自宅の庭で長年ガーデニングを続けていると、植えっぱなしで丈夫に育つ植物は、いつしか庭の風景に欠かせないシンボル的存在になってくれます。しかし、限られたスペースでは、想像以上に大きく育って収まらなくなる時期がやってくることも……。ガーデニング歴30年になるガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが、自宅の庭で実践したリニューアルの一部をレポート。これまで多数育ててきたオージープランツとイングリッシュガーデンに選ばれている植物との共存、果たしてどんな景色になるのでしょうか。
目次
イングリッシュガーデン+オージープランツの融合に挑戦
今年4月から約1カ月半かけて、庭の一部をリニューアルしました。じつは「庭の終活」の一環なのですが、「庭の終活」については別の機会に詳しく書くことにして、今回は、僕の独自路線のオージー&イングリッシュ・ガーデンを試みたリニューアルについてレポートしたいと思います。華やかなイングリッシュ・ガーデンとワイルドなオージープランツとが融合すると、果たしてどうなるでしょうか?
まずは、リニューアル後の様子です。これらの植物は、すべて鉢植えです。つまり、寄せ置きガーデンなのです。庭の終活で処分した巨大化したソテツやジャカランダの跡地を利用しました。今後の庭の終活を考え、大きくなる植物の地植えは避け、26年もののニューサイランと、胞子から育てて28年もののディクソニアの2鉢も、もともと地植えしていた株を鉢上げして移動しました。
植えて6年のジャカランダは、樹高5m。樹齢60年のソテツは、株張り3m。もともとは、こんな緑のグラデーションが楽しめる鬱蒼としたトロピカルプランツのコーナーでした。
ソテツとジャカランダを移動すべく作業中の様子。なんせ、自分の背丈以上の巨大株、掘り上げるのが大変でした! この苦労話は、また次回レポートします。
木生羊歯のディクソニアとニューサイランも鉢上げした現在の姿。
想像力を働かせて試行錯誤するリニューアル作業
リニューアル前の様子です。ずいぶん暗い雰囲気で、通路の行き来に不便を感じていました。
まず、ジャカランダ、ソテツ、ニューサイラン、ディクソニアを抜き去って、すっかり空いたスペースに、今回の庭のリニューアルに活躍してくれそうな鉢植えを集めてみました。実際に鉢を並べ始めたのは5月の連休明けです。それまでは、この鉢を置くためのスペースを空けるのに時間がかかりました。
これはリニューアル途中の写真ですが、ちょうど20年前の同じ時期の写真があったので、下の写真と見比べてみましょう。
これが、同じ場所の20年ほど前です。園芸雑誌のガーデニングコンテストでグランプリを受賞し、副賞でハワイ旅行をゲットしたときの応募写真です。
正直、この20年の風景の違いは、あたかも20年歳をとった己の姿を見るようで、ショックでした。庭は主の鏡といいますから……。20年前の写真はコンテスト応募のために作り込んだ庭ですので、現在の自分の好きな植物を並べた庭と比較するものではないかもしれません。しかし、一つ明らかなことは、背景の違いです。20年前は、背景に公道の街路樹の緑が生い茂り、それが庭を引き立ててくれていましたが、今はその街路樹が枯れてしまい、近隣の家々が写り込んでしまっています。
私自身、庭のデザインをするときには、写り込ませたくない外部のものは、できるだけ植物で遮断するよう意識してきたのですが、今回はそれができていませんでした。
そこで、翌日には改良した写真を撮ってみました。少しはよくなりました。
背景になる位置に、大株のグレヴィレア・バンクシーと、銅葉ネムノキの‘サマーチョコレート’を配置しているので、もう少し季節が進んで茂ってくれば、背景の景色を遮断してくれると思います。
写真の撮り方でもずいぶん印象が変わりますが、ある程度近くで撮ったほうが、花の美しさはよく分かりますね。
これが、さらに修正を加えた冒頭と同じ位置から撮った写真です。着手から約1カ月半が経過していて、ほぼ完成に近づいた時期には、ジギタリスやデルフィニウムの花がかなり終わってしまい、ちょっと残念でした。2024年はバラも初夏の花も、見頃が短かったですね。
オージー&イングリッシュ・ガーデンの植物たち オージープランツをPick up!
