ぷっくりとした葉がかわいらしい多肉植物。種類によっては、季節になると花が咲いたり、きれいに紅葉したりもします。園芸店のほか、花屋さんでも扱われ、とても身近な植物です。育ててみたいけど、枯らしてしまいそうで、と二の足を踏んでいるあなたへ。初心者でも、いきいきと元気に育てられるコツを、千葉・浦安の多肉植物のアトリエ『TOKIIRO』さんに教えてもらいました。いちばんのポイントは太陽! ユニークで、ちょっと不思議な多肉植物の世界を覗いてみましょう。

Print Friendly, PDF & Email

多肉植物を育てる前に知っておきたいこと

ぷっくりと肉厚の葉がかわいらしい多肉植物。インテリア雑誌などで、部屋に飾られているのを見て、興味をもった人も多いことでしょう。観葉植物と同じ感覚で室内に飾っていたら、STOP! 大急ぎで、外へ出しましょう!

なぜかというと、生まれた環境に理由があります。多肉植物は中南米や南アフリカの砂漠や、海岸などの乾燥地帯生まれの植物。めったに雨が降らず、強い日差しがじりじりと照りつける、そんな環境を想像してみましょう。今、私たちがそのユニークな容姿に惹かれる多肉植物は、そんななかでも自らを生かすため、水を蓄えられる体へと進化させました。ぷっくりした葉は、いわば貯水タンク。英語では「Succulent Plants(水分が多い植物)」と呼ばれています。太陽光を浴びることで、成長するためのエネルギーが作られ、すくすくと育っていくのが多肉植物です。多肉植物は太陽が大好き。まず、これを知っておきましょう。

種類を知ると、選び方がわかります

多肉植物と聞くと、どんなタイプを想像しますか? 肉厚の葉をバラのように重ねる種類? 昔からお馴染みのサボテンも、フラワーアレンジの花材としても出回るエアプランツも、じつは多肉植物なんです。メジャーなところでは、以下の5つの系統に分類されます。ベンケイソウ科やサボテン科などは、その科の多くの種が多肉化したものもある一方、科のなかの一部だけが多肉植物と呼ばれるものもあります。好む環境はそれぞれ。買った苗の種類を知っておけば、最適な方法で育てられるので、かならず名前をチェックしてから栽培を。

なお、寄せ植えにするときは、同じ仲間同士で! 必要とする水の量や光の当て方が似ているため、初心者でもうまく育てられます。

ベンケイソウ科
多肉植物と聞いて、多くの人がいちばんイメージするのはこのグループでしょうか。水分を蓄えられるよう、葉や茎はぷっくりと肉厚です。茎が短く、低木のようになったり、葉がロゼット状(八重咲きのバラのような形)になったりと形はさまざま。屋外の日差しのもとで、すくすくと成長。春から夏、小さな花を咲かせる種類もあります。

手前左から時計回りに、セダム属 ゴールデンカーペット、エケベリア属 シャビアナ、カランコエ属 月兎耳、クラッスラ属 サルメントーサ、グラプトべリア属 白牡丹、パキフィツム属 月美人

サボテン科
一般的に、茎は筒形や球形。針状や長い毛のように見える部分は、じつは葉が進化したもの。動物による食害から身を守り、表面積を増やすことで、空気中の水分を露として凝結させるなど、トゲや毛には、多様な役割があります。メキシコを中心とした南北アメリカに自生。上手に育てると、春から夏、美しい花が咲きます。

左:ノトカクタス属 小町 右:レブチア属 花笠丸

キク科
キク科と聞くと、キクの花を連想して、驚きでしょうか。世界では約950属2万種の植物が認められており、もっとも進化し、多種多様に分かれているのがキク科。アレンジでもおなじみのグリーンネックレスをはじめ、枝垂れて育つ多肉植物も多く含まれます。ほかの科の多肉植物との違いは水をより多く必要とすること。グリーンネックレスを枯らしてしまったら、それは水不足が原因かもしれません。水やりを忘れないよう、水場の近くで管理を。

すべてセネシオ属 手前左:銀月 手前右:グリーンネックレス 斑入り 奥:万宝

ちなみに、このキク科には、ヒヤシンスのように水耕栽培できる多肉植物もあります↓。驚きですね!

