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艶やかで真っ赤な実をつけるイチゴは、食べても美味しく、見てもかわいいフルーツです。イチゴは果樹ではなく多年草なので、小さなスペースでも栽培でき、家庭菜園やベランダガーデンにもオススメ。そんなイチゴが愛されているのは、日本だけではありません。ドイツでは、イチゴは明るく爽やかな初夏をイメージさせる植物の一つ。ベランダやバルコニーガーデン、家庭菜園などに欠かせません。ベランダガーデンでのイチゴの栽培アイデアや、美味しいイチゴのレシピを、ドイツ出身のエルフリーデ・フジ=ツェルナーさんがご紹介します。

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イチゴの旬はいつ? 日本とドイツの時期の違い

イチゴを飾る
白と赤のティーポットと、白い花、赤いイチゴの組み合わせは、これ以上ない可愛らしさ! 手軽に持ち運べるので、テーブルデコレーションにもぴったり。©StockFood/Löscher, Sabine

色も形も愛らしく、食べても美味しいイチゴの実。ショートケーキの飾りとしてもお馴染みで、日本でも人気の高いフルーツですよね。日本では、クリスマスの頃からよく出回り始めるので、冬から春にかけてのイメージが強いかもしれません。しかし、以前にお話しした通り、ドイツのクリスマスでは、生クリームなどを使ったフレッシュなケーキではなく、クッキーやシュトーレンなどの焼き菓子をいただきます。そのため、冬にイチゴを買うことはあまりありません。

私が「イチゴ」と聞いて思い浮かべるのは、初夏の季節。初夏のドイツでは、満開に花を咲かせたリンゴやサクラの木が、青々とした小麦やオーツ麦、大麦の野原に取り巻かれ、草むらの中にはたくさんのタンポポが咲いて、まるで黄色いカーペットのよう。そんな季節を思い起こさせてくれる果実がイチゴです。

イチゴとアルケミラ・モリス
アルケミラ・モリスとイチゴを組み合わせて小さなフラワーブーケを作るのもアイデアです。黄色い小さな花と赤いイチゴの実、緑の葉が相性抜群。©StockFood/Löscher, Sabine

また、イチゴの魅力は、その甘酸っぱい味だけではありません。白い花も赤い実も愛らしく、ガーデニングの彩りに活躍するほか、フラワーアレンジメントにも重宝します。ざっくりと活けるだけでも、季節の雰囲気を演出してくれますよ。広いスペースも必要なく育てやすいので、ベランダやバルコニーで栽培する人も多いんですよ。

見てキュート! 食べて美味しい! イチゴレシピ

イチゴのトライフル
イチゴをたっぷり使ったトライフル。クリームやスポンジなどを重ねるだけで、見た目もかわいいデザートに。©StockFood/Meliukh, Irina

イチゴの旬である初夏には、たっぷりイチゴを堪能しましょう。天候によって旬の時期は多少異なりますが、ドイツでは、5月頃になるとパン屋やケーキ屋にイチゴを使った商品がたくさん並ぶ「イチゴ・ウィーク」もあり、イチゴを使った美味しいものがたくさん並びます。

イチゴはそのまま食べるのもいいですが、料理やデザートに使っても美味。イチゴを薄く切り、キュウリのスライスやクレソンと一緒にクレープで巻けば、目にも鮮やか! 初夏らしい爽やかな味わいです。ミューズリーにフレッシュなイチゴを加え、牛乳とヨーグルトをかけるだけのシンプルなレシピも朝食にぴったりです。

イチゴとキュウリのクレープ
キュウリのスライス、クレソンと一緒にクレープに。©StockFood/Fit for Fun Verlag

他のベリー類やフルーツと合わせて、フルーツスティックを作るのもオススメです。長めの串を用意し、イチゴやブルーベリー、ラズベリー、ブラックカラントなどのベリーを刺すだけ。チョコレートでコーティングすれば、さらに美味しいデザートのでき上がりです。もちろんイチゴだけでもOK。ちなみに、日本ではイチゴはコンデンスミルクをかけて食べるのが一般的ですが、ドイツではイチゴに添えるなら生クリームなので、日本に来た時にはびっくりしました。

チョコレートがけのイチゴ
©StockFood/Schindler, Martina

このように生で楽しむほか、イチゴはジャムやコンポートにしても美味しいですよね。定番のイチゴジャムも、初夏にたくさん作って保存しておけば、冬まで楽しむことができます。このほか、ドイツでは、RUMTOPFと呼ばれるラム酒漬けもよく作られます。

作り方はとっても簡単。用意するものは、イチゴ500g、砂糖250g、ラム酒ボトル1本、そして4~8週間ほど待つ忍耐力だけ。材料をすべて混ぜてポットや瓶に入れ、蓋をしてそのまま待ちます。4~8週間経ったら、イチゴのラム酒漬けのでき上がり。ラム酒を使っているため、すぐに酔っぱらってしまうほどアルコール度数は強いですが、とっても美味しいですよ。飲み過ぎに注意して、少しずついただきましょう。

