今回ご紹介するのは、神奈川県の住宅街にある、クリーニング店の店舗を兼ねた住宅の庭です。南欧風の明るい住宅デザインに、豊かな緑がよく映え、植栽に彩られたウッドデッキの空間には、ほっと一息つける穏やかな時間が流れます。植栽アイデアの参考としても必見の素敵な庭をご案内します。
目次
南欧をイメージした明るい玄関
今回ご紹介するのは、神奈川県川崎市の、駅から少し離れた住宅街の角地にある、店舗兼住宅の素敵な庭です。
まず住宅側の玄関を見ると、外壁や門袖のホワイトベージュの色彩をバックに、シンボルツリーのソヨゴと鉢植えのドドナエアが風に揺れ、まるで南欧のワンシーンのよう。ドドナエア‘プルプレア’は別名ポップブッシュともいわれる人気の常緑樹で、冬場は赤銅色に紅葉し、シックな葉色が差し色に。玄関の左上に吊されたハンギングバスケットの赤花が効いて、より地中海風の雰囲気を高めています。
シンボルツリーのソヨゴは、レンガ1枚分の高さを出した花壇に植栽し、株元は下草でカバー。車輪のような円形のアイアン飾りがポイントになって素敵ですね。下草には白花のノリウツギやフイリヤブラン、黄金葉のハゴロモジャスミンなどが植えられています。白とグリーン系でまとめたシンプルな色彩ながら、葉の形と緑の濃淡で変化をつけた、とてもオシャレな植栽です。
玄関横には、こちらも南欧を感じさせる素焼きやテラコッタ風の鉢植えが並びます。
その隣には、白い横板張りの可愛い箱が。じつはこれ、室外機カバー。室外機の通風がよくなるように横板の隙間は広めにし、花台としても活用しながら、見せたくない室外機をおしゃれに目隠ししています。
ちなみに、地中海風ガーデンに欠かせない「テラコッタ・terra-cotta」は、イタリア語で「焼いた土」のこと。陶器やタイルなどの建築材料としても使われます。素焼き鉢とテラコッタ鉢はどちらも粘土で形をつくり、窯で焼き上げたものですが、ガーデニングではより高温で焼いてオレンジ色が強いものをテラコッタとしていることが多いです。釉薬のかかっていないテラコッタ鉢はツヤがなく、素朴な雰囲気。赤褐色や橙赤色などの温かみのある色合いと、多孔質で空気や水分を通しやすいのが特徴です。
店舗側のファサードはいろいろな花々を飾って
続いて、店舗側のファサードを見てみましょう。庭主さんは、古くからこの町でクリーニング店を営んでいます。そんなお店の出入り口ポーチの両側には鉢植えが並び、地植えのスペースがなくても、植物たちが生き生きとした雰囲気を作り上げて、お客さまを歓迎しています。
リーフを主体にしたシックな住宅側の植栽に比べ、こちらは同じように上品ながら、より花を取り入れてカラフルな印象。お店のオリジナルなアイアンサインも素敵ですね。
緑豊かなガーデンへ
道路に面したガーデンは、5.4×2.7mほどのやや細長い空間です。道路と庭を区切る縦格子のフェンスと門扉が、庭への期待感を一層高めてくれます。暗色の縦格子フェンスには白やレモンイエローのバラが絡み、混ざり咲く紫色の小花と大人っぽいコントラストに。足元を見ると、道路と庭の境界には小さな立方体に切り出したピンコロ石を並べ、花壇はなだらかな弧を描くようレンガで縁取るなど、細部まで凝った上品なデザインになっています。
扉を開けると広がる緑いっぱいの庭
門扉を開けると、目の前いっぱいに緑が広がります。ヴィンテージ調の木製ガーデンファニチャーと、白い鉢に植栽されたピンクの花がベストマッチ。白い水玉やピンクの斑入りの植物のチョイスも、フェミニンで可愛らしいですね。
ブレイクタイムはウッドデッキで
住宅と接する庭の奥には、シェード付きのウッドデッキを設置。ウッドデッキのサイズは4.5×2.7mほど、奥行きは庭の敷地いっぱいまでたっぷり取っています。ウッドデッキを広くすると地植えできる面積は小さくなりますが、デッキの上にもさまざまな形の鉢を並べることで、十分に植物を楽しめるスペースを確保。奥のガラスドアには庭の緑が映り込み、見た目がきれいなだけでなく庭をより広く見せてくれます。
壁やフェンスにマッチするハンギングバスケット
ウッドデッキの上にある物干し竿受けや、横張りにしたフェンスには、それぞれハンギングバスケットを飾り、空間を上品に演出。物干し竿受けのハンギングバスケットは、白っぽいベージュの外壁に映える濃いめの色を、ブラウン系のフェンスには明るいオレンジ色のテラコッタのバスケットを選ぶなど、背景の色に合わせて楽しんでいます。
緑に囲まれたウッドデッキで、シャビーなガーデンファニチャーに座り、くつろぎのティータイムを楽しむ…ゆったりとした時間が流れる贅沢なひとときです。また、リビングからの庭の眺めも美しく、家の中に居ながら緑に包まれる潤沢な感覚を味わえます。
実のなる木で小鳥が訪れる庭に
庭の門扉脇にはヒメイチゴの木やジューンベリーなど、実のなる木が植栽され、季節に合わせて野鳥が訪れるのも、この庭の楽しみ。木陰にはオフホワイトの陶製の水鉢が置かれ、鳥の水飲み場にもなっています。こんな庭なら、小鳥たちも大喜びですね。
まとめ
舗装されて植栽スペースがない場所も、素焼きやテラコッタの鉢を活用すれば、南欧風イメージのガーデンに。シンボルツリーとサブツリーなど、高さの異なる樹木を組み合わせてバランスよくまとめましょう。
エアコンの室外機は、むき出しでは殺風景になりがちですが、DIYでカバーを作ると見栄えがよくなります。木の板を間隔をあけてビス止めし、好みの色で塗装すれば、オシャレな花台にもなる室外機カバーに。板の間隔は3cm程度と広めにとって、室外機からの通風をよくするのがポイントです。
ウッドデッキをくつろぎ空間にしたい場合、日差しの調節ができるよう、シェード付きにすると便利です。落ち着いたアンティーク調の木製ガーデンファニチャーは、実際に座るだけでなく、寄せ植えの花鉢を置く花台としても活躍します。また、フェンスや壁際にハンギングバスケットを飾れば、空間をもっと素敵に演出できますよ。
小鳥が訪れる庭にしたいなら、柑橘系やベリー系の植栽を。陶製などの水鉢を置き、小鳥の水飲み場や水浴び場を確保する工夫も大切です。
ウッドデッキを広く取ることで生まれるリラックススペース。緑に囲まれた空間があると心が落ち着き、くつろいでティータイムも楽しめますよね。
設計施工:株式会社プロトリーフ niwa-kura 渡邉禄明
Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -
まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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