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素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪32 新潟「グリーンランド エデン」
園芸の裾野を広げるべく 安心して育てられる苗を販売 エクステリアや庭づくりの設計・施工を請ける「グリーンランド エデン」。大きな看板はないものの、瑞々しい植物が囲むモダンな事務所兼ショップが目印です。 「グリーンランド エデン」は、約8年前にこの地にオープンした総合園芸ショップです。以前は、北陸自動車道新潟亀田ICのすぐ横に35年間店を構えていましたが、付近の整備に伴い3kmほど南に移転しました。 店名は創始者で前社長の大橋保男さんの「皆が楽しく暮らせる理想郷・ユートピア・エデンの園をつくろう」という思いからつけられました。1968年当時、世界で一番の国・アメリカ合衆国を見たいという思いでカリフォルニア州に渡り、農業研修生として学んだことを注ぎ込みました。その名の通り、花いっぱいのおだやかな空間が広がっています。 広い敷地の一番奥に設けられたハウスは、色とりどりの花苗や鉢が並ぶ売り場。中央に設えた大きなトンネル状のアーチが空間に立体感とメリハリをもたらしています。ここにはロベリアやフクシア、シダなど枝垂れるタイプの植物が吊され、彩り豊かなアイストップとなっています。 花苗の新鮮さはもちろんですが、どれもしっかりとした株に育っていることも、このショップの大きなこだわり。「よいものを安く提供する」ためのひと手間を惜しまず、メーカーから仕入れた苗を、30年来提携している農家さんに大きく育ててもらってから、売り場に出しているのです。これならビギナーでも育てやすく、見栄えも抜群です。 ショップにはハンギングバスケットマスターなどが在籍、常に花に携わる仲間たちと園芸の裾野を広げることを強く意識し、イベントやワークショップなどの活動に積極的に参加しています。モダンな建物の中では、寄せ植えをはじめとした講座を月2回(1、2月は除く)開催、冷暖房完備の中で快適に学ぶことができます。寄せ植え講座は、材料を店側が用意するだけでなく、自身で選ぶことも可能。参加者のレベルに合わせて受講することができるので安心です。 ナチュラルな雰囲気の寄せ植えも多数並んでいます。売り場の奥には、近隣の企業やショップから依頼された寄せ植えがたくさん。もちろん、要望を伝えれば予算に合わせて作ってくれます。 庭づくりの専門家がおすすめの リーフや実が楽しめる樹木がたくさん 庭の工事を請けているショップだけに、草花だけでなく樹木の品揃えが非常に豊富。大きく育つ黄金ニセアカシア‘フリーシア’を中心に、おしゃれで人気の樹種がずらりと並んでいます。樹木のプロも3人在籍しているので、大きさや育ち方、庭への取り入れ方など、分からない時はぜひ相談してみて。 ショップで今人気なのは、鉢で気軽に楽しめるオリーブやブルーベリー。そのほか、銅葉や斑入り葉、オーレア葉などの人気品種や、手に入りにくい希少種も揃えています。それぞれに大きな名札がついているので選びやすく、眺めているだけで勉強になります。 小さな農場のような売り場で見つけた 素敵な樹木をご紹介! 左/斑入りコナラ:ブナ科・落葉高木。人気が高い秋にドングリをつける雑木の斑入り種。 中/斑入りリョウブ:リョウブ科・落葉中高木。夏に細長い花穂に白花をたくさん咲かせ、秋に小さな実をつける。 右/ヤマボウシ‘ウルフアイ’:ミズキ科・落葉高木。葉焼けしにくい斑入り種で、比較的コンパクトな樹形におさまる。 左/クロハトベラ:トベラ科・常緑低木。さわやかな斑入り葉と黒い茎の対比が美しいピットスポルマム。 中/シマグミ:グミ科・常緑低木。銀色がかった葉が魅力の、まだ流通が少ないグミ。初夏に白花を咲かせる。 右/コプロスマ‘サンスプラッシュ’:アカネ科・常緑低木。繊細な枝ぶりで、黄覆輪の小さい葉が密集する。 アメリカハナズオウ:マメ科・落葉中木。春に開花する。写真の品種は下記の通り。 左/‘メルロー’:厚みと光沢のある紫色の葉と、赤紫色の花が美しい品種。‘フォレストパンシー’よりまとまりよく成長する。 中/‘ハートオブゴールド’:出葉時のライムグリーンの明るく美しい葉は、強光下でも葉焼けしにくい。花はピンク色。 右/‘シルバークラウド’ :淡ピンクから白い斑入りに移ろう美しい葉は、強光で葉焼けしやすい。花は淡ピンク色。 ヨーロッパナラ:ブナ科・落葉高木。カシワのような形の葉をつけ、秋にドングリがなる。写真の品種は下記の通り。 左/ ‘コンコルディア’: 春の鮮やかな黄色はじつに見事。黄色い葉は盛夏を過ぎる頃になると緑色に変わって、再び秋に黄葉する。 中/クリスタータ:品種名は丸まって展開する葉が「鶏のとさか」に似ていることから名付けられた。大きなドングリも魅力的。 右/‘アルゲンティオ マルギナータ’:やや青みがかる葉に白い斑が入る。ドングリにも斑が入り、緑と白のきれいな縦縞模様になる。 左/アロニア:バラ科・落葉低木。チョコレートベリーとも呼ばれ、春に薄紅色の小花を房状に咲かせ、秋には赤や黒の果実をつける。 中/ブルーベリー‘チャンドラー’:ツツジ科・落葉低木。ブルーベリーの中では最大サイズを誇り、成熟期初期は500円玉ほどの大きさの実をつける。 右/西洋ニンジンボク:シソ科・落葉低木。初夏に薄紫または白色の芳香のある花を咲かせる。葉は5~9枚の掌状になり、香りがある。 左/ヨーロッパブナ‘パープルファウンテン’: 枝垂れるブナで紫葉の人気品種。新葉は紫赤色で、夏にはやや緑がかり、秋は茶色になる。 中/レイランディ‘ネイラーズブルー’:ヒノキ科・常緑高木。広円錐形から円柱形に成長するコニファー。萌芽力が強いのでトピアリーにも。 右/アカシア‘ブルーブッシュ’ :マメ科・常緑中木。青灰色の葉と黄色い花が魅力のアカシア。生育が早く、樹形はブッシュ状になる。 お手頃なサイズと値段の インテリア関連も充実 建物内はインドアグリーンと雑貨売り場。天井が高い店内には、大小さまざまな種類のグリーンがおしゃれな雑貨とひしめき合うほどに並べられており、選ぶ楽しさ満載です。お手入れにおすすめのガーデンツールも多様に揃っています。 コンテナや雑貨類と合わせたおしゃれなディスプレイも必見。棚やスタンドを巧みに使い、それほど大きくないグリーンも、空間につややかな潤いを与えています。 インテリアで存在感を発揮する、大型の雑貨類もたくさん。鏡を用いることで部屋を広く見せつつ、大きめのガラスの花瓶とともに透明感のある輝きをもたらしています。 品質本位にこだわり、地域に根差すことを大切にしている園芸店「グリーンランド エデン」。たくさんの生産者がいる新潟・園芸産地としてガーデニングの活性化に力を注ぎ、園芸に携わる人の雇用アップにつなげる努力を続けています。また庭づくりのプロが「どこからどのように始めればいいの?」といった初心者さんの疑問にも丁寧に答えてくれます。ぜひ訪れてみてください。アクセスはJR信越本線亀田駅より徒歩約30分、北陸自動車道新潟亀田ICより車で約10分。 【GARDEN DATA】 グリーンランド エデン 新潟県新潟市江南区泉町5丁目1番3号 TEL 0120-1187-92 営業時間:9時30分~18時30分(1・2月は冬季営業10~18時) 定休日:正月三日間、1・2月のみ毎週水曜日 https://g-eden.co.jp/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪26 新潟『「道の駅」庭園の郷 保内』
