初めてでも庭で育てられる! かんきつ類の育て方とおすすめの種類をご紹介

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ビタミンカラーで庭を元気に彩るかんきつ類は人気の果樹ですが、育てるのは難しいというイメージが強く、尻込みしてしまう人も多いはず。でもじつは、とても育てやすくて初心者向けの果樹なのです。かんきつ類は酸味の強い果実のおかげで虫害や鳥害も少なく、またどんな種類でも鉢植えが可能なので、マンションなど限られたスペースでも育てられます。そんな現代の住環境にもフィットしたかんきつ類の魅力をご紹介します。
目次
かんきつ類を育てるメリット
かんきつ類を自分で育てると、うれしいことがたくさんあります。これを読めば、あなたもすぐに挑戦してみたくなるでしょう。
実を収穫する達成感がある

かんきつ類を育てる楽しみといえば、なんといっても実を収穫する時に味わう達成感です。愛情をたっぷり注いだからこそ得られる特別な美味しさを味わってみませんか。またお子さんのいるご家庭では食育にもつながります。一緒に育てることで食への関心や感謝の気持ちが高まるでしょう。さらに果実だけでなく、可愛らしい花を観賞できるのも魅力です。かんきつ類の多くは5月頃、白く清らかな花をいっせいに咲かせますが花期がとても短く、市場には出回らない貴重なものです。古くからヨーロッパでは、オレンジは「女性」や「多産」のシンボルとされ、その花を「花嫁の守り神」として結婚式のブーケや飾り付けに使ったそうです。

採れたての美味しさを楽しめる

今はスーパーや青果店で世界中の果実が手に入ります。しかし、かんきつ類は皮を使ったお菓子や料理のレシピも多いため、農薬や添加物が気になってしまいます。一方自宅で収穫した果実は、農薬や育った環境などを気にせずに安心して食べられるのがうれしいところ。収穫期になれば、ちょっと料理に添えたい時に、フレッシュな果実をすぐに摘んでくるという贅沢な「ちょいのせ」もできますよ。
<かんきつ類のシロップ漬け>
材料と作り方/皮ごとスライスした果実1:ハチミツ(砂糖でも可)1の割合で漬けて冷蔵庫で保存する。炭酸水で割ったり、マスタードと混ぜてお肉に絡めても美味しいです。
料理にも活用できる
かんきつ類は生で果肉を楽しむ以外にもさまざまな楽しみ方があります。食べきれないほどたくさんの果実が収穫できた時には、ジャムやコンポートにして保存しておけば、お菓子作りや料理、また調味料などにも活用することができます。
<かんきつ類のコンポート>

材料/果実200g、砂糖80g、水400cc、レモン汁大さじ1
作り方/
- 果実の皮をむき、そのままか、大きければ好みの大きさにカットする。
- 鍋に1と材料を入れて弱火にかけ、10分程煮る。
- 粗熱を取って容器に入れて冷蔵庫で保存する。長く保存したい場合は煮沸消毒した密閉容器に熱いままの2を入れてフタをする。ヨーグルトやアイスにトッピングしたり、ケーキの材料としても活用できます。
初心者でも大丈夫! かんきつ類の育て方
かんきつ類のさまざまな魅力が分かったところで、次項では、かんきつ類の育て方をご紹介します。初めて育てる人でも分かりやすいように、作業ごとのポイントをまとめました。
1.栽培環境を整える