オトンナ属 ルビーネックレス

パイナップル科
別名はアナナス科。木や岩などに着生するエアプランツや葉の根本に水分を蓄えるタンク系植物など、個性派がそろいます。薄い産毛で覆われているのが特徴で、自然界ではその産毛で水分をキャッチして成長します。なお、土に植えずに育てられるエアプランツは空気中の水分だけで生きていけると誤解されがちですが、育てる場合は霧吹きなどで定期的な水やりが必要。エアプランツには銀葉系と緑葉系の2種があります。

左:チランジア属 コットンキャンディ 右:チランジア属 ウスネオイデス

ツルボラン科
絶大な人気を集めるのはハオルチアです。見たことがありますよね? ぷっくりと膨らんだ半透明の葉に水分と栄養分を蓄えながら、きれいなロゼット形に。そして、もともとは岩陰や大木の下で生息していた植物。暗い場所でも、わずかに差し込む光をも取り込もうと、葉先には「窓」と呼ばれる半透明の部分を作り出しました。そのため、ハオルチアだけは室内の明るい場所でも育てられます。インドアで、仲良くしたい人向き。
*ハオルチアの育て方はこちらをどうぞ。⇒「ハオルチアの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します

左:ハオルチア属 ウンブラティコーラ 右:ハオルチア属 マスカット

多肉植物を育てるときに必要な準備は?

さあ、上手に育てるためのノウハウをご紹介していきましょう。ここで触れるのは多肉植物全般で共通するベーシックな準備です。↓の写真でひとつずつ確認しながら、読み進んでください。

準備1 多肉植物の苗
まず、園芸店やホームセンターなどで、好きな苗を購入しましょう(元気に育つ苗の見極めポイントは、あとでご紹介)。寄せ植えする場合は同じ科の植物でそろえると、水やりのタイミングなどが同じため、育てやすくなります。

準備2 多肉植物のおうち(鉢)
鉢は、以下の3か条を満たすものを選んでください。

・底に穴が空いた鉢
・素焼き鉢なら、通気性が抜群
・根を張れる深さがあること

なお、エケベリアやセダムなどのベンケイソウ科の多肉植物は根を張るスピードが遅いため、浅めの器でもOKです。

準備3 土
園芸店などで販売されている多肉植物用の土を使います。大切なのは「乾いた土」であること。土が濡れていると、バクテリアが繁殖しやすく、切れた根などから入り込む危険性があるからです。

準備4 植えるときのツール

・スコップ
・ピンセット
・細めの木製マドラー
・ハサミ
・鉢底ネット

木製マドラーは、器の中に土を隙間なく詰め込むために使用。器の底に敷き、害虫や土の流出を防ぐための鉢底ネットは、不要になった網戸の網でも代用できます。やわらかいので、丸底の鉢でもぴったりとフィットするスグレモノです。根を切るためのハサミは使用する前に、熱湯をかけて消毒しておきましょう。

適した土作りが、育てるコツの第一歩

多肉植物を育てるとき、栽培の専門家は植物ごとに、植生に合った土を作っています。でも、初めての栽培では、土作りの段階で、くじけてしまいそうですね。「多肉植物用」とうたわれている市販の土でいいんです。基本的には、なるべく粒のこまかい土を選ぶことが大切ですが、多肉植物の種類によって、以下のように使い分けます。

・目がこまかい土(↓の写真の上)は保水性が高いので、水を好むキク科に。
・目が中くらいの土(下)は、ベンケイソウ科。
・目が粗い土(中央)はサボテン科のほか、ハオルチアなどの根がしっかりしたものに向いています。

多肉植物の育て方にはポイントがあります

丈夫に、かわいく育てるには、苗選びが肝心なポイントです。病気知らずで、すくすく育つ苗の見極め法をきちんと知ったうえで、植え付けの仕方へ進みましょう。

上手な苗の選び方

多肉植物の苗を購入する際は、以下の4点をしっかり確認してください。

・葉や枝などのグリーンの色がはっきりしている
・表面に粉や毛のある種類は、粉と毛がしっかりある
・葉がみっしりと詰まっている(徒長していない)
・新芽が、きれいな緑色

