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素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪23 神奈川「サカタのタネ ガーデンセンター横浜」
2021年、開店70年を迎える 老舗の園芸店 日本を代表する種苗メーカー「サカタのタネ」のアンテナショップとして、1951年にこの地にオープンした「サカタのタネ ガーデンセンター横浜」。今年開店70年を迎えますが、その時々の園芸スタイルに合わせて、改修・リニューアルを重ね、多様化する人々の暮らしに寄り添いながら、多くのガーデナーに支持されるショップに成長し、現在に至ります。 「サカタのタネ」は1913年の創業以来、多岐にわたる種子の研究・開発に取り組んできました。また園芸店の先駆けとして、美しい花とおいしい野菜でうるおいのある暮らしを届け、実りある世界づくりに貢献することを第一に考えています。その理念を一般の園芸を楽しむ人々にダイレクトに伝える役割を担っているのが、「サカタのタネ ガーデンセンター横浜」。本格的なガーデニングブームに対応するためにも、園芸教室や催し物を開催し(新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当面の間休止しています。再開は店頭・ホームページをご確認ください)、夢のある店づくりを目指しています。 広い敷地に並ぶ無数の植物に テンションアップ! ターミナル駅・横浜の隣駅から徒歩圏に位置し、幹線道路に面しているので利便性は抜群。120台駐車できるパーキングを完備し、郊外にあるような広々とした解放感が魅力です。 2,000㎡近くもある店舗には、花や野菜、ハーブ、花木、果樹、バラ、盆栽、資材のコーナーが設けられ、植物の数は年間約1,200種類にものぼります。外の売り場にも屋根があるので、雨の日でも安心。陽気のよい時季は爽やかな風が吹き抜け、とても心地よい空間となっています。 時期により見本鉢が飾ってあるので、花色や植える鉢のサイズを確認できます。大きく育った実物を見ることで、栽培条件に合っているかを事前に確認できるだけでなく、理想的な目標として育てることができます。売り場にはベテランの園芸アドバイザー(主にサカタのタネOB)が常駐しているので、栽培方法など分からないことは気軽に尋ねてみるといいでしょう。 山野草コーナーも充実。洋から和まで、あらゆるスタイルの庭づくりに対応しています。 カラーリーフやオージープランツなど、季節に応じてさまざまな花木や樹木が並ぶ樹木売り場。定番の樹木と併せて販売しています。 最近は、ハーブやブルーベリーをはじめとする果樹など、食べられるものが大人気。ナチュラルライフにおすすめの種類・品種が多数並んでいます。 緑が瑞々しい盆栽コーナーの小鉢に入ったコンパクトなカエデ(右)や、白い小花をつけた白紫壇(左)。ほとんどがビギナーさんでも気軽に始められるお手頃価格。なかには、マニアもうなるような、風格のある糸魚川真柏などの本格的な盆栽も。春・初夏・秋には盆栽フェアを開催。育て方などを盆栽栽培専門家に相談できます。フェア開催予定等はHPをチェックして。 育てやすくおいしいと評判の 「サカタのタネ」自慢の野菜 色・形がよく、さらには病気に強く、高い生産性を併せ持つオリジナル品種を次々に生み出している「サカタのタネ」。種苗会社だけに、野菜コーナーも充実しています。自社開発品種の多くは、指定生産者が育てているので品質は抜群。 苗のラベルはもちろん、丁寧に説明が書かれたポップ類は、品種選びの際にとても便利。野菜栽培はビギナーさんには難しいと思われがちですが、育てやすく改良されているので、ぜひトライを。園芸アドバイザーは野菜にも詳しいので、ぜひ話を聞きながら、おすすめ品種を教えてもらいましょう。 おすすめの野菜の見本鉢の展示は、成長後をイメージしやすく、眺めているだけで楽しい。このときは、丈夫でおいしい長卵形のミニトマト‘アイコ’(左)と、トウモロコシの中でも強風にも倒れにくく、暑さに強くて育てやすい品種 ‘ゴールドラッシュ’(右)、ナス、インゲンなどが展示。自宅でこんなに実ったら嬉しいですね。 ミニトマト‘アイコ’(左)に続き、姉妹品種がたくさん登場しています。オレンジ色の実をつける‘オレンジアイコ’(中)、愛らしいえくぼができる‘プリンセスアイコ’(右)、そのほか、甘みが強くフルーツ感覚で食べられるチョコレート色の‘チョコアイコ’など、他店では入手しにくい品種がたくさん。 葉野菜のミニチンゲンサイ‘シャオパオ’も、展示用レイズドベッドで栽培。ふっくらした株が規則正しく並んでいる様子に、気持ちがなごみます。 気候に左右されず、いつも快適 ゆったりとした屋内売り場 明るい光が差し込む建物内は、ギフトなどの花鉢や園芸資材の売り場。ゆったりと什器が配置されているので、長時間買い物をしていても疲れません。ここに並ぶ植物も、外の売り場同様、信用のおける生産者から仕入れた、確かな品質のものばかり。 母の日が近い時期に訪れたため、近年おしゃれな品種が増え続けている人気のアジサイがずらりと陳列されていました。「母の日の直前は、もっとたくさんのアジサイが並びます。どれも素敵なので、選ぶのに困ってしまいますよ」と、スタッフの小林秀美さん。 在宅時間が多くなり、需要がどんどん伸びている観葉植物。コンパクトな卓上タイプだけでなく、丈のある大きな尺鉢なども並んでいます。 種苗会社ならでは!圧巻の 種子&播種グッズコーナー 色とりどりの種子袋が壮観なコーナー。主に、自社開発の種子が並んでいます。その数は一番取り扱いの多い時期で、花・野菜を合わせてなんと約500種類! まるで図書館の一角のような光景です。春まきは1月頃、秋まきは7月頃が一番多いそう。 播種アイテムも充実。特にビギナーにおすすめなのが、そのまま植えられる土ポット ‘ジフィー’(左上、左下)と、種子とプランター、培養土が一緒になったセット(右下)。そのほか、さまざまなアイテムが揃っています。 豊富な品揃えのガーデンツール類。ハサミだけでもたくさんの種類があるので、迷ったらアドバイザーに相談を。そのほかガーデニング用エプロンやグローブなど、ガーデニングに必須の実用的なものがすべて揃います。 大人気。食卓に彩りを添える 野菜やスイーツ販売もときどき開催! 地元産新鮮野菜やスイーツ販売などのイベントも、不定期で催されます。詳しくはHPのチェックを!この日は「春日井 よし乃」の旬の和菓子が並んでいました。 おすすめの「サカタのタネ」オリジナル品種 春~秋まで楽しめる「サカタのタネ」オリジナルの品種をご紹介します。どれも育てやすいものばかりです。この夏、ぜひ庭に取り入れてみましょう。 「サカタのタネ ガーデンセンター横浜」スタッフ小林さんのイチオシはコレ! 一株でこんもり育つ‘サンパチェンス’ 真夏の強い日差しに耐え、春から秋までと長期にわたりトロピカルな美しい花を咲かせる‘サンパチェンス’。大きな株に育つのが最大の魅力です。草丈は、鉢植えの場合約60cm、地植え(花壇植え)では約1m近くの大株になることも。生育速度も従来のインパチェンスより格段に早く、栽培は簡単です。 