生の葉や茎に独特の香りがあるパクチー。香菜(シャンツァイ・コウサイ)、コリアンダーの名でも知られていますね。タイやベトナム、中国などでは料理に欠かせないハーブで、葉や茎だけでなく、花や種、根も利用されます。乾燥させた種はオレンジのような香りのあるスパイスで、カレーなどの煮込み料理に使われます。ここではパクチーを育てる際の水やりの方法とタイミングを紹介します。監修・北条雅章(千葉大学環境健康フィールド科学センター特任研究員)
目次
知っておきたいパクチー(コリアンダー)の基本情報
パクチーは利用部位によって栽培期間が異なり、葉だけを利用するならおよそ1か月半、タネを利用するなら3~4か月育てます。まずはパクチーの基本的な情報を知っておきましょう。
パクチーの基本データ
学名:Coriandrum sativum L.
科名:セリ科
属名:コエンドロ属
原産地:地中海沿岸、中東
和名:コエンドロ
英名:Coriander
開花期:5~11月
花色:白
発芽温度:20℃前後
生育適温:20~25℃
パクチーはセリ科の一年草。20~25℃でよく育ち、日当たりのよい場所と水はけのよい土を好み、真夏の暑さを嫌います。ニンジンやパセリと同じセリ科なので、日本でも栽培を始める農家も増えています。初夏にタネをまけば、およそ3~4か月かけて種をつけます。
生育中は株の中心から葉が次々と出て株が大きくなります。ある程度の大きさになったら花を付けるための茎が伸びて、先端に白色の小さな花をたくさん咲かせます。花の近くの葉は生育初期と違い切れ込みの深いニンジンの葉のよう。違いを比べてみるのも楽しいでしょう。
パクチー(コリアンダー)の水やりの頻度は?
プランターではほぼ毎日
パクチーの水やりは土の量と関係していて、プランターと家庭菜園で違います。プランターは土の量が限られているので、水分を保持する力が弱く、乾燥しやすくなります。このため、大きめのプランターであったとしてもおよそ1日1回程度の水やりが必要になります。小さいプランターだと乾燥しやすくなるため、こまめな水やりが必要になる季節もあります。
家庭菜園では基本的に必要なし
家庭菜園は土の量が多く、地中に水分がたくさん蓄えられているため、基本的に水やりの必要はありません。
水やりのコツとタイミング
水やりのコツは「たっぷり」
水やりはハス口の付いたジョウロで与えます。植物の根は葉の広がりとほぼ同じ幅に広がっているので、その内側に水やりをします。ここで注意したいのは、土の表面だけが濡れた状態だと根まで水が届かないこと。心配な人は、何も育てていない場所の土に水やりをして土を掘り、どのくらいの深さまで水が届くのか調べてみると参考になります。
プランターでのタイミング
水やりのタイミングは土が乾燥状態になる前に行います。プランターでの水やりのコツは、水をかけたあとに、底から水が流れ出るくらいです。初夏や秋などある程度安定した天気が続く時期は、午前中に1回たっぷりと水やりをします。梅雨の時期や雨が降っているときなど、土が湿った状態をキープしていれば水やりの必要はありません。基本的に土の表面が乾いたら水やりを行います。梅雨明け後、昼くらいには土が乾燥してしまう気温の高い時期は、朝と昼過ぎの2回行います。このとき、夕方〜夜に水やりをしないようにしましょう。
家庭菜園でのタイミング
家庭菜園では土中の水分があるため、基本的に水やりの必要はほとんどありませんが、梅雨明け後など晴天乾燥が続くような時期は1〜2週間に1回、たっぷりと水やりをします。生育初期で、株が小さいときなどに乾燥して株がぐったりしている場合も水やりを行います。
水やりのタイミングの確認方法
プランターは土の表面を確認
プランターでの水やりのタイミングは、土の表面がポイントです。土の表面が乾燥していたら水やりを行います。土の表面が乾燥していなければ、水やりの必要はありません。家庭菜園では1~2週間雨がない場合など、極端に乾燥しているようならジョウロでたっぷりと水やりをします。
時期によってパクチー(コリアンダー)の水やりの方法は変わる?
栽培時期と生育状態で多少変わる
パクチーの栽培開始時期は、温暖地で4月中旬~8月、寒冷地では5月~8月に種をまいて育てます。発芽適温である20〜25℃の環境を好み、真夏の暑さでは生育が悪くなります。このため、水やりは生育状態と季節によって多少変わってきます。
種まき・植え付け後の水やり
種まき、植え付け直後は水やりが欠かせません。種まきでは種が流れないように優しく水やりをし、植え付け時にはたっぷりと水やりをします。どちらも土と種、または根が密着するために必要な水やりです。家庭菜園の場合は、種まき・植え付け後は晴れが続くようなら午前中に1回、7〜10日ほど水やりを続けます。雨が降っている日は水やりの必要はありません。ポットなどに種まきした後は1日に1回霧吹きなどで土を湿らせ、乾燥しないように発芽するまで新聞紙をかぶせます。
パクチー(コリアンダー)の水やりの注意点
土がはね返らないようにする
プランター、家庭菜園とも、水やりはハス口の付いたジョウロで与えます。土のはね返りがパクチーに付かないように、ハス口を下に向けて行います。高い位置から水やりを行うと、土がはね返り、土の中にいるカビがパクチーの葉の裏についてしまいます。特定のカビが付くと病気の原因になるので、水やりはできるだけ土がはねないように行います。
夕方はできるだけ水やりをしない
プランターでとくに多いことですが、初夏や晩秋の夕方に土が乾燥していた場合、水やりをしないようにしましょう。夕方の水やりは水を余分に吸うためにプランターの中に水が余り、植物は夜間の活動が少ないので軟弱に育ってしまいます。そんなときは水やりをせずに、翌日の午前中に水やりをしましょう。
水のやりすぎに注意
プランターでは土が乾燥する前に水やりを続けてしまうと、常に土が湿った状態になって根腐れを起こします。根腐れは、土が加湿状態になったときに、根の先端から徐々に腐っていくことです。水やりは土の表面の状態をよく確認しておくことが大切です。また、プランターの底の穴が小さいものは水はけが悪くなって根腐れをすることがあるので、鉢底石を敷くなどして水はけの対策をしておきましょう。
極端な乾燥は底面灌水
プランターで水やりを忘れて、株がぐったりとしていた場合、急いで水やりを行います。通常の水やりでも構いませんが、底面灌水(ていめんかんすい)を行うと効果的です。底面灌水は、プランターより一回り大きな受け皿や底のない容器を準備し、その容器に水を張ってからプランターをつけて底から水を吸わせます。株が生き生きとしてきたら容器からプランターを取り出します。
Credit
記事協力
監修/北条雅章
1976年千葉大学園芸学部卒。千葉大学環境健康フィールド科学センター特任研究員。蔬菜園芸学が専門。研究では葉菜類の無農薬栽培やイチゴの養液栽培技術開発などをテーマとしている。監修書に『野菜の上手な育て方大事典』(成美堂出版)、『NHK 趣味の園芸ビギナーズ 育てておいしいヘルシー植物』(NHK出版)、『タネのとり方もわかる! おいしい野菜づくり』(池田書店)などがある。
撮影・田中つとむ 構成と文・童夢
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