葉や枝の緑の色は光合成がうまくできて、元気に育っているサインです。葉に粉が吹いていたり、細かい毛で覆われたりしているタイプは、その状態になっていないと日照不足の可能性が。なお、秋に紅葉するものや、もともとシルバーやえんじ色の植物もあるので、ネットなどで本来の色を確認してから購入しましょう。

同様に、茎がひょろひょろと細長く伸びているものも日当たりの悪い場所で育っていた証拠です。この状態を「徒長(とちょう)」といいます。全体に栄養不足に陥っているので、植えてもうまく育っていかない場合もありそうです。ただ、そんな苗でも切り詰めてあげると、切ったところから新芽が出て、バランスのよいフォルムへと軌道修正できます。切り位置は下から4センチくらいを目安に。

右は徒長しているNG苗。太陽がきちんと当たっていると左のように、葉の間が詰まった状態になります。この多肉植物はベンケイソウ科 グラプトペタルム属のブロンズ姫。

また、新芽が黒ずんでいると病気にかかっているかもしれません。新芽はカイガラムシなどの好物(害虫と病気については、あとで説明します)。虫に食われていないか、じっくり観察してから選びましょう。

植え替え時期と方法

多肉植物とひと言でいっても、成長期ごとに、じつは3つのグループに分類されます。それは「春秋型」と「夏型」、「冬型」。もともと自生していた場所の気候による違いです。ポット苗から好きな鉢に植え替えるときや、大きく育ってからの植え替えは「成長期の始めの頃」に行います。始めの頃なら、これから育っていこうとする生気がみなぎる時期なので、植え替え時に根を切っても、自力で回復し、また伸びていきます。

植え替えの目安は
・春秋型 →4~5月(エケベリア、ハオルチア、一部のクラッスラなど)
・夏型 →4~5月(アガベ、一部のクラッスラなど)
・冬型 →9~11月(コノフィツム、リトーブス、一部のクラッスラなど)

買った苗や育てたい多肉の名前を検索すると、何型かわかりますよ。

では、好きな鉢に植えていきましょう!

植え替えの手順は9ステップ

ここで使ったのはエケベリア属 すみれ牡丹。バラのように丸く重なった葉は、紅葉するとパープルに近い色に変わる品種です。

Step1
まず、苗が入っているポットの下のほうをもんで、土をやわらかくほぐしましょう。

Step2
苗をやさしくつかみ、そっと引っ張り出します。根がしっかり張っている場合は、ピンセットを使い、根を傷つけないように引き出します。横にして出すと葉の間に土が入り込んでしまうので、上へ向けて出すこと。

Step3
根についている古い土は、根を軽くもんで落とします。エケベリアの根はとても細いので、やさしくもんで!

Step4
小さな苗でも、こんなに長く根が伸びています。植え付け時に最適な長さは、器に入れたときに、底につかない程度。長かったら、ハサミで根をカットしてOKです。

Step5
丸く切ったネットを鉢底に敷きます。目がこまかい土の場合は、網戸用の網を使うと、土の流出を防げて便利!

Step6
土を入れましょう。まずは1㎝ほど浅く。

Step7
苗を片手でそっと覆い、鉢を回しながら、脇から少しずつ土を入れます。このとき、苗を持った手は同じ高さでキープ。

Step8
ふんわりと、鉢の8分めまで土を入れたら、鉢の側面を手のひらで軽く叩き、土を底へ落とし込みます。植えたい植物が中に落ち込まないよう、あいた手で植物を押さえながら叩いて。

Step9
ここでマドラーの登場です。マドラーを土の中に差し込み、上下にザクザクと突いていくと、土の中の隙間が解消されます。根を傷つけないように、鉢の縁に沿って動かすこと。土が詰まったら、また土を加え、マドラーで突いて完成です。根が露出していると弱ってしまうので、根が隠れているか、しっかり確認してください。植え替えが完了してからも、マドラーは大事なチェックに使うので、保管しておきましょう。

