黒田健太郎さんに学ぶ 数株で素敵に! シンプル寄せ植え&コーディネートLesson1

ひと鉢で気軽にガーデニングが楽しめる寄せ植え。玄関先やベランダなど地植えができない場所を華やかに演出できる寄せ植えは、たくさんの種類を使わず、たった数株だけでも素敵に仕上げることができます。ここでは、艶やかで美しい寄せ植えづくりで定評のある「フローラ黒田園芸」の黒田健太郎さんに、とっておきの技を教えてもらいます。併せて、見応えを高めるコーディネート術もご紹介します。
魅力たっぷりの多肉植物を使って
シックなシーンを演出してみよう‼
ニュアンスのある葉色、ユニークな造形、ゆったりとした成長――。さまざまな魅力が揃う多肉植物は、幅広い人々から注目を浴びているおしゃれプランツ。寄せ植えの素材としても非常に人気があります。草姿がコンパクトなので雑貨と相性がよく、小さなコーナーをお気に入りの小物と彩る植物としてピッタリの素材です。どんなものにも合わせやすいですが、コーディネート次第で醸す雰囲気は大きく変わります。仕上がりイメージをよく考えてから苗や鉢選びをすると、多肉植物の特長を最大限に生かしたうっとりとするような寄せ植えをつくることができます。今回は黒田さんに、大人っぽいアレンジ&シーンづくりの技を教えてもらいました。
多肉植物は3つのタイプを知る
多肉植物の成長タイプは、大きく分けて3つあります。ロゼット状態に葉を広げ、こんもり固まって大きく増えるタイプ(A)、縦方向に茎を伸ばすタイプ(B)、葉をつけた細い茎を下垂させて伸びるタイプ(C)です。これらの特徴をふまえ、全体のバランスを考えながら選んでいきます。

Aタイプ(左):グラプトペタラム 秋麗、セデべリア 樹氷、セデベリア‛スノージェイド’など
Bタイプ(奥):カランコエ 仙人の舞、カランコエ 胡蝶の舞、カランコエ 不死鳥 など
Cタイプ(右):オトンナ ルビーネックレス、セダム 玉つづり、セネキオ 京童子
寄せ植えづくりに使う
道具と用土を用意する
多肉植物を育てるための用土選びは重要で、ビギナーさんは市販の多肉植物専門用土を使うと手軽で便利です。育てるのに慣れてきたら、好みに合わせて自身でブレンドしてもいいでしょう。今回は小粒の赤玉土と花用の培養土を同量で混ぜた、黒田さんのお気に入りブレンドを使用。寄せ植えづくりの場合、やや重さのある土の方が根を固定しやすく、管理しやすいという利点があります。土の軽重は好みなので、いろいろ試して配合してみるといいでしょう。
【使う道具】

①トレイ ②ジョウロ ③割りばし ④土入れ ⑤鉢底ネット ⑥ハサミ
【用土】

⑦鉢底土(赤玉大粒) ⑧培養土(赤玉小粒:草花用培養土=1:1) ⑨化粧用ドライのスパニッシュモス
使った多肉植物は6種類、
イメージに合わせて選ぼう

今回はフレンチブーケのようにキュッと詰まった寄せ植えをつくるため、固まって成長するタイプAの多肉植物をメインに使います。それだけだとおとなしくまとまりすぎるので、アレンジに動きを出しつつ鉢の縁をカバーしてくれる、つるを伸ばすタイプCを1株用意。
写真左から①オトンナ ルビーネックレス ②セデベリア‛スノージェイド’ ③セダム‛オーロラ’ ④グラプトペタラム 秋麗 ⑤クラッスラ・メセンブリアンセモイデス ⑥セダム 月の王子
寄せ植えの手順
多肉植物は非常にもろくて葉が落ちやすいので、苗の扱いには細心の注意を払うことが重要です。計画的にそして丁寧に植え込むようにします。苗を一度植えたら位置や向きを変えないように心がけましょう。

1.まずイメージする並びに仮置きをして、それぞれの広がり方や全体のバランスなどを確認する。植えてからやり直しはしない方がいいので、必ず行う。

2.鉢穴の上に鉢底ネットを敷き、排水をよくするため大玉の赤玉土を鉢全体の1/5程度の高さまで入れる。
3.配合した用土を、3/5程度の高さまで入れる。

4.ポットから苗をそっと出す。
5.根鉢の大きさが半分くらいになるように、外側の土をやさしく落とす。

6.一番奥になる位置から植え始めるクラッスラ・メセンブリアンセモイデス。根鉢を入れたら、土を周りから寄せて軽く押し、根を固定させる。
7.ルビーネックレスはそのまま1株植えると大きすぎるので、根鉢を2~3個に分割。

8.最初の苗を植えたらそれからの苗は、効き手が右手なら反時計回りの順番で入れていく。アレンジのフォルムがこんもりとドーム型になり、さらに鉢の縁から葉がこぼれ落ちるようにするために、苗の向きをよく確認してから植える。
9.ルビーネックレスはアレンジの左右2カ所にバランスよく配置。

10.途中段階で土が多すぎるようなら、適宜掻き出して調整する。
11.すべて植え終わったら鉢を軽くゆすり、土が足りていなそうな部分に土を補充。ウォータースペースを取るため、鉢の縁から1㎝下がったところまで入れる。割りばしで土を均してもよいが、葉を落とさないように注意して。

12.ルビーネックレスのつるの一部を、周りの多肉植物の合間に挟み込んだり載せたりして、デザインに動きを与える。
13.つるが茂りすぎた部分はハサミでカットして、ボリュームを調整する。

14.植え込みが終了!

