高低差のある庭をデザインするVol.1 ~深基礎編~

shigemi okano/Shutterstock.com
門回りのエクステリア。「道路と敷地の高低差がありすぎて、どうすればいいのだろう?」と思っている方はいらっしゃいませんか? 基礎が高い住宅はよくありますが、この高い基礎をステキに演出できるエクステリアテクニックをイラスト入りでご紹介します。お悩みの方はぜひ参考にしてくださいね。
住宅の基礎はなぜ高くなるのか!?
そもそも、どうして住宅の基礎が高くなるのでしょうか? そんな素朴な疑問にお答えしましょう。
道路よりも敷地が高い場合に、住宅の基礎を深くして敷地の高さを道路の高さに近づけるためです。この深い基礎を「深基礎」といいます。
深基礎とは、敷地と全面道路の高低差や傾斜をカバーするため、基礎の高さを通常よりも深くする工事の方法です。高い基礎というより、地面より下げて基礎をつくるので深基礎という言葉になるんですね。


敷地を高くするために、敷地の道路際または隣地際などを擁壁で立ち上げる方法がありますが、擁壁を立ち上げるよりは、住宅の基礎を部分的に深基礎にすることで、コストが安価になるのです。
そのため、道路からはアプローチ階段を設置して玄関ポーチにつなげますが、駐車場の高さは道路の高さに近づけないと、車の入出庫ができなくなります。したがって、玄関ポーチや駐車場の高さをおさえたうえで、ファサード回りの計画を考えることが必要になります。
参考までに敷地は水勾配といって、雨水が敷地から道路の側溝に流れるように傾斜をつけます。通常2~3%の水勾配をつけます。例えば、駐車場の長さが6mだとすると、12cmの傾斜は2%、18cmの傾斜は3%の水勾配になります。
深基礎のメリットとデメリットは?
深基礎にすると、どんなメリットがあるのでしょうか?
敷地が高台になることで、床下や床上浸水になりにくくなるなどの、水害の心配がなくなります。また、道路の歩行者から室内への視線カットもできます。
それでは、デメリットはどうでしょう? 敷地の形状にもよりますが、一般に、擁壁工事よりも深基礎のほうがリーズナブルなのですが、深基礎は通常の基礎工事よりも高額な費用がかかります。また、道路から玄関までの通路では階段が必要になります。
こんなことも考慮しながら、エクステリアデザインを考えてみましょう。
いろいろな素材を使ってデザインする!
それでは、基礎の高さを活用したエクステリアデザインアイデアをご紹介します。
デザインに共通することは、基礎の足元は花壇にして、植栽できるようにしておくことがポイントです。基礎の足元を植栽で隠すと、和らいだイメージになります。
レンガや石調で
住宅の基礎の無機質なコンクリートの壁は、石やレンガを貼って素敵に変身させてはいかがでしょうか? サビ御影石のベージュ色は植物の緑と自然になじみます。クリーム色、茶色、赤みのレンガは、明るい葉の黄緑色のプリペットやクール色のコニファー類などがキレイにまとまって見えます。また、広い面積の基礎に石やレンガを貼るのはコストもかかるので、部分的に貼ったデザインにするのも、ローコストでオシャレな仕上がりになります。
塗り壁でソフトに
石貼りやレンガのみでなく、塗り壁もDIYでステキな壁に見せることができます。
塗り壁材は粉末に水を混ぜ撹拌しますが、左官材用の高速撹拌機で混ぜないと使えません。そこで、ホームセンターで粉と水が混ざった状態の塗り壁材を購入し、コテを使って塗ってみましょう。塗り壁材によっては、石調やコテムラ調のタイプのローラーで仕上げるものもあり、いろいろな模様を描くことができます。

ハンギングバスケットを飾る
基礎の壁際に木材やアイアンを加工して設置し、そこに、ハンギングバスケットを掛けます。メジャーなものではトレリスがあります。トレリスは斜めやグリッドの格子状のフェンスを立てる方法です。斜め格子のラチスタイプは通販やホームセンターで、お手頃な価格で購入できます。

木材の場合は角材に細長い板を1cm程度間隔でビス止めし、スノコ状の板をつくり、その隙間にハンギングバスケットを掛けます。取り付ける位置が自由にできるのでオシャレに飾れます。

