ステキなお庭にするためのカラーコーディネートを考えるVol.9 〜クラシックなメインガーデンのエクステリア〜
庭作りをするときに、まずはじめに考えておきたいのが「イメージ」。カジュアル、エレガント、モダン、和など、庭のイメージを考え、それに当てはまるように舗装材やフェンス、植物など一つ一つの要素を選んでいくと、全体が調和したステキな庭ができあがります。今回、ご提案するのは「クラシック」。前回のファサード(門まわり)に続き、メインガーデンのデザインとカラーコーディネートについてご紹介します。
目次
クラシックのイメージとは
クラシックとは階級を表すラテン語「class/クラス」が語源で、「最高の」または「一流の」という意味になります。そこから、歴史を感じる「伝統的な」や「格式のある」という意味としても用いられます。さらに言葉を連想してみましょう。
エクステリアでは、「落ち着きのある」「堅実な」「豪華な」「高級感のある」「どっしりとした」「重厚感のある」などがそれに当たる用語になるでしょう。
ここでは、クラシックなエクステリアを「落ち着きと重厚感のある高級なイメージ」としてデザインを考えていきます。
「クラシック」の素材と色
上記の言葉に当てはまるエクステリアにするには、どのような素材と色を組み合わせていけばよいのか考えていきましょう。
すぐ思い浮かぶ素材は、赤茶色や茶色のレンガタイルではないでしょうか? イギリスなどの伝統的な建築では、レンガの外壁をよく見かけますね。レンガを住宅の壁や塀などに使うと重厚感のある高級な雰囲気を演出できます。目地を横方向は一直線で通し、縦方向を半分ずらし、交互にレンガを積んだ状態を馬目地(うまめじ)といいます。
塀のレンガタイルの足元には花壇を設け、赤紫、紫、青紫の花を植栽すれば、大人っぽい雰囲気が演出できます。青緑や緑っぽいクールなコニファー類を部分的に加えると引き締まって、レンガタイルともなじみ、イングリッシュガーデン風になります。また、濃いグリーン系のポール照明を設置すると、茶系の中にワンポイント変化があるカラーコーディネートになります。
コニファー類は生長が早いものが多く、年に1~2度の刈り込みが必要です。生長の遅いものもあるので、ガーデンセンターなどで専門家に相談してみましょう。
クラシックなメインガーデンデザインとカラーコーディネート
舗装は、ベージュ系のコンクリート打ち放しをベースに、一部に茶系の濃淡がアクセントになるよう30cmの角型と10×20cmのレンガタイルをキレイに並べました。高・中木や低木、グラウンドカバーを上手に配置すると、高級なクラシックイメージのガーデンになります。
目的のあるガーデンづくり
このガーデンで何をするのかを3つのゾーンに分けて考え、デザインしました。
A. 食事を楽しむスペース
自宅にいながら開放感を味わえるアウトドアなライフスタイルが大流行しています。そこで、ホームパーティーができるテラスをつくりました。テラスの右隣にはエディブルガーデン(家庭菜園)を。収穫したての野菜やハーブをすぐに調理できる便利な位置関係です。
B. 気持ちのよい音色で癒やしのスペース
「音」の演出も庭の心地よさをアップするおすすめの方法です。カスケード(小さな滝の装置)から流れる涼やかな水音や、小鳥のさえずりをBGMにしてみましょう。実のなる木や餌台を置けば、さまざまな野鳥が庭を訪れてくれるはずです。アイアン製のオシャレな餌台を置けば、ステキなオブジェにもなります。また、ガーデンファニチャーがあれば、くつろぎと癒やしの空間にもなります。
図のように、カスケードの上から下に落ちる水の流れは、段差で自然につくれますが、下に落ちた水は、家庭用ポンプで再びくみ上げて循環するようにします。ポンプはホームセンターや通販などで安価で手に入ります。
C. コンパニオンプランツを取り入れたエディブルガーデン
ナスやミニトマトなどの野菜を自分で収穫して、ホームパーティーに活かせば、食卓の話題も盛り上がります。病害虫を防いでくれるマリーゴールドなど、コンパニオンプランツを取り入れて、季節ごとに彩りも楽しみましょう。
ここまでご紹介してきたシーンは、それぞれAは味覚、Bは聴覚・視覚、Cは視覚・触覚・嗅覚を意識しています。庭全体で五感が癒やされるガーデンデザインの提案です。
デザインに斜めのラインを取り入れる
テラスには、斜めのラインを取り入れることで、視線によって変化のある眺めを楽しめます。また、三角形のスペースが生まれるので、そこを植栽スペースとし、緑でうるおいをプラスしましょう。
各部屋から眺めて楽しめるガーデン
ガーデンデザインは、室内からの眺めも大切な要素です。
ダイニングからはカスケードやアイアン製の鳥の餌台のあるガーデが、リビングからは、カラーリーフや緑でうるおう三角形のガーデンが眺められます。ガーデンファニチャーは実用的な側面はもちろん、庭のオブジェにもなるので、デザインにもこだわりたいものです。
樹木の高さで見栄えよく
植栽の眺めのよさのポイントは、低い植物を手前に置き、低木、中木、高木と順に後ろに配置すること。奥行きが生まれ、空間が広く感じられます。つるバラのアーチやコニファー類を植えると、イングリッシュガーデン風のイメージになります。つるバラもコニファー類も、剪定などのメンテナンスは必須です。
まとめ
クラシックなガーデンには、レンガ素材やカスケードといった仕掛け、コニファーなどが似合います。タイルやレンガはテラス全面に張らなくても、部分的に使って十分な高級感を出すことができます。庭の広さに応じて目的のあるスペースを作り、五感への刺激を考慮すると、日常の中に癒やしを感じられます。部屋からの眺めも考えたガーデンは、室内にいながら風景画を楽しむように庭を堪能できます。
さあ! 皆さんも充実したガーデンづくりに挑戦してみましょう。
Credit
文&イラスト / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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