ハイビスカスは花の色や形が豊富な低木の常緑樹です。ハワイの州花であり、日本でも沖縄のシンボル的な花として親しまれています。夏のイメージが強いハイビスカスですが、育てる環境しだいで冬にも花を咲かせることがあります。適した肥料や、肥料の与え方を知って、たくさんの花を楽しみましょう。
目次
ハイビスカスを育てる前に知っておきたいこと
トロピカルな花といえば、真っ赤なハイビスカスの花がよくイメージされます。品種は7千種以上とも1万種以上あるともいわれています。原産地についてはいろいろな説があり詳細は不明とされますが、ハワイでたくさんの交配が行われたため、ハワイの花というイメージがついたのかもしれません。
■ ハイビスカスの基本データ
学名:Hibiscus
科名:アオイ科
属名:フヨウ属
原産地:中国南部、インド洋やハワイ諸島、モーリシャス島等といわれるが詳細は不明
和名: 仏桑花・扶桑花(ブッソウゲ)
英名:Hibiscus
開花期:6~10月
花色:ピンク、赤、オレンジ、黄色、白、青、紫
花もち:基本的に1日、2〜3日のものも
また観賞以外に、ハイビスカスは食用や繊維の原料とされています。ビタミンCやカリウムなどを含むので、疲労回復効果のあるハーブティーとして、また天然のスポーツドリンクのように飲まれていることは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
ハイビスカスを育てるときに肥料は必要なの?
ハイビスカスに限らず、自宅の庭や鉢で植物を育てるときには肥料が必要です。特に花の観賞が目的となるハイビスカスは、たくさんの美しい花を咲かせるための栄養となる肥料は欠かせません。
植物を育てるのに必要な栄養素はたくさんありますが、そのなかでも大切なのが「窒素(N)」「リン酸(P)」「カリ(K)」です。この3つは肥料の三大要素と呼ばれています。ハイビスカスは新しく伸びた枝に花をつける植物のため、枝になる新芽の成長が悪いと花の数も少なくなってしまいます。ハイビスカスの新芽を伸ばすためには、肥料の三大要素をバランスよく与えることが必要となります。
液体肥料に似たもので、植物の活力剤があります。栄養剤などともいわれるものです。活力剤には植物を元気にする働きがありますが、肥料に比べると含まれている栄養成分が少ないのが特徴です。肥料が普段の食事とするなら、活力剤はサプリメントや栄養ドリンクといったところでしょう。活力剤と肥料を混同しないようにしましょう。
肥料の種類と特性を把握しましょう
植物に与える肥料にはいくつか種類がありますが、成分で分類すると有機質肥料と無機質肥料があります。有機質肥料は動物や植物由来のもので堆肥、骨粉などがあります。無機質肥料は化学的につくられたもので、化成肥料とも呼ばれます。化成肥料には効き目が緩やかな緩効性肥料と、効き目の早い速効性肥料とがあります。それぞれの肥料をもう少しくわしく説明していきましょう。
有機質肥料
動植物由来のもので、動物のふんや骨粉、油かす、落ち葉や生ごみの堆肥などがあります。土の中の微生物が肥料を分解し、それが植物の根に吸収されていくため、肥料の効果が出るまでに時間がかかります。ハイビスカスに与える場合は、油かすを主体にした固形肥料がおすすめです。
無機質肥料
鉱物などを原料として化学的に合成した肥料で、化成肥料ともいいます。ハイビスカスで使う場合は、肥料の三大要素である「窒素(N)」「リン酸(P)」「カリ(K)」が同量ずつ配合されているものが理想です。化成肥料は初心者でも扱いやすいですが、多くやりすぎると植物にダメージを与えることがあるので、容量や使用方法に注意が必要です。
緩効性肥料
成分がゆっくり浸透する肥料で、効き目が長く持続します。固形のものが多く、有機質肥料は緩効性肥料のタイプです。化成肥料にも錠剤や粒状の緩効性肥料があります。効き方はゆっくりですが、土の中に長く蓄積されるので、元肥(*1)としてよく使われます。
速効性肥料
効き目のあらわれるのが早い肥料ですが、長持ちしません。液体のものが多く、追肥(*2)として使うことが多くなります。液体肥料は、原液のまま使うものと薄めて使うものがありますので、使用方法に沿って使うことが重要です。
ハイビスカスへ与える肥料は、緩効性のものと速効性のものを時期にあわせて使い分けるとよいでしょう。
*1)元肥(もとごえ)は、苗や株を植え替えたり植えつけたりする時に施す肥料です。効き目が緩やかな肥料を使います。
*2)追肥(ついひ)は、植物の生育にともない不足した栄養分を補うために施す肥料です。目的に合わせて緩効性か速効性のものかを選んで使います。
ハイビスカスに肥料を与えはじめる時期とタイミング
ハイビスカスに肥料を与えるのは、基本的には5〜10月の生育期です。生育期は新芽がぐんぐん伸びるので、肥料切れを起こさないように気をつけなければいけません。なお、夏期は系統により施肥方法が異なるので注意しましょう。
まず肥料が必要なのは、苗や株を購入した時、植え替えをした時です。
5月になるとハイビスカスの苗や株が、ホームセンターや園芸店などに並びます。お店に並ぶビニールポットや鉢は、運搬などの都合で、株の大きさに比べて小さいものに入れられていることが多いのが一般的です。生育が早いハイビスカスはそのままの鉢だとすぐに小さくなってしまうので、購入した苗や株はできる限り早く大きい鉢に植え替える必要があります。購入時の植え替えでは根鉢を崩さずに新しい鉢に植え替えますが、その時に緩効性の固形肥料を置き肥(*3)します。通常の植え替えも同じように行います。