ホームセンターとは大きく異なり、園芸をするにあたり、あらゆるものが揃う本格派のガーデニングショップ「サカタのタネ ガーデンセンター横浜」。ワークショップや専門的な講習会などが定期的に開催されるなど(コロナ禍中は休み)、ガーデニングについて学べる格好の場です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、京浜急行・神奈川駅より徒歩約5分、東急東横線・反町駅より徒歩約7分、JR・東神奈川駅より徒歩約10分。 【GARDEN DATA】 サカタのタネ ガーデンセンター横浜 神奈川県横浜市神奈川区桐畑2 TEL:045-321-3744 営業時間:10:00~18:00 定休日:3~5月はなし。6~2月は水曜日。 https://www.sakataseed.co.jp/gardencenter/index.html Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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花の庭巡りならここ! 箱根が誇る、夢の花園「箱根強羅公園」
抜ける青空の下、箱根の山々を借景に 花々で豊かに彩られる癒やしの公園 1914年開園という古い歴史を誇る「箱根強羅公園」。開園時は1910(明治43)年にロンドンで開催された日英博覧会場に日本庭園をつくった、一色七五郎氏が設計・監督を担当。洋風庭園と和風庭園があり、地質を生かして多数の巨岩を用い、風景になじませた造成が見られて、当時の高い造園技術を垣間見ることができます。 「箱根強羅公園」は、26,500㎡の敷地をもち、ゆっくり歩いて30〜40分くらいで一巡りできる広さです。現在の園内は、大きく分けて「バラ園」「噴水周辺」「体験施設(クラフトハウス)」「温室」「お茶室」にゾーニングされています。 園内中央には噴水広場があり、ここから望む箱根の山々の眺めは特に素晴らしいので、ぜひ立ち寄りましょう。このビュースポットの花壇は、主に一年草で構成され、年に4回の植え替えを実施。春はホワイトで統一して爽やかに、夏はブルーと黄色でコントラストをつけ、秋はハロウィン仕様、冬はハボタンで彩ります。「箱根強羅公園」は標高約600mに位置するため、昼夜の温度差によって花色が冴え冴えとしているのも魅力です。 また、特筆すべきは、冬でも楽しめる3つの温室。熱帯植物館(約211種3,000株)、ブーゲンビレア館(ブーゲンビレア48種)、熱帯ハーブ館(約70種125株)、イベント館があり、じっくり観賞して約30分で周遊できます。 熱帯植物館では、ジャングルをイメージして植栽。バナナ、パパイヤ、パイナップルなどのトロピカルフルーツや、レンブ、ソーセージの木なども観られます。 写真のブーゲンビレア館は、年間を通して華やかに咲く姿を楽しめます。ブーゲンビレアは夏の花のイメージがありますが、南米コロンビア原産の短日植物で、一番の見頃は秋から春先(11~3月)です。短日植物のため夏は花が少なくなりますが、この時期はハイビスカス(長日植物)などが華やかに咲き競い、年間を通して花盛りとなるよう配慮されています。 一方、熱帯ハーブ館では、香辛料のもとになる植物を展示。温帯性ハーブと熱帯性ハーブの違いを比較しやすいように、熱帯ハーブ館の近くに温帯性ハーブ園をつくっているので、香りを比べてみるのもいいですね。 「箱根強羅公園」は、一年を通して豊かな花々で彩られ、開園当初から親しみを込めて呼ばれていた「夢の花園」の愛称を、今も守り続けている観光庭園です。その他、カフェやレストラン、セレクトショップ、クラフト体験など、レジャースポットとしてのコンテンツも魅力たっぷり。一日ゆっくりと時間を過ごすつもりで、出かけてみてはいがでしょうか。 標高約600mに位置する公園では 四季を通して花色が冴え冴えと輝く 5月中旬〜下旬は、ツツジが見頃を迎えます。噴水池の周囲を中心に、赤、紫、白など約1,000株が満開に。園内には、高地でしか見られないアカヤシオ(3月下旬)、シロヤシオ(3月下旬)、天城ツツジ(4月上旬)などの姿も見られます。枝葉を埋め尽くすように咲き、色の塊となる満開の時期は、大変鮮やかで見応えがあります。 バラの見頃は5月下旬〜6月下旬。約200種1,000株のバラが爛漫と咲き誇ります。香りのよいバラを集めたコーナー、オールドローズを集めたコーナー、皇室にまつわる名前を冠したバラのコーナーなど、テーマを設けた展示も見どころ。バラの魅力を最大限に引き出すため、木製アーチを連ねたバラのトンネルや。宿根草と組み合わせたダイナミックな花壇など、歩を進めるのが楽しくなるローズガーデンです。 アジサイの見頃は6月中旬〜7月上旬。園内に咲く、多くの山アジイや西洋アジサイが、しっとりとした表情で出迎えてくれます。特に清楚な白花で人気の高い‘アナベル’の群生や‘イワガラミ’の大株が目を惹く存在です。「アジサイ展」の期間中は、約80種のアジサイが展示され、山アジイや西洋アジサイの苗も販売されます。 紅葉の季節を迎える秋は、一年を通して最も見応えのある景色を楽しめます。見頃は11月上旬〜11月下旬で、イロハモミジやヤマモミジの大木を中心に植栽され、園内全体が朱色に染まります。また、10月中には、春とはまた異なる深みを帯びた色で咲く秋バラが楽しめ、パンパスグラスの穂とのコラボが見事です。 12月〜翌年3月は、園内に植栽された約100株のクリスマスローズが見頃に。12月下旬にニゲル種、12月下旬〜1月下旬にニゲル交配品種、2月中旬に木立クリスマスローズ、2月下旬に細葉クリスマスローズ、2月中旬〜3月中旬にレンテンローズと、次々に咲き継がれていきます。 食事どころは2店舗あってオシャレ! こだわりの食材を使ったメニューが揃う 園内には、食事どころが2店舗あります。写真は「サンドイッチ料理 一色堂茶廊」で、素材にこだわったサンドイッチ料理が楽しめるお店です。人気メニューは「自然有精卵のだし巻きサンド」(1,320円)、たっぷりのローストビーフをレタスとともに挟んだ「和牛ローストビーフサンド」(1,980円)。営業時間は10:00〜16:00(ラストオーダー15:30)で、テイクアウトもできます。 「サンドイッチ料理 一色堂茶廊」では、写真のフレンチトースト(990円)が大人気! 牛乳と生クリーム、自然有精卵を混ぜ、パンを浸してじっくり一日寝かせてから焼き上げたもので、しっとりとした食感。季節のフルーツと生クリームを添えていただきます。 もう一つの店舗、カフェ「PIC」では、1日40食限定の強羅園カレー、20食限定の「温泉玉子カレー」も人気。ラベンダーミックス、ハイビスカスレモン、ローズブレンド、レモ二ーミント、カモミールブレンドの5種類から選べるハーブティー(630円)もおすすめです。営業時間は10:00〜16:00(ラストオーダー15:30)。 工芸品を集めたセレクトショップは必見! 7種の工芸体験も楽しめる 園内には箱根の土産物が揃う「おみやげショップ」があり、雑貨やお菓子などが豊富に揃います。注目したいのは、2019年夏にオープンした、セレクトショップの「こまもの屋 箱根」。「アート&クラフト」をテーマに、箱根の伝統工芸品や、国内で活躍している工芸作家の作品を販売しています。ぜひ立ち寄って、旅の記念になりそうなショッピングを楽しみましょう。 園内には、「箱根クラフトハウス」があり、6種の工芸体験を実施しています。料金と所要時間の目安は以下の通り。吹きガラス(4,400円〜、約15分)、陶芸(4,290円〜、約40分)、サンドブラスト(3,520円〜、約60分)、とんぼ玉(2,750円〜、約15分)、ポタリーペインティング(3,850円、約60分)、切子(3,850円〜、約60分)、レーザー彫刻(2,420円、約30分)。いずれもマンツーマンで、懇切丁寧な指導が受けられます。