15.株同士の隙間から見える土を隠すために、少量のドライのスパニッシュモスをまんべんなく株間に入れていく。
【完成!】

アンティークなレリーフ模様の植木鉢とグレイッシュな多肉植物を組み合わせたことで、洗練された雰囲気に仕上がりました。高さがある鉢は、枝垂れるルビーネックレスで部分的に覆って見え隠れさせているので、優雅な雰囲気が加わっています。どこから見ても美しく仕上げていますが、花のような存在感を放つシルバーリーフのグラプトペタラム 秋麗を中心手前に据えたことで、メリハリが効いています。
合わせる小物にもこだわって、
最高のシーンを演出!

多肉植物をより魅力的に引き立てるには、多肉植物の葉より目立たたないような色のものを選ぶようにします。シックな印象にまとめたい時には、特に重要なポイントになります。多肉植物はともすると、すすけた印象になってしまうので、ガラス瓶などの透けるものと合わせると多肉植物本来の透明感が引き出されます。さらにアンティークな雰囲気を強調するためには、ドライフラワーをプラスするのがオススメ。よりシックで落ち着いた風景をつくることができます。ドライフラワーと瑞々しい多肉植物は対比が大きすぎるので、周りに苔やセンペルビブムの子株など少量のグリーンを配して、対比をやわらげています。
また、アイアンやブリキなど無機質なアイテムも、多肉植物と相性抜群。寄せ植えの鉢にブリキを使うこともありますが、ジャンクな印象になりやすいので、今回は重厚感のあるものを選びました。そして背景には、あたたかみと落ち着きがある木製のインクトレーを使用。ます目の幅が一様ではないので、シーン全体の表情に深みが出ています。もし何もない壁の前に置いた場合は、フレームなどを立て掛けて変化をつけるといいでしょう。
一緒に飾ったアイテムにクローズアップ
【ディスプレイの骨格をなすもの】
寄せ植えの両側に高さのあるものを配し、ディスプレイのボリューム感を出しながらも、フレームのような効果を持たせています。左右で形をがらりと変えていますが、色や雰囲気のトーンを揃えることで、まとまり感がありつつドラマティックな趣が生まれています。

高さ・フォルム・材質の異なる3つのアイテムをバランスよく配し、シーンに変化をつけて。ブルーがかった瓶には白い砂を3分の1ほど入れ、透ける部分のボリュームをコントロールしつつ明るさをプラスしている。

WEBサイトなどにあるフリー素材のデザインをプリントした紙を張ったガラス瓶にドライフラワーをイン。ドライフラワーはピンクのダブルのクリスマスローズやシルバーリーフのダスティーミラーを束ね、やさしい雰囲気を漂わせて。
【遊び心を加えるアイテム】
寄せ植えの両脇には、色みを控えたさまざまなアイテムをレイアウト。ハサミなどを置くことで、誰かが作業をしていたかのような人の気配をほんのり感じさせています。

【アイテム1】球根やセンペルビブムを無造作にのせたブリキのトレイに、キーのオーナメントでアクセントをプラス。

【アイテム2】ラインが美しい鉄製バサミは、意外にも絵になるアイテムに。

【アイテム3】雰囲気のあるドライフラワーをフックにハンギング。

【アイテム4】クレマチスのタネをつけたリースは線が細く、軽やかな印象を加えてくれる。
【全体のまとまり感を出すのに、ひと役買っているアイテム】

寄せ植えやトレイの下にさりげなく敷いたプリントが、全体のつながりを持たせる大役を担っています。アンティークの紙などを使わずに、フリー素材などをプリントした紙や、切り取った雑誌などをあえてくしゃくしゃにして使うと雰囲気がぐっと高まります。絵柄は周りの色合いに合わせたものを選び、浮かないように気をつけましょう。
健太郎さんのひとことアドバイス
「一度植えた苗には二度と触らないつもりで、計画的に植えこむこと」
【SHOP DATA】
Flora Kuroda Engei
埼玉県さいたま市中央区円阿弥1-3-9
TEL/Fax:048-853-4547
http://florakurodaengei.com/
営業時間:9:00~18:30
併せて読みたい
・大人気の多肉植物! 初心者でも失敗しない種類と栽培基本ルール
・可愛いグリーンインテリア。多肉植物のテラリウムの作り方
Credit

フローラ黒田園芸・黒田健太郎
多くのガーデナーから絶大なる支持を受けている「
取材文&撮影/井上園子
全国の花ファン・ガーデニング
ファンが集う会員制度です。
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