植え替えでも、根鉢を崩して根をカットする植え替えをした時は、株も弱っています。そのような植え替えの時は、植え替え後2週間程度は肥料を与えず、根が養分の吸収をはじめ、新しい芽が動き出してから置き肥します。
また、冬の間でも肥料が必要な時があります。最低気温が12℃を下回るとハイビスカスは休眠期に入りますので、11月ごろには鉢植えのハイビスカスを室内に移動させる必要があります。通常、休眠中のハイビスカスには肥料は与えませんが、鉢を置いた室温が12℃以上を保てる環境だとハイビスカスは休眠せずに冬でも花を咲かせることがあります。その場合は、液体肥料を与えると開花を続けます。
*3)置き肥(おきごえ)は追肥の一種で、効き目が緩やかな固形肥料を土の上に置く施し方です。
季節ごとのハイビスカスへの肥料の与え方が知りたい
ハイビスカスは一般的な植物よりも肥料が好きな植物です。特に花がよく咲いている株は、より肥料が必要なので、緩効性の固形肥料と速効性の液体肥料をダブルで与えます。季節によって肥料の与え方も変わりますので注意しましょう。
生育期の肥料
ハイビスカスは5〜10月が生育期になります。新芽が伸びて花が咲くこの時期は、肥料が切れないようにすることが大切です。有機質肥料である油かすに骨粉の混ざった固形肥料か緩効性の化成肥料を、鉢の土の上に置き肥します。置き肥の量は、肥料のパッケージなどに書かれている規定の量よりやや多めに施します。肥料によって効き目が持続する期間が異なります。効き目が切れる頃に、次の置き肥を施しましょう。
さらに開花が進んでいるハイビスカスは、置き肥だけでは栄養分が不足しています。リン酸分の割合が多めの液体肥料を、規定の希釈量よりもやや薄めにして1週間〜10日に1回与えるようにしてください。液体肥料には、原液をそのまま使うタイプと水で薄めて使うタイプがあります。水で薄めるタイプの場合は、ジョウロなどに入れた水の量にあわせて原液をはかり、水の中によく混ぜて使います。原液をはかる時は付属のキャップなどを使うとよいでしょう。肥料を入れた水を、水やりの要領で鉢の土に直接かけます。鉢底の穴から水が少し流れ出るくらい与えましょう。
休眠期の肥料
基本的に生育を停止している11〜4月頃までは肥料を与える必要はありません。ただし、冬でも室内で開花を続けているハイビスカスや、4月頃気温が上がりはじめ新芽が動き出したハイビスカスには、液体肥料を与えるとよいでしょう。リン酸分の割合が多めの液体肥料を1週間〜10日に1回与えるようにしてください。肥料の希釈はパッケージなどに書かれている規定の量にします。
ハイビスカスに肥料を与えるときの注意点は?
5〜10月の生育期には、緩効性肥料の置き肥と速効性のある液体肥料をダブルで与えますが、7〜8月の真夏は少し様子を見る必要があります。ハイビスカスは夏の花のイメージが強いですが、実は日本のムシムシした気温が高すぎる夏は苦手です。オールドタイプ、コーラルタイプのハイビスカスで夏日が続いて少し元気がないようなときは、液体肥料を水やりのように与えるのではく、葉に散布する形で与えるとよいでしょう。
肥料を葉に散布する時は、霧吹きに入れた水の量にあわせて原液をはかり、水とよく混ぜます。そのまま葉に散布します。葉のおもて側、裏側、まんべんなく散布しましょう。早朝や夕方など、気温が少し下がっているときに行うのがポイントです。また、ハイビスカスの鉢自体を日陰など涼しい場所に移動させることも大切です。
ハワイアンタイプ(ニュータイプ)のハイビスカスは、他のタイプよりもさらに高温多湿の夏が苦手です。猛暑が続いて株が弱っている時は、液体肥料は控えます。
肥料には、「窒素(N)」「リン酸(P)」「カリ(K)」の三大要素があります。ハイビスカスの場合は、この3つが同量の割合で配合されているものがおすすめです。ただし、株をあまり大きくしたくないけれど花を咲かせたいという時には、リン酸の割合が多い肥料をあげるとよいでしょう。葉は元気よく繁っているけれど花がなかなか咲かないという場合は、窒素成分が多い可能性があります。窒素とリン酸が同量の肥料に変えましょう。
弱ったハイビスカスに肥料をあげすぎると肥料やけすることも
肥料が大好きなハイビスカスも、猛暑のときは株全体の元気がなくなってきます。株が弱っている時にそれまでと同じように肥料を与えていると、肥料やけを起こしてしまうこともあります。肥料やけとは、過剰な肥料のせいで根の機能が弱まり、栄養を吸収できないようにしてしまうことです。栄養が吸収できないのですから、ひどくなればそのまま枯れてしまいます。葉の色が黒っぽくなってきたり、全体がしおれたようになってきたりしたら、肥料やけの可能性があります。
夏の間は肥料を切らさず、なおかつあげすぎないように注意しなければなりません。そのためには、毎日、ハイビスカスの様子を観察することが大切です。夏は風通しのよい場所に置き、30℃を超える真夏は明るい日陰に移動させましょう。照り返しの高温も避けて、風通しのよい場所に置くようにします。ハワイアンタイプのものは、もともと高温多湿に弱いので、梅雨が明けたら午前中以外は日陰に置きましょう。
ハイビスカスはたくさんの肥料を吸収して美しい花を咲かせます。生育期の肥料切れ、株が弱っている時の肥料のやりすぎに注意して、トロピカルな花を楽しみましょう。
Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・ブライズヘッド
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