神奈川県川崎市にある、閑静な住宅街の現場事例をご紹介します。公道に面した住宅周囲のスペースを活かし、道行く人にも圧迫感のない、ナチュラルデザインな庭をつくっています。住宅周りのスペースを活用したい方は、ぜひ、参考にしてください。
目次
住宅バルコニーと外周木製フェンスを同系色で統一
今回ご紹介する住宅は、川崎市にある公道沿いの斜面地にあります。ブラックの外壁に、2階バルコニーはライトブラウン、道路沿いのフェンスは濃いブラウンと同系色でまとめ、バルコニーとフェンスは共に横向きに板を張ったつくりにすることで、外観に統一感を持たせています。
自然なアプローチを演出する門柱とペイビング
玄関へ続くアプローチは、一つひとつ形や大きさが異なる石を張った乱形石張り。そこに高さの異なる3本の枕木で手作りした門柱を設置し、黒いフレームのマリンライトを取り付けて、年月を重ねた温かみのある雰囲気を演出しています。門柱の足元に植えたヒューケラも、ナチュラルな色彩が自然になじんでオシャレです。
アプローチに設えられた立水栓の水受け部分には、周囲の乱形石に合わせてモルタルを敷き、そこに白と紺色の六角形のモザイクタイルをデコレーション。大小バランスよく配されたタイルモチーフが、レトロモダンな感じでステキです!
公道に面した幅1mほどの植栽スペース
アプローチ横から公道に面して伸びる幅1mほどのスペースには、乱形石や枕木をランダムに敷き、グラウンドカバーとしてディコンドラを植えています。斜面地ゆえに高くなっている住宅の基礎を背景に、シルバーリーフのシロタエギクが茂り、ピンクやオレンジの花を咲かせる鉢も設置。白い基礎が植物の色彩を引き立たせ、また基礎が悪目立ちしないよう植栽がカバーする効果も計算されています。
この庭でグラウンドカバーとして活用されているディコンドラは、別名ダイコンドラともいい、ハート形の葉が可愛らしい植物です。丈夫で育てやすく、這うように成長します。種まきから1カ月程度で地面が見えなくなるほどのスピードで育つので、グラウンドカバーにおすすめ。びっしりと地面を覆うグラウンドカバープランツを取り入れれれば、雑草も生えにくく、庭の手入れも簡単になるというメリットがあります。
ディコンドラにはグリーンリーフとシルバーリーフの2タイプがあり、グリーンリーフタイプはさらに、乾燥に強いものと、そうでないものがあるので、購入する前にガーデンセンターなどで確認し、取り入れる場所に応じて選ぶとよいでしょう。シルバーリーフタイプは、葉の表面が細かい産毛で覆われています。シルバーっぽく輝く美しい見た目が特徴ですが、過湿になると葉が黒くなります。じめじめしない、乾燥気味のところで育てましょう。
人目につきやすいコーナーを一年中生き生きと飾る常緑樹
公道に挟まれた敷地のコーナー部分には、常緑樹のトキワヤマボウシを植栽し、グリッド状のワイヤーメッシュと組み合わせたデザインフェンスで道路との仕切りを設けています。ワイヤーメッシュは建築基礎材に利用されるもので、これを取り入れたフェンスは、もちろんオリジナル。圧迫感のないデザインで、敷地と公道を隔てる役割を果たしつつも、オープンで軽やかな印象を与えてくれます。こうしたメッシュなどの抜け感のあるフェンスは、風通しを確保するため、植栽した植物の生育にもメリットがあります。
コーナーツリーとして選んだトキワヤマボウシは、一年を通じて葉を保つ常緑樹なので、どの季節も見栄えがよく、また落葉しないため掃除がラクなのも特徴。初夏には白い花を一斉に咲かせ、華やかで見応えのある姿になります。道路に面したコーナー部分は、歩行者や来訪者の目につく場所になるので、フェンスや植栽など魅力のあるデザインを工夫してみましょう。
斜面地にある住宅なので、公道との高低差を埋める階段がありますが、この階段もコーナー部分のデザインフェンスと同じ色に。デザインにつながりを持たせ、統一感を演出しています。植栽やデザインフェンスで柔らかく目隠しされた階段は、公道からも目立たず自然に馴染みます。横板張りフェンスの下に続く擁壁の足元には、枕木で囲んだ花壇を。シルバーリーフや白花など色数を抑えたシックな植栽が、擁壁の印象を和らげています。
まとめ
バルコニーとフェンスなど、エクステリアデザインの素材や色を住宅と併せてデザインすると、家の外観全体に統一感が生まれます。枕木や乱形石をランダムに敷いたナチュラルなペイビングの隙間には、ディコンドラなどの育てやすいグラウンドカバーを種まきすれば、コスパがよくメンテナンスも簡単。そのうえ雑草対策にもなります。クローバーを種まきしてもいいですね。
斜面地に建つ住宅の高い基礎を背景に、低木やグラウンドカバーを植栽したり、枕木で花壇を作れば、基礎を適度にカバーしながら庭づくりを楽しめます。色数を抑えたシックな住宅デザインに合わせ、シルバーリーフなどをバランスよく植栽した飽きのこないガーデン、皆さんもつくってみたいと思いませんか?
設計施工:株式会社プロトリーフ niwa-kura 中田理英子
Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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