庭のデザインアイデア〜アリウムの使い方 花壇・風景・組み合わせ18タイプ

植えっぱなしで、毎年季節になると美しい景色をつくってくれる球根植物の一つ、アリウム(Allium)。まん丸の花が空中に咲き、そばに咲く花と思いがけない調和が生まれるので、イギリスの多くの庭で植えられています。ここでは、イギリスの庭で出合ったアリウムの咲く花壇を18タイプご紹介します。
つぼみから開花、タネまで楽しめる個性派

アリウムは、小さな花が360度放射状に集まって球形になる花玉が特徴です。小型のものは3cm程度、大型になると直径40cmにもなり、大きさのバリエーションが広い球根植物です。開花は、バラが咲き始める頃、5〜6月に満開になります。写真は、アリウム・クリストフィーのつぼみから花後の様子です。

固いつぼみから、やがて球形が大きく整いながら一つひとつ星形の花が開きます。数日すると、花びらがしおれながら、花心にタネが膨らみ始め、緑の粒が次第に茶色く枯れて花の時期が終わります。まるで花火のようなその姿は、茶色く枯れても崩れることがなく、花茎を切ってドライにして、その姿を部屋で楽しむこともできます。
●秋が買い時の球根植物、アリウムの種類や植え方、育て方については、こちら。
ここからはイギリスを中心とした海外の庭から、アリウムが咲くガーデンシーンをご紹介します。
バラと一緒に咲かせる

アリウムの花が咲く時期は、ちょうどバラが咲き始める時期と重なるので、イギリスの庭ではバラと寄り添い咲くアリウムの姿を多く見かけます。アリウムは、ブッシュローズの花と草丈が近く、花が密集しすぎないアリウム・クリストフィーなら、バラが主役となって、花の景色がまとまって見える効果が。


ベンチのあるコーナーに、背丈以上に丈高く伸びたホワイトレースフラワーがロマンチックな風景をつくっています。間には花穂を伸ばす鮮やかなピンクのジギタリスとブッシュローズがアクセントになって、地際付近に咲く淡い紫のアリウムが、ピンクと白花の間をつなぐ役割に。

バラのグラデーションが美しい花壇の中では、花がなく寂しくなりがちな株元付近をアリウムが泡のように無数に小花を咲かせて、バラを引き立てています。これは、秋に植えて翌年すぐにできるという景色ではなく、植えっぱなしにして数年経たことで花数が増え、生まれた景色です。
花色の対比で咲かせる

キングサリの回廊の下に、左右対称にアリウムが列植された小径のデザインは、「英国で最も美しい庭」と称された故ローズマリー・ヴェレーさんの自邸につくられた有名なガーデンシーンの一つです。現在はホテルになっていて、宿泊者かレストランを利用する人だけに公開されています。黄金色に輝くキングサリの花房とアリウムの紫が対比する美しい景色は、それぞれの生育がぴったり合った時、限定のシーン。

黄色と紫の対比は、アルケミラ・モリス(レディースマントル)をグラウンドカバーに列植し、間からアリウムの花茎が立ち上がる小径のデザインでも叶えることができます。アリウムが咲く時期だけ、紫の花が映えるように周囲の色を緑のみにするのが成功の秘訣。
宙に浮く花の玉がアクセントに

アリウムは、品種によって茎が長く伸び、空中で花が咲いているように見えるのも特徴です。刈り込まれた円柱状のつげが力強い緑一色の庭で、目の高さに咲くアリウムの紫が彩りとなって、華やかな印象をプラスしています。

ゲラニウムやタイムなどが低くこんもり茂る中から、ポコポコと丸い玉が浮いて、遠くから見ても気になる風景になっています。一番奥のアリウムが浮かぶ株元の茂みは、つぼみがまだ固く花穂が立ち上がり始めたばかりのラベンダー。このように、アリウムよりも後に成長して花を咲かせる植物と一緒に植えると、開花のバトンタッチも楽しめます。
アリウムと相性がよい草花

紫花のアリウムと、同じ紫系統の花を一緒に咲かせることで、それぞれのフォルムを引き立て合いながら爽やかな色彩のコーナーをつくっています。上写真は、アリウムとゲラニウム、サルビアが同系色として選ばれていました。

エリンジウムのシルバー系の青とアリウムの花玉が、不思議なコンビネーションに。株元に低く茂る銅葉のダークカラーがあることで、大人っぽい雰囲気ですね。

緑の葉の中からアリウムの花が顔を出すように、一定間隔でランダムに球根を混ぜて植えておくと、思いがけない植物による模様が生まれます。

葉があまり大きくないゲラニウムが、チラチラとピンクの小花をつけて茂り、アリウムがリズミカルに混じり咲く花壇です。

こちらは、さわさわと風に揺れるグラス類の間に見え隠れするアリウム。合わせる緑の葉の形によって、ナチュラルだったり、フォーマルになったりと雰囲気がずいぶん変わるのが分かります。
花後のタネの姿まで絵になるアリウム

ナチュラルな雰囲気のガーデンにどう馴染ませるか、難しい印象がある鮮やかすぎる濃いピンクのナデシコですが、アリウムの花後に膨らみ始めた緑の粒が、花色を中和させて、チャーミングなコンビネーションになっています。アリウムの草丈とナデシコの花が咲く位置がちょうど合っていると、思いがけない対比が楽しめそうです。

こちらは、アリウムのタネにオダマキのタネがコラボする花壇。少し前は、楚々としたオダマキの白花にアリウムの紫の花が際立っていたことが想像できます。どちらのタネも個性的な姿で、花からタネまで観賞期間が長く、変化する様子も楽しめます。

手前のニューサイランの銅葉と奥に咲くアストランチアの鮮やかな色に挟まれて、花後のアリウムが緑のアクセントになっています。さらに奥には、ふわふわとフェンネルがかすみのような姿を見せるボーダー花壇。それぞれの花の旬が過ぎても、新鮮な調和を見せるガーデン。アリウムの左には、よく見ると紫のセントーレアが咲いています。少し前までは、紫から黒のシックな色合いの花壇だったことでしょう。

先にご紹介した花壇を別角度から撮影したのが、上写真です。ここでは日陰の中でシルバーリーフが明るさをプラスし、アリウム、フェンネル、アストランチアが風に揺れて優しい雰囲気。花後の姿も楽しめる植物があると、刈り取りが多少遅れても気にならないので、ローメンテナンスガーデンを目指す人にもアリウムは欠かせない植物です。

季節はさらに進み、緑の玉が弾けて黒いタネが熟してきたアリウム。そばにはグラスもタネをつけ始めています。色が抜けたドライな植物の姿も趣がありますね。アリウムは、すべての花にタネをつけてしまうと、球根が消耗して来年の花が期待できないので、数本残して他は花茎の根元から切り取るほうがよいでしょう。切り取った花茎は部屋でドライにして飾るのもおすすめです。
アリウムはつぼみを膨らませるみずみずしい春から、紫色の花火のように咲く初夏、そして花心が緑色を帯びて膨らみ、タネが熟す秋までと、観賞期間が長く楽しめます。
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