ブルーベリーは、樹高も高くならず、家庭で育てる果樹としては育てやすく人気があります。春から初夏に白色あるいはピンクで鐘型の可憐な花を咲かせ、夏、たわわに実る果実は可憐で、まるで青紫色の宝石のよう。秋には美しく紅葉します。増やす方法としては挿し木が一般的です。ブルーベリーの挿し木には、挿し木に用いる枝によって新梢を用いる「緑枝挿し(りょくしざし)」、休眠時期の枝を用いる「休眠枝挿し(きゅうみんしざし)」があります。ここでは比較的簡単で家庭栽培向きな休眠枝挿しを中心に紹介します。監修・三輪正幸(千葉大学環境健康フィールド科学センター助教)
目次
知っておきたいブルーベリーの基本情報
ブルーベリーは、初心者にも育てやすい果樹のひとつで、挿し木で簡単に増やすことができます、増やし方を学ぶ前に、上手に育てるための基本情報を知っておきましょう。
ブルーベリーの基本データ
学名:Vaccinium spp.
科名:ツツジ科
属名:スノキ属
原産地:北アメリカ
和名:ブルーベリー、ヌマスノキ、アメリカスノキ
英名:blueberry
開花期:4〜5月
花色:白、ピンク
植え付け時期:落葉期(関東以西では11〜3月、寒冷地では2月下旬〜3月中旬)
収穫期:6〜9月
耐寒気温:−20〜−10℃
ブルーベリーの品種はハイブッシュ系とラビットアイ系に大別されます。ラビットアイ系の品種のブルーベリーは自分自身の花粉では受粉しにくい傾向にあるため、同じラビットアイ系で異なる品種のブルーベリーを一緒に育てる必要があります。ハイブッシュ系のブルーベリーは1本でも受粉し結実する品種もありますが、同じハイブッシュ系で異なる品種を一緒に育てて受粉させたほうが、確実に実付きがよくなり、果実が大きく育ちます。ラビットアイ系、ハイブッシュ系どちらも受粉は虫媒(虫が花粉を運ぶ)によって行われますが、できるだけ近くに鉢を置いたり植え付けたりすることで、より実付きがよくなります。
また、ブルーベリーは酸性の土を好み、pHでいうと5.0前後の土でよく育ちます。そのため多くの土ではpHを調整していないピートモスなどを土に混ぜて、pHを下げて育てる必要があります。
ブルーベリーを増やすために必要な準備
挿し穂を準備する
休眠枝挿しに使う挿し穂は、冬の剪定で切り落とした枝を低温で保存したもの、あるいは挿し木の直前に切り取った枝から作ります。いずれの場合も挿し穂に使う枝は、前年に伸びた若い枝を用います。冬の剪定で切り取った枝を利用する場合は、剪定後、長い枝のまま乾燥させないようにしながら低温の場所で保存します。濡らしたキッチンペーパーなどに包み、ポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存してもよいでしょう。
挿し穂を挿すためのピートモス
ブルーベリーは酸性の土を好むためピートモス単体、あるいはピートモスと鹿沼土を半分ずつ混ぜたものを、挿し木用の土として使います。いずれの場合もピートモスはpHを調整していないものを用い、バケツなどで十分に水で湿らせてから使います。
挿し木をするためには以下の道具が必要です。
剪定ばさみ:枝を切り出すときや切り分けるときに使う。
切り出しナイフ:切り口をきれいに整える。
バケツ:切り出した枝を水につけるときや、ピートモスを湿らせるときに使用。
大きめの平鉢:挿し穂を挿すための鉢。
ピートモス:挿し穂を挿すための用土。
軽石:平鉢の通気性などを高めるために敷く。
鉢:根が出た苗木を1株ずつ移して育苗する。
栽培用土:育苗するための用土。ブルーベリー用の用土または、ピートモス主体にブレンドしたものを用いる。
ブルーベリーを増やす方法と適切な時期は?
