最近は、庭にウッドデッキを設置する家庭を、よく見かけるようになりました。自分の庭で、お茶を飲んだり、ランチを楽しんで、くつろいだりする時代になってきたのではないでしょうか? 読者の皆さんのなかにもウッドデッキを作りたいと思っている人はいませんか? ここでは、ウッドデッキの構造や、一般的な価格相場、D.I.Y.で作る方法を作業工程に沿って紹介していきます。イラストや現場写真を交えて分かりやすく解説します。
目次
ウッドデッキの基本構造を知っておこう!
ウッドデッキの基本的な部材の名称をご説明しましょう。図のように、地面の上に基礎となる「束石(つかいし)」、束石の上には束柱(つかばしら)を立てます。その上部に大引き(おおびき)や根太で構成された床の骨組みを作り、床板を張り、周囲に幕板を張ってウッドデッキができ上がります。床の骨組みは、大引きは床の補強として付けていますが、根太だけで作る方法もあります。ウッドデッキの周囲には安全のために、フェンスを回します。
一般的なウッドデッキの価格・費用は・・・
ウッドデッキの価格は、どのくらいになるのか気になりますね。施工を業者に依頼した場合の一般的な価格は、屋根がないシンプルなもので、2間(3.6m)×1間(1.8m)の広さで、25~40万円程度が目安です。1㎡あたりでは、3~4万円程度が相場になります。
材質によっても、だいぶ変わってきます。例えば、天然木材は1㎡あたり2~4万円程度、人工木材では3万円程度です。天然木材は質感の風合いもよいのですが、経年劣化を防ぐために、防腐剤の処理などのメンテナンスが必要です。その点、価格は多少高いのですが、人工木材は経年変化や劣化が著しく少なく、ほとんどメンテナンスの必要がありません。
支柱を立てて屋根やシェード付きのウッドデッキにするのはオシャレですが、高額になってきます。DIYで作る場合は、人工木材の仕様で、1㎡あたり1万5,000~2万円程度になるでしょう。職人さんの工賃がかからない分、安くなります。
ウッドデッキをDIYで作るための準備
ここでは、ウッドデッキをDIYで作るために、どんな準備が必要になるかをご紹介します。
■道具をそろえる
第一に必要な工具は、ドリルドライバーと電動丸ノコです。手で木材を切ったり、ねじで締めるのは想像以上に大変な作業になるので、ウッドデッキを作るならこの機会にそろえましょう。また、作業する場所から電源コンセントまでの距離を考え、延長コードも用意しましょう。
それ以外に必要な工具は、水平を測る水平器、計測や直角を出す曲尺(かねじゃく)、メジャー、印をつけるための鉛筆などです。
その他、ちょっとした部分を切る手ノコギリ、スコップ、万力、ジャッキ、きり、ステンレスのビスなども必要です。また、防腐剤入りの塗料、束石、手をケガしないように軍手も用意しましょう。防腐剤入りの塗料は、塗装の途中でなくなってしまうと、同じ色を入手しにくいこともあるので、多めに準備しておくことが大切です。
■図面を作成する
ウッドデッキを作るためには、希望のイメージに合ったデザインになるように、図面を作成する必要があります。図面というと大変そうですが、どんな材料が必要かを知るために、自分が分かればよいのです。それでは順を追って解説していきます。
①ウッドデッキのイメージスケッチを描く
まずは、ウッドデッキの設置場所を決め、自分の作りたいイメージを、おおまかでよいのでスケッチしてみましょう。地面からデッキに上がる階段やフェンスなどのデザインも描いてみましょう。
②図面を作成する
①から、ウッドデッキの幅・奥行・高さのサイズを決めて図面を作成します。ここでは比較的DIYで作りやすいように、大引きは使わず根太だけで作る場合で説明します。下のように、上から見た平面図という図面を作ります。
根太は600~900mm間隔で、束柱は900~1,200mm間隔で入れていきます。また、床材は横方向と縦方向で根太の付け方が変わります。
③材料の拾い出しをする
平面図ができたら、必要な材料の個数を決めます。平面図とイラストのように、1,500×1,820mmのデッキで、床材を横方向に張る場合は、下記の材料が必要になります。デッキの高さが500mmだとすると、束柱の高さは、束石の高さと床板の厚み19mmを引いたサイズになります。床材は、幅1,500mm÷床材+隙間(140+3mm)=10.49なので11枚程度が必要です。材料は失敗してもよいように、余裕をもってそろえておくとよいでしょう。
その他、階段や手すりの材料も必要になります。後述で解説します。
ウッドデッキの作り方はいろいろあります。材料出しが大変な場合は、組み立てキットになっているものもあるので、ホームセンターに出向いて調べてみましょう。
ウッドデッキをDIYで作る方法1:基礎編
ウッドデッキをDIYで作る場合の床材と基礎になる束石などについての基礎編をご紹介します。
■床材を決める
作り始める前に、どんな床材にするのかを決める必要があります。
床材は天然木材と人工木材があります。天然木材はソフトウッドとハードウッドがあります。前者は、柔らかく加工がしやすい一方、後者は硬く、下穴をあけてからビス止めするなどの手間がかかるので、DIY向きではないでしょう。