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花の庭巡りならここ! 大充実のトロピカルドーム温室「小田原フラワーガーデン」
地元の皆さんに愛される憩いの庭園リピーターが多いのも納得! 「小田原フラワーガーデン」は、1995年にオープンした植物公園。「豊かなライフスタイルを築く楽しい花園づくり」を目指して整備されました。敷地は42,188㎡で、ゆっくり歩いて周遊するのに1時間くらいかかります。 メイン施設の「トロピカルドーム温室」では、熱帯・亜熱帯植物が旺盛に枝葉を広げ、冬でも植物たちの生命力を感じて元気をもらえます。特に写真のヒスイカズラに注目を。3月下旬~4月中旬に開花する、翡翠のように美しい花は、一見の価値があります。「小田原フラワーガーデン」メインフラワーの一つで、300以上の花穂が垂れ下がる光景は圧巻です。 また、公園面積の半分を占める「渓流の梅園」では、約200品種のウメが咲き誇ります。他にもアルカディア広場周囲に広がるバラ園や、渓流沿いから池周囲に広がるハナショウブなど、四季折々の花が楽しめる公園です。 園内の開花リレーは、春がサクラ、チューリップ、フジ、バラ。初夏はアリウム、スイレン、ハナショウブ、アジサイ。夏はアガパンサス、マリーゴールド、サルスベリ。秋はリコリス、ヒガンバナ、アメジストセージ、紅葉。「一年中花と緑が楽しめる公園」のコンセプト通り、いつ訪れても季節の花が見頃になっている姿を楽しめます。 また、一年を通してさまざまなイベントや講習会を開催しています。中でも講師に日本梅の会会長 大坪孝之さんを迎えた「なるほど園芸講座」が大人気。初心者向けの、肥料・病害虫防除の話から、上級者向けの、接ぎ木・挿し木・剪定の話まで、季節に応じた園芸ポイントが解説されます。毎月第3日曜日開催で、時間は10:30~11:30、先着30名まで。当日受け付け、参加費は無料です。 「小田原フラワーガーデン」では、屋外エリアのみペットの同伴OK。飲食物の持ち込みも可能ですが、テイクアウトカフェもありますよ。フラワーショップや土産物店も充実しているので、ショッピングを目当てに行くのもいいですね。多彩なイベントを目的にリピーターが多く訪れる植物公園に、ぜひ足を運んではいかがでしょう。 熱帯植物がダイナミックに茂るドーム型温室で南国ムードを楽しむ 「小田原フラワーガーデン」には、小田原市環境事業センター(ゴミ焼却施設)の余熱を利用している温室があります。直径40m、高さ22mの温室は、ゆっくり周遊して約30分。約200種の熱帯・亜熱帯の花木、果樹を植栽しており、南国ムードを楽しめます。 写真の花は、温室で咲くトロピカルフラワーのヘリコニア・ロストラータ。開花時期は6月中旬~9月上旬です。鳥のクチバシのような花が左右に30個ほど並び、1mほどの長さになるエキゾチックな雰囲気の植物。本州では温室がある植物園でなければ見られない花です。 温室で催されている、セルフガイド式の体験プログラム「アロア・ワッド探検隊」にも注目を! これは、謎の植物学者アロア・ワッドからの植物に関するさまざまな指令(ミッション)が出題されるというストーリーのもと、約300種類の熱帯植物が植栽されるトロピカルドーム温室内を探検しながら問題を解くというもの。 入園者は探検隊員としてミッションに挑戦し、五感を駆使しながらゲーム感覚で植物について学べます。探検隊員には「探検隊員証(スタンプカード)」が発行され、来園ごとに異なるミッションをクリアしてスタンプを集めることで、段階的にレベルアップできます。子どもも大人も楽しめるプログラムですね! この企画は「神奈川なでしこブランド2019」に認定されており、ますます注目を集めています。 屋外庭園は四季を通して爛漫と咲く!煙るように咲くバラ園は必見 屋外庭園のバラ園も充実しているので、開花期の5月中旬~6月上旬、10月下旬~11月下旬にはぜひ足を運んでほしいもの。150品種、350本のバラが植栽されています。フォーカルポイントのガゼボには、ダイナミックにつるバラが仕立てられており、ゴージャスな咲き姿を楽しめますよ! 春と秋の見頃には、ガイドツアーやミニコンサートなど、「ローズフェスタ」のイベントが開催されます。 6月上旬~下旬には、ハナショウブ池が見どころに。約180品種1,000株のハナショウブが咲き誇ります。同じ時期には、池の水面に色とりどりのスイレンやアジサイ500株が咲くので、梅雨の季節ならではの素晴らしいコラボレーションを楽しみましょう。開花時期には、ウメ収穫体験など、「花菖蒲・スイレンまつり」のイベントが開催されます。 花苗や雑貨が豊富に揃うフラワーショップスイーツが人気のカフェや売店もチェック! 2017年にリニューアルオープンした、フラワーショップ「PICCOLO(ピッコロ)」も、ぜひのぞいてみましょう。季節の草花はもちろん、花木、果樹、観葉植物など多彩な品揃え。フラワーベースなどの雑貨類も扱っています。開店時間は10:00~16:00です。 お土産コーナーは、季節感のある商品展開が魅力で、リピートしたくなるスポット。園内で採れたはちみつを使った「ミツバチからの贈り物」(650円)、「はちみつラスク」(450円)や「はちみつドロップス」(400円)、「はちみつとクルミのパウンドケーキ」(700円)などがおすすめです。※いずれも期間限定品。 「小田原フラワーガーデン」には、テイクアウトカフェ「ハイビスカス」もあるので、歩き疲れたら休憩しましょう。開店は土・日・祝祭日のみ(大型イベント開催時は毎日オープン)、開店時間は10:00~16:00(ラストオーダーは15:30)、客席数は14席です。おすすめは、バラの香り豊かなジェラートにみずみずしい白桃がたっぷり入ったローズピーチジェラート400円(税込)。 特に、採蜜期間にしか食べられない期間限定のスイーツは知る人ぞ知る人気メニュー。さっぱりしたバニラジェラートと、濃厚なハチミツの相性が抜群なはちみつがけジェラート450円(税込)、園内で採れた純粋はちみつを、温かいパンケーキと冷たいバニラアイスにかけた贅沢な一品、はちみつパンケーキ500円(税込)は、一度味わっておきたいものです。 Information 小田原フラワーガーデン 所在地:神奈川県小田原市久野3798-5TEL:0465-34-2814 小田原フラワーガーデン (kanagawaparks.com) アクセス:電車/伊豆箱根鉄道大雄山線「飯田岡駅」から徒歩約20分(約1.6kmの上り坂)バス/小田原駅東口から2番のりば伊豆箱根バス「フラワーガーデン・県立諏訪の原公園」行き。「フラワーガーデン」下車すぐ。車/小田原厚木道路「小田原東IC」より国道255号を北へ約1.4km先「桑原」交差点左折、約3.2km先「沼田」交差点左折、約800m先「飯田岡」交差点右折、道なりに約1.1km直進しトンネルの先のT字路右折約200mで入口(左折:県立おだわら諏訪の原公園) 所要時間は約15分(道路状況による) オープン期間:通年 休園日:月曜(祝祭日の時はその直後の平日)、祝日(振休も含む)直後の平日、12月29日~1月3日 営業時間: 9:00~17:00(トロピカルドーム温室入園は16:30まで) 料金:無料(トロピカルドーム温室のみ有料・大人200円小中学生100円) 駐車場:普通車140台/障がい者用6台、無料
