ムスカリの球根を水耕栽培でかわいく育てる方法
秋植えの球根の中でも小ぶりで、草丈30cm以下とコンパクトな姿で咲くムスカリ。初心者でも育てやすく、部屋の中でも水耕栽培で芽出しから開花まで楽しむことができます。英名でグレープヒヤシンスとも呼ばれ、小さなブドウの房のように見える愛らしさも魅力です。この記事では、ムスカリの種類とともに、室内で咲かせる手順として、土を使わない水耕栽培(ハイドロカルチャー)をご紹介します。
目次
早春に開花する球根、ムスカリ
ムスカリとは、キジカクシ科(ヒヤシンス科、ユリ科に分類される場合も)ムスカリ属の球根植物で、庭植えでは3〜5月中旬に花が咲きます。一度庭に植えておくと、毎年少しずつ増えて、管理の手間がかからない丈夫な植物です。雪が降る地域でも植えっぱなしで冬を越し、雪解け後に小さな花姿が現れて、春の到来を教えてくれます。
花色バリエも豊富なムスカリの種類
ムスカリは、定番の紫花「ラティフォリウム」や「アルメニアカム」のほかに、白花の「ボトリオイデス・アルバ」やピンク花の「ピンク・サンライズ」、淡いブルーの「レディー・ブルー」、ブルーのグラデーションが美しい「オーシャン・マジック」、ライムグリーンの「グリーン・パール(ベレバリア)」など、花色が豊富で、選ぶ楽しみもあります。
ムスカリの名前の由来
ムスカリ(Muscari)という名は、ギリシャ語の「麝香(じゃこう)」のムスク(Musk)に由来します。日本で流通しているムスカリ品種の中で、ムスカリの語源となったムスク系の芳香が感じられるのは、マクロカルパ種系統の品種 ’ゴールデンフレグランス’ 。庭植えでよく見られる、紫花のアルメニアカム種やラティフォリウム種の花は、残念ながらムスクのような芳香はありません。
なお、‘ゴールデンフレグランス’は入手が難しく、ムスカリの香りを嗅いでみたい! という場合は、秋植えの球根の販売がスタートする9月か、その前からネットなどで予約注文をすると入手できる可能性が高まります。
ムスカリを購入したら冷蔵保存
ムスカリの球根は、9〜11月頃園芸店や通信販売などで購入します。早めに購入したら紙袋などに入れて、冷蔵庫に1カ月程度入れておきます。すると、冬を体験させることになり、芽が出やすくなります。涼しい地域にお住まいの方は、外に置いておくだけでもよいでしょう。あせらず、年末年始のまとまった時間がある時に植えつけ作業をしても、十分花が楽しめます。
ムスカリの水耕栽培の手順
用意するのは以下の4つ。球根、ピンセット、空き瓶など穴があいていない容器、セラミスやハイドロボール(写真中央/穴の空いていない容器で植物を育てる際に便利な植え込み材)。お好みで、化粧砂(写真右上/水によって固まる砂なら水に浮いてこず、傾けてもこぼれ落ちずに便利)や、初心者さんには、水の乾きが分かる「セラミスインジケーター」(写真右下)も用意するとよいでしょう。
まず、ガラス瓶の中にセラミスをある程度の深さまで入れます。球根の芽が上になるように静かに入れ、周りにセラミスや化粧砂を入れたら完成!
ガラス瓶の中に収まったように植え付けました。開口部ギリギリまでセラミスを入れて、瓶から飛び出したように植えるのもかわいいですよ。
底に穴があいていない鉢に5球まとめ植え。球根は全体を埋め込まず、根が隠れる程度の深さで植えましょう。全体を植え込むと腐ってしまう場合があります。
植え付け後は、1週間に1度程度、セラミスが完全に乾かないように気をつけながら水を足します。入れすぎたかな? と思ったら、瓶や鉢を静かに傾けて排水しますが、ある程度水が多くても育てられるのが、セラミスなどの植え込み材を使った水耕栽培のメリットです。
陽だまりに置いて芽を育てよう
1月上旬に植え付けたムスカリは、半月で芽を伸ばし始めました。成長スピードがそれぞれ違い、そのアンバランスな感じもかわいいですね。球根を購入する場所が違うだけでも、成長のスピードが変わるので、時間差で育ててみたい場合は、花色ごとにお店を変えて購入するのもテクニック。
1月下旬。どんどんつぼみが上がってきました。早くも花が開いているものもあります。
花がまだ開かず、ツクシみたいなつぼみも、下から咲き上がる花穂もかわいいですね。草丈20cm程度と小さいサイズの球根花は、庭に植わっているとここまで近くで眺められないので、庭に植えている人も、ぜひ、水耕栽培でムスカリを育ててください。今まで知らなかった発見がありますよ。
花が咲き終わったら花茎を切る
午後、西日が差し込む程度の明るい室内の窓近くに置き、2月上旬には、随分花穂が伸びて、咲き切った花はしおれてきました。
終わった花穂は根元から切り取って、お手入れ。すべての球根の花が終わるまで2週間ほど楽しめます。
ムスカリの開花シーズン後のお手入れ
花が終わった2月下旬。瓶を傾けて球根を抜き出しましょう。これまでセラミスに埋まっていて見えなかった根が、ずいぶんと伸びていることが分かります。これもまた感動の瞬間。
球根の形はほとんど変わらないのに、葉が30cmほど、根が20cm伸びました。手のひらに乗るほどの小さな球根の生命力に驚きます。もし、植え付ける地面があったら地植えして葉が枯れるまで育てると、また来年、花が咲きます。ベランダならば、鉢に植えて、葉が自然に枯れるまで育てておけば、来年もまた花が咲く可能性があります。
使ったセラミスは洗って砂と分け、日に当てて乾燥させれば、また再利用ができます。来年の秋まで、次回はどんな器に植えようか? 何色を咲かせようか? また巡ってくる秋が楽しみですね。
ムスカリは地植えにすると、植えてから4〜5カ月後まで花が咲きませんが、暖かな室内の窓辺なら、外で育てるよりも短期間で開花し、花を身近に楽しむことができます。春を先取りする冬のボタニカルインテリア“ムスカリの水耕栽培”。ぜひ、チャレンジしてください。
併せて読みたい
・植木鉢を使わない球根花のおしゃれなインテリア
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Credit
写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/ 2) coloursinmylife /3) olly kiseleva/4 ) Belle NL/ 5) KateChris/ 6) Peter Turner Photography/ 7) Flower_Garden/ 8) InfoFlowersPlants/Shutterstock.com
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