観葉植物や草花など、植物を育てる際に必須の作業「水やり」は、一番失敗が多い作業です。これまで「何で枯れたのだろう?」と悩んでいた人に、ガーデニングを楽しむために知っておきたい基礎知識「水やり」をご紹介。ここでは、①適切な水の量 ②水の与え方と時間帯 ③水切れの際の手当て ④水が過剰になった場合の手当ての4つについて説明します。

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水やりは量も大切

水やり
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前回『水やりのタイミングとは? 超初心者向け講座4』では、水やりのタイミングについて解説しました。しかしタイミングが合っていても、量がぜんぜん足りない、あるいは多すぎるようでは意味がないわけです。
では、

・適切な水の量とはどのようなものでしょうか?
・どうすれば適切な水の量を与えられるのでしょうか?

上記2点をテーマにして説明します。また併せて、水やりのミスで傷んだ場合の手当てについても説明します。

適切な水の量とは

水
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適切な水の量(灌水量)とはどのようなものでしょうか?

世の中の植物にはロクに雨が降らない砂漠に生えるサボテンもあれば、一生を水中で過ごす水草もあります。植物の水をめぐる環境は非常に違いが大きいのです。

それに応じて植物は姿形と性質を変え、生き延びて生活の場を広げてきました。その結果として、必要とする水の量は植物の種類ごとに違ってきたのです。

ですから、すべての植物に共通する適切な水の量というものはありません。

さらに非常に細かな違いをいえば、種類ごとに、同じ種類でも場所ごとに、もっといえば同じ種類で同じ場所でもどのような目的で育てるかによっても「適切な水の量」は違ってくるのです。

このように書くと大変難しいように感じ、挫けそうになりますが、まずは簡単に「元気に生きて育ってもらう!」のを目標にした水やりを覚えましょう。健全に育ってこそ他のやり方があるからです。

水の適量「一般的な植物」の場合

水やり
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ほとんどの草花・花木・樹木・野菜は、鉢の表面の土が乾いたら「底から流れ出るまでたっぷり与える」のが適切な量です。

これは5〜6号鉢(直径・深さ共に15〜18cmほどの大きさ)で、およそ600ml前後、料理用の計量カップ(200ml)でいうと3杯ぐらいになります。

水の適量「熱帯植物(観葉植物)」の場合

水やり
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これも一般的な植物と基本は同じなのですが、葉が大ぶりな種類が多い分だけ根も多く、鉢が大きいので、1回当たりに与える水の量は増えるでしょう。

大切なのはチマチマと回数を多く量は少なく与えるのではなく、しっかりと基本の水やりをすることです。そうしなければ鉢が大きいだけあって、主要な根がある深い部分はカラカラに乾燥し、表面だけ湿っている、という状態になって水やりとしての効果がありません。

水の適量「多肉植物/サボテン」の場合

多肉の水やり
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種類ごとの差が大きいのですが、普通に販売されている「夏型(気温の高い夏に成長する)」の種類なら普通の草花並みの水やりでよく育ちます。一方で冬の休眠中は完全に水を切るものと、月に1〜2回は鉢の中ほどまで染み渡る程度の少量を与えるものとがあります。

さらに、リトープスやコノフィツムなどの球型メセン類は過剰な水で腐りやすいため、成長期の秋と春でも「鉢全体に水が染み渡る程度」の少量の水やりとします。しかも前回書いた通り、7〜10日に1回程度です。これらは休眠中に完全に水を切るとかえって日干しになるものもあるので、月に1回霧吹きで霧をかけるか、表土が湿る程度に水を与えます。

サボテンについては夏型の多肉植物同様ですが、これもまた種類によって差が大きいものです。普通に販売されている種類は神経質になる必要がないものばかりですが、最近人気の変わった形の種類には過剰な水分に弱いものがあるため、注意が必要です。

