庭や外の景色を堪能できる半戸外空間「ガーデンルーム」。自宅にいながらリゾートのようなリラクゼーションと開放感が得られる“もう一つの部屋”として今、注目を浴びています。さまざまなデザインがあり、庭に面してだけでなく、屋上に設置したり、プールサイドに設置したりと使い方もいろいろです。ガーデンルームの基本知識とメリット、デメリット、実際の施工例を多数紹介していますので、ぜひお見逃しなく!
庭でのくつろぎ空間「ガーデンルーム」…メリット、デメリットは?
ガーデンルームとは、天井や壁、扉がガラスやアクリルでつくられて、太陽の光を入りやすくした部屋のことをいいます。
一般的にリビングの延長のテラスやデッキ、または、庭先に離れとして設置されます。室内のリビング、ダイニング、キッチン、ベッドルームに加え、ガーデンルームは庭につくる部屋として、生活に幅を持たせることのできる空間になります。
それでは、ガーデンルームを作る際に知っておきたいメリットやデメリットを解説します。
メリット
オーストラリアでは、“アウトオブリビング”と称して、リビングに接した庭の一部分に屋根やシェードで天井を作り、戸外に部屋のような空間を作って自宅でのアウトドアライフを充実させています。
ガーデンルームはより居住としての快適性を高めた空間です。リビングなどの室内からガーデンルームの床をフラットにすれば、「もうひとつの部屋」のような空間が生まれます。
ガーデンルームがあることによって庭に出やすくなるので、自然に触れることで、癒やし効果があり、ストレスもなくなります。完全な戸外ではないため、ハトのフンが落ちてきたり、虫が嫌いで・・・などという心配もありません。また、雨の日でも関係なく、いつでも洗濯物を干すことができたり、衣類に花粉がつかない、下着の盗難防止など、生活の実用面でも多くのメリットがあります。
デメリット
ガーデンルームは、新築よりもリフォーム時に設置されることが多いようです。これは、敷地の用途によって建築できる面積が法規で決まっているので、ガーデンルームを建てる際は、建築設計事務所や施工会社などの専門家に相談することが大切です。
また、ガラス張りなので季節によっては温度調節が難しい場合があります。シェードを付けたり、空調設備を整えたり、またドアの開閉をマメに行うことで日射や風通しの対応をしましょう。
それから、お隣さんや前面道路の外部からの人目が付きやすいことや、防犯面も気になりますね。そんなときは、目隠しフェンスで外部の視線を遮る工夫をしましょう。
ガーデンルームの特徴は開口部(窓やドア)… 種類もさまざま!!
ガーデンルームにはさまざまな種類やサイズがあり、デザイン性に富んだものまで多様です。中には1m幅程度の細長いスペースでも設置できる、狭小地向きタイプもあります。
それぞれのメーカーによって、さまざまなラインナップがありますので、ガーデンルームをどう使い、どんなデザインにするのか、よく検討して選びましょう。
また、ガーデンルームは、使う目的や使い勝手をよくするために、開口部(窓やドア)の開け方や種類がいろいろあります。ここでは、大きく、「人が出入りできる」機能と「風通しよくする」機能を持ったものに分けて、開け方の違いを解説します。
●出入りできる開口部
◯テラス窓(掃き出し窓)
住宅の掃き出し窓と同じようなもので、外への出入りができる引き違い窓になります。横幅(間口)が約1.8m(1間)の場合は、建具が2枚、約2.7m(1間半)や約3.6m(2間)の場合は、建具が4枚になります。クレセント錠がついているので施錠することもできます。
クレセント錠とは室内側に取りつける回転する半円形の締め金具です。この金具が三日月のような形をしていることからクレセント(Crescent:三日月)と名付けられました。余談ですが、もともとはアメリカのクレセント社という金物メーカーの商品です。
◯折りたたみ戸(折れ戸)
テラス窓や引き戸は片側しか開放できませんが、折りたたみ戸(折れ戸)は開口部分を全面開放できるメリットがあります。庭の眺望と出入りのしやすさから、ウッドデッキに設置することが多いようです。
◯引き戸
テラス窓と同じように、出入りのできる引き違い窓です。開閉するための引手の部分や錠の形状はテラス窓と違っていて、和風住宅の玄関に近いイメージで取っ手がついています。
◯片開きドア
片開きのガラスドアのことです。庭に出入りするために使います。ガラスドアなので、中からの視認性がよく、外からも施錠ができるので防犯性にも優れています。ドアクローザー(開けたドアを自動的に閉める動作をするもの)をつけることもできます。風などでバタン!とドアが閉まらず安全です。
◯スライドドア
左右に引いてスライドできるガラスドアです。サッシュレスで施錠もでき、シンプルでおしゃれなデザインです。
●風通しをよくする開口部
◯高窓
出入りすることができない窓です。上部は引き違い、下部(腰)はFIX(フィックス:はめ殺し窓)といって開けることができない窓の構成になっています。網戸をつけることができるので、窓を開けて通気性をよくすることもできます。
◯ルーバー窓
ルーバーを取りつけた窓です。ルーバーとは、細長い羽板を斜めに傾け、隙間を開けながら平行に並べたものです。窓の開け閉めは必要なく、この羽の隙間から風通しをよくすることができます。もちろん、ルーバーの開閉も可能です。
実際のガーデンルームの施工事例を見てみよう!
