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理想的な土づくりと雑草対策【意外に知らない雑草の効果】

理想的な土づくりと雑草対策【意外に知らない雑草の効果】

Shaplov Evgeny/Shutterstock.com

夏の庭仕事として真っ先に挙げられるのが、雑草対策。酷暑の中での草取りは体力も奪われるため、ガーデナーにとって大いに労力が必要な作業です。そんな雑草も、土にとっては意外な効果があるのはご存じでしょうか。有機無農薬で、メドウ(野原)のようなローズガーデンを育てる持田和樹さんが、ガーデンや家庭菜園での土づくりのための雑草の役割と、土壌を改善する具体的な方法について解説します。

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夏の庭は雑草との戦い

夏の庭
Vita Sorokina/Shutterstock.com

日本の夏は雑草との戦いといっても過言ではないほど。ガーデニングや家庭菜園をされている皆さんは、梅雨から夏の終わりにかけては草取りや草刈りに追われ、一年で一番大変な時期ではないでしょうか?

私も全く同じです。

最近の夏は猛暑日が多く、暑さのため、まともに手入れできる時間も早朝や夕方遅くのみ。しかし、そんな中でも、雑草は雨が降る度にスクスク元気に育つので、そら恐ろしいですよね。

花や野菜が元気に育たないで雑草ばかり育つ、なんてことはよくあります。ガーデニングや家庭菜園を始めた人が挫折する一番の理由が、この雑草との戦いではないでしょうか。

草取りの落とし穴

雑草対策
africa_pink/Shutterstock.com

今回ご紹介するのは、皆さんお困りの雑草対策ですが、じつは草取りをしすぎるのもよくないという事実をご存じでしょうか?

近年多発している猛暑や豪雨、長雨などにより、育てている植物の生育が悪くなることがあります。もしそんな猛暑や大雨から植物を守ってくれているのが雑草だなんて知ったら、皆さんの雑草に対する見方や価値観が変わるかもしれません。

雑草が植物を守る? 雑草を取りすぎた結果

それでは、意外な雑草の効果について見ていきましょう。

土づくり

まずは、この写真。一見すると、雑草が綺麗に取り払われた手の行き届いた家庭菜園の写真です。

しかし、視点を変えて見てみましょう。

このしっかり除草された土は、豊かな土壌に見えるでしょうか? ここでYesと答えるには、少々疑問が湧くのではないでしょうか。

写真を見る限り、地面がひび割れていてガサガサで、まるで不毛の大地です。この土は、保水性がほとんどなくカチカチになっています。常に強い日差しが地面に照りつけ、地中の水分が地表から蒸発してしまっている状態なのです。これでは土の団粒構造に不可欠な微生物や土壌生物(ミミズなど)、昆虫など、水分を必要とする生物が生きていけません。

こうなると、異常気象と温暖化による日本の過酷な夏ではすぐに土が乾いてしまい、何度も水やりをしなくてはならなくなります。

続いて、こちらも同じ場所の写真です。

土壌環境

なんと、雨が降っても水が浸透しないので、水たまりができてしまっています。

あまりに土壌が劣化しているので、土の排水機能が低下し、雨が上がって1日経ってもぐちゃぐちゃで、苔まで生えています。このような状態では、近年よくある大雨や長雨の際には大切な草花や野菜は水浸しになりますし、病気も多発しやすくなります。

土の団粒構造が崩壊するということは、土が隙間のない状態になって目詰まりしているようなものです。こうなると雨が降っても水が浸透しないので、土の保水量も下がってしまいます。

これが雑草を取り過ぎた結果が招いた悲惨な現状です。排水性が悪く保水性もないカチカチの土になり、猛暑にも弱く、大雨や長雨にも弱いという、最悪な土壌状態になってしまうのです。

もちろん除草剤の散布をしすぎても同じことが起きます。

日本ではこのような光景は普通に見られるもので、今まで違和感を覚えることはほとんどなかったのではないでしょうか? しかし、今お伝えした事実を知って、常識といわれることに改めて疑問を抱くきっかけになっていただけたら幸いです。

