「草取りに明け暮れて、もうウンザリ」と、花咲く庭を夢見ていたのに、いざ庭づくりを始めてがっかりというケースがしばしばあります。驚異的な生命力と繁殖力を持つ雑草たちと、どう付き合っていけばよいのか。草取りで心が折れそうになっている人に、造園家の阿部容子さんからアドバイスです。草取り回避のためにせっかくの庭スペースをコンクリートで固めてしまう前に、除草剤を賢く使うという選択肢も考えてみてください。
目次
草取りの原因になる雑草対策は早めが肝心
春、明るい黄緑色の若葉を開く木々や草花。空気の温みとともに、その色は日に日に濃くなり、桜の花が散る頃にはまるで衣替えをするかのように、庭は瑞々しい緑で覆われます。しかし、その瑞々しい緑の中には、歓迎されざる草たち、いわゆる「雑草」も混ざっています。最初は雑草も小さく、あまり目障りではないものの、放っておけばアッという間にボウボウと茂って、梅雨を迎える時期には鬱陶しいほどに。しかも、その繁殖力は驚異的。真夏は草取りをするそばから生え、ガーデニングのほとんどが草取りに占められ「もうウンザリ」というケースも少なくありません。こんな大変な思いをするなら、庭などやめて業者に依頼して一面コンクリートで固めてしまえ、なんて早まらないで! きちんと対策さえすれば、草取りに追われることなくガーデニングを楽しむことができます。

その対策の一つとして、庭づくりの初期に有効なのが除草剤。特に新築や完全な庭リフォームの場合には、最初に庭に持ち込まれる土は、山を崩した土や野ざらしの残土などで、もれなく雑草のタネがたっぷり入っています。そのまま何もせずにバラや園芸植物を植えて肥料をやろうものなら、雑草のほうが大いに茂って、楽しいはずのガーデニングが草取りに明け暮れることになってしまいます。ですから、好きな植物を植える前に、一度土壌をリセットする意味で除草剤を用いると効果的です。
草取りに役立つ除草剤は適期に適正なものを使おう

ただし、使う際には最低限の使用量で最大の効果を発揮するように、適期・適性を見極め、希釈率などを守って適量を用います。また、持病やペットへの配慮など、特定の事情がないかどうか、確認できた場合にのみ使います。
除草剤と一口にいってもいろいろな種類がありますが、まず大きく分けて雑草の発芽前と発芽後では適する製品が異なります。冬から初春にかけて使うなら、発芽前の土中の種子に対して働きかける「発芽抑制効果」のタイプのものを、春以降、雑草が既に生えてきてからなら「草と根を枯らす」タイプのものが適しています。

除草効果の持続するものとしないものがある
また、効果の持続期間も製品によって異なります。除草剤を使うと、その場所では永遠に植物が育たないように思っている方も少なくないようですが、除草剤は効果がずっと持続するものではありません。ホームセンターなどで入手できる除草剤の中で、最も効果の長いものでも約6カ月ほど。持続期間について特に記載のないものは約2〜3週間で効果が切れます。ですから、駐車場などのように、そもそも植栽計画がない場合には効果の長いもののほうが向いていますし、庭などでその後植栽をするつもりなら、効果が持続しないものを使います。そして、効果が切れた頃を見計らって好きな植物を植えれば、問題なくちゃんと育ちます。このように除草剤にはたくさんの種類がありますから、まず売り場で製品の説明をよく読みましょう。

生命力、繁殖力が強く、たくましい雑草たちですが、我が家の庭には歓迎したくない草類。左上から時計回りに、エノコログサ、チガヤ、セイタカアワダチソウ、スズメノカタビラ。

左上から時計回りに、スギナ、ドクダミ、シロザ、カタバミ。
草取りのコツは「タネを落とさない」こと
除草剤を使って雑草を一掃したとしても、その後も雑草のタネはどこからでも飛んできて、生えてくるものです。けれど、植えた植物のほうが先に大きく育っていれば、後からやってきた雑草はその陰に隠れてさほど大きく育つことができません。このように、育てたい植物が雑草よりも優先的に生育できる環境を整えてあげるという意味でも、最初に雑草を絶やしておくことが大切です。
その後、雑草を見つけたら、小さいうちに抜くことが肝心です。草取りのコツは、とにかく「タネを落とさない」ということ。タネができた状態で草取りをすると、タネがあちこちにこぼれ落ちて、再びアッという間に生えてきます。ですから、タネができる前の小さいうちに抜くことが大事。小さいうちは根張りも浅く、花壇用に土壌改良されたフカフカのよい土なら雑草も簡単に抜けるので、さほど苦労することもありません。
草取りの服装は、動きやすい格好で手袋を装着。道具は、小型の草取り鎌や立ったまま使えるフォークなら腰痛防止に。長時間のしゃがんだ姿勢がつらい場合は、座ったまま移動できる車輪付きの椅子があると楽で効率的です。雑草を若い芽のうちから取り去るには、根っこごと確実に抜くこと。熊手で表土をひっかいた程度では、土中に根っこが残ってしまい再び新芽が伸びてくるので気をつけましょう。

園芸植物が大きく育っている場所では、雑草の入り込む余地があまりない。

グラウンドカバーと呼ばれる匍匐性の植物で地面を覆っておくと、雑草が生えにくい。これも草取りをしない方法の一つ。写真のリシマキア‘オーレア’はゴールドの葉が美しく、丈夫。
●『足元のカバーや雑草対策に欠かせない グラウンドカバーに最適な植物7選』
雑草とうまくつき合うのも大事
「雑草」といっても、それぞれに名前があり、意外と庭の彩りになってくれるものもあります。また、ドクダミやヨモギなど生活に利用できるものもありますし、抜いた雑草は堆肥としても役立ちます。庭づくりをするうえで、雑草と無縁ではいられませんので、上手につき合いながら庭づくりができれば理想的。そしてたいてい、庭づくりの年数を経ていけば、次第にそうなっていくものです。
ただし、最初から草取りに明け暮れて、心がくじけそうな人には、除草剤という選択肢もあります。草取り回避のためにせっかくの庭スペースをコンクリートで固めてしまう前に、除草剤を賢く使って楽しいガーデニングのスタートを切って欲しいと思います。

抜き取った雑草は一箇所にまとめて置いておくと、分解されて堆肥として利用できるようになる。

日本では雑草といわれる植物も英国ではメドウ(野原)ガーデンの素材として使われる。全体に生やしておいて、後から道を刈り込むだけで、美しいメドウガーデンに。

ナチュラルでくだけた演出にも意外と効果的な雑草。
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Credit
アドバイス / 阿部容子 - ガーデンデザイナー/造園家 -

あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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