庭園・植木の文化の魅力を 発信する道の駅 新潟といえば日本有数の米どころ、三条といえば金物、そしてここ保内(ほない)は植木の産地として古くから発展してきました。そんな特徴を生かし、「見て、触れる」ことで、造園や植木、ガーデニングに親しみ、楽しむことができる道の駅として、地域の人々に愛されています。 『「道の駅」庭園の郷 保内』は、今から5年前の2016年にオープンし、翌年に道の駅として登録されました。地域の新鮮な特産物や野菜と並行して、植木や花苗、資材等を販売しています。 正面玄関を入って左側のエリアと屋外に設けられているのは、たくさんの植物と資材が並ぶ、園芸コーナー。明るい陽射しが入る建物内は、まるで温室のような雰囲気です。植物は地域の出荷業者が自信を持って納めたもので、こまめに苗をチェックしに来ていることもあり、常に生き生きと新鮮な状態で並んでいます。 大きなガラス張りのエリアの外は、季節の花や草木が並ぶ苗売り場。壁や屋根に使われた温かみのある木材や、やわらかな光のライトが、心地よい空間を演出しています。 大きくせり出した屋根の下は天候に左右されずに買い物ができ、ワークショップが定期的に開かれています。一番人気は寄せ植え講座で、用意された苗を植える初心者コースや、花を選ぶところから指導してくれるステップアップコースなど、お客様の要望に合わせて対応しています。 こだわりのガーデニングツールで 作業効率をアップさせよう ここ三条市は隣の燕市と併せて日本最大の金属製品の生産地です。それだけに、ガーデニングツールがホームセンター以上に揃う資材コーナーは必見。初心者から専門家、そして子ども用まで、多種多様な金物のツールがずらりと並んでいます。 ここでは、三条の工場で作られた金物を厳選して紹介しています。たくさんあるなかでも特にガーデニング向けのこだわりアイテムは、初心者ガーデナーが手に取りやすいようにテーブルの上に並べられています。 刃物や農具、鋳物などのガーデニング資材の多くが、三条で作られています。花首や長い茎を支える支柱や、プランターをハンギングするためのフックなど、ガーデニングのお役立ちアイテムがたくさん。造園用の根巻きや幹巻き用の資材も並んでいるので、眺めているだけで楽しく、勉強にもなります。 ガーデニングライフをサポートしてくれるアイテムも充実しています。なかでも好評なのが、首を覆う布がついた色とりどりの作業帽。お手頃な値段なので、洗い替えやその時の気分に合わせてかぶれるよう、いくつか揃えてみても。頭を覆う部分は、麦わらと布地があります。お好みで選んで。 隣の加茂市は日本有数のニットの産地。ここでは、ガーデニング時にあると便利なものを扱っています。人気商品は、ふんわりと足首をカバーしてくれる足首ウォーマー(左)と、引き締め効果が高くてゴムがずれにくく、5本指で血行を促進する丈夫な靴下(右)。 ここのイチオシが、ビニールヒモを編んで作ったベトナム製のバスケット。ガーデニンググッズや野菜の買い出しなど、さまざまなシーンで使えます。洗えるのも嬉しいポイント。カラフルで大きさも数種類あるので、選ぶのに迷ってしまいそう。 ガーデニングライフの必需品からおしゃれな雑貨類まで、ホームセンターをしのぐ品揃えを誇る、驚きの道の駅です。 道の駅ならではの おいしいものコーナー 天井が高く解放感にあふれる建物は、今年2021年初めに一部がリフォームされ、ますます買い物がしやすくなりました。ほかの道の駅同様、周辺の農家から出荷された旬の野菜をはじめ、ここでしか手に入らない地場農産物も並んでいます。 【ショップおすすめコーナー】 今年のリニューアルオープン時に設けられたのが、子どもたちを遊ばせながら、大人もくつろげるプレイスペース。子育て世代が楽しめるようにという配慮が、あちこちに盛り込まれています。 子どもたちに人気の、木箱を積んだジャングルジム。まわりの大きな植物は、プラントハンター・西畠清順氏が主宰する‘そら植物園’の提供で、異国情緒を漂わせながら展示販売されています。冬場は室内でも氷点下になることがある新潟ですが、ここでも丈夫に育つように、比較的耐寒性のある種類が、あらかじめ低温に慣らされて搬入されています。今後、西畠氏による海外の植木選びや演出法、現地の状況などについてのトークショーや講座などを催す予定もあります。 庭のことならなんでもお任せ! 頼もしい面子が勢ぞろい 建物の前には、広大な庭園と植物見本園が広がります。その広さは、なんと約30,000㎡。庭園には道の駅が提案する風景が広がり、見本園には保内の植木職人たちがすすめる植物や庭の提案がたっぷり盛り込まれています。 植木屋それぞれの持ちスペースでは、おすすめの植物を使いながら、独自の風景を作っています。ここに植えられているものは、根巻きやポット植えなので買うことができ、頼めば庭に植えてもらうことも可能。 上写真は、300年ほど前から大切に育てられてきた、‘保内五葉松’。葉が青白く光り、美しいグラデーションを見せることから、‘霜降り五葉松’とも呼ばれています。季節で微妙な葉色の移ろいが楽しめる‘保内五葉松’。一見の価値あり。 見本園の奥で、赤いパラソルが目を引くのは、道の駅自慢のイタリアンレストラン「パスタとピザの店・base(バーゼ)」。地元で採れた野菜をふんだんに使ったジャパニーズイタリアンレストランで、パスタ、ピザ、ラザニアなどのメニューがあります。 女性駅長とスタッフによる 庭の提案コーナーも注目 レストランのさらに奥に広がるのは、道の駅が提案するキッチンガーデンやキッズガーデン。「キッチンガーデンは、くまのプーさんに出てくるラビットの畑をイメージしているんです。キッズガーデンは、オランダのカラフルで楽しいガーデンを意識してつくっていますが、こちらは、まだこれから力を入れていく場所なんです」と、道の駅・駅長の加藤はと子さん。 加藤さんは、もともと三条市の産業振興のイベントを成功に導いたという、凄腕の女性駅長さん。パワフルでありながらも朗らかな人柄が魅力です。ガーデニングにも興味があり、オープン当初より就任している駅長職は、まさに適任。「対外的なことも多い仕事の合間に庭のことを考えています。庭づくりだけに専念したいぐらい、ガーデニングは気持ちがいいですね」と加藤さん。 ここは、「造園・植木の振興」だけでなく、「文化の交流の場・子育てを応援する場の提供」など、地域貢献を強く意識している注目度の高い道の駅。2019年、国土交通省により「地域活性化の拠点となり優れた役割を担う、‘重点道の駅’」に認定されました。 レストランの裏手にはレンタルスペース(和室)が。子ども連れの家族がここでゆっくりレストランの食事を楽しんだり、セミナーやワークショップを開催したり。さまざまな用途で利用できます。(1時間1部屋、500円〈税込〉、9~21時の間に利用可)。 「植物に親しみ、地元の食を味わう」をテーマに設立された『「道の駅」庭園の郷 保内』。幅広い年齢層がゆったりと楽しめる、ユニバーサルなスポットです。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、北陸自動車道・三条燕ICから約20分。JR信越本線「保内駅」から徒歩約20分。 【GARDEN DATA】 『「道の駅」庭園の郷 保内』 新潟県三条市下保内4035番地 TEL :0256-38-7276 営業時間:9:00~18:00 定休日:12月31日~1月2日(その他臨時休業あり) https://honai-gardens.com/ 写真協力(*)/庭園の郷 保内 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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「私の庭・私の暮らし」 佐潟の自然の中でハーブの魅力を伝える 新潟〈ハーブランドシーズン〉