多肉植物と仲よくなる日々のお手入れ

最初に説明したように、ハオルチアなどの特定の種類を除き、多肉植物は日光浴が大好きな植物です。管理する場所は室内ではなく、屋外! 葉焼けを起こしやすい真夏以外は、基本的には直射日光が当たり、風通しのよい場所を多肉植物の居場所にしましょう。

光が不足すると、茎がひょろひょろと伸び、徒長の原因に。

通気性が悪いと、根腐れやカビが発生するなど多肉植物の健康を害する諸問題が発生します。

長雨のシーズンには、軒下で管理し、晴れ間に日光の下に移動して、しっかりと太陽に当てましょう。

そして、冬の季節。寒さが苦手ではない多肉植物も、凍ってしまうと枯れてしまいます。気温が3℃以下になる日には、室内の日の当たる窓辺に避難させてください。屋外に出しっぱなしにしておくと、葉の中の水分が凍結し、大事に育てた多肉植物がダメになってしまいますよ!

水やりのタイミングは「水がほしそうなとき」
そもそも、植物にはなぜ、光と水が必要なのでしょうか? そう、理科で学びましたよね。植物が自分自身で生きるための栄養を作るための働き=光合成のため。

光合成が行われるのは、いつ? それは葉の中にある葉緑体に光が当たっているとき。導管(根から通っている水を運ぶ管)から運ばれた「水」と、葉の裏にある気孔から取り入れた「二酸化炭素」を材料にして、ブドウ糖が生成されます。このブドウ糖こそが、新しい芽を育むためのエネルギー源。水をあげるのも光合成のためなんです。

水やりには、もうひとつの理由があります。土の中に発生したバクテリアを洗い流すため。ただし、蒸し暑い夏場の頻繁な水やりは、バクテリア繁殖の原因に! よかれと思ってあげた水も裏目に出て、株が弱ってしまうんです。

植え始めの頃の水やりは以下のようにします。

① 水やりは植えてから1週間後。根が安定しはじめる頃に、葉の上からかけて、鉢底から水がざーっと出るまで水をかけます。葉に水をかけると、二酸化炭素の取り込み口である気孔の目詰まりもリセットできます。

② さらに1週間たったところで、植え替えに使ったマドラーで環境チェック!
→刺して、濡れた土がついてきたら、×。太陽の光がたっぷり当たり、風通しがよい場所へ移動します。風がよく通る場所では、バクテリアも発生しにくく。
→マドラーが濡れなかったら、適した置き場所です。さらに1週間待って、水をやります。

以降、水やりの頻度は、「2週間おき」を目安に。多湿の日本でうまく育てるコツです。ただし、乾燥状態がよいとは言え、それ以上、水を与えないでいると光合成ができず、害虫も寄ってきます。なお、「2週間おき」というのは、あくまでも目安です。多肉植物は生き物なのでシステマティックに管理するのではなく、様子を見ながら適時、水をあげてください。

種類の生育期ごとに水やりや管理方法などが紹介されていることがありますが、日本の過去の気候データに基づいたものです。気候が毎年、毎シーズン変わっていく現代では参考程度にし、日々の多肉植物の様子を観察しながら、置き場所(方位、日照時間や光量、温度、風向き、湿度)に適応したタイミングを見つけていきたいものです。

立派に育った多肉植物には植え替えが必要です

こうして、大事に育てていった多肉植物は、いつかは、おうち(鉢)の住み替えが必要な時期がやってきます。何年も同じ鉢で植えたままにしておくと、支障をきたすからです。それは「根詰まり」。伸びた根が鉢の中いっぱいに回り、ギュウギュウ詰めに…。鉢の中に根が伸びる余地はありません。また、年月がたつと、最初に入れた土もこまかく砕けて固まっていきます。そうなると、がちがちに固まった根とのダブルパンチで、水はけがとても悪くなります。鉢の中がそのような状態では、カサカサに枯れたり、いらぬ病原菌も招きかねません。特に、サボテン科とキク科は根が張りやすいので、早めの植え替えが必要です。

お引っ越しのタイミングはいつでしょう?