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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。神奈川・愛甲郡「服部牧場」
SNSの投稿で知った美しい庭 前回は、北海道のグラスが素晴らしい「大森ガーデン」を2回に渡ってご紹介しましたが、2020年最初のストーリーも、またまたグラスと草花のガーデンです。 ここは、グラスが大好きなガーデナー、平栗智子さんが丹精込めてつくり上げた「服部牧場」。 僕がこのガーデンを初めて知ったのは、知人のガーデナー、Sさんの「いざ 服部牧場へ」と書かれたフェイスブックの投稿でした。2019年11月8日の彼女の投稿写真には、大小さまざまなグラスがピンクや白の穂を出し、株元には青や紫の草花が咲き乱れる美しいボーダーが写っていました。それを見て、今すぐにでも飛んで行って撮影したい! くらいの気持ちになるほど、それは美しいものでした。 昨年くらいから僕の一番の撮影のテーマは「美しいグラスガーデン」でしたので、いつも頭の片隅には「何処かで秋のステキなグラスガーデンが撮れないものか」という思いがありました。ですから、車ですぐに行けるほどの距離に、こんな素晴らしいグラスガーデンがあったとは! Sさんには教えていただき本当に感謝しています。幸いにも数日は天気も安定しているようです。投稿を見た2日後はスケジュールも空いていたので、11月10日に撮影に伺うことにしました。 晩秋の庭へ初の訪問 撮影当日は爽やかに晴れ渡り、気温は暑いくらいの秋の終わりとは思えないほどの行楽日和でしたから、高速道路も結構混んでいました。高速を降りて「服部牧場」が近づいてくると、のどかな風景の中、道路脇の木々の紅葉も黄色く輝いていました。その風景もすぐに車を停めて撮影したくなるほどでしたが、寄り道などしている心の余裕はありません。まだ撮影にベストな時間には早すぎるとは分かっていても、アクセルは緩めず、まっすぐに「服部牧場」へ向かいました。 牧場の駐車場に着いたのは2時半くらいでしたが、天気もいいし家族連れで駐車場は満車。子どもたちが元気に走り回っています。秋から冬の撮影は、午後4時頃の光がきれいですので、まだ大分早く着いてしまったのです。でも、車の中にいても仕方ないので、ロケハンを兼ねて、カメラも持たずにぶらっとガーデンに向かいました。 ガーデン入り口の看板を見ながら石の階段を上ると、お目当てのガーデンが現れました。牧場というのだし、きっと広いガーデンなんだろうと勝手に思っていたので、意外と小さいガーデンにちょっと驚きました。しかし、その小さなガーデンにはびっしりといろいろな植物が植えられていて本当にきれいでした。Sさんの写真で見た、赤い穂のミューゲンベルギアも風に揺れていました。 いやー、きれいだなぁと歩き回っていると、ガーデンの西側には高い針葉樹があってその木々の影が、だんだんガーデンに迫ってきていることに気がつきました。優雅に4時まで待っていると、ガーデンは完全に影になってしまう。これは大変! と走って車に戻り、カメラと三脚を担いで、再びガーデンに戻りました。その間5分ほどですが、先ほどまでは誰もいなかったガーデンの隅で黙々と作業をしている女性を発見。Sさんのフェイスブックのコメントにあった「植物を愛してやまないガーデナー」さんだろうと思い、ご挨拶と撮影の許可をいただくため近づいていきました。 ガーデナーさんも僕に気がついて軽い会釈をしてくれました。早速撮影の許可をもらおうと話しかけると、子どもが走り回るので三脚は遠慮してほしいとのことでした。でもガーデンの撮影には三脚は必需品なので、何とかお願いしなくては思っていると、彼女の表情が突然一変して「もしかして今井さんですか?」と。以前千葉の貝殻亭というレストランで写真講座をしたことがあったのですが、その時に参加してくれたようで、一件落着。僕も子どもがそばを通ったら気をつけますと約束して撮影を開始しました。 グラスが美しく輝く瞬間を狙う 前回ご紹介した北海道の「大森ガーデン」さんのように、近くに背の高いものが何もないガーデンの場合は、夕陽が地平線に沈む瞬間くらいの光がきれいなのですが、このガーデンは西側に背の高い木々があって、割と早い時間から影がガーデンを覆ってくるので、撮影のタイミングは、撮りたい植物が影に入った瞬間を狙います。 ガーデンの東側はまだ強い日差しが差し込んでいて、ギラギラしています。でも、影に入ったばかりの一番西側のボーダー花壇は、明るい日陰でどの植物もきれいに見えています。カメラを三脚にセットして、じっくりとファインダーを覗いてみると、何種類ものグラスが入ったボーダー花壇は、グラスの穂の柔らかい線や直線的な茎の線、アスターのブルーや枯れた草の黄色や茶色と、いろいろな要素が混じり合っていました。春の宿根草のボーダーとは全然違う、とてもきれいな表情を見せてくれています。 あとは、逆光になるように西にレンズを向けて狙ったり、サイド光になるように南や北の方向にレンズを向けたり、ガーデンの中を歩き回って同じグラスを撮ったり…。こうして光と影をチェックしながら、少しずつ東側のボーダーまで撮影して、4時過ぎに撮影は終了しました。 撮影中は、僕の邪魔にならないようにとガーデンの隅のほうにいてくれたガーデナーさんがコーヒーを入れてくださるというので、お言葉に甘えてガーデナールームへ。行ってみると、そこも天井からドライになった昨年のグラスがズラリと飾ってあり、彼女のグラス愛がハンパじゃないことを感じました。僕が「大森ガーデン」さんに行った時の話をすると、彼女も随分前から大森さんにグラスの苗を送ってもらっては、あちこちの庭に植えて経過を観察しているそうです。あたりがすっかり暗くなるまでグラス談義は続き、この日撮影した写真は「Garden Story」に載せますと約束をして、美しい月を見ながら帰路につきました。 凍った庭への期待 この日の写真は大満足。何もいうことはない仕上がりでしたが、もう一つ、冬のガーデン写真といえば「凍った庭」があります。以前はよく群馬県太田市の「アンディ&ウィリアムス・ボタニックガーデン」に行き、日が昇る前の暗いうちから撮らせていただいた経験がありますが、久しぶりにグラスガーデンが凍って、真っ白になった「服部牧場」の写真が撮りたくなりました。「凍った庭」になる条件には、「今シーズン一番の寒波」というような、放射冷却のよく晴れた寒い朝であることが必要ですが、11月29日がちょうどそんな気圧配置だったので「凍った庭」を撮影するために午前3時に出発して、6時前、まだ暗い駐車場に着きました。でも、何だか寒くない。痛いくらい寒くてスキー用の帽子に手袋でガタガタ震えるくらいの朝のはずが、それほど寒くなく……。 残念ながら今日はダメだった、と思いながらもガーデンに行ってみましたが、案の定全く凍っていませんでした。でも、以前の撮影から2週間が経ち、さらに枯れた庭が朝日の中でとても美しく輝いていました。凍った庭の撮影は、またこの年末年始にでも行ってみようと思っています。
