多くの人を魅了する花の女王バラ。世界中で愛されるその歴史は長く、文学・美術・医学・美容・装飾・料理と多岐にわたり活用されてきました。これら、バラのあらゆる話題が一冊になった新刊本『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』が2022年1月に発売されました。140点を超す貴重な図版も収録された翻訳書の日本版監修を担当した「日本ローズライフコーディネーター協会」代表の元木はるみさんに、読みどころを教えていただきます。
目次
イギリスで刊行されたばかりの貴重な日本語版

ピーター・クキエルスキー著 / チャールズ・フィリップス共著
ダコスタ吉村花子翻訳 / 元木はるみ監修
ルドゥーテが描いたバラが表紙を飾る本書は、アメリカのメイン州ポートランド在住のアメリカ人、著名な園芸家でありガーデンデザイナーであるピーター・E.クキエルスキー氏と、イギリス・ロンドン在住のイギリス人著述家チャールズ・フィリップス氏によって執筆され、2021年2月にイギリスで刊行された『Rosa: The Story of the Rose』の日本語翻訳版です。ピーター氏は、2006~2014年に数々の受賞歴のあるニューヨーク植物園「ペギー・ロックフェラー・ローズガーデン」のキュレーターでもあった方です。
魅惑的で多層的なバラの歴史を解説
B5変型判で256ページ、ズシっと重い本書は9つの章からなり、さまざまな角度からバラの魅力を解き明かしています。
まず、第1章「植物命名法とバラ」では、3,500から4,800の種と100から160ほどの属が含まれる植物として、大きな一群をなすバラ科と多彩なバラの種類、バラの分類を紹介しています。
第2章「いにしえのバラの物語」では、約3,500万年前から地球上に存在していたと推定されるバラの起源について、バラの化石などの貴重な資料と共に紹介しています。さらに、さまざまな地域で発祥した古代文明に遺る人々とバラの軌跡にも触れています。

第3章「ギリシャのバラの物語」では、バラの影響がさまざまな形となって発展したギリシャ時代にスポットを当てています。記された書物などから、バラがいかにギリシャ時代の人々と密接な関係であったかが明示されます。
第4章「バラに魅入られたローマ人」では、ギリシャ時代の影響を引き継ぎ、さらにバラへの情熱を深めたローマ人たちのバラの栽培法やバラの利用法、そしてバラを多用したローマ皇帝の姿、神話と結び付けられたバラなどについて見ることができます。
宗教画や名画に描かれた象徴のバラ

第5章「宗教とバラ」では、初期キリスト教と結び付けられ、聖母マリアのシンボルとなり、聖人たちとの伝説にも登場するようになったバラ、そして、さまざまな宗教においても、多様なシンボルとなっていったバラの軌跡を辿ることができます。

第6章「世俗のバラ」(1350~1650年頃)では、イングランドの薔薇戦争といった政治的シンボルとなったバラ、芸術や建築の中のバラ、詩の中の象徴的なバラ、イスラム医術におけるバラ、オスマン宮廷のバラや中東のローズウォーターにも触れ、バラが世界中でさまざまなシンボルや役割を担っていった軌跡を紹介しています。
近代・現代文化の中に花開くバラ

第7章「立ち止まってバラの香りを嗅いでみよう」(1650~1789年)では、バラの香りの成分や化学、初期の蒸留法やそれが記された書物、貴重なポンペイの壁画、香水産業の興隆を例に取りながら、バラの香りを積極的に嗅ぎ、心地よいものを楽しむことは、人の幸せに繋がることを説いています。
第8章「ロマンティック・ローズ」(1790~1850年)は、ロマン派運動の中で、美と衰退、愛と悲しみ、喜びと悲嘆、生と死などの両極端を表す複雑なシンボルが込められるようになったバラについて。そして、中国のバラがヨーロッパにもたらされ、交配技術の向上と、四季咲き性や返り咲き性といったバラの多様性が増した時代背景も示しています。
そして最終章となる第9章では、「近代・現代文化の中のバラ」(1851年以降)を取り上げています。それまで何世紀にも渡って、宗教、詩、芸術、文学、音楽、医学、ファッション、香水、インテリア、料理、そして庭園の中で重要な位置にあったバラに加え、さらに近代・現代の文化が加わり、その表現の一翼を担ったバラについて紹介しています。

エピローグでは、健康的なバラの育種や栽培、化学薬品の削減という世界的な取り組みを紹介し、バラを未来に繋ぐために、さまざまな視点からバラを植えることの重要性が綴られています。

本書を手に取ってご覧になれば、今まで何世紀にも渡り、バラが人々によって、さまざまな意味や役割を持たされてシンボルとなり、人間社会の一役を担ってきたことがお分かりになると思います。
まるで時代を映すかのようなバラの軌跡、それは、それだけ人々の心を長い間、魅了し続け、共に存在してきたことを意味しています。美しい故に、枯れて朽ちていく様はもの悲しく、一瞬吸い込んだ香りは心地よすぎるために永遠を望んだり……。
バラは、これまでどれだけの人々の心を揺さぶり、虜にしてきたことでしょう。
そして、これからもきっと、バラに出会った人々と共に時代を映しながら、物語を紡ぎ続けていくことでしょう。
今まで断片的に伝わっていた事柄が、本書によって繋がり、より世界中のバラの歴史と文化の奥行きを理解することができる、手放せない一冊です。

『バラの物語 いにしえから続く花の女王の運命』(グラフィック社)は全国の書店、及びインターネットにて好評販売中。
Credit

写真&文/元木はるみ
神奈川の庭でバラを育てながら、バラ文化と育成方法の研究を続ける。「日本ローズライフコーディネーター協会」代表。近著に『アフターガーデニングを楽しむバラ庭づくり』(家の光協会刊)、『ときめく薔薇図鑑』(山と渓谷社)著、『ちいさな手のひら事典 バラ』(グラフィック社)監修など。TBSテレビ「マツコの知らない世界」で「美しく優雅~バラの世界」を紹介。
https://jrlc.exblog.jp
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