水辺を見下ろす素晴らしいロケーション ハーブランドシーズンの建物は、佐潟(さかた)の水辺を見下ろす傾斜地に建っています。高低差があるおかげで、テラスからの見晴らしは最高。電線などの一切ない、開放感あふれる景色を一望することができます。 佐潟は国内最大の砂丘湖。砂丘と砂丘に挟まれたくぼ地に湧き水が溜まってできたという、国内でも珍しい成り立ちの淡水湖です。佐潟は昔から、人々の生活と共にある水辺として活用されてきました。今では希少な植物も残るこの一帯を守るため、地域の人々は環境保全に努めています。この湿地は、水鳥の生息地を守る「ラムサール条約」に登録され、野鳥の宝庫として知られます。200種を超える野鳥を観察することができ、コハクチョウやマガモといった、渡り鳥の越冬地としても有名です。 ハーブランドシーズンは、その佐潟を一周する遊歩道に面した、ナチュラルな雰囲気のハーブ園で、2002年にオープンしました。広々とした敷地には、ハーブ、草花、野菜、果樹、樹木など、100種を超えるさまざまな植物が健やかに茂り、鳥のさえずりが絶えません。 5月末のカモミール、7月のラベンダー、盛夏のハス、晩夏のレモングラスと、園内の景色は変わり続け、季節ごとの楽しみをもたらします。 無農薬ハーブを使った充実の講座 佐潟の近くで育った永嶋さんは、結婚を機に農業に携わり、その後、ハーブの道に進むようになりました。園内を足取り軽く歩き回って、「この植物はね、こうなのよ」と次々に教えてくれる様は、まるでハーブを知り尽くしたチャーミングな魔法使いのよう。採れたてのハーブをたっぷり使った体験講座で、ハーブのあれこれをとことん学ばせてくれます。 園内のハーブや植物は、すべて無農薬で栽培するというのが、永嶋さんのポリシー。その安心なハーブを使って、ハーブティー体験や花摘み、ハーブのコスメ作りといった体験講座を提供しています。また、ハーブを使った料理や薬膳、つるカゴなどのクラフト制作、植物を使った染め物など、いろいろな角度から植物について深く学ぶ講座も、多々行っています。 さまざまな植物がおおらかに育つ園内 建物の前に広がる斜面は、色とりどりの草花が植わり、お花畑のような雰囲気です。訪れた6月上旬は、カモミールの刈り取りがほぼ終わったところで、赤いポピーの野原となっていました。この後、夏に向けてセンニチコウが生えてきます。カモミールは、こぼれ種でまた来年生えるそう。 佐潟のほとりはスイカの産地として知られる砂丘で、園内はどこもさらさらとした砂地です。佐潟から吹く風が通り抜ける、日当たりのよい乾燥した砂地の斜面に、ハーブを中心としたたくさんの草花が元気に育ちます。 草花は時に、意図していない場所にこぼれ種で生えてくることがあります。土地が広いこともありますが、永嶋さんはそんな時でもあまり気にしません。植物に「君がここにいる意味があるかな?」と問いかけ、どうしても違うと感じた時は、移動してもらいます。 クワ(マルベリー)やジューンベリーなどの果樹も、ところどころに植えられています。クワの中でも、昔からある、葉を蚕に与える品種は小粒の実をつけますが、最近の人気は大粒の実をつける品種です。クワの実はケーキに添えるなどして使いますが、収穫が追い付かず落下することもしばしば。地面に落ちた実は染め物に使っています。 昔からのクワ(右)は葉が大きく、実は小粒。近年流行のマルベリー(左)は、葉は小さいけれど実が大粒です。園内にはアンズなどの果樹もありますが、鳥が食べるのが先か、人が食べるのが先かという競争になるそう。野鳥の宝庫ならではの悩みです。 敷地を縁取る木々 佐潟に面する側にはいろいろな樹木が茂っています。これは大きなクルミの木。実と葉、枝を染め物に使います。 鳥がクルミの実を運んで、思わぬところに芽を出してしまうこともあります。クルミは強い樹木で、そうなると困ったことになるので、気を付けています。 これは杜仲(とちゅう)の木。20年前に植えたのですが、ご本人は近年まですっかり忘れてしまっていて、知人によって発見されたのだとか。杜仲の葉は、割くと粘り気のある糸を引きます。煎って、杜仲茶にしていただきます。 ここに並ぶのはヤマザクラ。4月の終わりの花盛りには、ここで一服。素晴らしい時間を楽しめます。 健やかに茂る和洋のハーブ 日陰の一角には、ミョウガと、鳥が実を運んできたというサンショウの木があります。 これはハマボウフウ(浜防風)という珍しいもので、海岸の砂地に生えるセリ科の植物です。新芽をおひたしにして食べますが、香りはセリとイタリアンパセリをミックスしたよう。ハマボウフウの根は漢方薬としても使われています。 ハウスの中には、挿し木したラベンダーや、種まきしたバジルなど、おなじみのハーブがありました。ボランティアの方々に手伝ってもらって挿し木したラベンダーの数は、なんと2,000本。それらは病院など、必要とされる場所に、無償で提供しているそうです。 「私の次の夢は蒸留小屋を建てること」と言う永嶋さん。そのためにも、もっとラベンダーの苗を増やして準備していきたいと考えています。 永嶋さんは、カモミール、ローズ、ラベンダーなどを蒸留して作ったハーブウォーターを、化粧水として使っています。季節ごとに変わるフレッシュな化粧水を使うのは、本当の贅沢といえるでしょう。 バジル畑には、よく見ると日除けがしてあります。バジルは太陽を浴びると、酵素の働きで苦味が強くなってしまいます。バジルペースト用に育てるには、間隔を詰めて植え、遮光します。すると、葉が柔らかくなって美味しくなるそう。 これはルバーブのタネ。植物はできるだけ、自家採種して育てるようにしています。生徒さんにも、花の後、タネになるまでを学んでもらいます。「タネにエネルギーを感じる」と、永嶋さん。いろいろなタネだけを合わせた、タネのブーケを作るのも好きです。 ハウスの中にはレモンの木もあって、300個ほどの実が付きます。新潟産レモンをつくるのも、永嶋さんの夢の一つ。ここにはライムとベルガモットの木もありますが、それらの花(ネロリ)の蒸留にも挑戦したいと思っています。 建物の裏手には、立派なローズマリーの畑があります。永嶋さんはいつも、大きな枝を5本ほど、車のダッシュボードの上に置いています。効果抜群の、天然の消臭剤です。車の中に入れておくと、夏場はあっという間に乾燥してドライハーブになるそうで、一石二鳥です。 四角い枠の小さな畑は、年間の講座を受講する生徒さんに一枠ずつ貸し出しているものです。バジル、エキナセア、レモングラス、ローズゼラニウム、ラベンダー、スイスチャード、コモンマロウ、コモンセージといったハーブ類から、好きな植物を選んで、育ててもらいます。 ヒラタケ菌で土の改良 ハーブ園の一角には、ヒラタケを栽培する農家さんから譲ってもらった、使用後のヒラタケの菌床が積まれています。農学博士にお墨付きをもらったよい菌ということで、もみ殻と合わせてから、堆肥に混ぜて使っています。英国のガーデニングでいうところの、マッシュルーム・コンポスト(マッシュルームの菌床)と似た仕組みの土壌改良です。園内はどこも砂地で、チッソ系の栄養素をどれだけ入れてもすぐに流れてしまうので、堆肥を入れすぎるという心配はないそうです。 冬になると、この山には自然とヒラタケが生えてきます。すると、生徒さんたちは「本物の『きのこの山』だ!」と喜び、きのこ狩りに勤しみます。ちなみにヒラタケは、バジルペーストと和えると美味しいそう。 お話を伺いながらハーブ園をぐるりと一周。色とりどりの収穫です。 人生を変えたハーブとの出合い 永嶋さんがハーブに興味を持ったきっかけは、80年代にハーブを広めた園芸家、広田靚子(ひろたせいこ)さんのラジオ番組でした。広田さんの、日曜日の朝は庭の野菜やハーブを摘んで、たくさんのカモミールを入れたお風呂にゆっくり浸かります…という言葉に、永嶋さんは、まあ、なんて素敵な生活なのだろう、と驚きます。当時、農業に就いて、息つく暇もないほどの忙しい日々を送っていた永嶋さんにとって、それは夢のような生活に思えました。が、広田さんの優しい語り口に背中を押され、自分もやってみようと思い立ったのです。 『赤毛のアン』や『大草原の小さな家』などが好きだった永嶋さんは、お話に出てくる、カモミールやローズマリーといったハーブの存在に惹かれていました。しかし、当時はまだまだ珍しく、わざわざ探しに行って手に入れたローズマリーを料理に使っても、さじ加減が分からなくて、家族に不評を買うこともありました。まったく手探りのスタートでした。 そんな折、義理のお母様が体調を崩され、永嶋さんは少しでも助けになればと、ラベンダーを育て始めます。また、持病を持つお祖母様に、育てたカモミールを入れたお風呂をすすめ、「このお花のお風呂に入るとよく眠れる」と、受け入れられたことも励みになりました。そうやって少しずつ、心身の不調を和らげるハーブの力を感じるようになっていきました。 永嶋さん自身、忙しい一日の終わりに小さなハーブ畑に寄ると、疲れた気分がリセットされて笑顔が戻り、癒やされることに気がつきました。「香りってすごいな」と、人を元気にするハーブの力を実感したのです。そして、NPO法人ジャパンハーブソサエティ―(JHS)認定上級インストラクターの資格取得を機に、ハーブの道に本格的に進むことを決めたのでした。カモミールの「逆境のエネルギー」という花言葉が好きだという永嶋さん。人生に力を与えてくれるハーブの魅力をさらに広めようと、次の夢に向かっています。 Information ハーブランドシーズン 〒950-2261 新潟県新潟市西区赤塚5073番地 TEL/FAX: 025-239-3288 開園時間: 9:00~18:00 (冬期は17:00) 定休日:毎週水曜日 Credit 取材&文/ 萩尾昌美 (Masami Hagio) 早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。神奈川生まれ、2児の母。 写真/3and garden