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花の庭巡りならここ! 圧巻の花畑を見に行こう「くりはま花の国」
豊かな自然に恵まれた里山を借景に壮大に広がる花畑は必見! もともと1984年に横須賀市が「くりはま緑地」として整備・開園し、1997年に「くりはま花の国」と改名。長らく市民の憩いの場として愛されてきました。敷地は約58万3000㎡にも及び、くまなく歩くとすれば、約2時間ほどかかる規模です。 里山に囲まれた借景を持ち、傾斜地、広い園内という条件を生かし、自然の中に広大な花畑をつくって面で魅せる植栽にしています。春は菜の花、ネモフィラ、ポピー、アグロステンマなどで圧巻の花畑を演出。夏はヒマワリ、秋はコスモスと、四季を通して花のカーペットを楽しめます。 また、50坪以上の温室もあり、カエンカズラ、ゴクラクチョウカ、プルメリア、コエビソウ、ベンジャミンなど、トロピカルプランツの数々が見られます。約80種、7,500株が植栽されているハーブ園、200品種のコレクションを持つ椿園もあり、季節の花畑以外にも見どころ満載です。 ほかに、月に1回のペースで「ハーブ教室」も開催。ハーブの特性や暮らしに上手に取り入れる方法などを学べます。半年の開講で、受講料は9,000円。第1火曜日の10:00〜12:00か13:30〜15:30から選べます。 園内の売店「コスモス館」は、営業時間10:00〜16:00、無休(年末年始を除く)。地元特産のお菓子、雑貨、ソフトクリームやビールの販売があります。中でもおすすめは、「くりはま花の国」で採れたハチミツです。オリジナル商品で、35g/540円、50g/700円、170g/1,680円の3種類が揃います。 年間約50万人の来場者があり、リピーターが多いのが特徴の「くりはま花の国」。入場料が無料なのも嬉しいところです。レストランや遊具施設など、さまざまな施設が充実しているので、一日かけて楽しむレジャースポットとして足を運んではいかがでしょうか。 早春から晩春まで季節の花畑が登場!一年を通して何度も訪れたくなる花の名所 菜の花の見頃は4〜5月頃。4つの品種を組み合わせて11月頃から咲かせていますが、最盛期はやはり早春。春の訪れを知らせる「黄色い花」の代表的な存在として、菜の花を選んだのだそう。道沿いにたっぷり咲かせて、フラワーロードをつくっています。 菜の花のエリアの隣に広がるのは、ネモフィラ畑。3万株以上が植栽され、青い空と大地を覆うように開花するネモフィラのブルーが美しく、フォトジェニックなシーンを撮影できます。ネモフィラは手をかけてタネから育てているため、環境に馴染んで旺盛に茂るので、大変見応えがあります。 「くりはま花の国」では、100万本以上のポピー畑が登場します。まず4月からは一足早く、黄色、オレンジなどのアイスランドポピーが満開に。続いて赤、ピンク、白などのシャーレーポピーが咲き競います。毎年10月最終週の土日の2日間、無料の摘み取りイベントも行われていますよ(天候状況により、枯れた場合は中止)! 6月上旬〜7月半ばの初夏には、アジサイ‘エンドレスサマー’、アガパンサスなど、涼しげなブルーの花が満開になる「青い花まつり」が開催されます。季節が進んで梅雨が明けると、写真のようにハーブ園入り口に6万本以上のヒマワリが開花。多花性の品種‘大雪山’などが咲き誇り、同じ方向に向かって一斉に花を咲かせる様子に心を打たれます。 秋には100万本のコスモスが見頃に。まずは夏の終わり、9月上旬くらいからキバナコスモスの‘レモンブライト’が開花し始めます。まだ光が強いこの時期は、茎葉のグリーンも明るく、黄色の花とのコントラストが美しいですね。 10月にはピンク、白、ワインレッドの花色をミックスさせた、コスモス‘センセーション’が見頃に。咲き始めは白で、咲き進むと黄色く変化していく‘イエローキャンパス’の姿も見られます。毎年10月最終週の土日の2日間、無料の摘み取りイベントも行われていますよ(天候状況により、枯れた場合は中止)! 広い園内ではフラワートレインが活躍!ハーブの香る足湯でリラックスタイムを 広い園内では、蒸気機関車型のバス「フラワートレイン」での移動がおすすめです。第1駐車場と第2駐車場の間、約2kmを、ゆっくりと約30分かけて走行。花畑を見渡せる道も通り、停留所は数カ所にあります。営業時間は10:00〜16:00、月曜運休(祭日の場合は翌日。運行ダイヤは季節によって異なります)。料金は中学生〜大人300円、3歳〜小学生100円(いずれも片道)です。 約80種、約7,500株が植栽されているハーブ園内には、無料の足湯「湯足里(ゆったり)」があります。足湯には園内で収穫されたハーブが入っており、癒やしの香りも楽しめます。レモングラス、ローズマリー、ラベンダー、タイム、ローリエ、マツなどの中から単体で使われ、2週間に1度ハーブの種類が変わります。歩き疲れたら、足湯に浸かってゆっくり過ごすのもいいですね。 ランチメニュー充実のレストランで一休み東京湾を一望できるテラス席は大人気! 写真はガーデンレストラン「ロスマリネス」の外観。営業時間は3〜10月が11:00〜16:30(ラストオーダーは食事15:30、飲み物16:00)、11〜2月が11:00〜15:30(ラストオーダーは食事14:30、飲み物15:00)、休業日は月曜(祝日の場合は翌日。但しポピーまつり、コスモスまつり期間中は無休)です。 ガーデンレストラン「ロスマリネス」には東京湾を一望できるテラス席もあります。メニューはハーブチキンプレート、和風ハンバーグプレート、オムライスプレート各1,000円、YOKOSUKAゴジラカレー900円など。デザートは日替わりのケーキ、ジェラート、パンケーキなどさまざま揃い、北欧紅茶とスイーツセットは1,000円です。予約すればバーベキューも楽しめますよ! セット食材も、海鮮セットや湘南豚セットなど、多様に揃います(食材の持ち込みは禁止)。 Information くりはま花の国 所在地:神奈川県横須賀市神明町1番地TEL:046-833-8282 http://www.kanagawaparks.com/kurihama-perry/kurihama/ アクセス:公共交通機関 電車/京急久里浜またはJR久里浜駅より徒歩約15分船/東京湾フェリー久里浜港より徒歩 約10分(第2駐車場まで)車/横浜横須賀道路佐原I.Cから約4km オープン期間 通年 休園日:なし(園内施設は営業時間・休業日あり) 営業時間:24時間 料金:無料(一部有料施設あり) 駐車場:427台(普通車1回620円、大型バス2,060円)
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花の庭巡りならここ! 本の世界へ入り込んだ気分を満喫「星の王子さまミュージアム」
