ガーデニングで植える草花を選ぶ時、ハーブを育ててみたい! と思う方も多いでしょう。ハーブは栽培する楽しみに加えて、ハーブティーとして飲んだり、お料理に加えたりと、生活にも活用できる点が最大の魅力。爽やかな香りや可愛らしいお花は、毎日の暮らしに彩りを添えてくれますよ。
今回は、ハーブを育てるメリットと育て方のポイント、初心者さんにも育てやすいおすすめのハーブを、ハーバルライフコーディネーターの堀久恵さんにご紹介いただきます。まずは気になるハーブを1鉢育てることから、はじめてみませんか?

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ハーブについての基礎知識

暮らしに役立つ植物として、ハーブは古代から人々に愛されてきました。ラテン語で「草」を意味する「ヘルバ(herba)」に由来し、食用・飲用・薬用・美容・園芸・装飾など、生活のさまざまな場面で幅広く活用されています。まずは、ハーブについての基礎知識をご紹介しますね。

ハーブとは?

ハーブとは、日々の生活に役に立つ香りのある植物の総称で、それぞれの植物によって葉や茎、つぼみ、花、根などが使われます。

また、ペッパーやターメリック、シナモンなどの「スパイス」と呼ばれるものがありますね。「ハーブとスパイスって何が違うの?」という質問もよく受けますが、実は、ハーブとスパイスの区分や定義は、国や専門家によってさまざまで、決まりはありません。ハーブとは、生活に役立つ香りのある植物の総称ですので、ハーブの中にスパイスも含まれるという考えもありますし、ハーブは花・茎・葉で、スパイスは種子・根・実と、使用する部分で分けて考える場合もあるようです。

ハーブにはどんな種類がある?

ハーブには、1万を超える種類があります。

代表的なハーブには、ミント、バジル、ラベンダー、ローズマリー、パセリ、マジョラム、パクチー、ローズゼラニウム、セージ、レモングラス等があります。また、ドクダミやシソ、ショウガやワサビなど、日本人に馴染み深い植物もじつは立派なハーブなんですよ。

そして、その一つひとつの種類によって、抗菌作用・発汗作用・利尿作用など身体に有効な成分を持っているのが、ハーブの特徴。「料理」「薬用」「園芸」「クラフト」「お茶」「健康」などの用途に使用されます。このハーブの持つメリットを、日々の暮らしの中で上手く利用できると、生活の豊かさにもつながりそうですね。

ハーブを育てるメリット

ハーブは育てたら使える! という点が最大のメリット。わざわざ買うのではなく、栽培しておけば使いたいときに、使う分だけ収穫できます。またハーブは病害虫に強い種類が多いため、農薬を使用しなくても栽培可能。飲んだり食べたりと口にする機会も多いハーブですから、安心安全に使用できるのも嬉しいポイントでもあります。まだまだたくさんメリットがあるので、ご紹介しますね。

料理の幅が広がる

ハーブを使った料理

ハーブは、和食に使われる薬味と同じように、日々の料理に少し加えることで、味を引き締めてくれます。例えば、お肉を焼くときに、生のローズマリーやタイムを一枝加えるだけで、いつもと違う味と香りが楽しめて、料理上手になった気がしてしまうくらいです。

お料理に向いているハーブは、ローズマリー、タイム、セージなど。まずは1種類から試してみて、慣れてきたら、ローズマリー+タイムや、ローズマリー+セージというように複数のハーブを組み合わせ、ブレンドしてみるのもおすすめ。ブレンドとなると、相性が気になるところですが、ローズマリー、タイム、セージは、同じシソ科の植物で、相性も抜群。じつは、ハーブは組み合わせることによって、お互いの角が取れてマイルドに感じる作用があるんですよ。お料理のアレンジの幅が広がり、レシピの選択肢も増えますね。

採れたてならではの風味がある

ハーブには採れたてならではの風味がある

そんなハーブを庭の一角で育てておくと、必要なときにすぐに使えて、とても便利。

じつは、ハーブのもつ特有の香りは、空気に触れると揮発して、だんだん消えていってしまうんです。この香りはハーブにとって「命」。摘みとったらすぐ使うことで、格別な風味を楽しむことができますよ。スーパーなどで売られている乾燥させたハーブは、長期保存をするための工夫です。お庭で育てたハーブは、わざわざ乾燥させてから使う必要はありませんので、フレッシュのまま、活用するのがおすすめです。

この格別な香りは、ハーブのおいしさを左右するポイントにも。これを味わえるのは、自分で育てた人の特権! 日当たりのいい場所と、ちょっとしたコツがあれば育てられるので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

虫除け効果があるってホント?

