生の葉や茎に独特の香りがあるパクチー。香菜(シャンツァイ・コウサイ)、コリアンダーの名でも知られていますね。タイやベトナム、中国などでは料理に欠かせないハーブで、葉や茎だけでなく、花や種、根も利用されます。乾燥させた種はオレンジのような香りのあるスパイスで、カレーなどの煮込み料理に使われます。そんなパクチーの手軽な増やし方を紹介します。

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1知っておきたいパクチー(コリアンダー)の基本情報

パクチーはセリ科の一年草。このため、株を育てて種で増やしていきます。株を育てるためにはまずはパクチーが好む性質を確認しましょう。パクチーは20~25℃でよく育ち、日当たりのよい場所と水はけのよい土を好み、真夏の暑さを嫌います。初夏に種をまけば、およそ3~4か月かけて種を作ります。

パクチーの基本データ
学名:Coriandrum sativum L.
科名:セリ科
属名:コエンドロ属
原産地:地中海沿岸、中東
和名:コエンドロ
英名:Coriander
開花期:5~11月
花色:白
発芽温度:20℃前後
生育適温:20~25℃

生育中は株の中心から葉が次々と出て株が大きくなります。ある程度の大きさになったら花を付けるための茎が伸びて、先端に白色の小さな花をたくさん咲かせます。

パクチー(コリアンダー)を増やすために必要な準備

プランターで育てる準備

植物の生育はプランターの大きさで決まります。栽培する株が少ないほどプランターは小さくなり、株が多ければプランターは大きくなります。2~4株育てるなら容量5L以上、たくさん育てるなら10L以上のものを選びましょう。プランターには、最も安価で軽く使いやすいプラスチック製、見た目と古びていくよさのある素焼き、形や色のバリエーションに富んだグラスファイバー製などがあります。作業性を重視するのか見た目の雰囲気を大切にするのか、好みに合わせて選びましょう。

家庭菜園で育てる準備

家庭菜園ではパクチーが好む日当たりと水はけのよい場所を確保しておきます。パクチーは利用部位によって栽培期間が異なりますが、種を収穫するなら3~4か月育てるので、菜園を使う期間をあらかじめ計画しておきます。

増やすのに最適な時期は、地域によって異なります

温暖地と寒冷地で違う栽培時期の目安

パクチーは種で増やします。種を収穫するためには、まずは株を育てます。栽培は種の袋に書かれた時期を必ず守りましょう。開始時期が早すぎたり遅すぎたりして、生育に適さない温度になるとその後の生育も悪くなります。もしも種の袋に開始時期が書いていなかった場合は、関東以西の温暖地では、真夏を除いた春から初冬にかけて、寒冷地では初夏から秋を目安に栽培を始めます。

適温になるようにデータを調べる

どの地域でも栽培適温の20~25℃に合わせることが必要です。あらかじめ栽培する地域の気象データをもとに栽培適温になる時期を調べておきましょう。気象データは気象庁のホームページから調べることができます。その年の気温が不安定なこともあるので、栽培を始める前に週間天気予報もチェックしておきましょう。

パクチー(コリアンダー)を増やす方法が知りたい

種から確実に増やす

パクチーは一年草で移植が苦手なため、株分けでは失敗しやすくなります。挿し木(芽)で増やすこともできますが、効率よく確実に増やすためには種で増やすほうが簡単です。パクチーは3~4か月育てれば種ができます。このため、プランターでも家庭菜園でもどちらの場合も種まきから栽培を開始します。

栽培の流れ

まずは土作りからはじめて、栽培に適した時期に種をまいて株を育てます。株が育つと中心から花を付ける茎が伸びて花を咲かせます。その後、実が付いて茶色くなってから刈り取って種を収穫します。

パクチー(コリアンダー)を増やすための具体的な手順

1.土作り

プランターではよい培養土を選ぶ

栽培は土作りから始まりますが、プランターで育てるなら土作りの必要はありません。野菜やハーブ用の培養土を準備して、種まきの直前にプランターに土を入れるだけでOK。ただし、培養土ならどれも同じとは限りません。用土の割合や質、肥料分の量などそれぞれ異なるため、生育に差が出ることもあります。そんなときは袋の表示を見て、原料やpH などを確認して良質なものを選びます。一般に用土の値段と生育のよさは比例しています。プランターの底がメッシュ状のものは必要ありませんが、穴が少ないものは鉢底ネットを敷いて鉢底石を底が見えなくなるくらい入れて水はけをよくします。

家庭菜園での土作りは?

