育てた方が、その後の生育にはよいでしょう。
香りよいローズマリーの収穫と利用法
常緑のローズマリーは、使いたい時に随時収穫して使えるというのが魅力ですが、独特の芳香をフルにいかしたいなら、時期としては開花前、時間帯は朝に収穫するのがおすすめです。
収穫したローズマリーはフレッシュのまま肉や魚の臭み取り、料理の香りづけ、ハーブティーやハーブバスに利用することができます。たくさん収穫できた場合は、乾燥させて保存瓶に入れておけば、ドライハーブとして、いつでも使うことができます。
ドライフラワーにして飾って楽しむアイデアは、「ローズマリーの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」で紹介しています。
※ローズマリーには抗菌作用や抗酸化作用といった薬効がありますが、子宮収縮の作用もあるので妊娠中の方は飲用を避けてください。また、体質によりアレルギー反応を起こす場合もありますので、ご注意ください。
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Credit
監修/畠山潤子
ガーデンライフアドバイザー
花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
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