今回のリニューアルに使用した植物をご紹介しておきたいと思います。
まずは、手前のオージープランツたちです。意外とジギタリスやデルフィニウムとも似合うと思いませんか?
ファッショナブルな庭木として近年注目が高いグレヴィレアを4種入れています。左上から、時計回りに‘ロビンゴードン’、エレガンス、‘ココナッツアイス’、‘ピーチ&クリーム’。絶妙な花色の違いを楽しめます。
グレヴィレアの育て方は、下記の記事を参考に。
カンガルーポーも2種使用しました。右写真の2枚は、今年初めて見る色で、紫がかるカッコイイ色です。
カンガルーポーの育て方は、こちらを参考に。
米粒のように小さい花蕾が周囲の個性的な植物との繋ぎ役になってくれるライスフラワー(写真左)とニューサイランに寄り添い咲くワックスフラワー。
今回鉢上げした大物の木生シダ、ディクソニアと、ニューサイランです。ニューサイランの手前にはプルメリアを配置して、5月中旬には新芽が出てきました。8月頃にはプルメリアも咲くでしょう。
左からアガベ・アテナータ、ディクソニア、デルフィニウム、ユッカ・ロストラータ、バンクシアと、右後方は、コルディリネ‘レッドスター’。ドライ系の植物も使用してモダンな感じにしています。こうして、栽培環境が異なる植物を組み合わせることができるのは、鉢植えで集合させているからなのです。
オージー&イングリッシュ・ガーデンの植物たち イングリッシュガーデン系をPick up!
さて、イングリッシュガーデンの雰囲気を発揮してくれる植物をご紹介します。まずは、ジギタリスとデルフィニウムが咲く風景から。
存在感のあるジャーマンアイリスや、香りのよいジャスミンも使用しました。
今回は薔薇が少ないですが、20年前から我が庭に華を添えてくれる‘クィーンエリザベス’も健在です。
リニューアルを終えて思うこと
今回、「庭の終活」を念頭に、まずは、巨大化したソテツやジャカランダをお嫁に出し、このまま放置して育つにまかせていては掘り上げもできなくなりそうなディクソニアとニューサイランを鉢上げすることから始まったリニューアル。
一念発起のおかげでスペースが空いたので、苗がたくさんできたデルフィニウムとジギタリス、そして手持ちのオージープランツの鉢植えを動員して、私が得意とする“寄せ置きガーデン”の手法で、オージー&イングリッシュ・ガーデンづくりを試みたところ、忙しい時期ではありましたが、とても楽しかったです。
ふと思いついて20年前の同じ場所の写真と見比べて、一瞬ショックを受けたものの、よくよく見れば、今の庭のほうが、数段進化していると自負しております。この20年間を振り返ると、サラリーマンを卒業し、14年間はプロのガーデナーとして活動、植物園の相談員を10年近くしたり、また、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版社)を出版する機会にも恵まれました。
この記事が掲載されている「ガーデンストーリー」サイトにも、毎月、原稿を書かせていただき、かれこれ6年(この記事でなんと100本!)。読者の皆様にも支えられ、刺激をもらい、勉強をさせていただきました。今回は、庭の一部のリニューアルでしたが、いつか残りのエリアも、今の自分が反映された庭にアップデートしたい! という願望が湧いてきています。改めて、ガーデニングって楽しいし、人生をかけられるクリエイティブな趣味だと思った次第です。
G’day, mate.
我が主の作った、オージー&イングリッシュ・ガーデンはいかがでしたか? ボクはヨークシャーテリアなのでイングリッシュ系だけれど、主の喋る英語も訛りのあるオージーイングリッシュだよ。See Ya!
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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