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新潟県
「私の庭・私の暮らし」ハーブや果実など庭の恵みを活用 新潟・渡辺邸〈Watanabe Garden蔵〉
ハーブガーデンの実り豊かな 〈Watanabe Garden蔵〉 『「私の庭・私の暮らし」食と香りの楽しみに満ちた庭 新潟・渡辺邸〈Watanabe Garden 蔵〉』でもご紹介した、渡辺さんのガーデン。約100種の植物が育ち、樹木やバラなどの灌木、宿根草など、観賞を目的とした植物に加えて、和と洋のハーブを中心に、果樹や野菜など、食べられる植物がたくさん植えてあります。 今回は、渡辺さんが庭で収穫するさまざまな恵みをどのように活用し、楽しんでいるかをご紹介しましょう。 清涼ハーブ水でおもてなし 夏の間、カフェでは、庭に茂るローズマリーとミント類を使ったハーブ水を、お客様に出しています。ハーブの清涼感で、スーッと爽やか! 体のほてりを冷ましてくれるようです。美味しくて、ごくごく飲めます。 ローズマリーは、土を乾燥気味に保っている地中海ハーブのゾーンで栽培。コモンタイムやコモンセージなどの、料理によく使うハーブもこの区画で育てています。 渡辺さんの庭には、キャンディーミント、レモンミント、グレープフルーツミント、ワハッカ、オーデコロンミントがあって、香りがそれぞれ異なります。ハーブ水には、キャンディー、レモン、グレープフルーツのミントをミックスして使っています。これらのミントは割と華奢で、半日陰で育っています。 それから、どこからやって来たのか、植えたつもりがないのに、アップルミントとスペアミントも生えています。この2種類は香りが強く、とても丈夫。陽光をものともせず、庭のあちらこちらに広がっています。 水出しハーブ水は、新鮮なローズマリーの枝とミントの枝を水と一緒にポットに入れ、冷蔵庫で保管します。1~2時間置いたら飲めるようになり、渡辺さんは水を足しながら、2~3日間繰り返し使っています。葉が茶色く変わり、香りが弱くなったら終わりのサインで、使えるのは2~3日が限度です。ハーブがほんのり香るハーブ水は、水を飲むのが苦手な方でも美味しく飲めます。 ハーブティーの楽しみ 庭にあるいろいろな植物の花や葉を乾燥させて、ハーブティーに使っています。コモンマロウ(ブルーマロウ)を中心にしたブレンドは、ローズ、キャンディーミント、レモンバーベナを合わせた、爽やかな印象。エルダーフラワーとドッグローズのローズヒップを合わせたブレンドは、花粉症によいそうです。 コモンマロウの鮮やかなマゼンタ色の花を使うと、美しいクリアなブルーのお茶になります。コモンマロウは、咳や風邪の症状を緩和する飲み物として、西洋では知られています。 ブルーのお茶は、時間とともに酸化してだんだんとピンク色に変わりますが、レモンのスライスなど酸性のものを加えると、手品のようにサッと色が変わります。カフェではアイスハーブティーの場合、レモンの代わりにカルピスの原液を添えてサーブ。加えてみるとどうなるでしょう? ほのかなピンクの、カルピス風味のアイスハーブティーに! レモンスライスを使うと酸っぱくなりますが、この色変わりの方法なら酸味の苦手な人も楽しめます。 有能な薬草 ドクダミ 渡辺さんの庭には、フキやミツバ、ミョウガ、ヨモギなど、和のハーブもたくさんあります。その中にはドクダミも。時に雑草扱いをされることもあるドクダミですが、渡辺さんは、花をチンキに、葉をお茶にして活用。ドクダミは役立つ薬草なのです。 6月の旬の時期に摘まれた真っ白な花はとてもきれい! ドクダミの花がこんなに可憐だなんて、新しい発見です。 摘んだ花はホワイトリカーに漬け込んで成分を抽出し、チンキを作ります。常温で3カ月以上おいておくと、花が茶色く変わり、透明な液体も茶色くなってきます。いつも1年くらい寝かしておいて、前年のものを濾して使っています。 ドクダミチンキはスプレー瓶に入れて、庭仕事のお供に。虫さされにつけると、かゆみが和らぎます。それから、トイレや玄関の消臭剤として、臭いが気になる時にスプレーしています。ドクダミは消臭効果があるようで、数本切って水に挿し、臭いの気になるところに置いておくだけでも、臭いが消えるようです。 果実は酢に漬けて 実をつける植物が大好きな渡辺さんは、マルベリー、ラズベリー、ブルーベリー、レッドカラント(フサスグリ)、ブラックカラント、プルーン、サンザシといった果樹を育てています。一際可愛らしい小さな実をつけるのはクラブアップル(ヒメリンゴ)。そのままで食べるとちょっと酸っぱいので、いつも果実酢にしています。 クラブアップルの収穫は10月から11月頃。実の頭と底を切り落とし、甘めのまろやかな酢に漬けて、半年以上経てば完成です。昨年は市販の美味しいリンゴ酢を使いました。クラブアップルの果実酢は、炭酸水で割って夏の飲み物に。それから、ハーブティーを入れる際にはちみつと一緒に加えると、お客様に喜ばれます。 レッドカラントやサンザシ、クコの実も、甘めのまろやかな酢に漬けて果実酢を作っています。こちらも炭酸水で割ると、さっぱりとした夏の飲み物になります。 赤色がきれいな果実酢が並びます。一番右は、庭のコモンタイムとチャイブ、ニンニク、トウガラシを醤油につけた「タイム醤油」。「チャーハンや、肉や魚のソテーの仕上げに使うと美味しいですよ」とのことですが、どんな味か、試してみたくなりますね。 実も葉も重宝するマルベリー 6月から7月にかけて、たくさんの実を収穫できるマルベリー(クワ)。黒く熟した甘酸っぱい実は、生のままデザートに添えたり、果実酢を作ったりもしますが、ジャムにするのが定番です。 そこで渡辺さんは一工夫。マルベリーに、やはり庭で収穫したラズベリーやブルーベリーを合わせて煮ます。名付けて「蔵のベリーベリージャム」。マルベリーだけ煮るより美味しくなるそうです。 マルベリーとプルーンを合わせて煮るのもよいとのこと。マルベリーのきれいな色とプルーンのとろみが互いを補い合って、美味しくなるそうです。ジャムはヨーグルトのソースとして、カフェでも提供されます。 マルベリー、つまり、クワの葉は乾燥させて、お茶にしています。クワとドクダミの葉、玄米をブレンドして、「蔵の野草茶」を作ります。 これは、冬に石油ストーブの上で玄米を炒っているところ。玄米は、焦がさないようにゆっくりじっくり炒る必要があって、それには、部屋を暖めるのに使う石油ストーブの上がちょうどよいのだそうです。冬ならではの、一石二鳥の仕事です。「炒り玄米は冷蔵庫で保存しておき、クワの葉とドクダミの葉が揃った時に、一緒に再び軽く炒って、仕上げます。玄米が入ったほうが美味しいお茶になると思います。玄米もできるだけ無農薬がよいですね」。 無農薬の健やかな庭から生まれる、健やかな野草茶です。 インテリアにもさりげなく 古い蔵を改修したカフェの内部にも、庭の恵みがさりげなく散りばめられています。 蔵は半分が吹き抜けで、半分がロフトのように2階のある構造です。入ると正面にキッチンカウンターが。 アジサイ‘アナベル’のドライフラワーを使った壁飾りは、立体感があってオブジェのよう。キッチンの棚にはたくさんのスパイスと乾燥ハーブが並びます。右下の大きめのコンテナには、タイム、ミント、セージ、ローズマリーなど、自家製の乾燥ハーブが入っています。 収穫した花や葉は蔵の中でも乾燥させています。これはチャイブ。味のあるワイヤーワークは、知り合いの工芸家さんが作ってくれたものです。乾燥させたチャイブは、ラタトゥイユなどの煮込み料理に使います。 