生の葉や茎に独特の香りがあるパクチー。香菜(シャンツァイ・コウサイ)、コリアンダーの名でも知られていますね。タイやベトナム、中国などでは料理に欠かせないハーブで、葉や茎だけでなく、花や種、根も利用されます。乾燥させた種はオレンジのような香りのあるスパイスで、カレーなどの煮込み料理に使われます。ここではパクチーを育てる肥料の正しい知識・与え方を紹介します。

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知っておきたいパクチー(コリアンダー)の基本情報

パクチーは利用部位によって栽培期間が異なり、葉だけを利用するならおよそ1か月半、種を利用するなら3~4か月育てます。まずはパクチーの基本的な情報を知っておきましょう。

パクチーの基本データ
学名:Coriandrum sativum L.
科名:セリ科
属名:コエンドロ属
原産地:地中海沿岸、中東
和名:コエンドロ
英名:Coriander
開花期:5~11月
花色:白
発芽温度:20℃前後
生育適温:20~25℃

パクチー

パクチーはセリ科の一年草。20~25度でよく育ち、日当たりのよい場所と水はけのよい土を好み、真夏の暑さを嫌います。ニンジンやパセリと同じセリ科なので、日本でも栽培を始める農家も増えています。初夏に種をまけば、5~6月に花を咲かせ、3~4か月で種を付けます。

パクチー(コリアンダー)に肥料は必要なの?

肥料が必要な理由

パクチー

パクチーに限らず植物が成長するためには肥料が必要です。自然の中では、土の中の養分を吸収して育ち、落ちた葉が積もって枯れれば、土壌微生物による分解やたくさんの化学反応などによって再び養分となります。しかし、パクチーなどの野菜を栽培して収穫すると、養分は栽培場所から持ち出されて土の養分が減ってしまいます。このため、生育に適した土になるように土に肥料を与える必要があります。

植物に必要な「肥料の三大要素」

植物が育つための養分にはたくさんの種類があり、そのうち特に重要なものは、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の3つでこれらを「肥料の三大要素」と呼びます。肥料の袋には窒素、リン酸、カリの成分がどのくらい含まれているのかを表す数値が「N-P-K=8-8-8」などと記載されています。この数値は100g中に窒素などの成分が8gずつ含まれることを表します。

パクチー(コリアンダー)を育てるための肥料の種類

主に無機物から作られる化学肥料

パクチー

無機質の原料を用い化学工業的に作られる肥料を「化学肥料」と呼びます。化学肥料には、含まれる主成分が1種類の「単肥(たんぴ)」と、窒素、リン酸、カリの2種類以上含む「複合肥料」があります。一般的には複合肥料である「化成肥料」が使われます。多くの化学肥料は効果が早く出るのが特徴です。肥料は窒素、リン酸、カリが8-8-8など、数値がバランスよく配合された化成肥料を選ぶとよいでしょう。

有機物から作られる有機質肥料

肥料

動物や植物を由来とする有機物を原料に作られる肥料を「有機質肥料」といいます。原料によって肥料成分の量など品質がばらつきやすいので、利用する場合は複数の有機質肥料を組み合わせたり、化学肥料を併用したりするとよく育ちます。多くの有機質肥料は土壌微生物によって分解されてから吸収されるので効果がゆっくりと現れます。単一の肥料だけでなく、ほかの有機質肥料や化成肥料などと併用して、窒素、リン酸、カリのバランスを整えましょう。

固形肥料と液体肥料(液肥)

パクチー

肥料の形として、粒状や粉末状などの固形肥料があります。固形肥料は粒が大きいほど効果はゆっくりと現れ、長期間効果が続きます。液体状のものは液体肥料といい、植物が吸収しやすいため効果がすぐに現れますが、持続性はありません。プランターでは液肥で水やり代わりに使用したほうが使いやすいでしょう。家庭菜園では固形肥料で構いません。

肥料を与えはじめる時期・タイミング

栽培前に土に与える「元肥(もとごえ)」

栽培する前に土に与える肥料を「元肥」といいます。プランターでは、野菜やハーブ用の培養土に肥料が含まれているため元肥を入れなくてOK。ただし、用土の割合や質、肥料分の量などそれぞれ異なるため、生育に差が出ることもあります。家庭菜園では、はじめに土に元肥を施しておきます。肥料はゆっくりと効果が現れるものを使用します。

