竹垣とは、竹で編んだ垣根のこと。日本庭園や和風庭園などでよく見かけますね。
昨今、和モダンなデザインが人気の中、庭に竹垣を取り入れると、グッと和風に近づいた落ち着きのある雰囲気になります。どんな庭にどんな竹垣が似合うのか…ここでは、竹垣を選ぶにあたって参考にしていただきたい、竹垣の素材や種類について解説します。
目次
竹垣に使用される素材の種類は?
竹垣には、人工素材と天然素材の2種類があります。それぞれのメリット、デメリットについて解説しましょう。
人工素材
人工素材は、本物に似せた樹脂でつくられた人工竹です。雨や風に強く、腐ることがないため、耐久性が高い点が特徴です。天然素材よりも価格が高いのですが、経年劣化しにくいため、メンテナンスが容易で長持ちします。
竹を結ぶシュロ縄は、シュロ(ヤシ科の常緑高木)の繊維でつくられていて、水に強く腐りにくいため、人工竹垣にシュロ縄を組み合わせ、自然なイメージに仕上げつつ、長もちする商品もあります。シュロ縄の結び方はいろいろあり、結び方によっては見栄えが悪くなるので、注意が必要です。
天然素材
天然素材の竹垣は、青竹の香りや手触りに天然の風合いが感じられます。時が経つにつれて、茶色に枯れていく変化を楽しむことができ、情緒があります。
一方で、施工にあたっては高度な技術が要求されるため、専門職人の腕が決め手になります。また、古くなると、土台や垣根自体が腐り、倒れる恐れがあるため、補修や新しく取り換えるなどのメンテナンスが必要です。
天然素材の竹垣は、天然ならではの魅力をもっていますが、寿命もあります。逆に人工竹垣は経年劣化しにくく、古くなっても見栄えはよく長もちしますが、設置にコストがかかります。
双方のメリット、デメリットが分かったところで、次は竹垣の種類を見ていきましょう。
自宅の庭づくりに使用される竹垣の種類は?
竹垣には、洋風フェンスにはない日本古来の独特な伝統があります。地域や作り手によって竹垣の名称や分類が違ってくるなど、その形状も多種多様です。
ここでは、見通し具合によって分類した「透かし垣」と「遮蔽垣(しゃへいがき)」について、それぞれの垣根の名称や特徴をご紹介します。
透かし垣
透かし垣は、竹と竹の間に隙間を開け、向こう側が見えるようになっている竹垣です。庭の仕切りとして使います。以下は、透かし垣の名称と特徴です。
■四ツ目垣(よつめがき)
丸太を立て、その間に竹を縦横の方形になるように組んだもので、竹垣の基礎となる仕切り垣です。茶庭には欠かすことができないといわれ、中門の周囲や通路の仕切りとして使われることが多い垣根です。
■金閣寺垣(きんかくじがき)
四角い格子を組み、垣根の上部に半割の竹を掛けている背の低い竹垣です。通路や庭の境目、小さな庭の装飾として使われます。
■龍安寺垣(りょうあんじがき)
背の低い竹垣で、外観が金閣寺垣、光悦寺垣、矢来垣の要素を併せ持った透かし垣。足元垣の代表的なものです。二重に重ねた割竹を組子にし、下でご紹介する光悦寺垣のように菱形格子を組み入れた竹垣です。
■光悦寺垣(こうえつじがき)
反弓形になだらかな曲線を描いた優雅な雰囲気の仕切り垣です。親竹を割って丸く半円形に曲げ、端を接地させて、その中に菱形状の割竹の格子を組み入れたものです。
遮蔽垣
遮蔽垣は、透かし垣とは逆に、向こう側が見えないようにした竹垣で、目隠しとしての役割を果たします。以下は、遮蔽垣の種類の名称と特徴です。
■建仁寺垣(けんにんじがき)
皮を表にした四つ割り竹を垂直に隙間なく並べ、竹の押し縁(おしぶち)を水平に取り付け、シュロ縄で結んだものです。建仁寺で初めて用いられた形式で、遮蔽垣を代表する竹垣です。
■御簾垣(みすがき)
細い竹を1本ずつ積み上げ、表裏から縦の押し縁を当てて作る竹垣です。御簾とは「すだれ」のことで、御簾を下げたように見えることからこの名に。神殿や宮中に使われていました。
