経験者に聞く! 晩秋が植えどきのベリー類の栽培のコツ

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枝から下がる赤い実姿も可愛らしいベリー類。ベリー類は非常に生育旺盛で、基本的に日が当たりさえすれば、地植えでも鉢植えでも栽培できます。レッドカラントやブラックベリーを長年育てているOさんにお話を伺いました。

編集部:これまでどんなベリー類を育ててきましたか。
Oさん:レッドカラント、フサスグリともいいますね。それからブラックベリーとグーズベリー、ラズベリーなどですね。全部、1株で実がなる自家結実性のベリーです。
編集部:何年くらい育てているんですか。
Oさん:どれも20年以上ですね。レッドカラントは私の実家から掘り上げて持ってきたものなので、50年以上の株です。夏に実家を訪れて草取りをしていたら、薮の中から目の前にレッドカラントの赤いキレイな実が現れて、そういえば父がこれでお酒を作っていたなぁって思い出して。そのとき実家の土地を人にお譲りすることが決まっていたので、故郷の思い出として持ち帰ることにしたんです。
編集部:どうやって持ち帰ったんですか。
Oさん:幅が2mくらいあるすごく大きな株だったので、その一部を掘り上げてバケツに土ごと入れ、枝の上の方は濡れた新聞紙に包んで。本当は植え付けとか移植って11月以降、寒くなってからが適期で、夏にやるもんじゃないんです。でも自宅と実家が遠くてしょっちゅうは行けないので、大丈夫かなぁっと思いながら掘り上げました。

編集部:でも、大丈夫だったんですね。移植してから今、何年くらいですか。
Oさん:15年くらいですね。何の問題もなく根付いて、3年くらいしたら、同じような大株になりましたから、レッドカラントって強いんだなぁって思いました。春先になると新しい枝が何本も地面から出てきて茂っていくんです。ですので、ある程度、剪定で樹勢をコントロールしていますが、冬に混み合っている場所を適当に地際で切るだけでいいので、何も難しくはないですね。あとは冬に堆肥を株元にまくくらいですが、毎夏10Lバケツいっぱいの実が採れます。

編集部:すごい量ですね。どうやって食べるんですか。
Oさん:うちで育てているベリー類は生食には向かないものが多いので、主にジャム、フルーツソース、果実酒ですね。量があるので枝から実を外すのが大変なんですよ。採ったらすぐに仕込むか冷凍するかしないと実が傷んだり、カビが生えたりするので、時間がある時に収穫するようにしています。6月に色付いたものから採り始めて冷凍して貯めておくんですが、7月になると採りきれなくなってきます。結局、全部は採りきれないので、枝ごとバサっと切って大きな花瓶に飾って楽しんでいます。実ものって、飾ってもとてもキレイですし、枝ごとだとかなり長もちします。
編集部:味はいかがですか。
Oさん:とにかく香りがいいですね。果実酒は仕込んでから大体3カ月くらいで飲めるんですが、炭酸で割ったり、お菓子の風味づけにも使います。ジャムにしても、しっかり香りも酸味も残っていて美味しいです。最近発見したのは、板チョコに自家製ベリーのジャムを少し乗せて口に入れるという食べ方で、高級スイーツみたいな味になるんです。ぜひ栽培して、ジャムを作ってやってみてください。

編集部:ほかのベリー類はいかがですか。
Oさん:ブラックベリーも全然、手がかかりません。つる性なので庭の入り口のアーチに仕立てていますが、実がぶら下がる様子が可愛いんです。ブラックベリーはこうやってアーチやフェンスなどにつるを誘引できるので、広さがなくても育てられるのがいいですね。ブラックベリーは、前年、実がついた枝は枯れて、翌春新しい枝が出るというサイクルなので、古い枝を元から切り、冬季に堆肥を与えています。
編集部:ブラックベリーもたくさん採れますか?
Oさん:ブラックベリーも1株で10Lバケツいっぱいに採れますね。タネが口に残るのを嫌がって漉したりする方法もありますが、漉すのにすごく苦労した経験があるので、あまりオススメしません。タネにも栄養がありますし、我が家では気にしないで食べてます。その点、ラズベリーは全くタネが気にならないですよ。ただ、ラズベリーは棘があり、地下茎で移動しながら増え、生えて欲しくない場所にもいつのまにか生えてくるので、コンテナのほうがコントロールしやすいですね。
編集部:コンテナや鉢植えでも育てられるんですか。
Oさん:どのベリーも大丈夫ですよ。コンテナの大きさに比例して樹勢も強まり、収穫量も多くなります。大きなコンテナの場合は、株元で他の草花を楽しむこともできますし、株元に草花を植えておけばコンテナの土も乾きにくくなります。混植する草花は、根の浅い植物を選ぶといいですよ。
編集部:地植えであまり大きくなっては困る時にはどうしたらいいでしょう。
Oさん:ブラックベリーやラズベリーは先ほど言ったようにつる性なので、フェンスなどに仕立てるとあまり場所をとらずに栽培できます。また、レッドカラントも「エスパリエ仕立て」という方法があります。放っておけば地際から何本も新しい枝が出てきて前後左右に大きくなりますが、主幹を1本ないし2本に絞って他の枝を切り払い、枝を壁にぴったり添わせて育てる方法です。この方法だと、奥行き30cmくらいの花壇でも育てられます。
<ベリー類のお手入れ・まとめ>
【水やり】
地植えの場合は水やりの必要はありませんが、鉢植えやコンテナの場合は定期的な水やりが必要です。株元に植物を植える場合は、ベリーの成長を阻害しない程度の根の浅い植物を選ぶとよいでしょう。
【肥料】
冬季と開花後、収穫後に有機質肥料を施します。
【定植・植え替え・移植】
11〜3月までが定植・植え替え・移植の適期です。鉢植え・コンテナ植えは2〜3年に一度、根詰まりを防ぐために植え替えましょう。根詰まりしてくると、実付きが悪くなってきます。
【剪定】
基本的に、どのベリーも古くなった枝、枯れて灰色になった枝、内側に向かって伸びたり混み合っている枝を冬に地際から切り、若々しい枝を残す、と覚えておけば大丈夫です。専門書などにはもっと緻密な方法も紹介されていますが、 ‘おうちベリー’の場合は、落葉した冬季に一度でOK。
column 実りを手伝ってくれるハチたち

ベリーは開花中に受粉しなければ実をつけません。その受粉に欠かせないのがハチなどの昆虫たちです。ハチたちは何百という花の間を行き来しながら蜜を集めて巣に持ち帰りますが、その間に体についた花粉で自然に受粉が行われます。これを人工でやろうと思ったら気の遠くなるような作業。自然界にお任せするに限ります。ハチというと「刺される」「怖い」というイメージを持たれがちですが、基本的に蜜を集めるミツバチやマルハナバチ、花アブなどは花に夢中で人間のことなど全く興味がありません。手を出したり、枝を揺すったりしない限りは何もしません。ハチを見かけたら、「お手伝いありがとう」とそっと見守りましょう。
ベリーを使ったお菓子のレシピを『庭のベリーを摘んで簡単ベリーのお菓子作りレシピ5つ』のページでご紹介しています。
Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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