雨水を貯めておく貯水槽「雨水タンク」をご存じですか? 植物を育てるのに必要な水やりにも使えるので、お財布にも優しく、非常時にも役に立ちます。加えて、雨水タンクの設置は、エコロジーの観点だけでなく、大きな目で見ると、環境保護活動にも繋がっています。ここでは、ガーデンセラピーを学べる教室「花音」代表の堀久恵さんに、雨水タンクの選び方・組み立てて設置するまでのレポート、そして、雨水タンクがもたらすサステナブルなガーデニングについてご紹介いただきます。いつもなら、ちょっと憂鬱な雨の日が、楽しみになるかもしれません。
雨水タンクとは?
雨水タンクとは、雨水を貯めておける貯水槽のこと。通常は、屋根に落ちた雨は、雨樋を通って雨水桝に流れる仕組みになっています。雨水タンクは、この雨水桝に行く手前で雨水をタンクに流し、貯めておくシステムなので、貯まった雨水は、ガーデニング時の水やり、夏の打ち水などさまざまな用途に使えて、水道代が節約できます。また、地震や異常気象・自然災害が相次いでいる昨今、断水時には、トイレ処理など非常用水としても利用できます。非常時の備えにもなるなんて、優秀なアイテムですよね。
雨水タンクは、ガーデニンググッズを扱う会社などから、販売されています。デザインや素材もさまざま! 軽量なポリエチレン製、丈夫で錆びにくいステンレス製、陶器、木製樽などデザインもたくさんありますよ。選ぶ際にはデザインの好みだけでなく、容量をチェックしましょう。容量は50~2,000ℓくらいまでいろいろありますので、設置場所に合わせて選ぶとよいですね。
実際に設置してみました
雨水タンクは以前から興味があり、いろいろ見ていたのですが、デザインがナチュラルではなかったり、形が大きすぎたり小さすぎたり。置き場を考えると難しかったりもして、私のイメージにぴったりのものを見つけるまで、なかなか苦労しました。そして、ついに出合ったのが、イギリスStrata社製の雨水タンク(100ℓ)。
これなら庭に置いても違和感がないですし、幅32cmとスリムだから小スペースにも設置できそうな点が気に入って、決めました。

まずは本体
大きな段ボールに入って、届きました(雨水タンクのサイズは、約幅32×奥行38×高さ124cm)。
素材はポリエチレンで、重量は4kgほど。私一人(女性)で組み立てて設置するので、軽いのは助かります。
まず、入っているものを取り出します。タンクのフタの中に、ベースが入っていました。タンクのフタは、くるくると回して取るのかと思ったらそうではなく、スポッと抜き取るタイプでした。一人で勝手に奮闘してしまいました(笑)。
内容物の確認をします
左側の白いものは、取水器セットに。右側の黒いものは、雨水タンクに取り付けます。

取水器の部品の1つ、スカートリングがない!? と一瞬思いましたが、取水器にセットされていました。
必要な道具はこちら

設置場所を決めます
説明書にある寸法図を見て、設置場所を決めましょう。ホースの長さが決まっているため、竪樋(たてどい)から30~40cm以内に設置する必要があります。どこに設置できるか、よく検討しましょう。
私はいろいろ悩みましたが、使いやすさから、ここに設置することにしました。

設置場所は、コンクリートやレンガなどの舗装面や、平らで安定した場所がベストです。我が家はそういう場所がないので、なるべく平らになりそうな場所に決めました。
砂を敷いて踏み固め、水平器を置いて傾きをチェックしました。

蛇口を取り付けます
タンクに蛇口を取り付けます。

コネクターを取り付けます
タンクにコネクター用の穴をあけます。雨樋からの水を、タンクに流すホースを挿し込むためのコネクターです。
ここに丸い穴をあけます。

その時に使う道具が、インパクトドライバーに取り付ける「ホールソー」です。インパクトドライバーはよく使用しますが、ホールソーは初めてでした。ホームセンターで購入しましたよ。
できました!

わりと簡単にあきました。あいた時には、結構なすっきり感が(笑)。
あけた穴にコネクターとパッキンをねじ込み、固定具で留めます。
タンクを設置します
4つのベースを連結して、その上にタンクを設置します。

転倒防止のために、水を入れて安定させましょう。その前に蛇口は閉じておきます。
竪樋(たてどい)を切断します
竪樋を切断して、取水器を付けます。
「そもそも、タンクが雨水でいっぱいになったら、あふれてしまうのでは…」と思ったことはありませんか? この雨水タンクは、満水いになったら、あふれる分は雨水桝に流れるようになっています。それには取水器の取り付ける位置にポイントが!