「星の王子さま」の世界観を表現する フランス風の街並みやガーデンにうっとり! 1999年にオープンした「星の王子さまミュージアム」は、『星の王子さま』の作者サン=テグジュペリの生誕100年を祝して作られた施設。開園日は生誕日の6月29日です。敷地は約9,265㎡(駐車場を含む)で、ガーデンと展示ホール、レストラン、カフェ、ショップなどで構成。ゆっくり見て歩いて1時間ほどかかり、物語の世界観を満喫できます。 2009年の10周年記念に、屋外のゾーンを庭にしようという計画が持ち上がり、ガーデンデザインのセンスが素晴らしい「yoshiya gardens & studio」に依頼しました。構造は吉谷博光さんが、植栽デザインは吉谷桂子さんが担当。イギリスの庭園のアイデアをベースに、フランス式の庭の要素も交えたヨーロピアン・ガーデンをつくり上げました。 園内に入ってすぐに目にとまるのは、黄色い花々。光に反射して強い存在感を放ち、霧が出やすく曇りの日が多い箱根で明るい雰囲気を醸します。少し歩くと「アジサイの小径」に出て、ピンク、ホワイト、アプリコット、ブルーなどの宿根草や一年草が織りなす、自然風植栽のハーモニーが見事です。その先には左右対称の整形式ローズガーデンが広がり、奥には楚々としたクリスマスローズの庭が展開。下向きに咲くクリスマスローズをレイズドベッド(高床式の花壇)に植え、その魅力を引き出しています。 冬はパンジー、春はヘレボレス(クリスマスローズ)やスイセン、チューリップなどの小球根、初夏はアジサイからバラ&宿根草へ、夏はダリア、秋はシュウメイギクほか秋咲き宿根草と、次々に開花リレーが楽しめます。四季折々に華やぐ植栽術はもちろん、花々の背景に映り込むフランス風の城館や街並みとのコンビネーションにも注目を。互いの存在感が引き立つ絶妙なバランスで植栽されているので、カメラを構えてアングルを探すと、とてもフォトジェニックなシーンを撮影できます。「花の姿ばかり重視すると、景観がアンバランスになるので」と吉谷さん。植栽の引き算テクニック、ぜひ参考にしてください! 「星の王子さまミュージアム」の年間来場者は、約20万人。「お庭とお花に癒されました。また夢の世界に遊びに来ます」、「春夏秋冬と、今まで何度も訪れていますが、バラが満開の時に来られて感動! 季節ごとに表情が変わる庭が楽しみです」といった感想が寄せられています。冬期を除き、ほぼ月に1度は吉谷桂子さんの公開ガーデンワークが開催されているので、イベントに合わせて足を運ぶのもオススメ。そして2019年は20周年という節目を迎え、限定グッズ販売のほか、多様なイベントの準備が進められているので、こちらも要チェックです! 「星の王子さまミュージアム」開園20周年を記念したイベント第一弾は、フラワーチャペルの復活です。園内の「サン=テグジュペリ教会」に、吉谷桂子さんプロデュースによる新しいフォトスポットを設置。豊かに彩られたフラワーコーディネートに、感動のため息がこぼれるばかりです。ぜひ写真に収めて、思い出に残しましょう。 ※写真は2017年10月に開催された時のものです。2019年6月29日からの20周年記念の新しいデザインをお楽しみに! 星の王子さまの彫像が目印のメインゲート 屋外に1900年代前期のフランス風の街並みが登場 「星の王子さまミュージアム」のメインゲートでは、王子さまの故郷(小惑星B612)に立つ王子さまのスタチューがお出迎え。奥のチケット売り場から、エントランスの扉を抜けてガーデンへ出ます。ガーデンの途中で展示ホールに入る順路となっており、屋外空間の凝った演出も見どころです。 屋外空間では、星の王子さまの世界観を再現。写真は、1900年代のフランス・リヨンの街並みを模した「王さま通り」です。サン=テグジュペリや彼の作品にまつわる演出が随所に見られ、ファンにはそれを見つける楽しみもあります。屋外では自由に撮影できるので、お気に入りのスポットを見つけたら、ぜひ写真に収めましょう(屋内はエントランス、教会、展示ホール1階、カフェ、レストランのみ撮影可)! 樹木や草花が織りなすハーモニーと 街並みや建物外観と花々の調和が見どころ 写真は、「アジサイの小径」エリアです。梅雨前後からガクアジサイ、カシワバアジサイ、西洋アジサイ‘アナベル’などが見頃に。「自然風のコンビネーション」をコンセプトに、アジサイの足元には宿根草が植栽され、打ち上げ花火が次々と上がるように、季節によって見頃の植物が移ろっていきます。 「グラウンドカバープランツをベースに、立ち上がる樹形、縦横に広がる草花の三拍子のバランスで植栽しています。冬は宿根草の姿が消えるので、アナベルなどの枝を残して彫刻的な姿を大切に。アセビなどの常緑樹も活躍します」とは、吉谷桂子さんからのコメントです。 写真は、バラの咲くフランスの庭を表現した「ローズガーデン」のエリアで、見頃は6月中旬です。『星の王子さま』に登場するバラにちなみ、赤いバラでコーディネート。‘チェリー・ボニカ’や‘ピエール・ドゥ・ロンサール・ルージュ’など約25品種、47株のバラが植栽されています。赤バラの品種それぞれの豊かな表情も見どころですね。つるバラに欠かせないアーチは3カ所に設置。アーチの外側ばかりか、内側へも花が爛漫と咲くように配慮されており、仕立て方の参考にもなりそうです。 写真は、「サン=テグジュペリ教会」の外観。株立ちの樹木に守られた、グリーンのグラデーションが美しい静謐な空間です。緑陰が多く、あまり日当たりに恵まれない場所のため、コニファーやヒューケラなどのエバーグリーンを中心に植栽し、パンジーやインパチェンスなどの一年草で彩りを添えています。教会は、中に入ることも可能。ステンドグラスには、『星の王子さま』に登場するキャラクターが隠れていますよ! 写真は、「サン=モーリス・ド・レマンス城」と「パルク・デュ・プチ・プランス」のエリア。フランス式パルテール花壇で、ツゲで形づくられた美しいトピアリーが目を引きます。中心には華やかな色彩の寄せ植えが配置され、フォーカルポイントに。背景のお城とも相まって、素敵な記念写真が撮れそうです! 物語にちなむ、kawaiiレストランメニュー! オリジナルグッズのお買い物も楽しんで ミュージアム内のレストラン「ル・プチ・プランス」にはテラス席もあり、ガーデンの景色を愛でながらの食事を楽しめます。営業時間は11:00〜18:00(L.O.17:30)で、デザートメニューは11:00〜17:00L.O.、フードメニューは11:30〜17:00L.O.。客席は店内66席、フランス庭園側20席、駐車場側テラス20席。レスランのみの利用も可能。その場合、ミュージアム入園料金は不要です。 写真は、人気メニューの「ウワバミのオムライス」。単品1,300円、スープ・サラダ・デザート・コーヒーor紅茶のセット1,750円。『星の王子さま』で、主人公の「ぼく」が6歳の時に描いた絵、「ゾウをのみこんだウワバミ」が、大人には「帽子」に見えてしまう、というエピソードがモチーフです。 写真はオススメデザートの「Le Petit Prince ふわふわパンケーキ」。単品680円、コーヒーor紅茶セット1,000円。 