なお「多肉植物/サボテン」についてはできれば専門の栽培書を買って、水やりについてきちんと調べるのがよろしいです。

水の適量「水草・湿った場所に生える植物」の場合

水生植物
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これは単純で、常に湿った状態を保っておく必要があります。スイレンやハスであれば一定量の水位を保たねばなりません。

湿った場所を好む植物は、受け皿に水を張って、その中に鉢を置いて水をいつも溜めておきます。夏なら1日でなくなってしまうので、毎日水を補給する必要があります。

スイレンやハスは沈めてある鉢か泥の表面から深さ10cmもあれば十分です。あまり水が深すぎると水温が上がらず、特にハスは夏の暑さが必要なので生育に支障が出ます。そのため面倒臭くても、あまり深い容器に入れないでください。

水の与え方と時間帯

水やり
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意外と大事なのに、なぜか解説がほとんどなく、それゆえに初心者が失敗しがちなのが水の与え方です。

初めての方は「上から水をかければいいんじゃないの」とばかりに上から水をかけて、もろもろの失敗をきたします。もちろん上から水をかけても問題ない植物が大多数ですし、場合によってはそれが必要です。

しかし現代は、昔と違って取り扱いに少しばかりの慎重さが求められるような植物さえ量産されて安価に市場に出回るようになりました。その結果、腐ったり、表面の白粉が落ちてまだら模様になったりなど、上からザブザブ水をかけるとちょっと問題のある植物も含まれるわけです。以下に基本的な水の与え方を列記します。

水の与え方「根元に注ぐ」

水やり
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ほとんどすべての植物で、この方法にすれば大きな問題はありません。最大の利点は確実に根に水が届くことです。上から水をかけていると、葉などに邪魔されて根元に水が流れていない、あるいは流れてはいても量が足りない、ということが少なくないからです。

水の与え方「夜に与える」

水やり
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近頃インテリアとして人気のティランジアや蘭などの着生植物(木や岩の上にくっついて育つ植物)は夜に水を吸いやすくなる性質を持つものがあります。これらの種類では昼間に水を与えても効果的ではなく、傷んでしまうものすらあります。

これらの植物には夕方から夜間に、根を含めた株全体を湿らせるように水を与えると、十分に水を吸ってよい状態となります。

水の与え方「朝に与える」

水やり
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冬など気温の低い季節には夕方や夜間に水を与えると凍ってしまい、鉢が割れる・植物が凍害を受けるといった被害が生じる場合があります。

そのため寒い季節には朝のうちに水を与えて、夜には余分な水が残らないようにします。

水の与え方「水の温度」

水やり
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熱帯植物は低温に弱いものですが、それは水の温度でも同じです。特に根は葉や茎のように保護組織を持たないので、なおさら弱いのです。

そこで、冬など水温が低い季節には水を汲み置きし、室温と同程度にしておくか、お湯を加えてかき混ぜて20℃前後に調節します。特に高温を要求し水温を25〜30℃にする必要のある種類もあります。

熱帯植物は冷たい水をそのまま与えてはダメだと覚えておいてください。

水の与え方「上から水をかける場合」

水やり
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これは主に汚れや埃を洗い流す目的で行います。葉の表面は意外に汚れやすく、見た目が悪いばかりでなく、葉の裏にある気孔(空気を出し入れする穴)の働きを妨げるので植物の健康にもよくありません。

そこで、丸洗いするつもりで葉の表も裏もシャワーや散水機を使って洗い流してください。当たり前ですが屋外か浴室でやらないと大惨事になります。なお、汚れを取るといっても高圧洗浄機や洗剤などを使う必要はありません。

自然乾燥でかまいませんが、早く元の位置に戻したい場合は乾いた布やキッチンペーパーを使って拭き取ります。

水の与え方「上から水をかけてはいけない植物」

水やり
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上から水をかけるのがそもそもの失敗の元、というデリケートな植物もあります。これらは乾燥地帯の植物と高山植物です。

