寒い冬は、ガーデナーにとって美しい初夏の景色づくりのために準備をする季節。神奈川県の自宅の庭で25年間、ガーデニングを楽しむ遠藤昭さんに、この冬の間にやっておくべき土づくりの方法と、手作り堆肥の作り方、常備しておくと便利な土壌改良資材を教えていただきました。
目次
美しい初夏の庭をつくる大事なガーデニング作業
日本のガーデニング愛好者は、四季の変化を楽しむことができ、それぞれの季節の庭仕事も楽しめるので幸せである。そして、日本で庭が最も華やかで美しい季節は、緑に溢れ、一年草などの草花が咲き乱れる、初夏のバラの季節だろう。
その最も美しい、待ち望んだ花いっぱいの庭の季節を満喫するには、寒い冬の今から準備を進めなければならないのだ。冬の庭仕事といえば、バラの剪定や植え替えなどが、まず頭に浮かぶ。だが、バラの季節の庭を、もっと素敵に華やかにつくり上げるためには、バラの周りを彩るデルフィニウムなどの草花の準備も忘れてはならない。それに加えて大切な作業が土づくりだ。
冬の土づくり作業とは
ガーデニングは寒い冬の間でも、やることが実はたくさんあるのだ。我が家では、妻は鉢植えのバラの剪定や植え替えをし、僕は落葉樹の剪定や、古い土を再生するために、ビニールシートに土を広げて土づくりをするのだ。園芸作業って、まあ、独り黙々とやるより、妻と2人のほうが断然楽しい。寒い冬も夫婦でガーデニング!
今回は冬の園芸作業として、土づくりの方法、及び土づくりを楽しむためのさまざまな用土材料について触れてみたいと思う。
ホームセンターに行くと、実にさまざまな園芸用土が販売されていて便利だが、料理でいえばインスタント調味料みたいで面白くない。やはり自分で工夫して用土もつくると、園芸がもっと面白くなる。オリジナルな土づくりも園芸の楽しみの一つだ。料理と同じで、自分の感性でつくり上げるのが楽しいのだ。それに、園芸用土を購入して、それを使い捨てにするとゴミ処理にも困る。
土づくりの基本「天地返し」
冬の園芸作業に、「天地返し」と呼ぶ作業がある。それは、寒風に土を曝して土の中の害虫や病原菌を駆除することだ。僕は毎年この時期に、コンポストの中に溜まったゴミ(堆肥)と使い古しの土を寒風に曝す。前年度に使用した鉢の土や、コンポストの堆肥の「天地返し」だ。
一年の間、台所から出たゴミや庭の雑草や切り枝、そして鉢の使い古した用土を2つのコンポストに投げ入れてきたが、毎年この時期には新たな園芸用土をつくり、初夏の草花の鉢植えをつくる準備をするのだ。土を目の粗いフルイにかけて、ゴミや虫を取り除いてビニールシートに広げるのは、なかなかの重労働だが、土いじりって気持ちがよいものだ。コンポストの土をふるうと、貝殻やマグロのカマ、チキンやラムチョップの骨なんかが出てきて、懐かしく面白い。
家庭ゴミが減る! 自己流堆肥の作り方
まず、遡って堆肥作りから紹介しよう。僕は2つの方法で実施している。
一つは台所から出る生ゴミや、雑草や落ち葉などをコンポストに入れる肥料作りだ。ゴミが減るので環境に優しい。毎日ゴミを入れ、その上に土をかぶせておく。この土を植木鉢の再生用の土として使用するために、真冬に天地返しを実施するわけだ。再利用は細菌や病気などが心配になるかもしれないが、きちんと対応・処理をすれば問題はない。使い古しの鉢の土は、夏の暑い日に黒いビニール袋に入れて、直射日光の当たるコンクリートの上で2週間ほど殺菌してから再利用している。
もう一つは、腐葉土と鶏糞や油粕で作る堆肥だ。都会ではなかなか枯れ葉を確保するのは難しいが、幸い近所の公園に落葉樹の林があり、 通路とかグランドに散らかる枯れ葉を「お掃除」がてら、頂いてくる。これを普通の堆肥作りの要領で、落ち葉、鶏糞、落ち葉、油粕と水をかけながらコンポストに重ね、踏み固めて数カ月、時々上下をかき混ぜて空気を入れてやる。そうすれば1年後には、手作りの堆肥ができる。
台所ゴミと使用済みの鉢植え用土、そして落ち葉・鶏糞・油粕の堆肥を、ビニールシートに広げて、2週間くらい霜に当てて寒風に晒し、直射日光で消毒する。2週間ほどの間、2~3日に一回天地返しを繰り返すと、ふっくらとした土ができ上がってくる。
さらに、使用するときは、根腐れ防止の「くんたん」と「牛糞堆肥」などを植物に合わせ調整する。また、アブラムシや害虫が心配なら、土に「オルトランDX」などを混ぜ込んでおけば、その被害が防げる。
土の酸性度をチェック
自家製の台所のゴミや、鉢植え用土の再利用で気になるのが、土壌酸度だ。安全に使用するために土のpHを測り、必要ならば苦度石灰などを混ぜて土壌を調整する。この土は、今年の初夏の鉢物の園芸用土となるので、チェックは欠かせない。消毒を済ませた再利用の土は、堆肥と混ぜ、pHチェックをしてから使用する。