2019年5月25日〜7月7日には、1日限定20皿のローズスイーツ2019「バラのわがままプレート」が登場! 単品950円、コーヒー・紅茶セット1,200円、ローズティーセット1,300円。期間限定メニューのため、お見逃しなく! ミュージアムショップでは、お菓子やステーショナリー、タオルや食器など、幅広いアイテムが揃います。ファンにとってはまさに聖地。存分にお買い物を楽しみましょう! お菓子は王子さまのデザイン缶2種類が揃う、チョコサンドクッキー1,800円がオススメです。革小物やワックスペーパー製グッズは男女、年齢層を問わず人気のアイテムで、パスケース2,500円〜、ワックスペーパー製ブックカバー1,500円。ここでしか買えないミュージアムオリジナルのトートバッグは3,100円。 20周年記念グッズとして、PARKERの万年筆28,300円とボールペン18,300円、ミントタブレット510円、メモ帳580円など品揃えが充実しています。コレクターには朗報ですね! ※この記事はレストランメニュー以外、すべて税抜き価格を表記しています。 Information 星の王子さまミュージアム 箱根サン=テグジュペリ 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原909 TEL:0460-86-3700 http://www.tbs.co.jp/l-prince/ アクセス: 公共交通機関/ ●東京方面から「新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)」より小田急箱根高速バス「箱根線」約120分、「川向」バス停下車すぐ。 または新幹線「小田原駅」より箱根登山バス「桃源台行き」約50分、「川向・星の王子さまミュージアム」バス停下車すぐ。 ●箱根から 箱根登山鉄道「箱根湯本駅」より箱根登山バス「桃源台行き」約30分。 または箱根登山鉄道「強羅駅」より観光施設めぐりバス「湿生花園前行き」約18分、「川向・星の王子さまミュージアム」バス停下車すぐ。 車/東名高速御殿場ICより約20分 オープン期間:通年 休園日:第2水曜(3月と8月は無休。気象状況等の事情により営業時間の変更や臨時休園の可能性があります) 営業時間:9:00~18:00(最終入園17:00)※展示・映像ホール開館時間 9:00~17:30 料金:大人1600円、シニア(65歳以上)・学生(要学生証)1100円、小・中学生700円 駐車場:112台 (1日300円 ※土日祝・繁忙期のみ) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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花の庭巡りならここ! 富士山を望むナイスビューが魅力「松田山ハーブガーデン」
風通しのよい傾斜地を利用したハーブ園 2階の工房ではクラフト体験も実施 1997年6月にオープンした「松田山ハーブガーデン」。広さは3,667㎡にも及び、ゆっくり歩いて公園全体を散策するのに、約1時間かかります。農地の荒廃化と農業離れを防ぐため、新しい魅力ある農産物としてハーブの栽培を取り入れ、また町を活性化する観光スポットを目指して整備されました。 松田山ハーブガーデンでは、181種、約16,500本の植物を植栽。主に4月中旬〜6月はチェリーセージ、5月中旬〜6月はストエカスラベンダーやダイヤーズカモミール、6月中旬〜7月はアカンサス、6月下旬〜7月はグロッソラベンダー、6〜8月はベルガモット、9〜10月はチェリーセージ、アメジストセージへと開花リレーがつながれ、四季を通して見どころを設けています。 ハーブが息づくのは南側の斜面で、日当たり・水はけ・風通しがよく、植物がすくすくと育ちやすい環境。園路はスイッチバック方式に整備されているので、ハーブ畑の間を縫うようにゆるやかに頂上へと導かれていきます。足柄平野を見渡し富士山を望む絶景に、思わずため息がこぼれることでしょう。 頂上に建つ円筒形のハーブ館では、ハーブ関連商品を扱うショップや地元の特産品が並ぶ土産物店で、お買い物を楽しめます。2階にはハーブを利用したクラフト体験ができる工房があり、当日申し込みで参加できます(木・土・日曜のみ)。一番のナイスビューが広がる3階のレストランでは、1,000円前後の価格帯でランチを楽しめるほか、デザート、ドリンクも揃います。特にハーブティーのラインナップが充実していますよ! 春と秋の年2回、「ハーブフェスティバル」を開催し、冬は「松田きらきらフェスタ」と題したファンタジックなイルミネーションを無料公開するなど、「松田山ハーブガーデン」では、さまざまなイベントが盛りだくさん。リピーターも多く、年に約17万人が訪れる、町の魅力的な観光スポットになっています。爽やかな風香るハーブガーデンに、ぜひ足を運んでみてください! 春は河津桜と菜の花が織りなす絶景から始まり 晩秋までハーブと季節の花々が咲きつながる 「松田山ハーブガーデン」では、2月中旬〜3月中旬に開催される「まつだ桜まつり」で、約360本の河津桜と菜の花の共演を楽しめます。桜の観賞がメインとなる散策路内では、シートを広げてのお花見は不可となっていますが、公園上部にある芝生広場では飲食OK。飲酒の制限もありません(ただし周囲の方々に迷惑をかけない程度に)。足柄平野と桜を一望しながら、晴れた日には富士山も顔を出すナイスビューを前に、会話も弾みそうですね! 頂上に建つハーブ館からハーブガーデンを一望した風景。日当たり良好な南斜面にラベンダー、セージ類、ローズマリー、カモミール、レモングラス、アーティチョークなど多様なハーブが、区画された中に植栽されています。ガーデンの標高は下部が約110m、上部が160mと高低差がありますが、園路はジクザクに折り返しながらゆるやかに整備されているので、ご安心を。ハーブの香りに癒されながら、ゆっくりとそぞろ歩きを楽しみましょう。 2019年は6月1〜9日に「ハーブフェスティバル」を開催。この期間はJR御殿場線「松田駅」北口から毎日シャトルバスが運行されます(大人150円、子ども80円)。「英会話をしながらスワッグ作り」や「第2回松田ミュージックフェス」、「ハーブ体験教室」、「ハーブガーデンで摘み取り体験」など、楽しいイベントを実施。フェスティバル中は、ハーブガーデンへのワンちゃん同伴がOKです! 写真は秋のハーブガーデンの様子です。多種類のセージやサルビアが主役となり、園内を豊かに彩ります。2019年10月上旬〜中旬には、秋のハーブフェスティバル「オランダまつり」を開催予定。オランダの民族衣装を着用しての記念撮影や、ストリートオルガン演奏会、オランダ文化のミニ講座などが開催されます。売店では、オランダグッズの数々も登場。ほかにハーブの摘み取り体験や、ハーブクラフト体験など、多様な催し物が展開される予定です。 園内を走る「ふるさと鉄道」が大人気! イルミネーションやハーブクラフトも楽しめる 写真は、園内の「ふるさと鉄道」の様子。山岳鉄道「シェイ式蒸気機関車」(ミニSL )と小田急ロマンスカーは、どちらも実物の1/6のスケール。ミニSLは、本物と同じ蒸気を動力とした精巧で本格的なつくりです。高低差30m、片道550mを約20分かけて往復。