吹き抜けの壁にもアジサイのドライフラワーが。 蔵の中は、山小屋のようなナチュラルな雰囲気です。広い空間に飾られたドライフラワーやリースが、居心地のよさを生み出しています。 壁には植物を使ったリースが飾ってあります。ユーカリの葉を使ったリースは、剪定した際に出る枝葉を使って作りました。葉だけのリースも素朴で素敵。ユーカリの葉は、染め物にも使います。 大きなトウガラシを使ったリースは、魚沼のリース作家、ひと葉さんのワークショップで作りました。 蔵の2階に上がるために置かれたスリッパには、ラベンダーの花穂を茎に挟み込んでリボンで編んだ、ラベンダーバンドルズが載せられています。抗菌、消臭作用のあるラベンダーを添えておくという、さりげない心配りです。ラベンダーはこの他に、蒸留器でハーブウォーターを作ったり、ドライにしてポプリに使ったりしています。 ラベンダーバンドルズの作り方はこちら カフェでは、庭の恵みを使ったランチや飲み物が味わえます。サラダにはキッチンガーデンの採りたて野菜が、ヨーグルトには自家製マルベリージャムが添えられ、マルベリーやジューンベリーなどの果実が添えられることも。何に出合えるかは、その日のお楽しみです。 庭の旬の素材を使って、その時々の料理や手仕事を楽しんでいる渡辺さん。自分の手で育てたものを、自分の暮らしに役立てる。それは、いささか手間のかかることだけれど、じつはとても豊かなことなのだと、彼女の暮らしぶりから伝わってきます。 Information Watanabe Garden 蔵 〒959-0235 新潟県燕市吉田旭町1-7-3(渡辺医院駐車場脇に入口) TEL:0256-78-7785 http://www.cl-watanabe.com/watanabegarden_kura.html 営業月 4~11月まで (12~3月は教室開催のみで、通常営業は休み) 営業日 火~金、第2土曜、第4土曜 (祝日は休み) 営業時間 10:00~16:00 Credit 取材&文/ 萩尾昌美 (Masami Hagio) 早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。神奈川生まれ、2児の母。 写真/3and garden
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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。新潟県「国営越後丘陵公園 香りのばら園」
小山内さんの勧めをきっかけに撮影へ レンガの柱いっぱいに咲くイングリッシュローズの‘エブリン’(Evelyn)。こんなに咲いているエブリンを見るのは初めて。辺りは濃厚な香りに包まれていた。 今月ご紹介する庭は、新潟県長岡市の「国営越後丘陵公園 香りのばら園」です。今から約8年前のことと記憶していますが、NHK『趣味の園芸』編集部から、「翌年の秋バラの特集用に秋バラのストックフォトを撮っておいてください」と連絡がありました。僕は千葉県に住んでいるので、「京成バラ園」に行くのが都合がよいと思いながらも、ふと「今回はまだ行ったことのないバラ園に行ってみようか」と思い立ちました。 少し青みがかった葉と香りのよいピンクの花が美しいアルバローズ‘ケニギン・フォン・デンマーク’(Königin von Dänemark)。 そこで、当時よく仕事でご一緒させていただいていた京阪園芸の小山内健さんにオススメのバラ園を尋ねてみると、「越後丘陵公園がいいです! 品種も多いし、何より手入れが素晴らしいから」とのことでした。越後丘陵公園は、香りのバラのコンテストが有名なのは知っていましたが、それ以上のことは知りませんでした。小山内さんの勧めなら行ってみようと、教えていただいたガーデナーの石原久美子さんに連絡をしました。 絞りのバラはいっぱいあるけれど‘カマーユ’(Camaieux)は格別美しい。 電話で簡単なご挨拶をして、何日頃がよいかなど打ち合わせをさせていただいた際、石原さんは僕の名前をご存じだったようで、「今井さんに来ていただけるなんて嬉しいです」と言ってくれたのです。僕も何だか嬉しい気持ちで電話を切ったことを覚えています。 初めての地とは思えない歓迎も思い出に [2016.5/28 pm6:45] 「ばらと草花のエリア」のイングリッシュローズの園路。この年は特にイングリッシュローズの咲き具合が素晴らしく、カメラを構えてみるけどレンズは真西を向いてしまい、撮影に苦心した。結局午後7時近くなって奥の山に日が沈むまで待つことで撮れた一枚。2018年のポスターに採用された、忘れられない写真だ。 撮影当日、バラ園の入り口から連絡をすると、すぐにちょっと日焼けした石原久美子さんが笑顔で出迎えてくれました。早速、石原さんの案内で園内に入って行くと、小山内さんが言っていた通り、どのバラも凄い花数で咲いていたのです。さらには、奥の山が借景になっていて、とても気持ちのよいバラ園だなぁと思いました。 オールドローズの中でも人気の高い名花中の名花‘デュセス・ドゥ・モンテベロー’ (Duchesse de Montebello)。 バラを見ながら歩いていると、作業中のボランティアさんとすれ違う際、「今井さん! ようこそいらっしゃいました」と声をかけてくださったり、紹介していただいたマネージャーの渡邊さんも「撮影に必要なことは何でもおっしゃってください」と言ってくださって、ついさっき到着したとは思えないほど、とても居心地がよく好感を持ちました。 [2013.6/10] 「ばらと草花のエリア」。この頃から手入れが行き届いていて、きれいだった。 今回の撮影は「秋バラ」がテーマですから、モダンローズを中心に撮影しつつ、一通りの撮影を済ませた後は、個人的に気に入ったオールドローズの‘粉粧楼’(フンショウロウ)に釘付け状態で撮影を続けていました。すると、バラの作業の合間に様子を見にきてくれた石原さんが「こんなにたくさん今井さんに撮ってもらえて、あなたたちは幸せね」なんて、‘粉粧楼’に話しかけたりして。おだてられた僕は、すっかり良い気分で越後丘陵公園のファンになっていました。 あまり他のバラ園では見ることのない珍しいアルバローズ‘ブランシュ・ドゥ・ベルジーク’(Blanche de Belgique)。 撮影終了後に‘粉粧楼’を熱心に撮る僕の姿を見て思ったのか、「来年はぜひ春のオールドローズも撮りにいらしてください」と石原さんに言っていただき、「絶対に来ます!」と約束をして、その日は帰りました。 新潟のバラの最盛期、6月上旬に再び撮影の旅 [2018.6/4 am 5:00] マネージャーの渡邊さんが「明日は4時半から始めませんか?」と提案してくれたので、いつもより30分早く到着すると、バラ園は今まで見たこともない幻想的な光に包まれていた。夢中でシャッターを切った、お気に入りの一枚。 翌年は5月終盤、関東周辺の撮影が終わった頃から石原さんに連絡をして、オールドローズの開花情報を教えてもらいながら、撮影日を6月10日に決定。当日は夜中に千葉を出発して、5時過ぎにはバラ園近くの事務所まで到着しました。すると、お二人はもう準備万端。すぐにバラ園のゲートを開けてくださり、お目当てのオールドローズのエリアへと直行しました。まずは朝露に濡れた芝の上をゆっくり歩きながら、満開のオールドローズ、一つずつの顔を見ながら撮影に最適なバラを探していきます。 小山内さんが「ここのブラータが日本一」と言う通り、本当に美しいブラータ(Rosa ×centifolia bullata)。 オールドローズエリアの中ほどまで進むと、ロサ・ケンティフォリア・ブラータが見事に咲いていました。このバラは、小山内さんが「日本一のブラータ」といつも言っているバラです。僕もブラータはいろいろな場所で見ていますが、キャベツのような葉っぱであまり花付きはよくないバラで、なかなかうまく撮れないと感じてきました。そんなプラータが、自然樹形で茂り、僕の目の高さで満開に咲いていたのです。美しく咲く花がいくつもあるじゃないですか! 黒赤系のガリカローズの名花‘トスカニー・スパーブ’(Tuscany Superb)。初期のイングリッシュローズで、‘キアンチ’(Chianti)の交配親として使われたことでも有名なバラ。 