国内最大規模の園芸ショウとして1999年から開催され、2018年には20回目の記念の年を迎えた「国際バラとガーデニングショウ」。5月18〜23日の6日間の会期中、のべ約17万人が訪れたバラとガーデニングの祭典をレポートします。
目次
バラのガーデニングトレンドを知る一大イベント
第1回開催から総入場者数はのべ448万6,610人という、春恒例の花の祭典として、ガーデニングやバラファンに支えられて20回目を迎えた2018年の「国際バラとガーデニングショウ」。国内外から集められた選りすぐりのバラ1,000品種、100万輪が埼玉・所沢市のメットライフドームの会場に飾られました。今年のテーマは、「20年のありがとうを込めて」。どこを撮っても“SNS映え“をキーワードにしたフォトジェニックな空間があちこちに出現。見るだけでなくバラの香りを楽しみ、学び、発信し、お気に入りの苗を購入できるなど、バラを満喫できるショウとなりました。
20周年を記念し、捧げられた
2つのアニバーサリーガーデン
1つ目のアニバーサリーガーデンは、日本で庭づくりに取り組んで20年になる人気のガーデンデザイナー、吉谷桂子さんによる「My Back Ground 1950s 昭和30年代に生まれて」。庭のインスピレーションとなったのは、バウハウスに影響を受けていた建築家のお父様が描いたスケッチです。27年前に渡英し、ガーデニングに魅了された吉谷さんが、これまで学び、実践してきた暮らしの美学を感じさせるデザインを、多くの植栽で表現しました。
背景の壁やパーゴラなどの構造物のほとんどをホワイトにし、狭い場所でも植物の光合成を助ける環境づくりによって、花をたくさん咲かせられるテラスを提案。アリウムやジギタリス、バーバスカムが縦のラインをつくり、低く茂るバラやパーゴラの柱を登るバラなど、立体感のあるガーデンに。
ガーデンの後ろ側にも、彩り豊かな花の風景が。ぐるり360度、どの場所から見ても美しい理想の庭に、花が咲く暮らしの豊かさが感じられました。
2つ目のアニバーサリーガーデンは、20年間ショウに携わってきた英国人ガーデンデザイナーのマーク・チャップマンさんによる「English Country Garden」です。テーマは、週末に都会を離れてリフレッシュするための、どんな世代の家族でも楽しめる庭。広い芝生のスペースを囲むように野菜やハーブ、果樹が育ち、木製のシェッド(収納小屋)とひつじのショーンがフォーカルポイントに。
カーブを描く屋根がチャーミングな、木製のシェッドはマークさんオススメのイギリスから取り寄せたサマーハウス。子どもやペットの遊び場として、室内インテリアにも可愛いディスプレイが施されていました。シェッドの出入り口や庭の園路に配した使い勝手を考えた踏み石や、家と庭をつなぐ植物の組み合わせなど、マークさんのお気に入りの要素が随所に見られました。
国内外の多数のバラに囲まれた
セントラルローズパーク
セントラルローズパークは、見渡す限りバラ尽くしのコーナー。パーゴラの上にもたくさんのバラが咲き誇る、バラの空中庭園が出現。ウェルカムガーデンの展望ブリッジからの眺めは壮観でした。
造園家・阿部容子さんが監修した「心ときめくバラの庭」では、日本で育種されたバラと海外ブランドのバラをそれぞれ主役にし、白い壁を挟んで表と裏の2方向に2つの庭を表現。上写真は、銀葉や黒紫の葉、ブルー系の下草で足元を引き締めることでバラが浮き立って見える「日本育種のバラを主役にした艶やかな庭」。
ラベンダー色で人気の‘ガブリエル’や‘モチーフ’(河本バラ園)、ピンクの半八重花の‘ダフネ’(バラの家/ロサ オリエンティス)が白い壁に映えます。
一方は、「海外ブランドのバラが引き立つ明るく華やかな植栽」。黄金葉や斑入りの葉、イエロー系の植物が明るく、華やかな空間を盛り上げます。茶系のシックな背景に映えるバラは、‘ラレーヌ・ドゥ・ラ・ニュイ’や‘マリーアン・ドゥ・ラ・マルティーヌ’(花ごころ/デルバール)、‘ピエール・エルメ’(バラの家/アンドレ・エブ)が選ばれました。
バラの専門誌『New Roses』編集長、玉置一裕さんが国内外の主要なナーセリーの新品種を紹介するコーナーでは、ニューフェイスのバラが多数展示されて注目を集めていました。近年は香りがよい品種も多く、花の表情を楽しみながら、顔を近づけて芳香も楽しめる嬉しい展示スタイル。
庭デザインの今を知る「コンテストガーデン」
プロ・アマを問わず出品される「バラとガーデニングコンテスト」。今回の募集テーマは、私にとってのいい庭を表現する「『十人十庭』〜私の庭」。大賞を受賞したのは、Radiant Green Garden+貝塚造園+Green Calm Houseによる「おだやかに暮らす〜庭とともに〜」。
ガーデンシェッドや折りたたみチェア、クッションに至るまでナチュラルホワイトで統一。テーブルに陰を落とす木立の雑木や、株元の風に揺れる繊細な植物など、洗練された植栽術が多くの共感を呼んでいました。ひとたびテーブルにつけば時間を忘れて過ごせそう。ガーデンのある暮らしへの憧れを誘う一角でした。
花苗の買い物や新商品に出会える「ガーデニングマーケット」
自動芝刈り機や耕運機など、菜園やガーデニングに役立つパワフルな製品を多数紹介する本田技研工業のブース。連続14回出展となる2018年のテーマは、「ボタニカルでブロカントなライフスタイル」を表現。南仏をイメージし、チョークペイントでライムグリーンにペイントされた建物を、雑木が植わる広い芝生や夏の野菜が育つ小さな畑が囲み、ガーデニングが中心となったセンスのよい暮らしぶりを伝えていました。
アニバーサリーガーデンを担当した、マーク・チャップマンさんのお店「マークスガーデンアート」では、最新のイギリス発のガーデングッズが所狭しと並びました。手袋やハサミ、誘引紐からジョウロ、オベリスク、アイデアグッズなど、他では見かけない珍しい商品群に、立ち寄るお客様が多く見られました。
バラとガーデンの広場では、20年の時を刻む時計台を背景に、ガーデン&エクステリアメーカーのタカショーが「庭でできる豊かな健康生活 ガーデンセラピーの庭」を提案。中央のガーデンベンチに座ると、バラに囲まれた屋外空間が体感できるフォトスポットに。
ガーデニング界で活躍するデザイナーやバラのスペシャリストたちによる演出の数々に、ガーデンライフの多様化が伝わるイベントとなりました。
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