L字型の建物と独立壁がつくるプライベートな中庭

この家の家主でもあり、デザインも自ら行なった一級建築士の新井崇文さん。この家を『「通り庭」であり、「使う庭」であり、また「眺める庭」でも「光庭」でもある。これは一石四鳥の庭なのです』と語る。この「荏田町の家」にはどんなこだわりがあるのだろうか。
木製ルーバーで周りの視線をカット

緑豊かな住宅地に建つ住宅。東西の隣家が近いため、L字型平面の建物と独立壁によって隣家からの視線をカットした中庭をつくり、また南側道路からの視線も木製ルーバーで適度に遮断している。プライバシーのある中庭に対してリビング・ダイニングを開く構成とした。
写真は南から見る全景。手前は駐車スペース。写真右の階段を上がり、左手がエントランス。駐車場の上部は菜園デッキ。道路側の目隠しルーバーはヒノキで作られている。
四季を感じられる植栽を選ぶ

前庭の植栽の前を通るアプローチには枕木が並べられ、階段へと導く。前庭には写真
右側からクロモジ、ヤブツバキ、ダンコウバイ、オトコヨウゾメ、ハウチワカエデなど
が植えられている。
季節によって花が咲いたり、秋には紅葉など、植栽によっても庭の景色が変わる様子を楽しめる。
細いアプローチが庭への期待を高める

南側道路から玄関までのアプローチは、左へ右へと折れ、階段を徐々に上がりながら、変化のあるシーンを楽しむことができる。階段を上ると門扉のあるエントランスへ。アプローチとしての役割だけでなく家の内と外を切り替える空間になっている。
アプローチと植栽が訪問者をあたたかく迎え入れる

エントランスを抜けて右に折れると、広がりのある中庭に。デッキを通って玄関へと
進む。写真左のヤマモミジが出迎える。秋には紅葉も楽しめ、四季によって表情を変えるのも魅力。
木製デッキで暖かみを感じられるデザインに

デッキからリビングを見ることができる開放感あふれるデザイン。デッキテラスはベイスギ、リビングの床はカラマツを使っているため、木のぬくもりを充分に感じることができる。
視線を気にせず楽しめる開放感ある中庭

中庭はプライバシーと開放性の両立を目指し、壁やルーバー、植栽、レベル差によって周囲から隔たれた空間となっている。写真奥の白い壁は隣家との隔たりを設けるための独立壁。白い壁はリビングに反射光をもたらす役割も果たす。引き戸部分は収納。壁の前に植えられている主木はソロノキ。
引き戸を開けば、家の中まで風が通る

庭に面する開口と玄関を開いた状態では、中庭がリビングの一部のように見えるほど開放感抜群。庭から吹き込む風は、大きな開口部から家の中まで届く。
家族の様子を感じられる家

デッキから見たリビングの夜景。暖色系の明かりが庭まで漏れ出し、暖かい雰囲気を感じることができる。
庭とつながる1階は広がりのあるワンルームの中にリビング、ダイニング、キッチン、ワークスペースといった様々なコーナー(居場所)を配しており、家族がそれぞれ思い思いのことをしていても、互いに気配を感じられる空間となっている。
引用元/『HomeGarden&EXTERIOR vol.2』より
写真・図版提供/新井アトリエ