家の第一印象を決めるエクステリア(外構デザイン)。家の正面デザインのことを「ファサード」といいますが、建物の外観とコーディネートしたり、引き立てたり、ちょっと遊びのあるデザインを施したり、個性が出しやすいのもエクステリアの魅力です。最新素材を取り入れたおしゃれなエクステリアの住宅実例をプロが解説します。
目次
モノトーンのコントラストでシンプルなデザイン
門袖(もんそで)とは、玄関の前に設置して、表札やポストなどの機能を持たせる壁のことで、エクステリア(家の外観やその周辺設備)の印象を決める重要な設備です。門袖は門柱などと比べて一定のスペースを必要としますが、その分デザイン性に富んで個性を発揮することができます。
この住宅では、門袖はエクステリア&ガーデンメーカー・タカショーの「セラフォームRC杉板」という杉板木目調のタイル張りです。本来は「杉板コンクリート打ち放し」という仕上げがあり、杉板の型枠をつくった中に、コンクリートを充てんして固めた後、型枠を外すという工法で、施工技術が必要であることと工期に時間がかかります。しかし「セラフォームRC杉板」ならば短期で仕上げることができ、なおかつ外観は本来の工法と同様に自然な仕上がりに見えます。
門袖前の足元は紺色の濃淡のタイルを割って、乱形に張り付けています。紺色のタイルにホワイト目地を入れると、紺色が強調されていっそうキレイに見えます。全体的にシンプルなデザインの中にアクセントカラーを使うと、程よく個性が生まれてシンボリックに見せることができます。
階段もグラフィック的なレイアウトで
コンクリート金ゴテ仕上げの階段は、階段というよりも、微妙に正方形の板を左右にずらしながらランダムに並べた、グラフィック(平面構成)的なデザインです。コンクリート表面は単調なグレーではなく、微妙に色ムラがあり自然に見えます。門袖脇からエントランスポーチまで、無理のない自然な高さで上がっています。高い施工技術が必要になるデザインですが、職人技が光る仕上がりになっています。
葉の形や実のなる植栽で楽しむ
アプローチ階段脇は花壇になっています。シンボルツリーはハート形の葉が可愛らしい常緑高木のユーカリ。主な原産地はオーストラリアやニュージーランド、タスマニアなどで、虫よけやリラックス効果があるハーブとしても人気があります。ドライフラワーにして室内に飾ることもできます。
ユーカリにはマルバユーカリやレモンユーカリなどがあり、このファサードでは前者が植えられています。
暖かく乾燥した環境を好むため、日当たりがよく風通しのよい場所に植えましょう。用土はハーブ用の土か、赤玉土7:腐葉土3の割合で混ぜたものを使用し、植え付ける時期は4~8月が最適です。肥料はあまり必要としないので、植えた後のメンテナンスは容易です。
ユーカリの隣にはレモンの木が植栽されています。果実はお菓子や料理、お酒などで幅広く楽しむことができます。
レモンは、暖かく日当たり・水はけのよい場所を好みます。マイナス3℃以下になると枯れてしまったり、葉が落ちてしまう場合もあるので気をつけましょう。
お手入れは3、5、7、9、11月の年5回に分け、油かすなどの有機肥料をあげましょう。まめに施肥をすることで、10月頃には美味しい実がなるでしょう。
グラウンドカバーは一年草のジニアやニチニチソウなどを植栽。季節ごとに植え替えて楽しめる花壇になっています。
ウッドデッキもシンプルに
白いプランターの向こうは、芝生とシンプルなウッドデッキの庭です。
明るい色の木樹脂系のウッドデッキは天然木よりも経年変化が少なく、定期的な防腐処理などの塗装の必要もありません。天然木より高価ですが、長期で考えるとメンテナンス費用がかからないのでお得です。階段とデッキの間のスリットがラインを強調し、オシャレです。木樹脂はいろいろな色があるので、サンプルを見て研究してみましょう。
道路際のいろいろな植栽
道路際のプランターは高木と低木が植栽されています。低木は公道から庭が透けて見えないための目隠しとしての機能を果たします。高木はシンボルツリーとしても人気のあるソヨゴをセレクト。
日向や日陰に関係なく、狭小な場所でも育つ常緑樹を植栽。ソヨゴは秋には小ぶりの赤い実をつけ、景観を楽しませてくれます。また成長が遅くメンテナンスが楽なのも特徴で、マンションのファサードでもよく見かける樹木です。
まとめ
住宅そのものの外観でデザインにこだわったり、個性を出したりするのは費用的にも難しい面がありますが、建物はシンプルでもエクステリアデザイン次第で印象は大きく変えることができます。
この実例では、門袖やアプローチ階段を長方形で統一し、モノトーンのコントラストの中に紺色のアクセントカラーを取り入れた、モダンでおしゃれなファサードが印象的でした。常緑の樹木や実のなる果樹、草花など、メンテナンスと季節感のバランスもほどよい植栽で、暮らしが楽しくなりそうです。
ファサードは、家族がほぼ毎日目にする場所です。その印象によって、気分もガラリと変わるもの。ファサードだけをリフォームすることもできますから、改めて家の第一印象を確かめてみてはいかがでしょうか。
Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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