敷地の形状や広さにもよりますが、狭小敷地になればなるほど、ファサード(建物の正面部分)は、駐車スペースや門、アプローチなど要素が重なりやすくなります。ここでは、狭小敷地に駐車場や駐輪場などの要素を盛り込み、機能的かつ、ステキに見せるファサードデザインの方法を、図やイラスト入りで分かりやすく解説します。
目次
車種によって駐車スペースサイズが変わる!
車のサイズは、軽自動車やセダンなどの普通自動車、ステーションワゴンなど車種によってさまざまですが、道路運送車両法の区分によると、軽自動車は全長3.4m以下、コンパクトカーと呼ばれる小型車は全長4.7m以下、普通車はそれ以上というふうに定められています。
最近では、外車を所有している方も多くなりました。国産車のサイズよりも一回り大きくなるものもたくさんあるので注意しましょう。
エクステリア工事を依頼する際は、専門業者に自家用車の台数、車種、サイズをきちんと伝え、自分の車を出し入れしやすいように、設計・施工をしてもらうことが大切です。車のサイズのみでなく、前面道路幅によっても駐車スペースのサイズが変わります。
駐車スペースのレイアウト
ファサードにおいては、駐車スペースやサイクルポートは敷地に対して面積を占める割合が多く、機能を考えると最初に配置を決めなくてはいけないスペースです。また、ドライバーの乗り降りやトランクの荷物の出し入れのスペースも確保する必要があります。
それでは、駐車スペースのレイアウトを考えてみましょう。駐車スペースは大きく3つのレイアウト方法があります。それぞれの特徴をあげてみましょう。
前面道路幅によってサイズが変わる直角駐車
直角駐車は、前面道路に対して直角に駐車する方法です。
図のように、車の前輪右側の軌跡が大きく膨らむため、前面道路幅が5mの場合は駐車スペースの幅は3mですが、4mの場合は、3.5mが必要になります。
駐車スペースの長さは所有する車の全長+1m程度が必要です。ボンネットやトランクの開け閉めの作業を考慮しておかなければならないからです。
都内などの狭小敷地の場合は、門周りから玄関までのアプローチと駐車スペースを共用することもあります。
運転技量が求められる平行駐車
前面道路に平行に駐車する方法です。一般には、縦列駐車といわれているものです。図のように、前面道路幅と駐車スペースサイズの関係はありませんが、入出庫時に運転技量が求められます。前面道路幅4mの場合には、7~7.5mの長さが必要になります。自動車教習所で苦労された方も多いのではないでしょうか?
また、敷地の形状やサイズにもよりますが、門周りから前面道路の間に駐車スペースがくるため、出庫した後の駐車スペースの景色が殺伐としないように、舗装デザインを工夫したいものです。
30~45度の斜め駐車でサイクルポートの確保を
斜め(30~45度)駐車は前面道路幅が狭いときに便利な方法です。バックでの車庫入れも楽にできます。また、図のように、道路沿いの三角スペースは植栽やサイクルポートスペースに活用できます。
2台並べる直角2台駐車
その他は前面道路に対して直角に2台平行に並べる「直角2台駐車」があります。図のように、前面道路5mの場合は駐車スペース幅が5.5m、4mの場合は6.5mが必要です。
サイクルポートのスペース
現在では自転車は1人1台の時代です。自転車はママチャリやスポーツバイクなど、さまざまなものがありますが、自転車の幅は60cm以内、全長は190cm以内です。(図は単位:mm)
また、図のように、平行駐輪や縦列駐輪などの配置方法がありますが、後者のように自転車を斜めに配置することで、少ない面積に対して台数を増やすことができます。
このほか、スクーターやオートバイなどは全長170~250cm、幅60~95cmと、自転車よりもサイズが大きくなるので、駐車スペースに置くのか、もしくはサイクルポートに置くのかを検討する必要があります。バイクをお持ちの方はサイズを調べてみましょう。
駐車スペース+サイクルポート一体型のメリットとデメリットは・・・
よく、駐車スペースに自転車を置くケースが見られます。一見、まとまって綺麗なデザインに見えますが、車と自転車の置き場所をしっかり区分しておかないと、実際は自転車が置かれた後に、車が入庫できなかったりするデメリットもあります。自転車の置き場所を明確にしておいても、毎日のこととなると、時によっては乱雑になる場合もあります。
駐車スペースの幅が4m以上、または長さが6m以上取れれば、車の脇や後ろに2台までは自転車を置けるようになります。また、自転車を乱雑に置かないように、自転車スタンドを設置すれば、間違いなく指定の位置に置けるので、入庫も安心です。
見栄えも使い勝手もよい駐車スペースとサイクルポートのデザイン
オープンスタイルでは、門の脇に自転車が乱雑に置かれていたり、駐車スペースがコンクリート仕上げになっていて、殺風景な状況を見かけます。そこで、前面道路からの見栄えをよくした植栽のレイアウトを考慮し、使い勝手のよい駐車スペースやサイクルポートの配置をご提案しましょう。敷地の条件にもよりますが、参考にしてみてください。
駐車スペースとサイクルポートを区別する
台所の勝手口前のスペースをサイクルポートにしました。植栽と曲線のデザインウォールでサイクルポートを隠したことで、前面道路からの景観がよくなりました。
サイクルポートの隣の駐車スペースは自転車の妨げもなく、入出庫がスムーズにできます。駐車スペースとサイクルポートは、植栽やデザインウォールを工夫して配置してみましょう。
斜め駐車とサイクルポートの配置
前述の解説のように、斜め駐車は植栽やサイクルポートの配置を決めやすいばかりでなく、前面道路からの景観上の見栄えもよくなります。それは、緑の見える量が多くなるからです。つい、駐車スペースばかりを多く取り、物足りない景観になりがちですが、緑でうるおいを持たせると、街並みにも貢献できます。
余談ですが、最近の地域の街並みでは、住民自らの手で、地域のより良い景観の維持や増進を図るために、自主的な規制を行うことができる「景観条例」を結び、美しい街並みを維持する活動も見受けられるようになってきました。
デザイン:安田計画設計室 安田浩司氏
駐車スペースやサイクルポートは、車や自転車のサイズをしっかり理解した上で、どんな配置がよいのかを検討しましょう。車や自転車を一体で配置するときは、各々のスペースを区別して、自転車は自動車の入出庫の妨げにならないように工夫してみましょう。
自転車スタンド設置は、自転車を置く位置がずれないため、整列させることができて便利です。植栽やデザインウォールは、ステキなファサードになり、前面道路の歩行者から見た印象もよく、景観上の配慮にもなります。
新築やリフォームされる皆さんは、車や自転車を大切にするためにも、ぜひ、参考にしてくださいね。Vol.2では、さらにいろいろなデザインを提案します。お楽しみに!
Credit
文&イラスト / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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