多肉植物には白粉や白い点、あるいは白い毛に覆われている種類があり、これが水をかぶると流れ落ちたり、カビたりして、植物の見た目が大変汚らしくなります。そうでなくてもカビなどに弱いので、濡れると感染の機会を増やすことになるのです。多肉植物は中がゼリーのような組織でできているので、感染するとあっという間に腐ります。

同様に西オーストラリアや南アフリカ・カリフォルニア・地中海地域の少雨地帯原産の植物も濡れると腐りやすくなるので、上からザブザブ水をかけるのはすすめられません。

高山植物は暑さに弱いため、上から水をかけられると根元などの湿り気が残りやすい部分が腐りやすくなるため、根元から少し離れた鉢の縁に沿って水を与えます。

水切れの際の手当て

水切れ
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水を切らして葉が垂れている・巻いている・チリチリになってしまった……。水切れは誰しもが一度は経験することです。思いがけない事故もあるので完全にゼロにすることはできません。

まずは触ると落ちる葉があれば振るって落とします。茎の皮を少し剥いでみて、緑色をして生気があるようなら助かる可能性がまだあります。中には全く水切れに耐えられない植物もあるので100%確実に、とはいえませんが、試す価値はあるという状態です。

同様に枯れ込んだ枝があれば取り除きます。不恰好になっても生きている部分や葉があれば、それは取らないでください。その後、水を与えて透明なビニール袋をかけて包みます。湿度を保って蒸散を抑えるためです。

受け皿に水を溜めてはいけません。水切れは根にもダメージが及んでおり、傷んだ根は過剰な水分に非常に弱くなっているからです。

その状態で明るい日陰(数値で表すならば50%カットぐらいの柔らかい光)に置きます。熱帯植物であれば生育適温にしてください。

1週間で茎に張りが戻り、生気を回復してきたらまずは一安心です。その後は葉が展開してきたら袋に穴を開け、1週間ほどかけて少しずつ穴を増やすか広げるかして、外気に慣らします。その後は種類に応じた適切な手入れを続けてください。

1カ月以上経ってなんの動きもないようなら、おそらくその植物は枯れています。枯れてしまった場合でも、失敗の原因を追求することは次の成功につながります。例えば忙しくて水をやれなかったのが原因なら、自動潅水機を導入するなど手の打ちようがあるからです。

水が過剰になった場合の手当て

根腐れ
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実は水切れよりもこちらの方が重症になりやすく、なおかつ打てる手が少ないという意味では難しいものです。

「多肉植物/サボテン」の場合は、まず助かりません。異変に気づいた時にはたいてい全身に腐敗が蔓延しているので、健康そうな部分を切って挿し木しても助けられないことが多いのです。

他の植物の場合はまず鉢から抜き、ボロ切れか古新聞紙で根鉢を包んで、砂を入れた植木鉢の上に載せます。倒れないように紐か何かで縛って支えてください。地上部は葉や枝をいくらか切り捨てて、負担を軽くしてあげます。それらがすんで1〜3日経って土が乾いてきたら、土を洗い流し、根の状態をチェックして傷んだ部分を切り捨てて、消毒します。切り口が大きい場合はそういう所に塗るための消毒薬がありますし、ない場合は硫黄か炭の粉末を塗ります。

その後、清潔な新しい用土を使って植え直します。鉢の大きさは小さくなるはずです。

もし挿し木が容易な種類であれば、株として助けるのは諦めて、挿し木で仕立て直すという方法もあります。しかし腐敗が内部組織に及んでいる場合があり、通常の挿し木よりも成功率が低くなりがちなのは覚悟してください。

いずれにしても「根の腐敗+感染症」を引き起こしているために確実に助けられるものではなく、基本的にかなり厳しい状況だと考えてください。

Credit

文/辻幸治(つじ・こうじ)
園芸家。1976年、大阪生まれ。江戸の園芸文化から海外のワイルドフラワーまで幅広く精通する。NHK「趣味の園芸」にも講師として出演。書籍や雑誌の執筆・監修でも活躍。著書に『色別 身近な野の花山の花 ポケット図鑑―花色別777種』(栃の葉書房)など。

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