また、人工木材は樹脂系素材で木粉を吹き付けているものが見栄えよく、経年劣化が極めて少ないことからメンテナンスが容易で人気です。表面に凹凸感があるリアルなものもあり、軽量でDIY向けの材料ともいえます。天然木材に比べると人工木材のほうが多少高めですが、色数も多く、白アリがつく心配がなく長持ちするという利点もあるためおすすめです。
予算やご自身のライフスタイルを検討した上で決めましょう。
■束石を選ぶ
次に、基礎になる束石を決めましょう。羽子板付きタイプは束柱に固定しやすく便利です。デッキの高さが低い場合はコンクリート平板を用いても大丈夫です。「図面を作成する」で決めた個数を用意しましょう。また、施工場所の地盤が柔らかい場合は、砕石(さいせき)を敷き詰めてから束石を設置します。地盤が固くてしっかりしている場合は、束石は並べるだけで大丈夫です。
■ビスを用意する
床材を固定するビスも用意しましょう。下穴をあけずにそのまま打ち込める「コーススレッド」というビスで、ネジ状になっているのでドリルドライバーで打ちやすく、初心者DIY向けで便利です。錆びにくいステンレス製がおすすめです。
ウッドデッキをDIYで作る方法2:施工編
いよいよウッドデッキの施工方法です。前述の「図面を作成する」のように、DIYで施工しやすい、大引きは使わず根太だけを組む方法をご紹介します。
1.根太を組んで仮置きする
図面を作成した通りに根太を並べてビスで止めて組み立てます。四隅は直角になっているかを曲尺(かねじゃく)で確認しましょう。また、組んだ根太の上部の高さがそろっていないと床材が水平に張れなくなるので注意しましょう。根太を組んだら設置場所に仮置きして束石と束柱を根太にビス止めしていく方法が作業しやすいです。組み上がった根太を持ち上げるのには3~4人で作業する必要があります。
図のように束石を適宜並べ、組み上がった根太を仮置きし、デッキの高さまで上げて設置します。水平器で水平になるよう確認しながら設置しましょう。根太の高さは床板の厚みを考慮して決めます。図のように、角材やジャッキを束石と根太の間に挟んで、水平になるよう調整していきます。慣れないと大変な作業ですが、水平器を頼りに数人で協力しながら、あせらず進めていけば調整できます。
2.四隅に束石と束柱を固定する
仮置きして組んだ根太の四隅の地面に穴を掘り、砕石を敷き、突き固めます。束石が地盤に固定できたら束柱を立てます。束柱をフェンスの支柱にする場合は長く伸ばしておきましょう。その他の束柱は、床板を水平に張りやすくするために、根太の高さよりも5mm程度低くします。
3.すべての束石と束柱を取り付ける
四隅以外の束石や束柱も、図面の通りに同じ要領で取り付けていきましょう。ここまでくれば、ウッドデッキの土台は完成です。
4.根太の上に床材を張る
床板は家の外壁側から張っていきます。床板同士の間は、3~5mm程度のすき間を開けて張っていきます。これはデッキに水がたまらないようにするためです。曲尺(かねじゃく)をスペーサー代わりに挟んで張っていくと作業が楽になります。床板を万力で固定してから、根太のある部分にビスを打っていきましょう。フェンスの支柱のある部分は支柱部分をカットして張るようにします。
根太の小口部分より5cm程度張り出すように床を張ると見栄えがよくなります。また、はみ出した床材があっても気にせず全部張り、張り終わったら小口にそろえて丸ノコでカットし、幕板を張るという方法もあります。
ウッドデッキを作る方法3:仕上げ編
ウッドデッキをDIYで作るときの、仕上げの工程をご紹介します。
■フェンスを付ける
ウッドデッキにフェンスを取り付ける方法をご紹介します。
フェンスを付ける場合は、床上まで伸ばしておいた束柱をフェンスの支柱にします。
図のように、手すりの高さが800mmであれば、床材(19×140mm)を等間隔で横方向に3枚を並べて、ビスで支柱に打ち付けます。支柱があると取り付けが簡単です。
自由な形のフェンスで支柱がない場合でも、フェンス取付専用金具でフェンスの支柱をデッキに取り付けることが可能です。幅の広いL型金具を使っても取り付けができます。
■階段を付ける
ウッドデッキに階段を取り付ける方法をご紹介します。
住宅の掃き出し窓の下の水切りに、ウッドデッキの床面の高さを合わせた場合は、床面は地面から500~600mm程度の高さになります。この場合、庭からウッドデッキに上がるには階段が必要になります。蹴上(けあげ:階段1段の高さ)は150mmが理想とされていますので、地面から床面までの高さが、500~600mmであれば、少なくとも3段は欲しいものです。踏面(ふみづら:足を乗せる踏板の上面)は200~250mmが目安になり、床板(140mm幅)を使う場合は、一段につき2枚は必要ということになります。
簡単にすませるのであれば、サイズを確認して枕木か既製品の階段を、ホームセンターで探して設置するのもよいでしょう。
DIYでウッドデッキを塗装する方法:ポイントは?
