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【狭小花壇実例】奥行き35cmの花壇を華やかなローズガーデンに

【狭小花壇実例】奥行き35cmの花壇を華やかなローズガーデンに

庭づくりでしばしば悩みのタネになるスペース問題。そんな方におすすめなのが、つるバラを用いた花のスクリーン作戦です。奥行きわずか35cmで華やかなローズガーデンを実現する鳥取県米子市の面谷ひとみさんの実例をご紹介します。ポイントは「フェンス」「レイズドベッド」「つる性植物」の3点です。

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境界線フェンス+レイズドベッドで華やかなローズガーデンが叶う!

ここは奥行き35cm、深さ50cm、幅20mの細長い花壇です。隣地との境になる場所で、背後には高さ180cmの木製フェンスを立てています。植栽スペースは狭いものの、このフェンスを利用してつる植物を誘引すると、緑の量感たっぷりの華やかな花のスクリーンを演出することができます。つる植物はいくつかありますが、最も華やかなのがバラ。品種も多いので、花壇の横の長さがある場合はさまざまな花を楽しむことができます。もちろん、長さがなくて1株しか育てられなかったとしても、十分季節を堪能できるガーデンができます。

ピンクのバラは‘ローブアラフランセーズ’。

ここでは花壇の高さを50cmほど上げて、つるバラが根を張るスペースを確保しています。高さを上げた花壇のことをレイズドベッドと呼びますが、しゃがんだ姿勢にならずに手入れができたり、風通しがよくなる、目線で花が楽しめるなどメリットがたくさんあります。

つる性のバラは30〜40cm四方ほどの根を張る空間があれば大きく育ち、伸びたつるはフェンスに誘引すればよいので、このレイズドベッドの奥行きでも十分OK。バラが問題なく育つことができるくらい土の容量があれば、ほかのほとんどの宿根草や一年草も育ちます。

フェンスへの誘引方法と下草の組み合わせ

バラのつるは横に誘引することで花枝が多く発生し華やかになるので、フェンスに弓形になるように誘引しています。フェンスの板の間に誘引ヒモを通し、さらにバラのつるをヒモに通してフェンスに留めつけています。誘引しないと上方へ伸びて、枝の先端にしか花が咲かず、フェンスの上のほうで少量咲くにとどまってしまいます。

バラの株元付近は花が咲かないので、草丈の低い草花を植えて、組み合わせを楽しむことができます。狭い場所に向くつるバラと、バラの時期に株元を彩る草花の組み合わせをご紹介します。

狭い場所に向くおすすめのシュラブローズ&草花

【バラ】

つるバラの中には枝が5m以上も伸びるものがありますが、フェンスの横幅の長さが限られている場合は、枝が100〜200cm程度の「半つる性(シュラブローズ)」に分類されるバラが扱いやすいです。これらのバラを複数組み合わせる場合、株間は100cmほどは取ったほうが、勢力争いが起きずに健全に育ちます。上の写真のバラはシュラブローズの‘ロソマーネ・ジャノン’。5月の一番花のあとにも繰り返し咲き、楽しみの多い花です。

【下草】

黄色のツンツンとした花はバルビネ(ブルビネラ)。南アフリカ原産の植物で、丈夫で繰り返し何年も咲いてくれる宿根草です。最盛期は3〜4月ですが、下から咲き上がって、バラの頃にもまだ彩りを残してくれます。

一年草は、毎年雰囲気を変えて、ペチュニアやバーベナなど好きなものを植えています。花壇の下から咲き上がっているブルーの花はニゲラで、こちらも一年草ですが、こぼれ種で毎年こんな風にあちこちから咲いてくれます。

【バラ】

ふわっとした花が愛らしいピンクのバラは‘ハイド・ホール’。つるは150cm程度の伸びで、夏の間も繰り返しよく咲き、非常に丈夫です。イギリスのデビッド・オースチン社の品種で、英国王立園芸協会の庭園で、数多くのイングリッシュ・ローズが植えられている「ハイド・ホール」の名がつけられています。

【下草】

花心がショッキングピンクの花と紫の花は、矮性で大輪系のナデシコです。葉が細く繊細で、花のない時期も爽やかな草姿が魅力の宿根草です。

【バラ】

白いバラはオールドローズの‘ブルドゥネージュ’。フランス語で「雪の玉」という意味で、幾重にも花弁を重ねたクラシックな花形が魅力です。枝の伸びは150〜200cm程度で、トゲが少ないので誘引がしやすいです。

【下草】

赤い小花はアニソドンテア‘スプリングピクシー’。アオイ科の宿根草で、花は一日花ですが次々によく咲きます。ピンクの小花はペラルゴニウム‘ラベンダーラス’。原種系の丈夫な宿根草で、こちらもふわふわよく咲きます。どちらも愛らしい小花が白いバラの脇役として活躍してくれます。

バラと下草の組み合わせ・私の失敗談

狭い花壇でバラと一緒に植える草花に何を選ぶかは、よく考える必要があります。私はあくまでバラを主役、草花はバラを引き立てる脇役として選んでいるつもりだったのですが、あるときポピーにハマッた私は狭小花壇にポピーを植えてしまいました。これが大きな間違い。暖かくなると同時に、ポピーはものすごい勢いで、草丈も株張りも、バラを押しのけんばかりに生育。栄養をポピーに取られてしまっているのか、隣のバラの生育具合はあまりよくありません。あららら…と思いながら様子を見ていると、ある日バラより大きな立派なポピーが開花! それはそれでキレイな花なのですが、バラとの組み合わせを考えると、ここに植えるべきではなかったと反省しました。