多くのハーブには、虫が嫌う「昆虫忌避作用」があります。これは虫が嫌いな香りを発して、植物自身が自分を守るための手段です。そのため、ペパーミントやバジル、レモングラス、ローズマリー、ラベンダー、ゼラニウムなどは、栽培していても虫が付きにくい丈夫なハーブといえます。

「玄関や庭にハーブを植えると、ゴキブリや蚊などの虫を寄せ付けないってホント?」と、聞かれることがありますが、植えてあるだけで虫が室内に入ることを防ぐことは、残念ながらできません。葉や茎・花などに含まれる芳香カプセルがはじけた時に、香りが届くシステムなので、植物自身に虫がつかないようにすることはできますが、人間がこの虫除け作用を利用したいのであれば、このカプセルに触れないといけません。

というわけで、葉や花をこすってカプセルを弾けさせていれば、虫除け作用も期待できますが、植えてあるだけではそれほど効果は感じられないと思います。

ハーブを上手に育てるポイント

利用法もさまざまなハーブは、初心者さんが、「植物を育てる楽しさ」を体感するアイテムとしておすすめ。もともと、厳しい自然環境で育ってきた植物ですから、特別なお世話は必要なく、育てやすいといえます。大切なことは、環境に合った育て方をしてあげること!

まず、ハーブを上手に育てるために大切なことは、温度・日当たり・風通し・水やりです。ですが、先述した通り、ハーブと一口に言っても、1万種類以上もありますので、その種類によって好む環境が異なります。育てたいハーブに合わせて、環境を整えてあげることで、失敗のリスクもぐっと減ります。例えば、バジルは熱帯アジア原産。日本のじめじめした夏は得意ですが、寒さは苦手で、発芽生育に必要な気温は13度以上です。それ以下になると日本ではうまく育ちません。

また、ローズマリーは地中海沿岸がふるさと。湿気がなく、カラッとした気候が好きなので、水やりを控え、風通しよく管理するとうまく育ってくれます。

このように、まずは育てたいハーブの「原産地」がどこかを知ることが大事です!生まれた土地の気候に近い環境を作ってあげましょう。

ハーブを育てるうえでの注意点

もう少し詳しく、ハーブを育てるうえでの注意点をまとめます。もし、今までハーブを育ててもうまくいかなかった…という経験がある方は、この点をもう一度見直してみるとよいかもしれません。

寄せ植えをしないほうが上手く育つ?

寄せ植えをしない方が上手く育つ?

寄せ植えとは、1つの器に何種類かの植物を混植すること。さまざまなハーブも寄せ植えすることで見た目が華やかになりますよ。

上級者の方は、色々なハーブを1つにまとめて楽しんでみてください。一方、初心者の方は1つの鉢に1種類のハーブを植えて育てることからスタートするのがおすすめ。ハーブにはさまざまな種類がある故に、育て方も多種多様。それぞれに適した土や環境が違うため、はじめのうちは単独で植えるほうがよく育つでしょう。

慣れてきたら、原産地や、シソ・アブラナなどの「科」で分ける、好きな環境が似ている者同士を合わせるなどしていくと、育てやすい寄せ植えができますよ。ハーブだけでなく、一年草、多年草などお花の楽しめる苗と一緒に植えてもOKです!

環境に合ったハーブを選択する

先ほど、育てたいハーブに合わせて、環境を整えてあげることが大切というお話をしましたが、日本の気候は温帯と呼ばれ、冬と夏とでは温度差があり、降水量も多く、高温多湿である点、さらに日本の場合は、北海道から沖縄まで縦長の地形で、北海道と沖縄の気候が全く違う点にも注意が必要です。つまり、住んでいる場所によって、育ちやすいハーブ・育ちにくいハーブがあり、すべてのハーブが日本の気候に適応しているとは限らないのです。また、園芸本に書かれている情報は、関東以南の平地での栽培を基準にしている場合が多いので、お住まいの地域によっては、本に書いてある通りには育たないケースもあります。

例として、レモングラスは東南アジア原産なので、湿度や暑さに強く、九州南部や沖縄などでは育ちやすいですが、北海道では栽培に工夫が必要で、難易度が上がります。

反対に、ラベンダーは乾燥した地中海沿岸が原産地。梅雨がなく、じめじめしていない北海道では育ちやすいですが、過湿に弱く、特に日本の梅雨・長雨は苦手なので、他の地域では栽培が難しくなります。

というわけで、住んでいる土地の温度や気候に合ったハーブを選べば、失敗もぐんと減るはずです。「欲しい」という気持ちだけで選ぶのではなく、欲しいハーブは、自分の住まいに合っているかどうか、一度チェックをしてみてくださいね。

おすすめのハーブ5選

これからハーブを育ててみよう! という初心者さんにも、栽培から収穫まで楽しめて、使い勝手もいいハーブを5つ、ご紹介します。

ミント

ミント

ミントはシソ科の耐寒性多年草です。清涼感のある強い芳香が特徴で、スイーツやドリンク、ガムなどの菓子類や化粧品など、幅広い用途に向いた非常に使い勝手のよいハーブです。ミントは、北半球の温帯地域・アフリカが原産地。日向で水はけのよい土を好みますが、種類も多いため、半日陰やじめじめした湿地でも育つ種類もありますよ。