家庭菜園では種まきや植え付けの2週間前までにpH6.0~6.5になるように苦土石灰をまいて調整します(通常は、100g/㎡程度散布)。さらに1週間前までに腐葉土や堆肥を2~3kg/㎡、化成肥料を100g/㎡まいて土をよく耕しておきます。苦土石灰を堆肥などと同じ時期にまくと、種まき・植え付けまでに酸性を矯正する時間が足りなくなることがあるので注意しましょう。

2.種まき・植え付け

土に直接まく

菜園やプランターに直接まく場合は株と株の間、またはほかの植物との距離が20~30cmになるようにあらかじめ育てる場所を決めておきます。株は密に育てたほうが元気に育つので、1か所につき3~4つの穴を1~2cm間隔にあけて種をまきます。穴の深さは種の大きさの2~3倍程度なので、1cmほどの深さにします。種まき後は、土をかけ、手のひらで土を押さえて、たっぷりと水やりをしましょう。

ポットにまいて植え付ける

ポット(ポリポット)やセルトレイもまき方はほとんど同じです。どちらも種まき用の肥料分の少ない培養土を容器に入れ、ポットでは3~4粒、セルトレイでは1粒ずつ種をまきます。ポットの大きさは3号程度、セルトレイは作りたい苗の数によって選択します。1日に1回霧吹きなどで土を湿らせ、乾燥しないように新聞紙をかぶせ、発芽温度15℃前後になるように、昼は室内の窓際、夜は窓から離れた場所におきましょう。セルトレイの苗は本葉が3~5枚になったら、ポットの苗は本葉5~7枚になったら植え付けの適期です。

3.管理作業

水やりはプランターのみ
プランターは土の量が限られているので、土の表面が乾燥していたら、午前中に1回たっぷりと水やりをします。気温の高い時期には朝と昼過ぎの2回行います。プランターでの水やりの基本は底から水が流れ出るくらいまで行います。家庭菜園は土の量が多く、地中に水分がたくさん蓄えられているため、基本的に水やりの必要ありません。1~2週間雨がない場合など極端に乾燥しているようならジョウロでたっぷりと水やりをします。

間引いて風通しをよくする
パクチーはセリ科の仲間と同様にはじめは密に育てるとよく育ちます。ただし、葉が混み合って風通しが悪くなるようなら、1か所1~2株に間引いても構いません。間引いた株はサラダや香味野菜として利用できます。風通しが悪くなると病気の原因になるので注意しましょう。

1か月に1回追肥する

プランターで栽培する場合は、固形肥料を鉢の縁に置くか、水やり代わりに液体肥料を与えます。液体肥料はラベルをよく読んで用法用量をきちんと守りましょう。肥料の与え過ぎは株が弱る原因となります。家庭菜園では株の様子を見て、生育が悪いようなら肥料を与えます。化成肥料なら1株あたり2g程度の肥料を葉の広がりに合わせてドーナツ状にまいて土と軽く混ぜます。有機質肥料なら発酵油かすなど、すぐに効果が現れるものを選び、肥料の袋を見て適量まきます。肥料は1か月に1回程度で構いません。

4.種の収穫・保存

刈り取ったら乾燥させる

種が茶色くなってから株ごと刈り取ります。刈り取った株は新聞紙などに包み、風通しのよい日陰に置いて全体が茶色くなるまでよく乾燥させます。種は刈り取った株の先端についているので、摘み取って集めたら、ふるいなどでゴミを取り除きます。

5.種から増やすためのコツと注意点

種は紙袋に入れて冷蔵庫で保存

収穫・保存した種は翌年または当年の秋の栽培に使用します。種は低温・乾燥で発芽率が下がりにくくなるため、紙袋に入れて冷蔵庫に保管します。種を入れた袋には名前と取った年月日を書き入れておけば、ほかの採種した種との混同を防ぎ、古くなった種をまかずに済みます。

Credit

記事協力


監修/北条雅章
1976年千葉大学園芸学部卒。千葉大学環境健康フィールド科学センター特任研究員。蔬菜園芸学が専門。研究では葉菜類の無農薬栽培やイチゴの養液栽培技術開発などをテーマとしている。監修書に『野菜の上手な育て方大事典』(成美堂出版)、『NHK 趣味の園芸ビギナーズ 育てておいしいヘルシー植物』(NHK出版)、『タネのとり方もわかる! おいしい野菜づくり』(池田書店)などがある。

撮影・田中つとむ 構成と文・童夢

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