バラの枝に張りついて養分を吸い取るカイガラムシ。一見して大して被害がないようにも思えますが、実害がとても大きく、カイガラムシの著しい被害にあうと、バラは衰退して最終的には枯死してしまうこともあります。剪定によって枝の量が少なくなり、葉がなくなり害虫が見えやすい冬の間は、カイガラムシ対策の適期です。その対策方法を、バラの専門家・河合伸志さんに解説していただきます。
目次
カイガラムシとは?

カイガラムシには多数の種類があり、そのうちの数種がバラに被害を及ぼします。もっともよくみられるのが、バラシロカイガラムシという種類で、成虫は米粒以下の丸い貝殻状の姿をし、幼虫は細長い形をしています。幼虫は移動ができますが、成虫は移動できません。繁殖力が非常に強く、少しくらいなら大丈夫と思っていると、瞬く間に枝が真っ白になってしまいます。カイガラムシは雨の当たりにくい環境や、風通しの悪い場所では特に発生しやすく、ベランダでの栽培でしばしば問題になります。
カイガラムシは何もないところから突然自然発生することはありません。多くの場合、苗にくっついていてそれを持ち込んでしまったり、隣近所の株から移ってきます。分かりやすい害虫なので、苗購入時には害虫が発生していないかをよく確認することが大切です。


カイガラムシの対策
バラのカイガラムシ対策は、冬の剪定時に行うのがオススメです。剪定後の株は、枝の量が一年で最も少なく、葉がないことは害虫を見付けやすくなり、また薬剤をスムーズにかけることもできます。剪定の方法については、『バラの専門家が教える! 鉢植えで育てるバラの剪定方法』をご覧ください。

<用意するもの>
・歯ブラシ(かため)
・カイガラムシ退治用のスプレー
・農薬用マスク
・手袋
歯ブラシはかためのものを使います。古くなったものなどで十分です。ただし、金ブラシなどを使用すると、枝が傷ついてしまうことがあるので避けましょう。

まずは移動できない成虫を歯ブラシを使って枝から掻き落とします。落ちた成虫は移動できないためそのまま枯死してしまいます。カイガラムシがよく潜んでいる場所は、枝の股の部分や樹皮の下(樹皮は剥いでしまっても問題ない)、誘引紐やラベルの下などです。カイガラムシを1匹見つけたら、絶対にいろいろな箇所にいると思って徹底的に調べてください。株全体を注意深く観察し、見落としがないようにブラッシングしましょう。

カイガラムシをブラシで落としたら、カイガラムシ退治用スプレーを株全体にかけます。ここで使用したのは「カイガラムシエアゾール」。手軽に使えるジェット噴射でしっかりと噴霧でき、季節を選ばずに使用できます。
「カイガラムシエアゾール」/住友化学園芸 https://www.sc-engei.co.jp/guide/detail/1426.html

スプレーをする際には、薬剤を吸い込まないよう農薬用マスクをつけ、肌を露出しない服装で手袋をはめて作業します。枝の裏側など、かけ忘れがないように注意しながら、株全体にしっかり散布しましょう。
これでカイガラムシ対策は完了。カイガラムシはいつの間にか大発生していることがあるので、こまめに株の状態を確認し、見つけたら掻き落とすなど早めに対処をすることが大切です。
カイガラムシと人間の意外な関わり

カイガラムシの一種にコチニールカイガラムシという種類がいるのですが、この名前、どこかで聞いたことがないでしょうか?
コチニールカイガラムシなど一部のカイガラムシが持つ色素化合物を取り出したものが、コチニール色素。染料や食品添加物として使用される赤色の色素です。濃厚な赤色を染めるための染料として古くから重用され、現代でも天然の着色料として、かまぼこなどの食品や化粧品の色素として使用されています。

酸性ではオレンジ色、アルカリ性では赤紫色を発色するこの色素は、かつてはリキュール「カンパリ」の着色料としても使用されていました。
日常生活では厄介者扱いされているカイガラムシですが、実は人間にとってとても有用な生物でもあるのです。
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Credit
アドバイス・文責 / 河合伸志 - 植物専門家・バラ育種家 -

かわい・たかし/千葉大学大学院園芸学研究科修了後、大手種苗会社の研究員などの経歴を経たのち、フリーとして活躍の場を広げる。現在は横浜イングリッシュガーデンを拠点に、育種や全国各地での講演や講座、バラ園のアドバイスやガーデンデザインを行う。著書に『美しく育てやすい バラ銘花図鑑』(日本文芸社)、『バラ講座 剪定と手入れの12か月(NHK趣味の園芸)』(NHK出版)監修など。
写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中! 2026年10月5日発売の書籍第3弾『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』(発行/KADOKAWA)発売中!
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