「素晴らしいな」「どう撮ろうかな」と考えながら角度を変えたりしてブラータを見ていると、後ろのモスローズのコーナーでは、‘コンテス・ドゥ・ミュリネ’が咲いているし、隣にはダマスクローズの‘レダ’に‘イスパハン’、その向こうには、大好きなガリカローズの‘アラン・ブランシャール’に‘トスカニー・スパーブ’が‼️ いったい、どこから撮り出せばよいのやら…。 [2017.6/6 pm 6:30] 「ばらと草花のエリア」のジギタリスも以前のピンク系から大人っぽい色合いに変わって、さらにオシャレなエリアになっていた。 幸い、その日の朝は晴れたり、日中は曇ったり、夕方はまた晴れたりしたので、一日中ほぼオールドローズのエリアにいた気がします。この日以来、毎年6月上旬の僕のスケジュールは、越後丘陵公園の撮影日と決まりました。毎回、開花情報を石原さんに聞きながら、天気の良い日を選んで1泊2日の撮影です。初日の夕方19時までと、翌日の早朝5時からの撮影ですが、いつも僕のわがままに笑顔で応えてくれる渡邊さんと石原さんには本当に感謝しています。 くすんだ薄い紫色の花がブルーイングしてグラデーションになる姿が美しいガリカローズ‘ベル・ド・クレーシー’(Belle de Crecy)。 2014年にはオールドローズの写真展を、そして2017年には僕の写真でバラ園のポスターも作っていただきました。美しいバラと素敵な方々との心地いい関係を思うと、本当にバラのカメラマンをしていてよかったなと思います。 ‘クロッカス・ローズ’(Crocus Rose)。宿根草とイングリッシュローズのコラボレーションは、このバラ園の見所の一つ。 追伸:今回は僕の趣味の話で、オールドローズのことを中心に書きましたが、もちろん国営越後丘陵公園には、イングリッシュローズもハイブリッドティーも、フロリバンダも、どれも石原さんと公園スタッフの方々、そしてボランティアの方々の手入れによりきれいに咲いています。ぜひ、越後のバラに会いに行ってください。 併せて『花の庭巡りならここ! ロザリアンの聖地「国営越後丘陵公園 香りのばら園」』もご覧ください。
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花の庭巡りならここ! シャクナゲ&アザレアは日本一のコレクション「新潟県立植物園」
花卉生産が盛んな地域ならではの 品種コレクションが多彩な植物園 「新潟県立植物園」は、1998年8〜10月に開催された「全国都市緑化フェア にいがた緑のものがたり」の新津会場跡地に再整備されてオープンした、総合植物園です。新潟市秋葉区は、国内でも有数の花卉生産地で、また新潟県は約3,000種類の植物が自生する豊かな自然を誇る土地。「新潟県立植物園」ではそれらの特徴を生かした展示を行っています。 敷地面積は19.8ヘクタールで、大人の足で巡って1.5時間くらい。園内全体で約4,000種11万株もの植物が息づいています。3棟の観賞温室を持つほか、「シャクナゲ園」「ツツジ園」「さくらの山」「宿根草花壇」「ハーブ園」「にいがた植物園」「シーボルト園」など、エリアによってテーマをもたせた植栽が見られます。特にシャクナゲとアザレアは日本一のコレクションを誇っており、開花期には多くの人が訪れます。 四季を通して開花リレーがつながれ、いつ訪れても何かしらの花見が楽しめる「新潟県立植物園」は、2018年12月1日に開園20周年という節目を迎えました。メモリアル記念として、イベントが目白押し。「にいがたの花展」と題し、新潟県が誇る植物を紹介する3部作シリーズ企画展の「アザレア展」「チューリップ展」「シャクナゲ・ツツジ展」のほか、3月にはラストを飾る「サンクスフェスタ」を開催。この春は、ハタチになった「新潟県立植物園」のお祝いに、ぜひ駆けつけてはいかがでしょうか。 4,000種11万株の植物が集められた植物園 開花リレーによって、いつ訪れても爛漫の景色 「新潟県立植物園」では、毎年春先に温室内企画展「にいがたの花 チューリップ展」を開催しています。2019年は2月27日〜3月24日の日程です。期間合計30品種、1万5000本のチューリップが開花。開花時期を調整し、毎週展示を入れ替えているので、何度訪れても異なる品種や色合いを観賞できますよ! 一方、屋外チューリップ花壇の見頃は4月下旬で、4,000本が彩り豊かに咲き誇ります。 「新潟県立植物園」内の「さくらの山」の遠景です。見頃は4月下旬〜5月上旬、このエリアを含む植物園全体で、約40種320本のサクラが見られます。平均樹齢約30年というサクラが、樹冠いっぱいに開花する姿は壮観。園内への飲食物の持ち込みはOKなので、お弁当やおやつを広げて、お花見を楽しむのもいいですね。ただしゴミの持ち帰りなど、マナーは守りましょう(温室内は一部を除き、飲食物の持ち込みは禁止)。 ここで最新情報をご紹介しましょう! 「新潟県立植物園」では2018年春、屋外緑地に日本一の規模を誇る「シャクナゲ園」がオープンしました。高さ4〜6m級の大株約30品種150本が、4月下旬から5月中旬にかけて次々と咲き乱れます。写真の品種は‘サー・ロバート・ヒル’。珍しい品種の‘マリー・フォート’、‘マイケル・ウォータラー’、‘サッフォー’も見られますよ! 5月上旬〜中旬には、ボタンが見頃を迎えます。日本におけるボタン栽培、品種鑑定の第一人者だった故江川一栄氏のボタンコレクション、150品種1,000株を引き継いだ「ボタン保存園」は、一見の価値ありです。 日本一のアザレアコレクションを誇る「新潟県立植物園」では、毎年温室内企画展「にいがたの花 アザレア展」を開催しています。2019年は1月30日〜2月24日に開催。総コレクション数約250品種1,300鉢の中から、選りすぐりのアザレア120品種、約1,000株を展示する予定です。 国内最大級のドーム型の観賞温室 年2回のナイトタイムを見逃さずに! 「新潟県立植物園」内には、約550種4,000株の植物が息づく、国内最大級のドーム型の観賞温室があります。温室内には滝や洞窟、池があり、その間を縫うように整備された園路を進んで、ガジュマルやココヤシ、タイワンバナナ、ブーゲンビレアなどの熱帯植物を見学。香りのよい植物も集められているので、クリナム・ギガス、サンユウカ、ヘディキウム、パラグアイオニバス、デュランタなどの香り比べも楽しんでみましょう。 平日は、ガイドツアーを2回(10:40〜、14:40〜)、各30〜40分かけて行っています。希望者は入館券売場で申し込みを。土・日・祝日はスポットガイドを2回(10:40〜、14:40〜) 、各20分程度行っており、こちらは申し込み不要なので時間内に案内表示場所へ直接出向いてください(いずれも無料、但し入館料は必要)。 「新潟県立植物園」では年に2回のみ、夜間開園を実施しています。8月中旬の「夏の夜間開園」は観賞温室開館時間を20:30まで延長し、夜に甘い香りで満たされる温室内のガイドやトロピカルフルーツの試食会を実施。12月下旬の「クリスマス夜間開園」では、19:30まで延長し、クリスマスイルミネーションやコンサートなどを開催します。ロマンティックな夜の植物園観賞会にぜひ出かけてみませんか? 「にいがたコーヒープロジェクト」プロデュース 週末限定カフェで絶品コーヒーを味わおう 温室内には、週末限定カフェ「にいがたコーヒーラボ」があります。植物園と新潟県内のバリスタによる共同企画「にいがたコーヒープロジェクト」がプロデュース。県内のコーヒー専門店から毎週届く、新鮮なコーヒーをバリスタが丁寧にハンドドリップします。コーヒーの価格は400〜500円。県内有名カフェ店のクッキー、タルトなど手づくり焼き菓子を週替わりで提供するサイドメニューの価格帯は、300〜500円です(1〜2月は休業)。 Information 新潟県立植物園 所在地:新潟県新潟市秋葉区金津186 TEL:0250-24-6465 https://botanical.greenery-niigata.or.jp/ アクセス:公共交通機関/JR信越線古津駅から徒歩約25分 区バス/新津駅東口から「新津駅西口」行き「美術館・植物園前」下車徒歩約1分 ※区バスについて路線・時刻表は新潟市秋葉区のホームページをご覧ください。 