丈夫で育てやすいクリスマスローズ。でも、思うように株が大きくならなかったり、花が咲かなくなってしまったりなど、お困りの声もチラホラ。花の咲くこの時期は、これまでの管理の成果がよく分かります。この機会にクリスマスローズ栽培の基礎知識と、よくあるつまずきの原因と対策について、掘り下げて解説してみます。

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知っておいてほしい生態と管理のポイント

クリスマスローズを育てる上で役に立つ知識をざっくり整理してみます。

1.ムシムシ ジクジクの環境が嫌い
原生地には、日本の梅雨のような気候がありません。多少凍るくらいの寒さにはびくともしないクリスマスローズですが、夏の高温多湿は大の苦手。この時期を、いかにカラッと涼しくしてダメージなく越えるかが重要です。落葉広葉樹の下などの明るい日陰、排水のいい土を理想として、遮光や土壌改良などでこれに似た環境をつくりましょう。

原種H.アトロルーベンスの原生地スロヴェニア。

2.生長点は地際にある
地表面のすぐ下、根塊の上部にあるこの部分から、葉や花茎が伸びています。この部分は温度や水分などの環境の変化が大きく、ダメージを受けると大きく生育が阻害されてしまいます。芽の周りの土の排水をよくし、マルチングなどで保護して、よい環境を保つようにします。

落ち葉でマルチング。

3.生育期は春と秋
春は新葉が伸び、この葉でつくられる養分が株を成長させ、花芽をつくる大事な役割を担っています。伸び伸びと大きく展葉し十分活動できるよう、植え替えはできるだけ展葉前までにすることや、この時期に養水分が不足しないよう心がけます。また、強い春風で葉を傷めないことも大切です。秋は春よりも根の伸びが旺盛になります。寒さに向かっていく秋は病気の心配も少ないことから、株分けや移植の適期です。

4.花芽の形成には光が必要
日陰でも生育するとはいえ、光が不足すると葉っぱばかりで花がつきにくくなります。深植えしないこと、夏以外の時期には、できるだけ光が当たる環境にすると、よい花がたくさん咲いてくれます。また、寒風の心配がない時は、早めに古葉を取り除きます。

よくあるつまずきポイントと解決策

1.○○しすぎによるもの
買ってきた鉢のまま室内に置いて、まだ新葉が出る前であまり土も乾かないのに、頻繁に水やりしてしまう。すると、弱日照で軟弱になった上に過湿が加わり、地際あたりが腐れ始める。ぐったりしている株を見て、水が足りないと勘違いし、さらに水を与えてダメにしてしまうというパターン。まずは一回り大きめの鉢に植え替えること。水やりは鉢が軽くなり、ちょっと花の首が傾くくらいのタイミングで。新葉が展葉してからは乾きやすくなるので、ここからは土の表面が乾いたらたっぷり灌水します。

一回り大きい鉢に植え替え。

また、夏の頻繁な水やり。朝の灌水は日中の高い気温でお湯になってしまいます。このため地際は煮えるような高温と多湿になり、生長点を腐らせてしまうことに。夏の灌水は地温を下げるつもりで、夕方たっぷり与えます。

株元をきれいにしすぎるのも考えものです。株元の草をきれいに取って、カラッとさせたつもりでも、土を裸にしたままだと、夏はここが灼熱状態になって逆効果。雨の水圧で土も固く締まって、透水性が悪くなります。また冬場、寒風が吹きつけるようなところは、早々と古葉を切り取ってしまうと、花芽を傷めることにもなります。取った草を株元に敷いたり、バークチップなどでマルチングしたり、下草を植えるなどして地際部の環境をマイルドに保つ工夫が必要です。

鉢土の消耗で根が露出。増し土しましょう。

肥料のやりすぎ。特に窒素分は体をつくるために使われるので、多すぎると葉ばかり繁茂してしまうだけでなく、植物を軟弱にします。生育の停滞する夏まで肥料分が土に残っていると、病気や腐敗を招きます。肥料は春の新葉が展開する時期に効くようにし、もし秋に施用するなら花芽のつきを悪くしないよう、窒素分の少ないものにとどめます。

2.根が巻いたまま植えてしまった
ずっと鉢の中で、水分・酸素・養分がリッチな環境で育った根は、露地の厳しい環境の土には合いません。移植した土に合う根が新たに出直し、土中にしっかり根を張るようになって初めて、株が大きく成長してくれるようになります。

株分けして植え付けてから1年たったもの。白い根がたくさん出ている。

売店に並んでいる鉢花は、大抵の場合、鉢いっぱいに根が巻いて、根鉢ができてしまっています。地植えしたのに株が大きくならないという方は、この根鉢を崩さずにそのまま植えてしまったのではないでしょうか。新根が土中に伸びていないと養水分が十分吸収できず、大きくなれないばかりか、株が衰退してしまうのです。発根の旺盛な秋なら、かなり大胆に根を切ったりほぐしたりしても大丈夫です。入手した鉢花は、春のうちは全体の2~3割の根をほぐして、涼しいところで夏越しをし、秋に根全体を思い切りほぐして、しかるべきところに植え直すことをオススメします。

根鉢ができている。
秋にはこのくらい根をほぐす。

3.大株になりすぎて…
毎年たくさん花を咲かせていたのに、パタッと衰退してしまったり、株の中心がハゲたようになってしまったり。これは大株になって葉が込みすぎ、蒸れて株が腐り出したため。花茎が伸びず、地面の近くで咲いてしまうようになったというのは、根詰まりや根腐れなどの障害が生じています。株全体の葉が小さく、葉色が薄ければ、養分が行き届かなくなったということ。どれも株分けしてほしいというサインです。若返りさせるつもりで、秋に株を掘り上げ、思い切って傷んだ根や、株の真ん中の古い根塊を取り除いて株分けをします。

花茎が込んできたら、そろそろ株分け。

失敗したって大丈夫

地上部が枯れてなくなっても、クリスマスローズの場合は、根が生きていればそこから芽を出して、再生してくれますし、かえって若返って前よりよく咲くようになることもあるくらいです。

つまずいて、衰退して、再生させて・・・。クリスマスローズ自体は、もともと手のかからない植物ですが、こんなふうに手をかけることで、より愛着が湧いてくるのかもしれません。つまずきも楽しみながら、どうぞ気楽に、気長にクリスマスローズとお付き合いくださいね。

Credit

写真/文責 大森玲子
筑波大学農林学類卒業後、千葉県で農業改良普及員として勤務。
結婚後、夫と共に自然と共にある暮らし・環境に負荷の少ない農業を志し、『びいなすふぁあむ』を始める。当時はほとんど知られていなかったクリスマスローズの有機無農薬、露地栽培という独自方法での生産に取り組む。近年は“花の季節感、野にある姿の美しさを”伝えるべく、原点に返って、庭で楽しむクリスマスローズの普及に力を注いでいる。

◆びいなすふぁあむ
〒989-1501 宮城県柴田郡川崎町大字前川字裏丁34
TEL 0224-84-4911
http://venusfarm.blog.jp/

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