日本庭園を訪れると、必ずといっていいほど「飛び石」を見かけます。和風の庭では、飛び石が動線になっていて、その上を渡り歩きながら、散策することも多いでしょう。ここでは、この飛び石の置き方の種類や、飛び石を配置した庭の事例などをご紹介します。
目次
飛び石はなぜ置かれるの?
雨や湿気の多い日本で、昔から履物が土で汚れないよう、土を踏まずに伝い歩きができるように配置されていたのが飛び石です。飛び石には平らな石を使い、半分ほど地中に埋めて地面より少し高くなるように置きます。かつて安土桃山時代には茶室の露地に用いられ、茶の湯とともに発展しました。そして江戸時代には、日本庭園の特徴的要素として広く普及しました。
飛び石は、配置の仕方や大きさによって、歩く人の向きを変えたり、立ち止まらせるなど、誘導する効果を持っています。また、置き方はおおむね50~55cm程度の歩幅を想定しています。これは和服を着た人の歩幅で、これにより趣のある歩き方ができるとされています。ゆっくりとした足取りで、庭の景色を眺めながら楽しんでいただきたいという、「おもてなし」の心が反映されているのです。
石の種類や配置の仕方はさまざまで、現代では、日本庭園だけでなく、洋風庭園でも園路として使われるなど、よく見かけるようになりました。
飛び石の置き方=「打ち方」の種類は?
飛び石の「置き方」は、専門的には「打ち方」といいます。続いては、この「打ち方」について解説しましょう。
飛び石には、伝統的な作法により、歩きやすさと意匠性を持ち合わせた打ち方の種類がいくつかあります。例えば、一直線の通路であっても、あえて動線を曲げ、流れをつくったりします。また、大、小の飛び石の並びが単調にならないよう、リズム感を出すようなイメージで配置します。
それでは、飛び石の打ち方の種類から、代表的なものをあげてみましょう。

■直打ち(ちょくうち)
すべての石を直線状に並べた打ち方です。歩きやすいように、歩幅に合わせて並べます。
■大曲リ(おおまがり)
曲線を描くように並べた打ち方です。大きなカーブを描いたイメージです。
■二連打ち(にれんうち)
2つの石を続けて真っすぐに打ち、左右に振り分ける打ち方です。例えば、全部で7~8個を並べる場合に、2番目と3番目、5番目と6番目は、2つずつ真っすぐに並べます。変化があり、歩いていても楽しさが感じられる打ち方です。
■三連打ち(さんれんうち)
二連と同じような打ち方で、3つの真っすぐに打った石の並びを入れる打ち方です。左右にずらした石とうまく組み合わせると、かなり変化に富み、見た目も美しくなります。
■千鳥打ち(ちどりうち)
石を左右交互に打つ方法です。順番に左、右、左、右と打つこの配置を「千鳥」といいます。
■雁掛け(がんがけ)
数匹の雁が空を飛んでいるような形に似ている打ち方です。まさに雁行しているイメージです。
歴史ある伝統的な日本庭園の飛び石の配置には、お招きしたお客さまに庭を堪能していただくために、動線を工夫した高度な技法が取り入れられています。庭に飛び石を置きたい場合は、造園の専門家とじっくり相談して配置を決めましょう。
飛び石を使った庭の事例をご紹介
実際の庭ではどのように飛び石を使っているのでしょうか? 飛び石を使った事例をご紹介します。
和風の庭園に飛び石はピッタリ!

落葉樹の足元に、さまざまな色と大きさの庭石を置いた落ち着いた雰囲気の和風庭園です。写真の左右にあるように、庭園をゆっくり眺めながら歩けるよう、変形した飛び石が配置されています。

写真左側に、大曲りの打ち方で飛び石が配置されています。さらに、さまざまな庭石の間にししおどしや手水鉢(ちょうずばち)を一緒に置くことで、趣(おもむき)のある和風庭園になっています。
洋風庭園に飛び石を取り入れて、おしゃれな和洋折衷空間に

周囲に飛び石と白砂利、間にクマザサやホソバヒイラギナンテンのような細長い葉の中低木を挟んで、中央に洋風デザインの屋根付きテラスを配置。清楚で品のある和洋折衷の庭になっています。

等間隔に規則正しく石を配置すると、洋風デザインの庭によく合います。不規則な石張りのウォールや壁面緑化、ラタンのファニチャーを合わせることで、ナチュラル感のある空間に仕上がっています。
番外編:石を敷き詰めて石畳にする事例も!


石を敷き詰めて石畳にする手法を「延段(のべだん)」といいます。奥行きを感じる延段は、和の雰囲気を醸し出します。さらに周囲を砂利敷きにすることで、和風空間に高級感と品格を持たせることができます。
ご紹介したように、飛び石の打ち方(置き方)にはいろいろな種類があります。打ち方しだいで、お客さまの庭の歩き方や眺め方の動線を自然に誘導することができ、「おもてなし」の心を示すことができます。
また、和風庭園には、竹垣やししおどし、手水鉢などと組み合わせ、洋風庭園には、洋風デザインの中に砂利や飛び石をおり混ぜることで、清楚な品のよいイメージに仕上げることができるので、雰囲気に合わせて工夫してみましょう。
なお、設計施工には特殊な技術が必要なため、造園やエクステリアの専門業者に相談しながら設置することをオススメします。
素敵な飛び石のある庭づくり、ぜひ実践してみてください!
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Credit

文/松下高弘(まつしたたかひろ)
長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、手描きパース・イラスト・CG・模型等のプレゼンテーションや大手ハウスメーカー社員研修、エクステリア業の研修講師およびセミナープロデュースを行う。
著書には、『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』、『住宅エクステリアのパース・スケッチ・プレゼンが上達する本(彰国社)』など。新刊『気持ちをつかむ住宅インテリアパース(彰国社)』2月末出版! 大手書店に続々登場!!
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