かんきつ類の栽培は、日当たりや排水のよい場所が適しています。品種によって違いはありますが、一年の平均気温が12~18℃、冬季の最低気温が-7~-3℃以上必要です。限られたスペースや寒い地方で栽培する場合は、日当たりのよい場所や冬の間室内に移動できるよう、鉢植えで育てるのがおすすめです。鉢植えはコンパクトに育てられるだけでなく、実つきもよくなるメリットがあります。しかし何年も植え替えしないと根詰まりを起こしてうまく育ちません。鉢底から根が出ていたり、水やりしても水が1分以上しみこまない場合は根詰まりを起こしている可能性が高いので、水やりの時にしっかり確認しましょう。
2.苗木を植える
かんきつ類は種子から育てると結実までに8年以上かかるといわれているため、初心者は苗木から育てるのがおすすめです。かんきつ類の植え付けは2~4月上旬で、その頃になるとホームセンターやガーデンショップで苗木が販売されます。苗木を選ぶ時は、葉の緑が濃くて量が多いものを選びましょう。また実つき苗も同様で、果実より枝葉が充実しているものを選びます。果実がたくさんついている苗木は隔年結果(一年おきに実がなる習性)で、翌年は収穫できない可能性があるのでご注意を。
- 苗木を購入してきたら、植え付けの直前にポットから苗を抜き、根をほぐす。
- 苗木を支えて、地表面より少し高く土盛りして周りを踏み固める。
- 水をためられるよう苗木の周りを円状に掘り、水をたっぷり流し入れる。
- 約2mの支柱を立て、苗木を紐で結ぶ。
- 約30cmの高さにあるよい芽を選択し、その上約5mmのところで切り返す。
3.水やりと肥料を施す
水やりは地植えと鉢植えで異なります。庭に地植えする場合は、基本的に水やりの必要はありません。ただし、7~8月に10日以上雨が降らない場合や土が乾燥している場合は水やりします。鉢植えの場合は、土が乾いたらたっぷり水やりをします。しかし、かんきつ類は収穫前に水やりを控えて根を軽く乾かすことで果実の糖度を高めるというテクニックがあります。これを「水分ストレスをかける」といい、7~11月に水やりを控え気味にするのが効果的ですが、特に鉢植えの場合は枯れてしまうリスクが高いので、栽培に慣れるまでは、たっぷりと水やりしましょう。肥料を施すタイミングについては地植えも鉢植えも同じ時期です。2月頃の新芽が出る前(春肥)、6月頃の開花直後(夏肥)、9月の果実が大きくなる時期(初秋肥)、11月の収穫直後(秋肥)と、年4回施しましょう。春肥には有機質肥料、それ以外は吸収効率が高い化成肥料がおすすめです。
4.剪定を行う
かんきつ類は、枝が混雑していると害虫が発生するおそれがあり収穫もしにくいため、剪定を2~3月に行います。剪定には経験が必要で難しいイメージがありますが、初心者の方でも次の3ステップに分けて確認すると、どこを剪定すべきか分かりやすくなります。また剪定することで木が若返り、美しい果実が収穫できるというメリットもあるので、ぜひ挑戦してみてください。
- 木の広がりを抑える
理想の樹形をイメージして、そこからはみ出る枝を分岐部(枝分かれした部分)のすぐ上で切り落とす。 - 不要な枝を間引く
混み合った枝や古い枝などを枝の付け根から切り取る。間引く目安は枝全体の1~3割程度で、枝葉が軽く触れ合う程度の混み具合に。特に夏や秋に伸びる新枝は結実しにくいので、優先的に間引く。 - 残った枝の先端を切り詰める
充実した枝の発生を促すために、ステップ1~2で残った枝のうち、30cm以上ある長い枝を1/3程度まで切り詰める。全ての枝を切り詰めると、葉の付け根の芽の中にあるつぼみを切り取ることになり、翌年の収穫量が減るので、枝の切りすぎには注意すること。
5.摘果をする
摘果とは小さな果実を間引くことで、大きくて甘い果実を毎年楽しめるようにする大事な作業です。かんきつ類は果実がなりすぎると翌年収穫量が激減することがあります(隔年結果)。今年結果した枝は衰弱して翌年結果できないため、来年からの結果枝を残す必要があります。摘果の時期は落果が収まる7月下旬~9月下旬頃です。かんきつ類は結果後、小さいうちに落果することがあります。これは生理的落果と呼ばれ、樹勢の低下を抑えるために自然に落果することで、特に樹がまだ若いうちに多く見られる現象です。またその他の原因として、鉢植えで根詰まりを起こしている時、植え替えや場所移動による環境の急激な変化、肥料(特にチッ素成分)の与えすぎの時にも落果が見られます。
摘果の際は、小さいもの、傷のあるものを優先的に間引きます。また果実を間引く時に目安となるのが、葉の枚数です。果実1個を正常に生育・成熟させるのに必要な枚数は、果実のサイズや種類によって決まっています。例えば温州みかんやレモンなら果実1個につき25枚の葉が必要です。木に付いている葉の枚数をだいたい数え、それを25で割った数の果実を残しておくとよいでしょう。
6.収穫する

収穫に適した時期は、タイプによって3種類あります。
1、緑色の果実を収穫するタイプ/スダチやライムなど香り付けに使うもの。
2、完全着色したら収穫するタイプ/温州みかんやポンカンなど果実が色づくとともに酸味が抜けるもの。
3、酸味が抜けるまで収穫を待つタイプ/完全着色しても酸味が強く、酸味が抜けるまで時間がかかるもの。
収穫の際は、果実を傷つけないように、先端が丸く加工された採果用ハサミを使うのがおすすめです。ハサミの先端を果実に当てないように収穫します。ハサミの先端だけでなく、収穫した果実の軸が他の果実に当たって生傷がつくとカビが生える可能性が高くなります。収穫後に果実の軸が飛び出ているときは短く切るなどして気をつけましょう。
どんな種類を選べばいい?
庭で育てるかんきつ類の選び方