ブルーベリーは挿し木で増やす
ブルーベリーは一般的に挿し木で増やしますが、挿し木を行う時期によって〈休眠枝挿し〉と〈緑枝挿し〉があります。休眠枝挿しは冬の剪定で切り落とした枝を保存したものから挿し穂を作ります。また、春、挿し木直前に切り取った枝から挿し穂を作って用いることもできます。緑枝挿しでは、初夏になって成長が止まった新梢から作った挿し穂を用います。
落葉期の休眠枝挿しが一般的
ブルーベリーは一般的に〈休眠枝挿し〉が適しています。ブルーベリーの芽吹きはサクラの開花と同時期です。休眠枝挿しは芽吹き直前の3~4月(温暖地)または4~5月(寒冷地)、つまりサクラの開花直前が適期となります。一般的ではありませんが緑枝挿しをする場合は、枝の成長が止まった6月中旬〜7月が挿し木の適期となります。
挿し木(休眠枝挿し)で増やすための具体的な手順
①枝を剪定する
冬の剪定で切り落とした枝のうち、充実した徒長枝(幹や太い枝から上向きに勢いよくまっすぐに伸びた枝)を選び、花芽が付いた部分を取り除きます。
②枝を保管する
切り取った枝は、挿し木を行うときまで長い枝のまま、乾燥させないようにして温度の低いところで保管します。濡らしたキッチンペーパーなどに包み、ポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存するとよいでしょう。
③枝を切り分ける
ブルーベリーの芽吹きの時期の直前になったら、保存しておいた長い枝を、長さ10cmほどに剪定ばさみで切り分けます。切り分けた挿し穂の元に近い側を、よく切れるナイフで斜めに切り、切り口をなめらかに整えます。また、挿し穂は挿し木の適期に切り取った枝から作ることもできます。挿し穂は切り口を乾燥させないように、調整したらすぐに切り口を水に浸けることが大切です。
④湿らせたピートモスに挿し穂を挿す
大きめの平鉢に通気性を高めるために軽石を敷き、その上によく給水させ湿らせたピートモスを入れ、水をかけて落ち着かせます。用意した挿し穂を葉芽が2芽かくれる程度に5cm間隔で挿します。
⑤挿し木後の管理
挿し終わった鉢は、木漏れ日があたる程度の半日陰の場所に置くと、1か月ほどで新芽が出て、およそ3か月で発根します。根が確実に出れば新しい芽を伸ばし始めるので、目安となります。十分に発根したら栽培用土を入れた鉢に1株ずつ鉢上げし、植え付け時期の落葉期まで育苗します。
育苗した苗木をプランターに植え付ける
プランターで育てる場合、植物の生育は植え付けたプランターの大きさで決まります。コンパクトに育てたいときは小さなプランターで、ある程度の大きさに育てたい場合は大きなプランターを選ぶようにします。基本は苗木の根鉢の大きさより一回りほど大きなプランター、具体的には7〜10号程度(21〜30cm)のものを用意するとよいでしょう。あまり大きなものを使うと、移動や植え替えなどの作業時に負担が大きくなります。プランターの材質にはさまざまなものがあります。安価で軽く扱いやすいのはプラスチック製ですが、通気性や水はけといった植物の生育を考えると素焼き鉢が向いているといえます。なお、形や色のバリエーションに富んだグラスファイバー製のものもあります。
庭に植えて育てる
植え付け場所に深さ・直径ともに40〜50cmの穴を掘ります。あらかじめ水で十分湿らせたピートモス40〜50L、腐葉土40Lほどを掘り起こした庭土によく混ぜて、半分ほど穴に埋め戻します。苗木の根鉢を軽くほぐし植え穴に入れて、残りの土を使って植え付けます。このとき、苗木の株元が地面の高さになるように調整をします。植え付け後は支柱を立て、軽く枝先を切り戻し、たっぷりと水やりをします。乾燥を防ぐため、バークチップやワラなどで植え付けた苗木の株元を覆います。
挿し木をするときのコツや注意点は?
酸性の土を使って、適期に行うのが挿し木のコツ
挿し木で最も大切なことは、適期に行うということです。一般的な休眠枝挿しでは、ブルーベリーの芽吹き直前の時期が挿し木の適期となります。そのため挿し穂にする枝は、冬の剪定時に切り取った充実した徒長枝(幹や太い枝から上向きに勢いよくまっすぐに伸びた枝)を冷所で乾燥させないように保存し、切り分けて挿し穂として利用します。
挿し穂を植え付ける土にはpHを調整していないピートモス単体、あるいはピートモスと鹿沼土を同量ずつ混ぜたものを使います。挿し木後の管理で最も大切なことは、用土を乾燥させないということです。水やりはこまめにする必要がありますが、発根後の根腐れを防ぐために、挿し木に用いる平鉢は通気性・水はけのよいものを使うとよいでしょう。
Credit
監修/三輪正幸
1981 年岐阜県生まれ。千葉大学環境健康フィールド科学センター助教。専門は果樹園芸学。NHK「趣味の園芸」の講師をつとめ、家庭でも果樹を気軽に楽しむ方法を提案している。著書に『かんきつ類―レモン、ミカン、キンカンなど (NHK 趣味の園芸12 か月栽培ナビ(6))』(NHK 出版)、『果樹&フルーツ 鉢で楽しむ育て方』(主婦の友社)、『おいしく実る! 果樹の育て方』(新星出版社)、『果樹&フルーツ 鉢で楽しむ育て方』(主婦の友社)などがあり、監修書に『からだにおいしい フルーツ便利帳』(高橋書店)、『小学館の図鑑 NEO野菜と果物』(小学館)などがある。
構成と文・童夢
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