バラの花が少なくなったり、きれいな花が咲かないのは、バラが弱りかけている証拠です。バラの花が咲かなくなってしまう前に土の診断をして、適切な土壌改良を施しましょう。その基本的な方法や簡便な方法を、いくつかご紹介します。
「今年のバラは花が少なかったかな?」「アッという間に散ってしまった」「きれいな花が咲かなくなってしまった」など、思い当たることがありませんか? それは、バラが弱りかけている証拠です。株が弱って花が咲かなくなる前に、株の活力を取り戻しましょう。養分や水分を吸収する根の環境を変える土壌改良が最も効果的です。
土壌がどうなったら庭植えのバラは元気になるのか?
まずバラの周りの土壌をチェックしましょう
- 土が固くなっている。
→土が固いと根が張れません。 - バラの株元がへこんで水が溜まりやすくなっている。
→株元がへこんでいると過湿になって根腐れを起こし、土壌病害を誘発します。 - バラの接ぎ目の下が土の表面に出ている。
→接ぎ目の下が土で隠れていないと、太くて強い新しい幹が発生しにくくなります。 - 太い根が地面を張っている。
→土が固いので根が地中に入れず養分や水分が吸いにくくなります。
こんなことになっていないでしょうか? 次に日常の管理を振り返って見ましょう。
日ごろの管理はどうしていましたか?
- 肥料は与えたことがないか、気が向いた時に与えたことがある。
→定期的、特に毎年寒肥を与えないと株が弱り、株元から強くて太い芽が出なくなります。茎が細くなると花が咲かないか、小さくなります。 - 一度植えたままで、土壌改良をしたことがない。
→土が固くなって根が養分や水分を吸収しにくくなります。 - 剪定をしたことがない。
→剪定をしないと、着花に関係しない細い枝が増えて株の栄養を無駄に消耗します。
さて、株の周りの土壌をどのようにすれば、バラは元気になって素敵な花を数多く咲かせてくれるのでしょうか? 次の改善が必要です。
- 土を柔らかくする。
- 十分な量の施肥をする。
- 株の周りの排水性をよくする。
- 株元を乾かさない。
- 不必要な枝を剪定しておく。
1と2は土壌改良と寒肥を行います。3と4は株の周りから土を寄せるか、他の土を使って株元を隠します。5は毎年冬に剪定を行います。剪定の方法は他の記事を参考にしてください。
土壌改良の方法は面倒でしょうか?
バラの指南書通りに土壌改良をすると、なんだか大変そうですね。そうです、書いてあることを全てやればひと仕事になります。その通りにやれば最高ですが、そこまでしなくてもバラを元気にすることはできます。以下に3つの方法を記載します。
簡単な土壌改良方法
株の周りの土の表面を竹べらやスコップなどでつついて柔らかく崩します。枝先の下に牛ふん堆肥とリン酸分を多く含む有機質肥料をまき、土と混ぜます。株元に柔らかくなった土を寄せて置きます。土が足りなければ、他から持ってきて土を盛ります。
基本的な土壌改良方法
まず、株元や周りの土の表面をスコップなどで崩しておきます。次に株の大きさに合わせて、深さ20㎝の穴を枝先の下に2~4つ掘ります。その中に適量の牛ふん堆肥、有機質肥料、過リン酸石灰(よう燐やリン酸分を多く含む緩効性化成肥料も使えます)を入れて埋め戻します。次年度は、今年掘った穴の位置を避けて土壌改良を施します。最後に、株元に土を寄せて完成です。株の生育が著しく悪いときは、株の枝先の下に深さ20㎝程度の溝を、株を囲むように掘り、溝の中に前記の土壌改良材や肥料を入れて埋め戻します。
間に合わせになる土壌改良方法
毎年、最低限でもやっておきたい土壌改良方法です。株の周りの土の表面を竹べらやスコップなどでつついて柔らかくしてから、施肥し、その後に牛ふん堆肥で株元を隠すようにマルチングします。
栽培時の土壌改良材の選び方と効果について
栽培中の庭植えのバラの土壌改良材をご紹介します。寒肥と同時に土壌改良を行います。土壌改良材と共に肥料を与えます。
- 牛ふん堆肥
畜舎から排出される牛ふんと敷料を堆積発酵させた堆肥です。主要3成分などを含み、地力を高めます。有機質の分解により肥料成分が有効化されるので、効果がゆっくり長く続いて、肥料切れの防止に役立ちます。多量に連用すると水はけがかえって悪くなることがあります。掘り上げた土に対して2割の使用量を上限とします。それ以上に多くの有機質用土で土壌改良する場合は、バーク堆肥をオススメします。 - バーク堆肥
公園や街路樹などの剪定材の樹皮や樹芯を粉砕後に堆積発酵させた木質堆肥です。土の団粒化に効果的です。牛ふん堆肥に比べ分解が遅いので、排水性などの物理性を長く維持する土壌改良効果に優れます。牛ふん堆肥より劣りますが、主要3成分などの肥料成分を含み、地力を高めます。 - 有機質肥料
油かすなどをベースにした有機質肥料は、土壌の団粒化を促す効果もあります。また、微生物によって分解されてから肥料成分が溶け出すので、冬の時期に比較的多めに与えても障害が出ません(通常は追肥の2~3倍の量を寒肥で与えます)。 - リン酸質肥料
リン酸は花芽をつけるのに欠かせない肥料成分です。土壌改良材ではありませんが、寒肥の時に与えないと、春の開花時に十分な効果が望めません。通常は過リン酸石灰(過石)を利用しますが、熔成燐肥(よう燐)やリン酸成分の多い緩効性化成肥料を利用することもできます。 - リサイクル材
前記の個々の資材を使うのが大変な方は、プランターの土などの古い土を改良するリサイクル材でも代用できます。
Credit
写真&文 / 河合秀治 - 土壌医 -
東京農業大学卒業、同大学院農学研究科前期博士課程中退(花卉園芸学専攻)。大手種苗会社の研究農場で花き栽培と育種業務に従事後、株式会社花ごころ研究室で「花ちゃん培養土」等の家庭園芸用の用土と肥料の研究開発や普及業務を経て、現在は肥料用土の品質保証等の技術情報及び肥料用土関連法、商標等の知財関連法と契約業務等の法務を担当。家庭園芸肥料・用土協議会理事代理や(公社)日本家庭園芸普及協会当協会のグリーンアドバイザー委員会のCPD制度担当副委員長及びたねダンゴ技術委員、GA認定講習会講師、たねダンゴ指導研修講師を勤める。家庭園芸用の肥料用土について「ガーデンセンター」や「花と緑のガイド」など雑誌に寄稿している。土壌医、1級造園施工管理技士、GA園芸ソムリエ。
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