新潟交通/新津駅東口から「矢代田経由白根・潟東営業所」行き「新津美術館入口」下車徒歩約10分 車/高速道路 磐越自動車道新津I.Cから国道403号三条・加茂方面へ約15分 一般道路 新潟方面から…国道49号茅野山I.Cから国道403号経由約20分 オープン期間:通年 休園日:なし 温室開館時間:9:30~16:30(入館受付は16:00まで) 料金:【温室】大人600円、65歳以上500円、高校生・学生300円、小中学生100円 ※小中学生は土日祝日無料 【屋外園地】入園無料 駐車場:300台、無料 併せて読みたい ・花の庭巡りならここ! ロザリアンの聖地「国営越後丘陵公園 香りのばら園」 ・花の庭巡りならここ! 広大な敷地でダイナミックに花が咲く「国営ひたち海浜公園」 ・花の庭巡りならここ! 麗しき英国式庭園「みつけイングリッシュガーデン」 Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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花の庭巡りならここ! 麗しき英国式庭園「みつけイングリッシュガーデン」
ボランティアにより維持される本格的なイングリッシュガーデン 2009年にオープンし、広さ22,000㎡(公園部分は16,000㎡)の敷地を持つ「みつけイングリッシュガーデン」は、新潟・見附市が管理する観光ガーデン。見附市の緑地帯を活用し、市内の緑化と交流の拠点としてイングリッシュガーデンに整備されました。デザイン監修は、英国園芸研究家のケイ山田さんです。イギリス式の植栽はもちろん、ガゼボやアーチ、ベンチ、オーナメントなどのガーデン資材は全て英国製にこだわり、本場の雰囲気を再現。現在も年に2回は訪れて、植栽やメンテナンスなど、景観維持のためのアドバイスをしています。 「みつけイングリッシュガーデン」は、正面入り口のアイアンゲートをくぐると、「ボーダーガーデン」「ウェディングガーデン」「池とガゼボ」「アナベルロードと芝生広場」「バラロード」「展望台(ガゼボ)とロックガーデン」「メドウガーデン」など、各エリアに分けられ、それぞれに変化に富んだ植栽が見られます。イギリスの庭園さながらの洗練された景色には、ため息がもれるばかりです。 特筆すべきは、「みつけイングリッシュガーデン」のメンテナンスは、市民ボランティア団体「ナチュラルガーデンクラブ」が行っていること。水やりや草取り、植え替え、剪定、苗の生産(ナーセリー)など、初期は不慣れな点も多かったものの、ボランティア参加者たちは年々スキルを磨いていったそう。今やガーデニングの専門知識や技術を、ガーデニング教室やワークショップの開催によって、来園者に還元しています。園内への入場料は無料のため、気軽に訪れることができるのも嬉しいところ。もともと見附市が目指した「緑化と交流の拠点」が実現し、理想的な憩いの場となっています。2018年には新しくカフェ&ショップもオープン。見附市民のみなさんが愛して育んできた、温もり感あふれる観光ガーデンに、ぜひ足を運んでみませんか。 息を呑むほどの壮麗な景色にうっとり! ケイ山田さん監修の英国式庭園 「みつけイングリッシュガーデン」の春を彩るのは、クロッカス、クリスマスローズ、パンジーなど。4月中旬〜5月上旬にはチューリップが見頃になり、「ボーダーガーデン」「ウェディングガーデン」、コンテナを中心に、それぞれのエリアで色彩テーマを変えて植栽しています。写真はパステルピンクのチューリップとパステルブルー&パープルのパンジーの組み合わせで、ソフトで優しい雰囲気。 高さ2.5m、奥行き10mのアーチに仕立てた藤は、樹齢約15年の‘フロリバンダ’。見頃は5月いっぱいです。頂部から長い花穂がたわわに枝垂れる藤のトンネルはダイナミックで、その下を歩くと至福のひとときを味わえます。 「みつけイングリッシュガーデン」には、約150種700株のバラが植栽されています。パーゴラ、アーチが3カ所にあり、それぞれにつるバラを誘引した壮麗な景色は、眼福そのもの。この写真は「ボーダーガーデン夏エリア」で、アーチに仕立てたバラ‘ブラッシュ・ランブラー’を主役に、ピンクをテーマカラーにして植栽。毎年、一年草で模様替えをして、異なる雰囲気を演出しています。 写真は、赤いバラで統一したトンネル。‘エトワール・デ・オランダ・クライマー’、‘ギネー’、‘エクセルサ’、‘ニュードーン・レッド’、‘アレン・チャンドラー’、‘チェビーチェイス’などのつるバラを誘引しています。紫の花穂を立ち上げている下草はキャットミント。色のコントラストがシックで、圧巻の景色です。赤バラのトンネルをくぐり終えたら、ぜひ後ろを振り返ってください。最後のアーチの裏側のみ、白いバラ‘ガーデニア’、‘フラウ・カール・ドルシキー・クライマー’で覆われており、これまで見てきたトンネルとはまた違った印象の景色が広がります。 「みつけイングリッシュガーデン」の園内は、どの通路も車椅子や乳母車が通れる広めの設計で傾斜もゆるやかなので、誰でも気軽に訪れることができます。写真のエリアは「アナベルロードと芝生広場」。見頃は6月下旬〜7月中旬で、芝生の周囲に列植された西洋アジサイ‘アナベル’が満開となって、見事な景色をつくりだします。‘アナベル’の下草は毎年「ボランティア植栽会」で一般の参加者が植栽。花の種類は毎年変わるので「今年はどんな色合わせが楽しめるのかな」と、リピーターが楽しみに訪れるスポットです。 写真手前の草花は「ウェディングガーデン」の一角です。「華やかさ」をテーマにしたエリアで、植栽によるカラーコーディネートの妙を楽しめます。奥に見えるガゼボは休憩スポット。「みつけイングリッシュガーデン」への飲食の持ち込みは自由で、飲食可能なスペースは「ガゼボ」「ガーデンテント」「子ども広場」です。また、園内にはゴミ箱が設置されていないので、ゴミは各自で持ち帰るようにしましょう。 毎年秋に開催される「オータムフェア」では 来園者参加型の楽しいイベントを開催! 毎年秋には「オータムフェア」を開催(2018年は9月29日〜10月8日)。「みつけイングリッシュガーデン」内各所にハロウィンスポットが登場します。ぜひ一緒に写真を撮って、ハロウィンを楽しみましょう。また、多肉植物の寄せ植えづくりやスワッグづくりなど、クラフトを楽しむワークショップが催され、クラフト作家が販売する「青空マーケット」も展開。「ハロウィンこども DAY!」(2018年は10月8日)では、仮装した子どもたちが遊びに来て、園内をさらに盛り上げます。 2018年4月よりオシャレなカフェがオープン! 併設の土産物売り場も充実の品揃え 「みつけイングリッシュガーデン」では、来園者から「くつろぐ場所が欲しい」との要望を受けて、2018年4月にオシャレなカフェ「MEG CAFE 511」がオープンしました。営業日は開園中(4〜11月)は無休、閉園中(12〜3月)は火曜定休、年末年始は休館。営業時間は10:00〜21:30、ラストオーダー21:00(季節により変動)。店内40席のほか、テラス席が12席ほどあります。価格帯はランチプレート1,080円〜、ディナープレート1,280円〜、本日のケーキ360円〜。オススメは3日間熟成させるモチモチのピザ、インスタ映え間違いなしのドリンク「ローズレモネード」など。テイクアウトメニューもあります。 写真は、カフェ「MEG CAFE 511」の人気スイーツメニュー「ふわとろフレンチトースト」(S580円、M780円)。フレンチトーストの上にアイスクリームがのっています。蜂蜜をたっぷりかけて、召し上がれ! 秋には季節感たっぷりのフレンチトーストが登場します。 写真は、カフェ「MEG CAFE 511」のインスタ映えドリンク。手前はローズレモネード×ブルー、奥はローズレモネード×ピンク(各400円)。シロップとレモネードが別々に出され、生レモンスライスたっぷりのドリンクに、ローズペダルの入ったシロップを注ぐと、なんとなんと、レモネードの色が変化します! 話題のドリンクをぜひ味わってください。 カフェ「MEG CAFE 511」店内には、土産物売り場が併設されており、新潟・見附市の特産品やオリジナルグッズ、花苗などを販売。