雑草対策と土壌劣化の原因

土壌環境
Bayhu19/Shutterstock.com

世の中、ほとんどの人が雑草が生えることは悪いことだと思い込んでいるのではないでしょうか。

「雑草が生えると栄養が奪われて、栽培している植物の育ちが悪くなる」とか、「雑草が生えているとみっともない。だらしないと思われる」とか、雑草=悪と思われがちです。

確かに花や作物の光合成の邪魔をするなどデメリットがありますが、じつは持続可能な栽培方法として、今まで敵視してきた雑草を有効活用する方法が世界では進んでいます。

なぜ「雑草=悪」のような価値観が浸透したのか、その裏には、日本の慣行栽培の影響が大きいと感じています。

日常生活で見る畑の栽培方法、つまり農薬や化学肥料、トラクターや耕運機を使用して効率性と大量生産を重視した慣行栽培のやり方や価値観が、ガーデニングや家庭菜園にも浸透しているという訳です。

しかし、ガーデニングや家庭菜園で効率や大量生産を重視して、農薬や化学肥料を多用することを皆さんは望んでいるでしょうか?

これは、必ずしも農薬や化学肥料が悪いということではありません。効率的に大量生産をして収入を稼ぐ農家と違い、ガーデニングや家庭菜園は目的が違うので、全てを真似する必要はないということです。

さて、世界に目を向けてみるとどうでしょうか?

じつは、草生栽培(草を生やす栽培法)や不耕起栽培(耕さない栽培法)では、あえて草を生やすことで土壌構造を維持したり、土地を保護して長期的に豊かな土壌を維持していく方法があります。

日本でこうした手法をよく見かけるのは、果樹園です。果樹の下にあえて草を生やし、土壌の豊かさを維持しています。

土づくりのポイントは土を露出させないこと

マルチング
Marina Varnava/Shutterstock.com

ここで最大のポイントは、「土を露出させない」ことです。これが最も重要です。

じつは、一番土壌にとってよくないのは、地面がむき出しになっている状態です。地面がむき出しになっていることで起きる主な土壌劣化の原因について、以下にまとめます。

1 栄養分の喪失

土壌表面の有機物や栄養分が風雨によって流出することで、土壌の肥沃性が低下します。これにより、植物の生育に必要な栄養素が減少し、植物の生育が悪くなる可能性があります。

2 土壌の水分保持能力の低下

土壌がむき出しになると、水分の蒸発が増加し、土壌の水分保持能力が低下します。これにより、乾燥に弱い土壌となり、植物の生育に影響を及ぼすことがあります。

3 土壌の保護機能の喪失

土壌は本来、風や水の浸食から植物の根や有機物で保護されています。むき出しの土壌ではこの保護機能が失われ、浸食が進むことで土壌の層が削られることがあります。

4 生態系への影響

土壌が劣化することで、土壌中の微生物や動植物の生息環境が悪化します。これにより生態系全体に影響が及ぶ可能性があります。

これらのデメリットはほんの一部で、土がむき出しになることでこれ以外にもさまざまな弊害が起こります。

実践的な雑草対策

ここからは、土がむき出しになるのを防ぐために、明日から使える実践的な方法を3つお伝えします。

【① 土が露出しないように有機物で覆う】

マルチング
New Africa/Shutterstock.com

この方法は、雑草が生えるのを抑えつつ土壌を豊かにする、一番おすすめの方法です。腐葉土やバーク堆肥などのマルチング資材を活用し、地面を覆います。土壌浸食の防止、土壌温度の調節、土壌構造と肥沃度の向上、雑草抑制、水分保持などの効果があります。

この方法をおすすめする理由の1つは、雑草の発芽抑制効果があることです。

植物の種子には、好光性種子という光が当たると発芽する性質を持つものと、嫌光性種子という発芽に光を必要としないものがありますが、雑草に多いのは好光性種子。特に畑で見かけるような雑草には、この性質があります。

雑草は人の営みに合わせて進化しており、特に耕すという人間の行為に合わせてこの性質が効果を発揮しています。耕すたびに、土の中に眠っている種子に光が当たり発芽するようにできているのです。