オーバーフロー面を中心にして竪樋の切断位置を決めます。この商品は、オーバーフロー面を境に、上が4mm・下が2mmになっています。詳細は説明書を見ながら、正しく測ってくださいね。マスキングテープで切断部分に印をつけておき、金ノコを使用して、竪樋を切断します。

この作業は、結構ドキドキしましたね。竪樋を切り取ってしまっていいのだろうか、そもそも、金ノコを使うことも初めてだったので、まっすぐ切れるか心配でもありましたが、無事できました。切断面は、紙ヤスリできれいに仕上げます。手を切らないようにご注意くださいね。
取水器を取り付けます
まずは、上ブタから。竪樋はメーカーによってサイズがことなるので、これは自宅の竪樋のサイズにあわせてカッターで切断するようになっていました。

ガイド線もあって、どこを切るのかは迷うこともなくできましたが、ちょっとカッターでは切りにくい感じもしました。手を切らないように、力加減には気を付けてください。
カットできたら、上ブタを竪樋上部に通します。
続けて、取水器のホース接続口を切断します。

説明書にはカッターで切断すると書いてありましたが、私には切れなかったので、金ノコを使用しました。これを竪樋下部にはめこみ、ストレーナーを取り付けます。

上ブタと合わせます。
雨水タンクと取水器を接続します
ホースで、雨水タンクと取水器を繋げましょう。

ここで、最後にして最大の難関が!
説明書に「ホースをバンドで固定します」と書いてあったのですが、このバンドはどうやって使うのか分からず、時間を取られました。何も考えず、リング状になっていたバンドのボルトを外してしまったのですが、本来は外すものではなかったことが判明しました。やり方をご紹介しますね。

バンドの留め具(ボルト)をいじらず、円形のままホースに通して、留める位置まで持ってきます。ボルトをプラスドライバーで締めていくと、だんだん輪が小さくなっていきました。
最後に動作確認! 水漏れがないかチェックします

水漏れがないか、水が蛇口から流れるか、確認します。

完成です。一人で組み立てて90分ほどかかりましたが、難しい作業はなく、楽しく設置ができましたよ。水は貯めたままにしておくのではなく、定期的に使って入れ替えましょうね。
サステナブルなガーデニング
最近、よく「サステナブル」という言葉を耳にするようになりましたね。サステナブルは、sustain(持続する)とable(〜できる)からなる言葉で、「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。
現在、国連が世界共通の目標として取り組み始めているのが「持続可能な社会」の実現。英語では、Sustainable Development Goals。この頭文字をとって、SDGs〈エスディージーズ〉と呼ばれます。
SDGsは、貧困、環境問題などの課題に対して17の目標が掲げられています。豊かさを追求しながらも、地球環境を守り、ずっと美しい地球で生活し続けていける社会を目指して、私たち一人ひとりが動くことが求められています。
特に、私たち園芸を楽しむ者は、その場限りの美しさを愛でるだけでなく、自然環境を守る視点も大事にするべきではないでしょうか? 健全な生態系を維持することで、庭の生物多様性の保全になり、植物の根を通して排出される水は浄化され、土壌には微生物が棲み、次世代の子どもたちも植物も、共に生きやすい環境が伝承されていくはずです。
また、地表が土の場合、水は時間と共に地中に吸収されますが、コンクリートやアスファルトで覆われた透水性のない場所が増えることにより、ゲリラ豪雨や台風時に、行き場のなくなった水が災害となる訳です。災害対策の一つとして、植物・生き物・水を活用したグリーンインフラの整備も進められています。
今回設置した雨水タンクは、たった100ℓしか貯められません。一人のチカラは小さいけれど、これを各家庭で設置したら、水災害を少しでも軽減することができるかもしれません。
水やりなどの水道代節約になることに加えて、自分の街を守ること・自然環境を守ることにも繋がるなら、やってみる価値はあると思いませんか?
雨水タンクの設置に当たり、補助金(助成金)制度がある市区町村もあるので、お住まいの地区はどうか調べてみるのもおすすめですよ。
Credit

写真&文/堀 久恵(ほり ひさえ)
花音-kanon- 代表、ガーデンセラピーナビゲーター。一般社団法人日本ガーデンセラピー協会専門講師。
生花店勤務を経て、ガーデンデザイン・ハーブ・アロマセラピー等を学び、起業。植物のある暮らしを通じて、病気になりにくい身体を作り健康寿命を延ばすことを目指した「ガーデンセラピー」に特化した講座の企画運営と庭作りを得意とする。植物に囲まれ、日々ガーデンセラピーを実践中。埼玉県熊谷市在住。
https://kanongreen.com/
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