ミントは地植えすると、茎が地面でどんどん伸びて広がるため、広がらせたくない場合は、一度鉢に植えた状態で地植えにしたり、地面に間仕切りを置くなど、根が広がりすぎない工夫が必要です。特に増えやすいミントは、スペアミントとアップルミントです。原種に近いものは繁殖力も強いという特徴がありますよ。

スペアミントとペパーミント

食用としてポピュラーなのは、スペアミントとペパーミント。150cc程度のお湯に、ミントの葉を15枚程度入れて熱湯を注げば、爽やかなミントティーのでき上がり。ミントには消化促進作用があるので、食事の後、食べ過ぎた時、胃がもたれた時に飲むと、すっきりします。

バジル

バジル

バジルはシソ科の非耐寒性一年草です。バジルは、イタリアではバジリコと呼ばれ、食欲をそそる強い香りが特徴。フレッシュ(生葉)のままパスタやピザ、サラダ、肉料理などに使用され、風味をアップさせてくれますね。

原産地は熱帯アジア。暑さには強く、日本の高温多湿でも丈夫に育ってくれます。

バジルを育てるのに適した環境は、日当たりがよい場所。西日でもOKです。乾燥に弱いため、土の表面が乾いたら水をたっぷりとあげましょう。また、20cmくらいの高さになったら、収穫を兼ねて先端を摘む作業「摘心」をすると、脇芽が伸びて大株に育ち、収穫量がアップします。

たくさん収穫したいなら、花を咲かせないこともポイント! 花が咲くと新芽が出にくくなるし、葉も固くなります。

花は早めに摘みとって、飾って楽しみましょう

花は早めに摘みとって、飾って楽しみましょう。

たくさん取れたら、バジルペーストもおすすめ。フレッシュのほうが香りや風味はよいですが、ドライにしておくのも○です。

パセリ

パセリ

パセリはセリ科の半耐寒性二年草。パセリは料理の付け合わせにぴったりで、料理のいろどりをよくし、食後の口直しとしても利用されます。地中海沿岸が原産地です。葉の縮れた「モスカールドパセリ」と、葉が平たい「イタリアンパセリ」があります。

イタリアンパセリ

パセリを育てるのに適した環境は日向で、水はけのよい用土です。25度以上になると生育が衰えます。高温多湿と、夏の強い日差しは苦手ですので、黄色くなった葉は取る・適宜収穫をするなどして、株元を風通しよくしておくことと、鉢で管理して、夏場は涼しい場所に移動するなどすると、うまく栽培できるでしょう。また、初夏に花を咲かせると枯れます。花芽がついたら、摘むようにしましょう。春~秋は、屋外でよく日に当てて栽培しますが、冬場は室内に取り込むなどすれば、長期に渡り収穫ができます。

たくさん収穫できたら、冷凍しておくのがおすすめ。手でパラパラにできるので使いやすいですよ。

ラベンダー

ラベンダー

ラベンダーはシソ科の常緑低木です。種類によって、耐寒性があるものとないものがあります。ラベンダーは柔らかいフローラルの香りが特徴で、香りを楽しむのによく利用されます。料理やハーブティーに使われるのは、イングリッシュラベンダーやトゥルーラベンダーです。ラベンダーにもたくさんの種類がありますので、ご注意くださいね。

ラベンダーを育てるのに適した環境は、基本的には、日向と水はけのよい用土ですが、お住まいの地域によって、ラベンダーの種類を考えると失敗が少ないはず。高温多湿に強い・弱い寒さに強い・弱いなど、品種によってその地域で育てられるラベンダーがあります。

ローズマリー

ローズマリー

ローズマリーは、シソ科の耐寒性常緑低木です。ローズマリーは、チキンや魚などと相性がよく、料理の幅が広がる、使い勝手のいいハーブ。大株に育つので庭の植物としても見応えがあり、1年中常緑で収穫ができるのも魅力です。

ローズマリーを育てるのに適した環境は、バジルと同様に日当たりがよく、風通しの良い屋外です。キッチンで栽培するのではなく、屋外で育てて、必要な時には庭へ出るようにしましょう。また、ローズマリーは香りが強いのも特徴。たっぷり芳香成分を含んでいて、触るとべたべたするのは「精油」です。疲れた時に一枝折って香りをかぐと、気分がすっきりする作用がありますよ。

ハーブを育ててガーデニングを楽しもう!

ハーブは、料理やお茶、香りをかぐなど、日常生活で活用できる場面が多く、初心者さんでも育てやすい丈夫な植物です。ハーブといってもかなりたくさんの種類があるので、ご自宅の環境に適したハーブを選ぶことが失敗しないコツです。飲んだり食べたりできるのはハーブならでは! ガーデニングを楽しみながら、癒しのひと時を過ごしてください。

<注意点>

自然の恵みが詰まったハーブですが、妊娠中・授乳中の方、治療中の病気がある方、体質等の心配がある方は、使用できない種類もあります。使用する前に、かかりつけの医師にご相談ください。また、ハーブは薬ではありません。健康状態が気になる方も医師にご相談ください。

Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)

花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。

生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/

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