住み心地のよさを高めるためにリフォームを考える場合、その選択肢は家だけに限りません。庭をリフォームすることで、住まいの快適性や暮らしの豊かさをグンと広げることができます。庭のリフォームのメリットは、引っ越しなどをせずとも普段どおりの生活を送りながら工事を進行することができ、暮らしの質の向上が叶うことです。リフォームによって、雑草に苦労する庭からリゾートのようなガーデンダイニングに生まれ変わった都内の実例をご紹介します。
目次
植栽の手入れがいらない半戸外空間にリフォーム
自然が豊かに残る東京郊外の住宅地。T邸は小道の行き止まりに位置し、3方向を畑に囲まれた開放的なロケーションです。リビングに面した庭は畑側にあり、人目を気にせず過ごせる空間ではあるものの、良好な日当たりと肥沃な土壌によって、生育旺盛な雑草の管理が次第に負担になってきていました。
「子どもたちが小さい頃はよく庭で遊んだり、バーベキューなどもしたんですが、庭が荒れがちになってくると、そういう機会も減ってきてしまいました。子どもたちがいずれ独立して夫婦2人になる前に、もっと家族で一緒に過ごせる時間を増やしたいね、と夫と話すうちに、庭をリフォームしようということになったんです」(奥様)
どんな庭にしようかと思案するなか、SNSで目にとまったのが、キッチンを備えた屋根のある庭の風景です。部屋のようにデザインされた半戸外空間に、緑が程よく潤いをもたらすその庭に理想の形を見いだし、投稿をたどって、同様の設計事例を持つガーデン・エクステリア専門店「五感+(ごかんプラス)」にリフォームを依頼しました。
Tさんの希望を受け、五感+が提案したのは、17mという横に長い庭を半戸外と完全オープンエリアの2つの空間に分けたデザインです。リビングの延長線上はタイル敷きのテラスとし、屋根を設置。南側に屋根の高さ近くまで壁を立てて空間を囲み、横幅約5mの半戸外空間としました。
設計変更に柔軟に対応し理想の空間づくりを実現するホームヤードルーフ
半戸外空間を作るにあたって、デザインの前提となったのが、TさんがSNSで見つけた理想の庭にデザインされていたホームヤードルーフの設置です。ホームヤードルーフはエクステリアメーカー「タカショー」の製品で、基本構造は屋根と柱で構成されており、東屋のように戸外に雨をしのぐ空間を作ることができます。住宅の壁面に壁づけするタイプと単体で独立して設置できるタイプがあり、壁面を設けたりライトを設置したり多彩なオプションで柔軟な設計ができるため、庭空間だけでなく玄関やカーポートなどにも活用されています。
T邸の場合、住宅と庭空間との快適性を両立するために、五感+の要望を受けてタカショーがオーダーメイド仕様で完全オリジナルのホームヤードルーフを製作しました。屋根の梁を約1:2の比率で片側に寄せ、住宅に近いほうは自然光が得られるクリアマットポリカ屋根に、もう一方は木調の「エバーアートボード®︎」を張った内天井を広く取りました。エバーアートボード®️もタカショーの屋内・屋外両用化粧建材で、壁や天井などの構造物に取り付け、簡単にデザインのドレスアップができる注目の建築資材です。高級感のある天然石やウォールナット、職人技が求められるレンガや石積みなどの風合いがアルミ複合板に忠実に再現され、85種類の豊富なデザインから選ぶことができます。
T邸ではタイルや壁の色と合わせて明るい木調のエバーアートボード®︎を内天井に用い、さらにテーブルとキッチンカウンターの真上にくるようダウンライトを設置。日中は自然光が室内に取り込めるようにしながら、夜も庭を楽しめるようになっています。
空間の横の長さを生かし、テラスの中央にはシンクとダイニングテーブル、そしてシンボルツリーを植栽する大型プランターを一体化したオリジナルガーデンキッチンカウンターを造作し、空間の主役に。すっきりとモダンな雰囲気ながら、木調の内天井や、壁やカウンターに風合いのある天然石パネルを用いることで単調さを回避し、落ち着いた高級感のあるガーデンダイニングが誕生しました。
「このガーデンダイニングができたことで、室内の居心地もよくなりました。夜もカーテンを開けてダウンライトをつけ、景色を楽しんでいます。主人はお風呂上がりにここで涼んだり、夕食後にお酒を飲んだり。2人とも仕事で日々忙しくしていますが、遠くへ出かけなくても我が家にいながらリゾートのような感覚を味わうことができ、リフレッシュできます」(奥様)。
焚き火ができるモダンデザインのもう一つの庭
ガーデンダイニングの隣は、テラスから50cmほど下がった沈床ガーデン風の庭です。ここは屋根がなく、より開放感がありながらも、テラスとの段差により囲われた安心感のある空間になっています。焚き火をしたいというTさんの希望を受けて、地面はグレーの砂利敷きとし、植栽エリアは小さく制限して管理に苦労しないようゆっくり生育する植物をセレクト。色鮮やかな花はなくても、フォルムのユニークな植物たちがシンプルな壁を背景に個性を競い合います。
空間の豊かさがコミュニケーションも豊かに
異なる雰囲気の2つの庭が生まれたことで、家族の団欒の時間はもちろん、友人や仕事仲間と庭で共に過ごすことも増えたというTさん。
「友人や仕事仲間を我が家に招いてもてなしたいというのもリフォームの目的の1つだったんです。実際、この庭ができてからは月一でゲストが来ては庭で食事をしていますね。室内だと招くほうも招かれるほうも、ちょっと緊張するものですが、屋外だとお互いリラックスして、普段口に出しにくいようなことも話せるんですよ。コミュニケーションが円滑にできる空間を持てたことは、本当によかったなと思います」。
T邸のように、庭をリフォームすることで住まいの可能性は大きく広がり、暮らす人の関係性までも豊かにすることができます。そのキーポイントは、庭を居住空間の一つと捉えて快適性を高めることです。戸外空間を上手に活用し、我が家の居心地をもっとよくしてみませんか。
取材協力/みどりDesign室「五感+」
Credit
取材&文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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