日本より緯度が高く、冬は日没が早いイギリス。晩秋からクリスマスにかけて、英国ナショナル・トラストの庭園ではその長い夕べを楽しもうと、さまざまなイルミネーションが施されます。近年は、LED投光器を使ったカラフルなライトアップも増えて、バリエーションが豊かに。この時期ならではの、光の庭景色をご紹介しましょう。
目次
大邸宅が舞台の光のファンタジー

こちらは、ノーフォーク州、ブリックリング・エステートの広々とした芝生の庭。LEDで照らし出された中世の大邸宅を背に、庭園名物の巨大トピアリーが光をまとって並んでいます。ブリックリング・エステートの歴史は古く、約1,000年前のイングランド王ハロルド2世の領主館の記録から始まります。その後も王侯貴族や主教など、歴史に名を残す時の有力者たちの手を渡り、悲劇の女王アン・ブーリンの生家との逸話ももつ館です。現在の赤レンガの館は1619年当時のもので、ジャコビアン様式の邸宅が闇の中で青や赤に染まり浮かび上がるライトアップの風景は、別格の荘厳さで見る者を圧倒します。

この美しい館とともに、約400年にわたって受け継がれている巨大なイチイの生垣や、3m以上はあろうかという見上げるほどの大きさのトピアリーにもイルミネーションが施されます。ユニークな形のトピアリーは、ピカピカ光るクリスマスケーキみたいにも見えますね。

同じブリックリング・エステートの、邸宅へと通じる前庭の辺り。たくさんの可愛らしいクリスマスツリーが人々を迎える、わくわくするようなライトアップです。
大人気のライトアップ・イベント

ケンブリッジシャー州のアングルシー・アビーでは、11月になると、ウィンター・ライトという大人気の光のイベントが行われます。アングルシー・アビーの庭園は、冬にも美しいことで知られます。英国には葉の落ちた樹木の枝姿や幹肌の質感、宿根草の枯れ姿などを生かしたウィンターガーデンというガーデニングの手法があります。草木の多くが眠りにつき、色彩が乏しくなる冬だからこそ、植物のフォルムや質感が際立ち、普段とは異なる植物の表情が楽しめます。ライトアップはそんな冬の庭の素材とライティングのコラボレーションが醍醐味です。


LED投光器を使ったライトアップは、カラフルでダイナミック。照らし出された木々が運河の水に映る姿も素敵です。


ウィンターガーデンでは、ヨーロッパシラカンバが、暖色や寒色、さまざまな色に照らされています。つるつるした白い木肌だからこそ、カラーイルミネーションが一層映えます。

照らし出されているのは、枯れ残った丸いアリウムの花がら。静かで幻想的な花景色です。

大樹が伸ばす枝の間に、カラフルな球が浮かび上がります。球の正体は、まん丸のランタン。枝が形づくる影模様と、面白いコントラストを見せています。

暖かそうな色合いに、思わず触りたくなるランタン!


このイベントでは、サーカス団員による光のパフォーマンスなど、たくさんの仕掛けが用意されています。大人も子どももワクワクの、特別な夜の探検です。
迫力あるファンタジーワールド

英国ナショナル・トラストのプロパティは歴史あるものばかり。ライトアップされた夜の森や城は、本物ならではの、迫力あるファンタジーワールドを形づくります。
こちらは、森の奥へと招かれるようなライトアップ。待っているのは魔女か小人か。おとぎ話の世界に迷い込むかのようです。

中世の要塞として建てられた、ウェールズのポウィス城。ポウィス城は城と一体になったように見えるテラス状のガーデンが有名で、緑に覆われる古城が闇に浮かぶライトアップの風景は、ダイナミックかつファンタジック。物語の中に迷い込んでしまったような気持ちになるでしょう。

サマセット州の古城、ダンスター城に残る古塔。眠り姫がいそうな塔の姿は、映画のワンシーンのようです。

デボン州にある18世紀の館、サルトラムでは、庭に生える大木がドラマチックな光と影をつくります。

サルトラムの屋敷では、ホールに据えられたクリスマスツリーの温かな光が、人々を招き入れるように輝いています。まるで魔法がかかったような、英国の冬ならではのイルミネーションの世界、いかがでしたか。
併せて読みたい
・イギリス、中世の館「コーティール」のクリスマス・ガーランド(花綱飾り)
・英国の名園巡り 大邸宅のスケールを楽しむ「ブリックリング・エステート」
・英国ナショナル・トラスト ウィンターガーデンの楽しみ
Credit

文/ 萩尾昌美 (Masami Hagio)
早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。神奈川生まれ、2児の母。
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