バラと一緒に咲かせるクレマチスの選び方

つる性の植物はバラ以外にもさまざまありますが、宿根草ではクレマチスを取り入れています。クレマチスにはバラにはないブルー系の花色がたくさんあり、組み合わせることでお互いを引き立て合うベストパートナーです。ただし、組み合わせるときに気をつけたいのが、クレマチスの剪定別による次の3つのタイプです。

●新枝咲き/翌春伸びた新しいつるに花が咲くタイプ。冬期に地際からバッサリ切ればOK。

●旧枝咲き/前年に伸びたつるに花が咲くタイプ。冬期に花が咲く枝を選別して残し、再度誘引をします。

●新旧両枝咲き/上記2つの性質が混在するタイプ。

クレマチスは上記のタイプがあり、バラと組み合わせる場合には「新枝咲き」を選ぶようにしています。というのも、バラもクレマチスも冬期に剪定誘引を行いますが、両者のつるは絡みついているため、「旧枝咲き」を選ぶと、クレマチスの残すべきつるを選別しながらバラの剪定もしなければならなくなり、とても作業が複雑になります。ですから、バラと組み合わせる場合には、地際からバッサリ切ればよいだけの「新枝咲き」を選ぶほうが楽です。

生育旺盛な強健種のクレマチス‘プリンス・チャールズ’(新枝咲き)。鉢に入れたまま栽培してもこの花数。

そしてもう一つ、気をつけたいのは、クレマチスとバラの植栽の距離感です。クレマチスは春に休眠から覚めるとものすごい勢いで生育を始めます。対してバラの生育は、ゆっくりじっくり。両者を近くに植えすぎると、新芽を展開しようとするバラをクレマチスが覆ってしまい、バラに日が当たらず生育不良になってしまいます。ですから、両者は最低でも50cmは間をあけて植栽したほうがよいです。場所によってなかなか距離が取れない場合は、クレマチスを鉢に入れたまま花壇に置くなど、生育のコントロールをしています。そして、ある程度バラのつると距離を取りながら、生育に合わせてクレマチスのつるを誘引していきます。

一年草のつる植物スイートピー

一年草のつる植物では、スイートピーを咲かせています。スイートピーには一年草と宿根草があり、バラと開花期が揃うのは、一年草の品種です。スイートピーはタネを前年の10月頃に播く必要があるので、直まきにすると冬から春の間の草花の植え替え時に掘り返してしまう可能性が。そのため、苗を春に植えます。スイートピーは「直根性」といい、根が下にまっすぐ伸びる性質があり、根をいじられるのを嫌うので、定植する際は根鉢をくずさず、そっと植えます。スイートピーは誘引しなくても巻きひげを他の植物に絡ませながら伸びていきます。花が終わる6月頃には気温も高くなるので、蒸れないようにスイートピーは抜き取ります。

狭小花壇の四季

【冬〜早春】

冬期はバラもクレマチスも落葉して緑が少なくなるので、遠目から見てもパッと目に入る鮮やかな花色を選んでいます。特に山陰の冬は、ほとんど雨か曇りで晴れることが少ないので、鮮やかな花色のものを選ぶようにしています。冬の花材は草丈の低いものが多く、さらに前述のように日照不足になりがちで草花も生育しにくいため、花壇の後方には少しでも高さが出るようにヘーベ‘アイスイザベラ’やロフォミルタス‘マジックドラゴン’などのカラーリーフの常緑低木を入れています。手前は冬定番のパンジー、ビオラ、アリッサムなどです。

数メートルごとに色を変えて植栽。左はレッド&パープルエリア。右はピンク&ホワイトエリア。

【春】

春になるとバラやクレマチスが若葉を展開し、フェンスがだんだん緑で覆われてきます。バラの株元でも冬から咲いていたビオラやデージーにこんもりとボリュームが出始め、チューリップやムスカリ、アネモネなどの球根植物が咲いて、華やかさが日毎に増してきます。球根類は、冬にパンジーやビオラなどの一年草の苗を植えた後に植えます。この順番が逆になると、一年草の植栽時に球根をシャベルで傷つけてしまいます。ただし、球根類は秋には入手して保管しておきます。

春は草丈の低い草花が多い中、宿根草のラナンキュラス・ラックスは40〜50cmの草丈になり華やかです。何年も植えっぱなしですが、毎年豪華なブーケのような花を咲かせてくれます。ところどころに、こうしたボリュームのある種類を植えるとアクセントになります。

【夏〜秋】

狭小花壇に植えているバラは返り咲き性の品種を選んでいるため、夏から秋は返り咲いたバラがチラチラと咲き継いでいきます。加えて、6〜7月は高性のダリアが華やかになります。株のボリュームが出るため、バラとかぶらない位置に植えています。真夏はいったん花が休むので、切り戻しをしておくと秋から再びきれいに咲いてくれます。球根は植えっぱなしですが、レイズドベッド花壇は地面より温度が保たれているせいか、掘り上げなくても傷むことなく何年も続けて咲いてくれています。

ご覧いただいたように、たった奥行き35cmでも四季を通じてこんなふうにガーデンが楽しめますし、つるバラを用いることで、春は花のスクリーンを見るような華やかな景色を作ることができます。庭のスペースで悩んだら、「フェンス」+「レイズドベッド」の組み合わせがヒントになるかもしれません。

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