植物を育成するメンテナンスとディスプレイデザイン、両方の立場から緑化の提案を行い、想いやストーリーを感じられる、花と緑の空間づくりを目指す。
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「植物と人が共に過ごす時間づくり」〜植物の文化を運ぶplants culture caravan vol.4
日常に豊かさと公園のような心地よさを提案しているparkERsが、観葉植物を日本の四季のある暮らしに取り入れる新しい植物の楽しみ方をご紹介するこの連載。
日本の文化には移り変わる季節に合わせた行事や習わしがたくさんあり、日本人はそれらを大切にして暮らしてきました。慌ただしく暮らす毎日に、その時旬の花や自然の情景を取り込んで、日本人らしく植物と生きる考え方を未来へ運びます。
目次
室内で感じる植物の表情とは?
ふと、私は一日に何度、時計を見ているのだろうと考えたことがあります。時計を気にしながら、日々時間に追われる暮らしをしている方は多いのではないでしょうか。
私たちが時間に追われている中、実は植物たちもさまざまな表情や動きを見せてくれています。
花をつけたり落葉したり…外だと四季の移ろいを感じやすいのですが、それと比べて、室内で生きている植物については多彩な変化を感じ取れないと思われている方も多いはずです。
室内に置かれる植物は、外で強い日差しを浴びている植物に比べると、成長も遅く、ゆっくりと変化します。
私たちparkERsは、外では当たり前に見られる植物の変化を切り取り、その要素を室内に取り入れることで、より身近な場所で人が植物の表情を知る“気付き”のきっかけになれたらと思っています。
1秒の体感
上の写真は、オフィスの待合スペースです。雫が葉を伝って水面に落ち、水面に“波紋”が広がります。
お客さまが最初に案内される待合スペースは、緊張感を持って過ごしている方も多い空間です。
1粒の雫、それを受け止めて揺れ動く葉、水面に広がる波紋…この一連の動きを見ていると、時間をゆっくりと感じることができる…これは、植物と水とがつくる1秒の時間です。
雫は葉を伝って落ちるため、雫の広がり方は一定ではありません。葉に滴る雫も広がる波紋も、葉の形によって変わる、それは植物が生み出した造形ともいえるでしょう。
一日の体感
植物の魅力の一つ、それは影が美しいことです。
上の写真に写っているのは、室内でライティングを行うことでつくられた葉の影や木漏れ日です。影といっても、表情はさまざまですね。
光によって生まれる葉影や木漏れ日をつくり出すことで、私たちが普段太陽と植物を通して感じている一日の時間を表現することができます。
葉についた朝露がキラキラと光っている朝の時間、太陽が差し込む木漏れ日の時間、木の影が伸びる夕方の時間…まるで公園にでもいるかのような、そんな一日の移ろいを室内でも体感することで、また新しい植物の表情が見えてくるかもしれません。
1年、2年…年月の体感
植物は日々成長しています。
上の写真は、2015年にparkERsのオフィスを構えて以来、成長し続けているガジュマル(Ficus microcarpa)です。千葉県にある生産地、泰東園より30年もののガジュマルを譲り受けてから3年、今も私たちを見守り続けてくれています。
このように、室内でも環境が合えば樹木は新芽をたくさん出し、生き生きと成長する様子を見せてくれます。
そして葉の美しさは、根の生命力と比例しています。根がしっかりと土の中で這って伸びていくことで、葉ものびのびと成長していきます。そのため、私たちは室内でも植物の根の成長を予測して、プランター内部を考える必要があるのです。
江戸時代、人は「不定時法」という方法で時間を認識していました。
空を見上げ、太陽の位置そのものを時刻として考えるもので、太陽が時計、空が文字盤として大まかな時間を読み取る方法です。
1分1秒を刻んで過ごしている現代社会に、“自然界に合わせて日々を過ごす”こと、“植物から得る時間”を知ってもらうこと、感じてもらうこと、そして、新たな“植物と人が共に過ごす時間づくり”をすることの大切さを伝える。これが、私たちがやっていきたいことの一つです。
今月の植木屋:石井明彦さん(株式会社川崎植物卸売センター)
私たちが扱う植物は、日本中にある生産地で栽培された植物たちです。
川崎植物卸売センターの石井さんは、自身で日本中の生産地を回り、植物を仕入れるスペシャリスト。
植物は種や苗から商品として出荷されるまで、早くとも3〜4年、もしくはそれ以上の年月を必要とするものも多くあります。
石井さんのようなスペシャリストが全国をまわり、葉のない幹だけの状態から、完成した樹形や葉付きを想像し、何度も生産者と話をする。そうすることで、ただ単に植物をモノとして扱い仕入れを行うのではなく、植物の流行を生み出し、生産者に伝え、生産者と共に植物をつくり上げています。
植物をつくる生産者の方々、植物を日本中から仕入れて流通させる市場や中卸の方々、たくさんの人の力とつながりがあって、はじめて私たちはお客さまのもとへ植物をお届けすることができるのです。
併せて読みたい
・植物の文化を運ぶplants culture caravan vol.3 「壁面の緑は、“植物を愛でる暮らし”をつくる」
・植物の文化を運ぶ plants culture caravan vol.2 「300年前の文化を蘇らせよう」
Credit
田村未和(Miwa Tamura)
美術大学を卒業後、アーティストのもとで生花(切り花、生け込み、プリザーブドフラワー)を学ぶ。その後、parkERsのメンテナンス業を経てプランツコーディネーターになる。
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