ベランダやバルコニーで育てる
イチゴの選び方と飾り方アイデア

バスケット植えのイチゴ
カントリー風のヤナギのバスケットに。持ち手がついているので、移動も簡単。

新鮮なイチゴを味わう一番の方法は、玄関前やバルコニーで数株栽培すること。イチゴは花も実も可愛らしく、小さなスペースで栽培できて、簡単に美味しい果実を収穫することができます。寄せ植えなどにしても、ほかの植物と合わせやすいのも嬉しいところ。イチゴにはたくさんの種類があり、大きく分けても一年に1回だけ実をつけるタイプと、四季なりタイプがあります。イチゴを栽培する場合には、品種選びもポイントになります。

年に1回しか実をつけないタイプのイチゴは、基本的に大きめの花と大きな実をつけます。ジャムにしたり、ケーキをつくったり、ただつまんで食べるのにもぴったり。一方の四季なりイチゴは5月から10月まで長く収穫が楽しめ、大抵は小さめの実をつけます。花はこちらも可愛らしく、花期が長いので、常に新たな花と実をつけた姿が楽しめます。

イチゴのハンギングバスケット
カゴ編みのハンギングで育てれば、イチゴの実が枝垂れて見た目もかわいい! 高さを調整すれば、生育状態のチェックや水やりも簡単です。

バルコニーでイチゴを育てる時は、いい土を使うのがポイント。イチゴ用やハーブ用の培養土を使うとよいでしょう。素敵な植木鉢やコンテナを用意して、排水をよくしてから、イチゴを植えましょう。イチゴ栽培用のストロベリーポットを使うのもいいですね。栽培の際、地面の上にワラを敷くと、実が土に直接触れることなく、病害虫の予防になります。ハンギングに仕立てれば、見た目に新鮮で愛らしいのはもちろん、病害虫が出にくく衛生的に育てられますよ。

イチゴはランナーと呼ばれるつるを伸ばし、子株を作って増えます。種類によってはこのランナーを利用して、つる植物のように仕立てたり、グラウンドカバープランツのように使うこともできますよ。ランナーはつる植物のように自ら巻き付くことはないので、紐などを使って支柱やトレリスに誘引しましょう。

イチゴは栽培しやすいだけでなく、他の植物と合わせやすいのも嬉しいですね。イチゴにオススメのコンパニオンプランツは、ディルやレモンバーム、カモミール、カレンデュラといったハーブ類や、ニンニクやタマネギ、ニラ、ホウレンソウなどの野菜。彩りも多彩で可愛らしい花を咲かせるビオラと合わせても素敵ですね。

自家栽培だからできる贅沢!
たっぷり摘んで楽しむイチゴ狩り

イチゴ

さて、ドイツでイチゴが旬を迎える5月から6月の終わりにかけて、まず初めにする仕事は冷蔵庫のチェック。これから採れるたくさんのイチゴを冷凍できるだけのスペースがあるか、冷凍スペースの確認は必須です。イチゴが旬を迎えると、各地にあるイチゴ畑が開き、多くの人々が出かけます。とはいえ、畑も大きく、それほど混み合うこともないので、ゆったりとイチゴ狩りを楽しむことができますよ。

イチゴ畑は地元の道沿いにあることが多く、大きなイチゴのサインがイチゴ狩りを楽しめる合図。小さな木製のスタンドや仮設の建物が入り口です。イチゴ狩りの際にイチゴを収穫する容器は、基本的に持ち込み制なので、プラスチックのボウルやバケツなど、持ってきた容器の重さを量ってもらったら、イチゴ狩りのスタートです。

イチゴ狩りに来たときは、まずはおなかいっぱいになるまでイチゴを味わいましょう。もう十分、と満足したら、持ち込んだ容器にいっぱいになるまで、イチゴを摘んで、摘んで、また摘みます。このイチゴ摘みが意外と重労働。1時間もすると背中が痛くなり、みんな強い陽射しや風、慣れない作業にうんざりしてきます。でも、翌年にはまた楽しみになるのだから不思議なものですね。イチゴを摘み終えたら、容器を再び計量し、摘んだイチゴの分の料金を支払います。

収穫したイチゴは生の状態では日もちがしないため、摘み終わった後も作業が待っています。きれいに洗ってジャムやコンポートにしたり、ラム酒漬けを作ったり。すぐに処理できないようであれば、冷凍にして保存します。こうしてたくさん収穫しておくことで、初夏の味であるイチゴを、一年を通して楽しむことができます。

ドイツの5月の空気をお届けできたでしょうか?

栽培できるか自信がない、という人は、プロに聞くのが一番。花屋さんやガーデンショップのスタッフと相談しながら、イチゴ選びや栽培を楽しんでみてくださいね。

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Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss/Stockfood, Stockfood

取材/3and garden

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