鉢から取り出さなくても、多肉植物がサインを出してくれます。
・鉢底の穴から根がはみ出している。
・下葉が落ち、その茎から根が出ている状態。この根は「気根」といいます。
・下葉が枯れている。

これらのサインがなくても、2年以上、同じ鉢に植えていたら、根は鉢の中いっぱいに回っていると考えてよいでしょう。ひとまわり大きな鉢にお引っ越しを!

植え替え時期と方法は、「3.多肉植物を育てるときに必要な準備は?」を参照してください。ただ、株が大きく育ってからの植え替えには、最初に大事な作業があります。それは、「根鉢をほぐす」作業。植えてから数年たった多肉植物は、鉢から引き抜くと、根が回りきって、鉢の形になって出てきます。

・固くなった根は必ず、ほぐしましょう。
・根があまりに長くなっていたら、切り詰めます。5㎝ほどまでなら、そのあとも元気に成長します。

根詰まりを起こしていた多肉植物には、静養が必要です。植え替え後は、2週間ほど日陰に置き、様子を見ながらお世話をしましょう。

多肉植物の剪定を行うときは、時期に注意しましょう

伸びた木の枝などを切ることを「剪定」といいます。形を整えるほか、風通しも日当たりもよくするための植物栽培には大事な作業です。

多肉植物も種類によっては、大きく育つと剪定が必要な場合があります。葉が込み入ってきたら、ハサミで葉をカット。風通しがよくなることで、害虫も寄せつけなくなります。念のため、ハサミは熱湯に浸し、殺菌してから使いましょう。

剪定に最適な時期は、光合成が盛んな10-30℃の気温の頃です。

知りたい! 多肉植物の増やし方

剪定して切った葉や枝は捨てないで! 枯れていたり、病気にかかっていたりしないものなら、増やして楽しめます。株分けや種から増やす方法もありますが、ここで紹介するふたつの方法なら、初心者でもお試し感覚でできます。

挿し葉で増やす

切り取った葉だけで増やす方法です。向いているのはエケベリア。手順は次のとおりふたつだけです。

① 切り取った葉を乾燥した土の上に並べ、日陰に置きます。
② 切り口から根が出てきたら、根に薄く土をかぶせ、日なたに移動して水やりを。

うまく定着すると芽が出て、そのあとは、時間をかけてじっくりとひとつの株に育てあげていきます。

ただし、水分をたっぷり蓄える多肉植物とはいえ、最初は1枚の葉でしかないので、いきなり強い日差しの下に置くと、干からびてしまいます。根が出るまでは、風通しがよく、半日陰の場所で管理を。また、根が出る前の葉の切り口は雑菌が入りやすい状態にあります。腐らせないために、雑菌が繁殖しやすい夏場は避け、春か秋に試してみましょう。

挿し芽で増やす

茎が立ち上がる木立性のセダムやクラッスラに適しているのは「挿し芽」。徒長して、バランスが悪くなった多肉植物を剪定したついでに、挿し芽にしてみませんか?

手順は簡単! 剪定した茎から下葉を取り除き、根が出てから土に挿すだけです。こちらも風通しのよい半日陰の場所に置き、発根するまで待ちます。

なお、徒長した多肉植物の剪定は、光に当てて、健康にしてから行います。

毎日の観察が、多肉植物の病気や害虫を防ぐコツです

多肉植物は病気になりにくく、丈夫だからといわれて育てていたのに、枯らしてしまった…。そんな経験をもつ人は意外に多いようです。水と日照などの日頃のメンテナンスがうまくなかったことのほかに、病気や害虫が悪さをしていたのが原因かもしれません。毎日、今日はどんな具合かと気に掛けてあげませんか? 多肉植物が発するSOSを早くキャッチするために。ここでは、多肉植物の病気と、稀につく害虫について説明します。