栽培の途中で与える「追肥(ついひ)」

パクチーが育つと土の養分が少なくなってきます。このとき、追加の肥料を与えることを「追肥」といいます。とくにプランターでは水やりのときに外に出る水とともに養分が流れ出るため、追肥は欠かせません。一般的な追肥のタイミングは種まき・植え付けから3~4週間後に1回、その後生育を見ながら1か月に1回程度与えます。

パクチー(コリアンダー)への肥料の与え方

元肥の与え方

元肥の与え方

プランター栽培では培養土に肥料が含まれているので、基本的に元肥を与える必要はありません。家庭菜園ではタネまきや植え付けの2週間前までにpH6.0~6.5になるように苦土石灰をまいて調整します。さらに元肥として、1週間前までに腐葉土や堆肥2~3kg/㎡、化成肥料(8-8-8)100g/㎡を栽培する場所の全面にまいて土をよく耕しておきます。

プランターではこまめに追肥する

追肥

プランターは水やりの回数が多く、用土に含まれる肥料分が流れ出てしまいます。このため、プランターで栽培する場合は、固形肥料を鉢の縁に置くか、水やり代わりに液体肥料を与えます。液体肥料はラベルをよく読んで用法用量をきちんと守りましょう。肥料の与えすぎは株が弱る原因となります。

家庭菜園では長期間育てる場合のみ追肥

追肥

パクチーを葉物野菜として育てるなら1か月半で収穫できます。このため、土作りのときに入れた肥料(元肥)だけで追加の肥料は必要ありません。花やタネまで楽しみたい場合は株の様子を見て、生育が悪いようなら肥料を与えましょう。化成肥料(8-8-8)なら1株あたり2g程度の肥料を葉の広がりに合わせてドーナツ状にまき、土の表面と軽く混ぜます。有機質肥料なら発酵油かすなど、すぐに効果が現れるものを選び、肥料の袋を見て適量まきます。

肥料を与えるときの注意点

様子を見ながら少量ずつ与える

肥料の種類によって与える量は変わってきます。追肥の基本は株の様子を見て少量ずつ与えます。与えた肥料がどのくらい効くかを知るためには、株をよく観察して、量を覚えていくことが大切です。与えた肥料は減らすことができないので、少量をまいて様子を見て、足りないようなら追加で与えるとよいでしょう。

肥料をあげすぎたときのパクチー(コリアンダー)の変化

窒素の与えすぎ、不足した場合

窒素は植物の葉や茎を育てる養分です。たくさん施された場合、枝葉が徒長して弱い株になってしまいます。また、不足すると葉の色が薄くなり、生育が悪くなります。こうなると病害虫の発生する原因になります。

リン酸が不足した場合

リン酸は植物の根や茎を育てる養分です。光合成やエネルギー代謝にも重要な役割を持っています。リン酸は植物の生育初期に多く必要な養分で、不足すると初期の生育や根の発育が悪くなって、その後の成長が振るわなくなります。通常の栽培ではリン酸の与えすぎの影響はあまり出ません。

カリ(カリウム)の与えすぎ、不足した場合

カリはタンパク質の合成や光合成など多くの役割があります。とくに葉で作られた糖が運ばれる際に重要なものです。カリが不足すると、糖がうまく運ばれずに、果実や根が大きくなりにくくなります。とくに根でよく現れるため、カリは「根肥(ねごえ)」と呼ばれます。また、カリは一般の栽培では与えすぎによる症状は出にくいですが、必要以上に吸収される性質があるので与えすぎには注意が必要です。

パクチーは基本的に葉もの野菜です。とくに窒素分の肥料を与えすぎないように注意して育てましょう。

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記事協力


監修/北条雅章
1976年千葉大学園芸学部卒。千葉大学環境健康フィールド科学センター特任研究員。蔬菜園芸学が専門。研究では葉菜類の無農薬栽培やイチゴの養液栽培技術開発などをテーマとしている。監修書に『野菜の上手な育て方大事典』(成美堂出版)、『NHK 趣味の園芸ビギナーズ 育てておいしいヘルシー植物』(NHK出版)、『タネのとり方もわかる! おいしい野菜づくり』(池田書店)などがある。

撮影・田中つとむ 構成と文・童夢

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