■桂垣(かつらがき)
細い竹穂を芯にして表面に少し太い枝を横使いし、押し縁に丸竹二つ割りをかけた表裏のない竹垣。桂離宮につくられている100mあまりの壮大な竹垣に由来する名称で、明治時代の離宮になってから外囲いとしてつくられた、手間のかかる高級な竹垣です。
■大津垣(おおつがき)
竹を前後に1本ずつ編み込み、微妙に透けて見える様子が美しい、表情のある竹垣です。近畿地方で多く見られたところから、大津垣と呼ばれるようになりました。
■木賊垣(とくさがき)
竹を立てて並べていく竹垣で、竹を固定するときに押し縁は使わず、縄止めや針止めにします。境界や塀、袖垣(そでがき)に使われます。袖垣とは、建物の角や玄関回り、庭内を仕切る垣根のことをいいます。
■沼津垣(ぬまづがき)
細い竹や割り竹を杉綾(すぎあや)模様に編み込んでつくられた、網代垣の一つです。杉綾模様とは、ニシンの骨“herringbone”(ヘリンボーン) を並べたような柄のことで、別名は網代垣(あじろがき)とも呼ばれます。耐久性に優れた機能と外観美を併せ持っています。
網代垣(あじろがき)
細い竹や割り竹を網代形に組んでつくった垣根です。沼津垣と同様です。
※イラスト制作:エムデザインファクトリー松下高弘
竹垣を使用した庭の施工事例とは
自宅の庭に竹垣を用いるときは、竹垣の特徴や機能を生かすことで、風合いや情緒のある魅力的な和風の庭をつくることができます。いろいろな竹垣の種類を取り入れた事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
料亭の雰囲気に合わせた和風の竹垣
料亭の窓越しのベランダに設置した竹垣の例です。伝統的な日本庭園の竹垣にこだわらない、創作的でおしゃれな和風竹垣になっています。
露天風呂の目隠し的役割を果たす高さのある竹垣
天井が高い露天風呂の目隠しとして、遮蔽垣の代表となる建仁寺垣を設けています。高さのある竹垣ながら圧迫感がなく、足元の景石と植栽で、安らぎと落ち着きのある雰囲気になっています。
目隠し×情緒も味わえる遮蔽垣
釜風呂の脇に伝統的な建仁寺垣の装飾。全体の色彩がセピアトーンに統一されていて、情緒ある和の雰囲気が味わえます。
低い竹垣で眺望を確保した屋上庭園
背が低めの竹垣で屋上からの眺望が楽しめます。砂利や景石の組み合わせで和のイメージを演出。平板をランダムに並べ、シュロのポットを置くことで、和モダンなデザインになっています。
微妙な透け感を残し、圧迫感を抑えた和モダンな竹垣
御簾垣に横格子の透かしを入れ、風通しをよくした圧迫感のない竹垣です。黒い平板と白砂利の市松模様で、モダンな雰囲気の庭になっています。秋には、紅葉の紅と黒の共演が楽しめるでしょう。
竹垣には、天然素材の風合いや、人工素材の耐久性の高さなど、それぞれの良さがあります。また、地方やお寺に設置されたことが由来となった伝統的な名称を持つ竹垣もあり、上手に取り入れれば、和の情緒を演出してくれます。ご自宅の特徴や用途に合った竹垣を取り入れて、趣(おもむき)のある和風の庭づくりにチャレンジしてみましょう。
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・エクステリアに“フェンス”を取り入れたい! 塀との違いや選び方は…
・和風の庭やアプローチ…和の空間を素敵にライトアップするコツ
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Credit
文&イラスト / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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