酸性度のチェックの方法は次の通り。土壌酸度のチェックができる「アースチェック液」がホームセンターなどで販売されているので、これを使用した。
- チェックする土1に対して2の水道水をコップ(ペットボトルを切って使用)に入れ、よく混ぜ、ゴミを沈殿させる。
- 上澄みの溶液を付属の試験管に5cc入れ、「アースチェック液」を3滴垂らす。
- 溶液の色が変わるので、付属の比色表でチェックする。
- 今までの経験だと、大体5.0~7.0に収まり、一安心。そして育てる植物の適性に応じて、石灰やピートモスで調整する。
再利用の土だけでなく、庭の数カ所の土の酸性度をチェックしてみると面白い。このアースチェックの場合、説明書に「主な植物の適性土壌酸度一覧表」も付いていて、とても参考になる。ちなみに、酸性を好むサツキやブルーベリーがpH4.0~5.0、アルカリ好みのホウレンソウでpH 6.5~7.5など。多くのオージープランツはpH5.5~7.0を好むが、南オーストラリアとパースでは、土壌はアルカリ性だ。僕の庭では、西オーストラリアから来た植物が多いので、酸性には要注意だ。
また、土づくりでは、土の酸性度だけでなく、窒素、リン酸、カリの比率も重要。一般に、窒素は葉をつくり、リン酸は花や実付きを良くし、カリは根をつくるといわれているが、ガーデニングの際にはこのような知識も押さえておくとよい。特に、オーストラリアの植物の多くは、一般的にリン酸の含まれる肥料を多く与えてはいけなかったりする。オージープランツは根から出る酸性の排出物によってリン酸を分解する方法で、微量なリン酸を土壌から抽出する方法を発達させてきた。 それゆえ、肥料から余分なリン酸を摂取すると枯れてしまうことになるのだ。まあ、土づくりは、なかなか奥深いからこそ面白い。
こうしてできたオリジナル園芸用土を早速使用して、デルフィニウムやジキタリスなどの初夏の花苗を鉢に移植。初夏の開花を待つのだ。
オススメの土づくり資材
今回、土づくりに触れてきたので、使いやすい、主な市販の土壌改良関連資材を説明しておこう。ガーデニングの際には、以下のような資材を常備しておくと便利だ。
赤玉土
一般的に、大玉、中玉、小玉の3種があり、粒状で、鉢物に頻繁に使用する水はけの良い基本の土の一つ。一年草の鉢底石代わりにも使われる。
鹿沼土
弱酸性でサツキなどに使用。水はけ、保水性ともに良いので、園芸用土に混ぜることもある。また、清潔なので挿し木などにも使用される。
ピートモス
酸性を示すため、ブルーベリーの植えつけに使用。また、軽いので、酸度を調整すればハンギングの鉢植えにも向く。
腐葉土
腐葉土は、クヌギ・コナラ・ケヤキなどの落葉広葉樹の落ち葉を腐らせてつくった土。通気性、保水性、保肥性に優れ、肥料分は殆どないため、赤玉土などと混ぜて、園芸用土に利用する。
堆肥
動物のフンや野菜ゴミ、樹皮などを発酵させたものなどいろいろな種類があり、肥料分を含む。使用時には成分をチェックする。
発酵油粕
油粕だけだと窒素分が多いため、骨粉などを加えて成分を調整し発酵させた有機肥料。置き肥や元肥に使用。
化成肥料
顆粒状のものから水溶液のものまで、さまざまなタイプがある。必ず成分表が記載されているので、窒素・リン酸・カリの比率と濃度をチェックして使用する。鉢植えには、液肥やマグアンプKなどが使いやすい。
苦土石灰
お馴染みの酸度調整に使用。苦土とはマグネシウムで、消石灰にマグネシウムが入っており、消石灰に比べて根を傷めたりすることが少ないため、扱いやすい。
今回は、冬の園芸作業の土づくりに触れてきたが、「育てるガーデニングの基礎」は何といっても土づくりだ。初夏に立派な花を咲かせたいならば、春が来る前に仕込みをすることが必要なのだ。土づくりの段階から、愛情を込めて手作りするのがいい。冬にどれだけ仕込むかによって一年の庭は変わるのだ。
花が咲き乱れ、豊かなフルーツが実るガーデンを目指すのならば、努力を惜しんではいけない。植物は必ず努力に応えてくれる。さあ、初夏の花が咲き乱れる庭を目指して、寒さに負けずに土づくりをスタートしよう!
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Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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