湘南リゾート地の中でも有名な、葉山に隣接する秋谷の住まいをご紹介します。傾斜地ならではの土地を活かし、2つのバルコニーから湘南海岸を見下ろし、毎日がリゾート感覚で過ごせる地中海風のおしゃれな住宅です。建築・エクステリアの専門家、松下高弘さんが現地を訪れ解説します。
目次
ホワイト×ウッド×洋瓦で地中海風のファサード
住宅とエクステリア(外構)ともにホワイトを基調とし、フェンスや床面の一部を屋根の色とコーディネートして、ウッド調でまとめています。瓦はスパニッシュ瓦といい、地中海沿岸で採れる粘土の色をそのまま活かした濃淡のある美しい色合い。実際、地中海沿岸のリゾート地には、この瓦屋根の家々が立ち並びます。白い壁も地中海の家々では強い日光を跳ね返すために使われる色で、まさにリゾート感を演出した外観です。湘南という土地柄に見事にフィットし、街の風景価値へも貢献しています。
駐車スペースも濃淡のある暖色系のピンコロや板張り、打ち放しのコンクリートをバランスよく配した張り方で、変化のある面白いデザインです。
門扉やフェンスはブラックで高級感を
門まわりにも異素材が組み合わされています。ブラックスチールの門扉の一方は木板張り、もう一方はホワイト大理石調で、温かみのある素朴な雰囲気と高級感のあるモダンな雰囲気のコントラストがオシャレです。
ブラックスチールのフェンスも高級なイメージですが、内側の玄関ポーチはデッキでリラックスした雰囲気。このように複数の異なる素材を使いながら、それぞれの持ち味を活かして、「高級感×リラックス」というリゾート地ならではの空間イメージを巧みに演出している好例です。
1階バルコニーはくつろぎスペース
南側の1階にあるバルコニーは奥行きも長さもあり、戸外生活を充実させてくれる広々とした空間です。ウッドデッキはダーク色ですが、フェンスにはやや明るめのブラウンが選ばれており、単調にならない工夫がうかがえます。ハンモックに揺られながら、この解放感のある眺めの中でお昼寝をしたら、きっと最高の‘シエスタ’になることでしょう。
奥のフェンスは板を通常の2倍使用した密な横板張りで、ややが高めになっています。というのも、この内側の部屋はサウナを完備したバスルーム。ウッドデッキに置かれたデッキチェアは‘整う’ための特等席です。
右手のガラスドアを開けると、バスルームですが、なんと、ジャグジーバスがありました。大理石の壁やバスタブはホワイトベースで清潔感があり、ゆったりとしています。こんなジャグジーバスにつかれば、日頃の仕事などのストレスも、すっ飛んでしまいそうですね。
2階バルコニーからの海の眺めは最高!
2階にもウッドデッキのバルコニーがあります。水平線がはっきりとわかる海の眺めは最高です。写真のように、このバルコニーの手前は奥行きが広くとられ、奥の一部は斜めに狭まっています。あえて斜めにフェンスを設置することで、空間の広さよりも海の眺めを優先させています。仮にフェンスを住宅の壁に対して直角方向にしていたら、手すりが水平線のラインの邪魔になり、見栄えが悪くなったことでしょう。
掃き出し窓に面した部分には、シェードつきのパーゴラを設置。その下にはガーデンファニチャーを置いて、屋外でランチやティータイムが楽しめるスペースになっています。シェードは室内へ差し込む強い光を遮る機能も果たしています。
この部分の横板張りのフェンスも横板の数を倍にして、隣家からの視線をカットし、落ち着いたスペースになるよう工夫されています。デザイナーの細やかな配慮を感じます。
なんといっても高台からの緑や空の素晴らしい景観を、誰の目も気にせず満喫できるようにという心づかいです。
リビングからも海が眺められる
北側のエントランスから入り、ロビーを通ると、そこには広いリビングがありました。2間(約3.6m)の引き違い窓から望む海の眺めもステキです。こんなに広い引き違いの掃き出し窓は珍しく、室内からも眺望が堪能できます。
掃き出し窓の近くにはクワガタやカブトムシの虫かごが並んでいました。お子様や奥様が昆虫好きで、非常に貴重なニジイロクワガタを見せていただきました。自然豊かな土地と、それを楽しむライフスタイルを満喫するご家族です。
傾斜地から住宅を望む
実は、この敷地の南側は海に向かって低い傾斜地になっています。そのため、1階バルコニー下の高い基礎は鉄筋コンクリート造で、1~2階が木造という構造です。
南側の住宅外壁はホワイトをベースにして、柱や筋交、横板張りのフェンスはウッドで構成されています。各階を横ラインで統一しているので、整然とした印象です。
近景の高木越しに見える住宅の見上げの景色もステキですね。
まとめ
湘南・秋谷は平坦な敷地は少なく、傾斜地が多いところで、その土地を活かした眺めにこだわった住宅です。水平線をキレイに見せるバルコニーのデザインが印象的でした。
在宅ワークがライフスタイルの定番となった今、仕事のオンとオフを家にいながらどう切り替えるかが、新たな住宅の課題になっています。
誰もがこんなステキな場所を住まいにできるわけではありませんが、リラックスできる空間作りには、外の景色を取り込むということが鍵となりそうです。この実例では、海や空、自然の緑といった恵まれた環境を存分に取り込んでいました。もし、そうした環境がなければ、庭作りなど、自分で景色を作ることもできます。
また、住み替えも一つの方法です。車で海から30~40分ほどの離れたところであれば、このような住まいを見つけることは夢ではありません。リゾート地に遊びに行きつつ、物件散策をしてみてはいかがでしょうか。
庭の設計施工:ヘブンズガーデン
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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