オススメは、ニットの街「見附」×イングリッシュガーデンのコラボ商品「ニットのテディベア」4,800円〜、「みつけイングリッシュガーデン」で収穫した見附産100%ローズヒップ(無農薬)がたっぷり入ったフィナンシェ(6個入り)1,000円です。 秋〜冬には、ガーデンや「MEG CAFE 511」店内で、ワークショップを不定期開催しています。あらかじめ公式ホームページをチェックして、参加の計画を立てるのもいいですね。 Information みつけイングリッシュガーデン 所在地:新潟県見附市新幸町6-35 TEL:0258-66-8832 http://www.city.mitsuke.niigata.jp/ (見附市ホームページ内) アクセス:公共交通機関/信越本線JR見附駅から1.2km(車で5分) 車/北陸自動車道 中之島見附I.C.から2km(車で3分) オープン期間: 4月1日~11月30日 営業時間:8:40~日没 料金:無料(草花の管理協力金として、1人100円程度の寄付をお願いします) 駐車場:145台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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花の庭巡りならここ! ロザリアンの聖地「国営越後丘陵公園 香りのばら園」
芳しいバラの香りを堪能できる「国営越後丘陵公園 香りのばら園」 「国営越後丘陵公園 香りのばら園」は、1万6,000㎡の敷地に715種、約2,400株のバラが植栽されたバラ園。その名の通り、芳しいバラの「香り」をテーマにした植栽が特徴です。バラの香りは、主に「ダマスク・モダン」「ダマスク・クラシック」「ティー」「フルーティー」「スパイシー」「ブルー」「ミルラ」に分類されています。それらに当てはまる香りを持つバラの品種を、7つのエリアに区分して植栽。人の顔ほどの高さで咲くように仕立てられたバラの「香り比べ」を自由に楽しんで、好きな香りの品種を見つけましょう! バラの見頃は5月末〜6月中旬、10月です。 ほかに白、ピンク、朱色、赤、黄色など、バラの色彩別に植栽したカラフルなエリアや、原種のバラやオールドローズをコレクションしたエリア、オオタカネバラやヤマイバラ、アズマイバラ、テリハノイバラなど日本の野生種を集めたエリア、世界約40カ国の「ばら会」が加盟する「世界ばら会連合」(World Rose Convention)にて殿堂入りしたバラの名花を集めたエリア、コンクールで受賞歴のあるバラ、宿根草とバラを組み合わせたナチュラルガーデンのエリアなど、多様な見どころを設けています。 バラの品種の特性を生かした適材適所の植栽術が見事! 5種類のピンクのバラ‘ザ・ガーランド’、‘フランシス・E・レスター’、‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’、‘ロサ・ヘレナエ’、‘ロサ・フィリペス’を植栽し、ガーランド(花綱)に仕立てた、ダイナミックにバラが咲き誇るコーナー。開花期に見応えがあるのはもちろんですが、これらは一季咲きで、それぞれに大小の赤い実をつけるので、晩秋にはアクセサリーをまとったようなローズヒップの景色を楽しめます。手前のピンクのバラは、オールドローズの‘ベル・イシス’。 背景のポプラの木は、「国営越後丘陵公園 香りのばら園」の象徴的な存在。ポプラの木を中心に竹を組み、ランブラー系のつるバラをオベリスク仕立てにしたユニークな姿は、遠くから見ると大きなトピアリーのようです。 手前の広場には休憩スペースがあり、テーブル&チェアが20セット(季節などにより増減)あります。飲食の持ち込みは自由で、バラの景色を楽しみながら、お弁当を広げる人の姿もよく見られます。喫煙は不可(喫煙所あり)、ペットの同伴はOKです。 高さ・幅3mのアーチを連ね、縦の空間を優雅にバラで彩ったエリア。‘セプタード・アイル’、‘コンスタンス・スプライ’、‘エヴリン’、‘フォールスタッフ’などのつるバラを仕立てたアーチのトンネルを自由に散策して、香りのシャワーを浴びることができます。バラだけでなく、ベロニカやセイヨウオダマキ、アジュガなどの宿根草をともに植栽したナチュラルガーデンなので、バラと草花のコーディネート術はガーデンの参考になります。 香りのよいバラを集めたエリアは、香りを確かめやすいように、樹高を抑えて仕立てられています。写真は「ダマスク・モダン」「ダマスク・クラシック」の香りを持つバラが植栽された一角。バラの香りは、朝方つぼみを開く頃に強く感じられるので、香り比べを楽しみたいなら、午前中の早い時間帯を狙うのがオススメです。手前の真っ赤なバラは‘パパ・メイアン’。 高さ1.5mほどのオベリスクを扇状に設け、面で見せる仕立て方は、「国営越後丘陵公園 香りのばら園」ならでは。人気の高い品種‘ピエール・ドゥ・ロンサール’を下から這うように上らせ、たわわに咲かせた姿は見応えがあります。 バラ園以外にも「国営越後丘陵公園」内には、四季を通して花が楽しめるよう植栽されており、見どころ満載です。3月末〜4月はクリスマスローズや雪割草、カタクリ、4月下旬〜5月上旬はチューリップ、6月後半〜7月はアジサイやラベンダー、9〜10月はコスモスと、季節の開花リレーが楽しめます。 2018年は、「国営越後丘陵公園 香りのばら園」が開園して15年目にあたります。毎年バラの季節には、育種家やガーデナーなど、専門家を招いて庭園内のガイドツアーや育て方の講習会などが開催されていますが、節目となる2018年はさらにさまざまなイベントの開催が予定されています。ぜひ公式ホームページをこまめにチェックしましょう! また、「国営越後丘陵公園 香りのばら園」では、日本海側の気候ならではの仕立て方や剪定法などが垣間見られるのもポイントです。書店に並ぶ園芸書は、太平洋側の気候を基本にまとめられていることが多く、日本海側の気候に合った管理法の情報が不足しがちなもの。雪の多い日本海側にお住まいの方は、ツアーガイドや講習会に参加して、健やかにバラを育てるコツを学ぶのも一案です。 コンクールに出品された圃場の見学もOK! 「国営越後丘陵公園 香りのばら園」では、2005年より毎年「国際香りのばら新品種コンクール」を開催しており、日本のバラ三大コンクールの一つとなっています。世界中から届いたバラの苗を、同じ条件下の圃場で2年間かけて栽培し、香りのよさや花の美しさ、耐病性などを総合的に審査。 2年目の春と秋に審査し、金賞、銀賞、銅賞が発表され、金賞のうち最高得点を得た品種に「国土交通大臣賞」が、香りの部門で最高得点を得た品種に「新潟県知事賞」が、一般来場者による人気投票で1位になった品種に「長岡市長賞」が授与されます。 第1回は育種家の寺西菊雄さんが作出した、写真のバラが「国土交通大臣賞」を受賞。受賞を記念し、旧名の‘ティニー・グレイス’から‘フレグラント・ヒル’(香りの丘) と「国営越後丘陵公園 香りのばら園」にちなんだ名前が新たにつけられました。今やこの公園のシンボリックな存在となっています。 園内にある、コンクール用の圃場も見学できるので、まだ世に出回っていないバラを見ることができ、最新のトレンドがうかがえるのも魅力の一つです。 バラソフトクリームとオリジナル香水が大人気 園内のカジュアルな休憩スポット「ローズカフェ」でティータイムを楽しむのもオススメ。営業時間は9時30分から閉園まで(季節により異なる)で、ラストオーダーは閉園の30分前までです。季節によってメニューが替わり、パンケーキやホットドッグなどがあります。人気メニューは雪室(ゆきむろ)コーヒー350円(税込)、つぶつぶ苺のベジタブルスムージー450円(税込)、バラの甘い香りが口に広がる赤バラソフトクリーム330円(税込、ばら祭り期間中のみ)など。 「国営越後丘陵公園 香りのばら園」では、シンボル的なバラ‘フレグラント・ヒル’の香りを再現した香水と練り香水を販売しており、お土産に大人気です。フルーティーな甘さにさわやかなグリーンノートが乗る、上品な香りと評されています。価格は香水(50㎖)が3,600円(税込)、練り香水(8g)が1,340円(税込)。