育てるときに注意したい病気

多肉植物がかかる病気で代表的なのは以下です。

うどん粉病
葉の表面に、白い粉のような斑点が現れます。白い粉の正体はカビ! 多肉植物のみならず、野菜や草花、樹木などの多くの植物がかかる病気です。株全体に広がると生気が失われ、やがて枯れることも。そのまま放置しておくと、まわりの植物にも飛散します。発生しやすい時期は、初夏と秋。晴れと雨の日が交互に繰り返す頃には要注意です。

対策→極端な乾燥は、うどん粉病を発症しやすくします。水と日照のバランスを上手にコントロールすることが大切ですが、もしもかかってしまったら、専用の薬を散布しましょう。それでも効果が表れない場合は、病変した部分をカットするか、株ごと捨てて、周囲の植物へのまん延をストップさせます。

育てるときに注意したい害虫

害虫被害に遭って、株がダメになってしまわぬよう、これらの害虫にも注意を払いましょう。

アブラムシ
新芽やつぼみに群生するアブラムシは植物の汁を吸い、生育を阻害。あっという間に増え、そのまま放置しておくと、多肉植物は枯れてしまいます。アブラムシはウィルス病をも媒介。

◆駆除方法◆
流水で流れ落とすか、ガムテープで捕獲を。そのあと、薬剤を全体に散布します。

カイガラムシ
名前のとおりに白い貝殻に似た固い虫だったり、茶色い綿毛のようなものだったりと、さまざまな種類があります。体長は1~3㎜。多肉植物のなかではサボテンに。寄生すると植物の栄養分を吸い取るほか、排せつ物がさまざまな病気の原因になります。

◆駆除方法◆
薬剤が効かない場合もあるので、先の尖ったヘラや爪楊枝で、葉を傷つけないように注意しながら、こそげ取ります。

ワタムシ
体全体が糸のようなもので覆われる体長1~2㎜程度の害虫。サボテンをはじめ、多肉植物全般につき、成長を妨害する虫として知られます。

◆駆除方法◆
殺虫剤は効きにくいので、ピンセットでひとつずつ取り除いて。

ネジラミ
白い綿のようなもので覆われた、体長1㎜程度の害虫。こちらもサボテンをはじめとした多肉植物全体の天敵で、水やりを控える季節に寄生し、養分を吸い取り、枯らしてしまいます。

◆駆除方法◆
水で洗い流すか、水やりのときに専用の薬剤を希釈して与える。

アカダニ
ダニの一種。サボテンでよくある虫の被害はこれ。食べられた箇所は、黄土色のさび色に変色します。体長0.5㎜程度の赤い色をした虫です。

◆駆除方法◆
水で洗い流すか、水やりのときに専用の薬剤を希釈して与えます。

ハダニ
アカダニと同じくらいの大きさで、吸汁された部分は白や黄色っぽく色が抜けてしまう特徴があります。

◆駆除方法◆
こちらも、水で洗い流すか、水やりのときに専用の薬剤を希釈して与えましょう。

ナメクジ
日中は鉢の裏などの暗く、ジメジメした場所に潜み、夜になると多肉植物を食い荒らします。通った跡は白く、光るので、すぐわかります。

◆駆除方法◆
鉢の裏をチェックして、見つけたら、取り除きます。

害虫の被害に遭って、腐ってしまった部分は切り取るしかありませんが、対処の仕方でまた、いきいきと再生する可能性もあります。駆除をしたら、管理の仕方をもういちど、見直してみましょう。

病気や害虫を寄せ付けない管理法で全般に言えることは、以下の5か条です。
・風通しのよい場所で育てること。
・暗い場所や狭い場所も害虫発生の原因になります。
・乾燥のしすぎは×。
・ほかの草花からうつる可能性もあるので、多肉植物だけで管理。
・鉢の裏側や底もチェックして、見つけたらすぐに除去。

なんだか恐ろしい名前が列挙されて、怖くなったかもしれませんが、屋外での栽培が適した多肉植物には、いつかは遭遇するかもしれない災いです。ただ、害虫にも名前があり、人や多肉植物と同じ地球の一員です。あまり大げさにならず地球と一緒に生きているんだなぁと思っていられたらいいですね。虫やバクテリアが今後、地球から消滅するわけではないので、多肉植物の進化の過程において無視することはできないはずです。

多肉植物で寄せ植え「アレンジ」しませんか?