ガーデンルームの使い方や窓の種類がわかったところで、実際の施工事例を見ながら、ガーデンルームづくりの参考にしてみましょう。
●プールサイドに設置してリゾート風に
左側はオープンで開放感のあるバーカウンターのあるスペース、右側は開閉のできるオールグラスポーチです。ポーチのフレームとプールの縁を白で統一することで、さわやかなリゾート空間のイメージになります。
●立地の景観を生かせるのもオールグラスポーチならでは
大自然が広がる立地の景観を生かして、開放感のあるオールグラスポーチを設置しました。古くなったウッドデッキを解体して室内と庭をつなげた落ち着きのスペースが誕生しました。
●離れとしてのガーデンルームで、くつろぎ空間を演出
自然の木立の中に離れとしてガーデンルームを設置しました。自然に囲まれたオープンなガーデンルームは、ほのぼのとした、くつろぎや安らぎを堪能できる空間です。
バーカウンター付きの離れとして屋上にオールグラスポーチを設置しました。壁のレンガタイルやカウンターの木の面材は、落ち着きの中にビンテージ感溢れる高級感を出しています。左側のオールグラスポーチで、一家団らんや親しい友達との楽しいひとときも味わえます。
室内とつながる縁側の頭上には、ホームヤードルーフシステムを設けて半戸外空間とし、さらにその向こうに離れとしてオールグラスポーチを設けた実例です。室内から縁側へ、さらに離れへと、多様な戸外空間をシックモダンでまとめた贅沢な空間です。
●スカイルーフとの組合せで、より開放的な空間を
白基調のオールグラスポーチとナチュラルウッドのエバーアートボードで覆った壁面コーディネートで優しい自然な色合いになっています。オールグラスポーチの手前に伸びる格子のフレームで空間に広がりができることで、一体感を演出しています。また、オールグラスポーチの天井の一部をポリカーボネートにすることで、採光を取り入れたスカイルーフで明るい空間になっています。
白を基調にした清潔感のある空間です。ポリカーボネート屋根で光を取り入れ、室内のリビングも明るくなります。
こちらは離れのスカイルーフポーチとオールグラスポーチの事例です。
白基調はリゾート風で、最高のさわやかカラーです。床のオレンジ色と人工芝の黄緑色で、「さわやかホワイト」が一層引き立ちます。
ガーデンルームは、室内と庭をつなげ、くつろぎと落ち着きをもたらす「もう一つの部屋」のような空間です。離れとしてのガーデンルームもリゾート風の魅力があります。窓は一部を開放できるものや全面開放できるものまでさまざまです。ガーデンルームの用途目的をしっかり決めて、それに合うデザインやカラーの自分流ガーデンルームを設置しましょう。
Credit
文/松下高弘(まつしたたかひろ)
長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、手描きパース・イラスト・CG・模型等のプレゼンテーションや大手ハウスメーカー社員研修、エクステリア業の研修講師およびセミナープロデュースを行う。
著書には、『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』、『住宅エクステリアのパース・スケッチ・プレゼンが上達する本(彰国社)』など。新刊『気持ちをつかむ住宅インテリアパース(彰国社)』、大手書店に続々登場!!