ウッドデッキをDIYで塗装する方法やポイントをご紹介します。人工木材で作った場合は、表面加工の仕上げができているので塗装の必要はありません。束柱や根太などはアルミ製や塗装済みになっている場合も同様です。
■塗装面をキレイにする
まず、最初にすることは床面や手すり、階段の塗装する面をキレイにすることです。汚れやカビ、ヤニなどを、タオルでしっかり拭い取りましょう。汚れが付いている部分を塗装してもキレイに塗れず、仕上がりが汚くなってしまいます。
■塗装面を磨く
次に、サンドペーパーなどを使って、ザラザラしている塗装面をキレイに磨きましょう。ハンディタイプの電動サンダーを使うと作業が容易にはかどります。
■よく乾燥させ養生をする
塗装面がキレイになったら、よく乾燥させます。住宅外壁や窓ガラスやサッシなどは、ビニール製の養生シートなどをマスキングテープで貼り、塗料がかからないようにします。塗装用具や塗装缶なども、汚れ防止のために新聞紙を敷いた上に置きましょう。
■塗装剤をよくかき混ぜる
塗装缶の中の塗装剤を、木の棒などでかき混ぜます。よくかき混ぜないと、色が薄くなってしまったり、ムラになりキレイな色が出なくなってしまいます。一斗缶の場合は、開ける前に缶を逆さにし、倒して転がすようにして、よく振ります。撹拌機(かくはんき)があると容易に作業ができます。かき混ぜたら、使う分量の塗料をバケツに移して塗装します。
■塗装剤の選び方
塗装剤の選び方は、木目を生かすか、塗膜を作るかで異なります。
木目や木の風合いを残したい場合は、浸透タイプの「ステイン系塗料」を使いましょう。防腐効果もありますが、1~3年を目安に塗り替えが必要です。塗膜を作る場合は、白や茶色などの色を付ける、一般には「ペンキ」といわれている塗装剤を使います。ペンキは日光に弱い欠点があり、ひび割れを起こすなどの経年劣化があるので、UVカット効果の高いものを選びましょう。
また、塗料には水性と油性があります。油性は耐水性や耐久性があり、メンテナンスが容易で長持ちします。その反面、シンナーなどの薄め液が必要になり、臭気が強いという欠点があります。水性は、臭気がなく、有害物質が少ないので安全性が高いのですが、耐水性は弱くなります。ホームセンターの専門家に相談して決めましょう。
■塗装するための注意点
いよいよ塗装です。塗装は寒い日や湿度の高い日は避け、天気のよい晴れた日に作業しましょう。風通しがよいと乾きが早くなります。ウッドデッキは、できれば床材の裏側にも塗装を施したほうが長持ちします。塗装をした刷毛はすぐ乾くので、水性塗料は水で、油性塗料は薄め液でよく洗って、刷毛先をキレイに整えれば、何度も使うことができます。
DIYでウッドデッキを作ろう! 費用をおさえて達成感も得られる
ウッドデッキをDIYで作れば、費用をおさえることができるだけでなく、理想のウッドデッキを自分で作ったという達成感が得られます。家族や親せきにも手伝ってもらい、協力し合って作ったウッドデッキであればこそ、多少キレイにできていなくても、そこに愛着を持つことができます。
さあ! 皆さんの庭に「世界にひとつだけのウッドデッキ」を作ってみましょう!
Credit
文&イラスト/松下高弘(まつしたたかひろ)
長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、手描きパース・イラスト・CG・模型等のプレゼンテーションや大手ハウスメーカー社員研修、エクステリア業の研修講師およびセミナープロデュースを行う。
著書には、『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』、『住宅エクステリアのパース・スケッチ・プレゼンが上達する本(彰国社)』など。新刊『気持ちをつかむ住宅インテリアパース(彰国社)』、好評につき絶賛発売中!
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