最後に、今回、ビギナー向けに多肉植物の育て方を教えてもらった『TOKIIRO』さんが作った寄せ植えをご紹介します。さまざまな多肉植物で楽しむ「寄せ植えアレンジ」。同じ科の植物同士で植えると、初心者でも育てやすいことは前にも触れましたよね。成長したときの姿も念頭に置きながら、組み合わせるのがコツです。

多肉植物は形状で分けると以下の4つのグループに分けられます。

上へ伸びるタイプ
小さな寄せ植えでも高さが出て、ポイントに。上へ伸びるにつれ、下葉を落としてユニークな形になるものもあります。種類はクラッスラやエケベリア、アエオニウムなど。

横に広がるタイプ
葉が小さく、土を覆うようにして殖えます。セダム属が多く、寄せ植えのすき間を埋めるときなどにも便利な多肉。

その場で育つタイプ
バラの花のような形に、葉が広がるエケベリア。長く伸びたりはしませんが、植えたその場所で葉を増やし、大きく生長します。

垂れるタイプ
キク科のグリーンネックレスやルビーネックレスのほか、本来は上に生長するクラッスラなどでも、長い間、育てていると垂れてきます。

これらをうまく組み合わせて、鉢の中に自分だけの小さな世界を作ってみましょう。植え方の手順は1種類の苗を植えるときと同じ。複数の苗なので、手の中で束ねてから植えるとまとまりやすくなります。好きな花で花束を作るつもりで、お気に入りのひと鉢を。

上へ伸びるタイプには、低い多肉を合わせて

使った品種:銀揃(ぎんぞろえ)、月の王子、白雪ミセバヤ、ドラゴンズブラッド、秋麗銀揃という「上へ伸びるタイプ」の多肉植物をメインにしています。ぷっくりとした三日月形の葉には、うっすらと産毛が。株元には、同じような葉形で、高さのない植物を迎え、主役の銀揃を堂々とした大木に見せています。

花をアレンジするように

使った品種:薄氷(ハクヒョウ)、デビー、リトルミッシーなど

フラワーアレンジに似ていますね。メインの花にはバラのような形のエケベリアの薄氷とえんじ色のデビー。小さな葉をもつ多肉植物で間を取り持ちながら、小さな鉢のなかにもたくさんの表情を盛り込んでいます。

枝垂れるラインを生かすには背の高い鉢で

使った品種:月影、トリカラー、パープルヘイズ、グリーンネックレス

丸い粒(葉)をつけて長く伸びるのは「垂れるタイプ」の代表格、グリーンネックレス。背の高い鉢のほか、吊り下げるハンギングタイプの鉢にもぴったりです。メインに迎えたのはエケベリアの月影。ちょうどパープルヘイズがかわいらしい小花を咲かせる時期に撮影しました。

多肉植物がもっと好きになりましたか? まずは、出会った植物をいつくしみながら育てて、いつか寄せ植えにも挑戦してみましょう。多肉植物の寄せ植えアレンジは、こちらの記事も併せてどうぞ。「多肉植物のおしゃれなアレンジ・飾り方、アイデアまとめ10選

Credit

記事協力


近藤義展・近藤友美
『TOKIIRO(ときいろ)』オーナー
千葉県浦安市にアトリエを構え、多肉植物に特化したアレンジ(寄せ植え)を提案するユニット。春は花が咲き、冬には紅葉し、季(とき)の色で魅了する多肉植物。過酷な自然環境のなか進化した姿は、今、考えるべき多くの示唆を含むという。器を生かし、独自のストーリーを盛り込みながら制作するアレンジには数多くのファンが。活動はグリーンデザインやガーデンデザイン、ワークショップにと多岐に渡り、台湾やニューヨークでも展示とワークショップを開催。著書は『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社刊)をはじめ多数。
撮影・砺波周平
http://www.tokiiro.com

撮影と構成と文・鈴木清子

Print Friendly, PDF & Email