また、アイアン製のデザインフェンスを建て、ツル植物を絡ませるのもオシャレです。
簡単なものでは、通販やホームセンターで手ごろなサイズのスチール製のハンギングスタンドがあります。プランター付きのものもあるので、地面がコンクリートでも倒れにくく、安心して設置することができます。
下の写真のような、花壇にさして建てるデザインフェンスもあります。

立水栓をつけてオシャレに
深基礎の手前は駐車場になるケースもしばしば。そんな時は洗車をするのに都合がよい立水栓を設置するのもよい方法です。10cm角のピンコロタイルや乱形石貼り、レンガなどの素材を使ってつくると、オシャレなオブジェとしても活躍してくれます。花壇の水やりや、お散歩帰りのペットの足洗い場になり、多目的に使えて便利です。
また、水を流す量にもよりますが、排水をどこに流すかを検討する必要があります。
花や植木の水やりや洗車程度であれば、駐車場の勾配で道路際の側溝に流れていきます。手足やガーデン用具も洗ったりすることも考えれば、雨水桝や浸透桝に流れるようにすれば問題ありません。エクステリア工事の専門業者やホームセンターの担当者に相談してみましょう。
石を使って
石を積み上げたり、ゴロタを敷いて基礎の足元を隠すと、深基礎の圧迫感を防げます。ゴロタとは、本来は玉石が波にもまれて摩耗し、直径10cm程度になった石ころのことをいいます。石材の専門店で手に入りますが、直径10~15cm程度で、丸みを帯びていない、割ってあるゴロタもあります。ゴロタの種類は、丹波ゴロタ、伊勢ゴロタなどがあります。伊勢ゴロタは、三重県狐野町で取れるゴロタ石で、白の御影石にサビ色がついて丸みを帯びています。
色はグレーの濃いものから淡いものまで、さまざまな色のゴロタがあります。濃淡を組み合わせて使うのもオシャレな演出方法です。

高低差を緩和する車いすの通路になるスロープのつくり方

高齢者や介護者のためにはスロープが必要になることがあります。深基礎で、玄関から全面道路の高低差が激しい場合はスロープが急になってしまいます。住宅の間取りにもよりますが、リビング前のテラスやウッドデッキまでの長い距離をスロープにすれば、かなり傾斜をゆるくすることができます。スロープの舗装は摩擦係数の多い、ザラザラした素材を使い、スロープの際には10cm程度立ち上がりをつけた花壇をつくれば、素敵なガーデンになります。これは車いすがスロープからはみ出さないための機能としても活躍します。
スロープの勾配は1/16(約6.7%)が理想です。
深基礎をステキにデザインする
それでは無機質なコンクリートの壁の深基礎をステキにデザインしてみましょう。

深基礎の足元は低木やグラウンドカバーで植栽します。地中にはコンクリートの基礎があるので、高い樹木は根を張ることを考えるとおすすめできません。また、上部に庇があると伸びた時に当たってしまうので、剪定などのメンテナンスが必要になります。
オブジェの代わりに、オリジナルの立水栓を設置するのも手です。100角のピンコロタイルで水場を囲い、立ち上がりの壁は、コテムラを入れた塗り壁にして、手作り感を出します。水栓は鳥の形の蛇口を選びました。床や深基礎の壁の一部も不整形な乱形石貼りにして、自然風なデザインにしました。
まとめ
高低差が激しい敷地では、住宅の深基礎と駐車場がコンクリートで無機質な印象になりがちです。深基礎の足元は低木やグラウンドカバーを植え、スノコやアイアンのデザインフェンスを建て、ハンギングバスケットを飾りましょう。既製品のミニフェンスを花壇に刺せば、簡単に可愛らしくなります。
次回は、高低差をステキに生かすアイデアをたくさんご紹介します。お楽しみに!!
Credit

文&イラスト/松下高弘(まつしたたかひろ)
長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、手描きパース・イラスト・CG・模型等のプレゼンテーションや大手ハウスメーカー社員研修、エクステリア業の研修講師およびセミナープロデュースを行う。
著書には、『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』、『住宅エクステリアのパース・スケッチ・プレゼンが上達する本(彰国社)』など。新刊『気持ちをつかむ住宅インテリアパース(彰国社)』、好評につき絶賛発売中!!
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