モノトーンコーデのシンプルモダンなファサードとリゾート感あふれる庭【庭のエクステリア実例紹介Vol.4】
家の印象を決めるエクステリアとガーデン。さまざまなスタイルがありますが、今回は、今人気の「シンプルモダン」をテーマにした実例をご紹介します。住宅とコーディネートし、明るい色と暗い色を融合したモノトーンカラーのシンプルなデザインが魅力です。
ご紹介するのは、西鎌倉の閑静な住宅街の一角にある、エボニー&アイボリーの色彩で構成されたファサードの住宅。現地から2km足らずの先には湘南海岸がある素敵な環境です。
目次
エントランス前の門袖はシンボリックに
エントランスに向かう階段と塀は、アイボリー色でマットなシンプルな仕上げ。玄関扉の前の黒い壁は「門袖(もんそで)」と呼ばれる構造物で、表札やインターホン、ポストなどの機能を持っています。アイボリーの壁とは差別化し、門袖はエボニー色で住宅の外壁とコーディネートし、シンボリックに演出した好例です。階段を上り、門袖の内側に回り込んだ前には玄関ドアがあります。
じつはこの門袖、アプローチ階段と玄関ポーチを挟んだ間にあるという配置は珍しく、玄関ドアの開閉時に、道路からの歩行者の視線をカットする役目も果たします。住宅の外壁の横ボーダータイルに合わせた仕上げですが、ステンレスの表札の長さに合わせ、4等分された縦目地がキレイにまとまっています。住宅サッシに合わせたポストや階段手摺の黒色が全体を引き締め、高級感を出しています。
コーナーや階段脇は落葉樹のシンボルツリーやサブツリーで、秋には紅葉がシンプルな外観にステキに映えるはずです。
庭はナチュラルテイストで
エントランス右側の駐車場脇には、セピアトーンのナチュラルレンガの階段があり、そこを上ると庭があります。シンプルモダンな外構から、ナチュラルな庭空間に変わる境界となる塀は、正方形のコンクリートブロックと、明るい木調ウッドフェンスで構成されています。コンクリートブロックの形は長方形が一般的ですが、正方形ブロックは縦横の方向性を感じさせず、モダンで品よくまとまって見えます。
階段を上ると芝生の広場とウッドデッキが現れました。ウッドデッキの素材は硬くて丈夫なアマゾンジャラです。この広さがあれば、グランピングやホームパーティーなど多用途に活躍しそうです。
南国風の植栽でリゾート感を演出
植栽帯には左側から、ニオイシュロラン、バショウ(ジャパニーズバナナ)、右側はフェニックスロベレニーなど南国の植物が選ばれており、リゾート感満載。湘南海岸のすぐそばという立地にもぴったり似合います。
ニオイシュロランは、観葉植物でよく見かけるドラセナといわれていますが、ニオイシュロランはコルディリネ属、ドラセナはドラセナ属に分類されます。ニオイシュロランは別名コルディリネ・オーストラリスといい、ニュージーランドを原産とする常緑樹です。これに対し、ドラセナは熱帯アジアや熱帯アフリカなどに分布する常緑樹です。
日本でこのような熱帯地方の植物を庭に植える場合、東北地方や北海道の寒冷地では育ちにくいものもあります。しかし鉢物にして夏は庭に飾り、冬は室内で観葉植物として扱えば、年間を通して楽しむことができます。
また植物の背景には、隣家の窓の目隠しになるフェンスも設置されており、視線を気にせずウッドデッキでくつろぐことができます。
株元にはソルトブッシュや鮮やかなニチニチソウの花が咲き、可愛らしいですね。右側のウェストリンギアはシルバーリーフで、オシャレな印象です。ウェストリンギアはオーストラリアが原産で、花や葉がローズマリーに似ています。枝や葉がソフトなイメージで繊細な雰囲気も演出してくれます。
ウェストリンギアやバショウ(ジャパニーズバナナ)など、大小の葉を上手に組み合わせると、品のよいガーデンになります。
ウッドデッキの端は斜めにカットしてあり、株立ちの落葉樹やオリーブなどの常緑樹を植栽。季節の変化が楽しめる庭です。
株元に植えられたふわふわとした細葉はカレックスという植物です。今、人気のある植物で、細長い葉が美しく、緑色の葉や銅葉など品種が豊富です。銅葉とは銅のように赤黒い葉のことで、ブロンズリーフともいいます。また、シルバーリーフは白っぽい葉のことをいいます。銅葉はワンポイントで引き締めのアクセントとして、シルバーリーフはソフトなイメージをガーデンに与えることができます。
ウッドデッキからサイドヤードを通って敷地の外周を歩いていくと、フェンス越しに植栽された常緑樹と玄関脇の落葉樹が見えました。この落葉樹の足元には、赤い砕石を並べた可愛らしい花壇をつくり、来訪者が玄関前に来た時にうるおいを感じられる工夫もしています。
道路側からの歩行者目線でも景観がよく見えるよう配慮されていてステキです。
まとめ
ファサードはモノトーンのカラーで構成された「シンプルモダン」で住宅と統一感を。その一方で、庭は広いウッドデッキと南国風の植栽でリゾート的な雰囲気をという、パブリックエリアとプライベートエリアでガラッと印象を変えた実例でした。どちらもシンプルながら飽きがこず、これから手を加えられる余地を十分に持たせており、ライフスタイルが豊かに展開できそうなエクステリアと庭です。
家で過ごす時間が長くなった昨今、皆さんの家づくり、庭づくりの参考にしてみてください。
庭の設計施工:ヘブンズガーデン 柿崎浩司
Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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