かんきつ類は、非常に多くの種類や品種が世界各地で生み出されています。種類によって適した気温が異なるため、住んでいる環境に合わせて種類を選択するとよいでしょう。かんきつ類は寒さに弱い種類が多く、冬場に気温が下がりすぎると冬を越せず枯れてしまいます。気温が低い地域にお住まいの方は、鉢植えにして寒くなったら室内に移動できるようにするとよいでしょう。また、自分が好きな果実を選ぶことも重要です。育ててみたい種類を見つけたら、植物事典などで詳しく調べてみましょう。その種類の特徴や育て方、活用方法などを知ることで収穫がより楽しみになり、それだけ手間をかけて育てることができます。
おすすめのかんきつ類を3つご紹介
非常に多くの種類があるかんきつ類ですが、日本で多く育てられているため苗が手に入りやすく、初心者でも育てやすい代表的な種類を3つと簡単なおすすめレシピもご紹介します。
温州みかん

ミカン類 収穫適期/9~12月(緑色~完全着色を収穫) 果実の重さ/100~150g
日本原産では本種を指すことが多い定番の品種です。温州みかんは果樹自体が小さめで管理がしやすいです。水はけがよければ土も選びませんが、西日と強い風に当たらない場所に植えるとよいでしょう。かんきつ類の中では比較的寒さに強いので、寒い地域でも育てられます。
<みかんとキャロットラペ>
材料/ニンジン1本、塩2つまみ、A(酢小さじ1、ハチミツ小さじ1、塩少々)
作り方/
- ボウルに千切りにしたニンジンを入れ、塩をまぶして揉み、5分程おいて水気をよく切る。
- Aを1に混ぜ、薄皮をむいたみかんも加えて、好みでミントを添えて完成。
<焼きみかん>
そのままオーブントースターで焼き色がつくまで10分ほど加熱するだけ。酸っぱいみかんも甘みが増して美味しくなり、風邪予防やダイエット効果もあります。
レモン

香酸かんきつ類 収穫適期/10~12月(緑色~完全着色を収穫) 果実の重さ/100~200g
育てやすく鳥獣の被害が少ないことから、かんきつ類の中でもトップクラスの人気を誇ります。寒さに弱いため温暖地以外では鉢植えで育て、冬は室内に移動します。レモンは日光を好み暑さに強いですが、水分不足だと落葉してしまうので、特に鉢植えで育てる人は水切れに注意しましょう。土の表面が乾いたら水をたっぷり与えます。レモンは熟しすぎると酸味が減り、果汁が少なくなってしまうので注意が必要です。
<レモン酢>

材料と作り方/きれいに洗い細かくスライスしたレモン2個分、ハチミツ70g、酢400mlすべてを密閉容器に入れてよく混ぜ、一晩寝かせたら完成。ダイエットや便秘改善などさまざまな健康効果が期待できると話題です。水やお湯で割って飲むほか、料理の味付けや醤油と混ぜてポン酢にも活用できます。
ライム

香酸かんきつ類 収穫適期/10月(緑色を収穫) 果実の重さ/50~130g
ライムはレモンより寒さに弱いといわれており、2℃以下の気温になる場所では栽培が難しいですが、早生品種は耐寒性が強く樹高も低いので手軽に育てられます。日当たりのよい場所で育てると、より風味がよくなります。
<サルサ>

材料/玉ねぎ半分(みじん切り)、トマト1個(みじん切り)、オイル大さじ1、塩、ブラックペッパー各少々、ライムのしぼり汁1/2個分、香菜お好みで
作り方/玉ねぎ、トマトをボウルに入れ、オイル、塩、ブラックペッパーを混ぜ合わせ、ライムのしぼり汁で酸味を加減し、仕上げに香菜をちぎって混ぜて完成。トリティーヤの付け合わせに、また玉子焼きや肉料理に合わせても美味しいです。
かんきつ類を育てて採れたての美味しさを楽しもう!
かんきつ類は環境に合った種類選びと基本的な注意点が理解できれば、初心者の方にも育てやすいことが分かったと思います。甘くてジューシーな果実を美味しく食べるだけでなく、その爽やかな香りはポプリや入浴剤としても手軽に楽しめます。現在ではさらに成分が見直され、健康食や美容製品、さらに掃除用品まで驚くほど活用の幅が広がっています。あなたもぜひ、収穫の喜びとフレッシュな果実の魅力を体験してみてください。
Credit
文・イラスト・料理・写真(記載外)/本間のぞみ
会津郷土料理研究家。福島県会津若松市生まれ。デザイン事務所のアシスタントを経てガーデニング雑誌編集部に入社。庭のある暮らしや食に関する記事をつくる中で、さまざまな食のプロに出会い魅了され、和菓子店、ベーグル店、ビストロなどで経験を積む。現在2人の子どもを育てながら、地元の母がつくった会津野菜や食品を使ったレシピの提供中。
参考文献/NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビ『かんきつ類』三輪正幸・著
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