この性質を逆手に取り、光が当たらないように有機物で地面を覆えば雑草の発芽を抑えることができるのです。

【② グラウンドカバー植物で覆う】

グラウンドカバー
tamu1500/Shutterstock.com

雑草が生えないようにグラウンドカバー植物で地面を覆う方法も有効です。

土壌浸食の防止、土壌肥沃度の向上、雑草抑制、病害虫の発生抑制、水分保持などの効果があります。

植物で地面を覆うことで、①でも述べたように、好光性種子の性質を逆手に取り、雑草の発芽を効果的に抑制しつつ、雑草の成長も抑えます。植える植物によっては美しい景観を演出したり、ミツバチや蝶などの蜜源植物として生物多様性の向上を図ることもできます。

ただし注意点としては、グラウンドカバー植物自体が繁茂しすぎてしまうこともある点があります。一般に、グラウンドカバーとして選ばれる植物は、生育旺盛で密に茂るものが多いため、コントロールできるかに注意して、適切な植物を選ぶことが重要です。

グラウンドカバー

実際に私も実践しておすすめしたいのが、空いている場所には積極的に花を植えること。雑草は何もない所に旺盛に生えますが、ほかの草花がある場所は嫌がる傾向があります。雑草の種子は他の植物が生えていることを認知できるため、先手必勝で雑草が生える前に草花の種子を播いて発芽させるか、苗を植えるかすれば、雑草の発芽と成長を抑えることができるのです。

【③ 雑草を活用する】

雑草の活用
Mariana Serdynska/Shutterstock.com

これは、生えている雑草をうまく活用する方法です。

生えてしまった雑草を切り、その場所に敷き詰めます。こうして地表をカバーすることで雑草の発芽を抑えつつ、有機物を地面に敷くことで時間とともに土に還し、土壌を豊かにするというやり方です。

雑草活用の効果的な方法として、次の2パターンがあります。

雑草対策
BlueRingMedia/Shutterstock.com

1つ目は、雑草の成長点より下を切り、雑草が再生しないようにして刈り取った草を敷き詰める方法です。成長点とは、茎や根の先端にある、細胞分裂が活発なところ。ここから新しい細胞が分裂して植物が成長します。成長点より下で切れば、雑草が再生しないためローメンテナンスになります。ここでのポイントは「根っこを切る」こと! 根は一番弱いため、楽に切れます。

雑草対策
BlueRingMedia/Shutterstock.com

2つ目が、雑草の成長点をあえて残して再生させ、伸びたらまた切って地面に敷き、有機物層を厚くする方法です。この方法は手間がかかりますが、有機物層が厚くなることでミミズなどの土壌生物が増え、土壌構造や土壌肥沃度が向上して植物の育ちがよくなります。イメージとしては、人工的に森の腐葉土を再現する感覚です。

特にイネ科の縦に伸びる草は、切っても切っても伸びるので、有機物層の構築に何度も使えておすすめです。

雑草のマルチング

日本の伝統的な栽培知識の再評価

茶畑
7maru/Shutterstock.com

じつは雑草を利用するこうした方法は、日本茶を育てる畑で古くから使われていた知恵です。

畑の隣にあえて草を生やしておく畑を作り、そこで刈り取った草を通路に敷くのです。しかし、現代では農薬や化学肥料、機械化の導入が進み、このような伝統的な方法はほとんど消滅してしまいました。

日本には里山文化というものがあり、自然と共生する栽培方法を長く行ってきました。

水路の護岸工事や機械化、農薬・化学肥料の普及などにより便利になった一方で、こうした古い自然と共生する栽培方法が廃れてしまったことは残念なことです。

しかしながら、この地球温暖化と気候変動により、従来の人工的な栽培方法では対応できなくなってきているとも感じています。もう一度、古き良き日本の知恵を活かすときが来たのかもしれません。

「土を露出させない」ことが重要

マルチング
Tatsiana Kalasouskaya/Shutterstock.com

雑草対策にはこれまで述べてきたさまざまな方法がありますが、土壌環境のために一番大切なことは、「土を露出させない」ことです。

どの方法で土を覆うかは、庭や畑でも違いますし、広さや環境、地域特性、手入れできる頻度など人それぞれになります。自分のライフスタイルに合う方法で、改めて雑草との上手な付き合い方について、ぜひ実践しながら試してみてください。

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