途中、急斜面での2カ所のスイッチバックや鉄橋、踏切もあります。料金は12歳未満が200円、12歳以上は300円。不定休のため、運行日はホームページにて確認を。雨天時は運休します。 例年11月下旬〜12月下旬に、「松田きらきらフェスタ」が開催され、約18万球のイルミネーションが点灯されます。営業時間は17〜21時で、入園は無料です。足柄平野のダイナミックな夜景とも相まって、素晴らしい光のハーモニーを楽しめますよ! ハーブ館2階の工房では、木・土・日曜にハーブを利用したクラフト教室を実施(都合により中止になることもあります)。当日申し込み、受付時間は10:00〜11:30と13:00〜14:30。体験コースは「ハーバリウムづくり」2,000円・約40分、「瓶ポプリづくり」500円・約30分、「手練り石鹸づくり」500円・約30分、「バスソルトづくり」700円・約30分、「ミニリースづくり」500円・約30分など、多彩です。 ハーブ関連商品が豊富に揃う1階ショップ 眺望のよい3階レストランでの休憩もオススメ 1階はハーブ&お土産物売り場があります。ハーブ関連商品や地元の特産品がずらりと並び、目移りしてしまうほど。オリジナル商品は、ガーデンの花材で作ったクラフト(500円前後)や、パズル500円など。特にオススメしたいのは、ここでしか買えない寄(やどりき)産のお茶を使った丹沢大山茶アイスで、ほうじ茶・煎茶各270円。茶師謹製、絶品の味わいをお楽しみください! 3階のレストランでは、富士山、箱根、相模湾が一望できるナイスビューを楽しめます。営業日は木〜日曜、11:00〜16:00(L.Oは食事が15:00、デザート・ドリンクが15:30)。ランチは足柄牛ハンバーグ1,000円、パスタ900円、スープライス700円など。デザートはケーキ各種450円(ドリンクセット700円)、ソフトアイス(さくら、バニラ、チョコレート、抹茶)350円、ドリンクはハーブティー各種350円です。 そして、5日前に予約すれば(10名以上宴会予約のみ)、ディナーも楽しめますよ! 大きな窓の向こうには、キラキラと美しい夜景が広がります。特別に、8月の足柄花火大会とクリスマスのディナーは個別での予約にも対応。写真は花火大会の時のレストランの様子です。満席ですね、予約を急ぎましょう! 夜間予約の営業時間は18:00〜21:00。パーティーコースのお値段は、和食コース、写真の洋食コースが各一人3,500円(10〜24人)、パーティーコースが2,500円(16〜24人)、立食パーティーコースが2,000円(20〜40人)です。予約すると、なんと新松田駅北口と松田山ハーブガーデン往復のタクシー1台無料(4名乗車)、車で来場の際は駐車料金が無料になります! 忘年会や新年会、親睦会、女子会などにいいですね。 Information 松田山ハーブガーデン 所在地:神奈川県足柄上郡松田町松田惣領2951 TEL:0465-85-1177 https://nisihira-park.org アクセス:公共交通機関/小田急小田原線新松田駅北口を出て、徒歩約25分(新松田駅からタクシーで約820円 ※道路状況で変わります) 御殿場線松田駅北口を出て徒歩約20分 オープン期間:通年 休園日:年末年始、月・火曜(イベント時は開園) 営業時間:9:00~17:00(冬季は10:00〜16:00) 料金:無料 駐車場:70台(平日無料、土・日・祝日・イベント中は500円、桜まつり時は1,000円) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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バラの街で人気の横浜で建物探訪!「横浜山手西洋館巡り」
西洋館の始まり~横浜開港と外国人居留地の成立 1854年に、アメリカと幕府の日米和親条約が結ばれて鎖国が解かれると、1858年には、アメリカ、オランダ、ロシア、イギリス、フランスと相次いで通商条約が締結されました。それにより国内5港(横浜、長崎、函館、神戸、新潟)で自由貿易が可能となり、開港地付近に、外国人の居住や事業などが許可された場所(居留地)ができました。 1859年、横浜港が開港されると、1860年頃より本格的に山下居留地での建築工事が始まりました。しかし、開港間もない当時は、開港や居留地制度に反対する者による外国人殺傷事件などが起こり、居留外国人防衛を目的に、山手の丘にイギリスとフランスの軍隊が駐留することになりました。 1866年、幕府は「横浜居留地改造及び競馬場墓地等約書」をつくり、1867年、バーン商会が幕府の命により、約22万5千坪の山手の土地を競売にかけたことで、次々と買い手がつき、やがて居留地の街ができていきました。山下居留地は商工業地区として、山手地区は住宅地区として洋館が建てられ、1875年には、イギリスとフランスの両軍隊は完全に山手から撤退していました。それにより、両軍隊の跡地の分割が行われると、山手居留地は益々整備が進み、病院、学校、墓地、教会、公園、ホテルなどの施設も充実しました。 現在の山手地区の主な歴史的洋館 現代の山手地区を大きく5つのエリアに分け、9つの建物をご紹介します。まずは各エリアの由来と、そのエリアにある建物の名称をリストアップしましょう。 Ⅰ. 港の見える丘公園エリア ①横浜市イギリス館 ②山手111番館 【エリア解説】1962年に開園し、園名は戦後の流行歌『港の見える丘』に由来します。 Ⅱ. 元町公園エリア ③山手資料館 ④山手234番館 ⑤エリスマン邸 ⑥ベーリック・ホール 【エリア解説】元町公園は、元町商店街から山手にかけての谷戸と呼ばれる地形に位置します。 Ⅲ. 山手公園エリア ⑦旧山手68番館 【エリア解説】日本初の洋式公共庭園であり、日本におけるテニス発祥の地です。 Ⅳ. 山手イタリア山庭園エリア ⑧外交官の家 ⑨ブラフ18番館 【エリア解説】1880~1886年に、イタリア領事館がこの地に置かれました。 西洋館探訪1 横浜市イギリス館(横浜市指定文化財) 1937年(昭和12年)に、英国総領事館公邸として、上海大英工部総署の設計により建てられました。コロニアルスタイルの建物は、現在、1階はコンサートホール、2階は会議室に利用され、寝室や展示室などが一般公開されています。 イギリス館周囲の庭園は、現在、「イングリッシュローズガーデン」と命名され、さまざまなイングリッシュローズと共に、宿根草などの草花との組み合わせや配置が見事な英国風ガーデンとなっています。アーチやオベリスクを利用した立体的空間デザインや各コーナーごとのカラースキームも大変素晴らしく、まるでイギリスのガーデンにいるような錯覚を覚えます。こちらでは、約130品種、約1,200株が植栽されています。 また、隣接された「香りのガーデン」では、特に香りが強く香料用のバラとして栽培されている品種をはじめ、中国や日本などのさまざまな香りのバラが50種以上と、100種以上の香りの植物が植栽されています。 フランスのグラースなどで香料用に栽培されている‘ローズ・ド・メイ’が、ベンチの後ろに数株並んで。 西洋館探訪2 山手111番館(横浜市指定文化財) 1926年(大正15年)に、J.H.モーガン氏による設計で、アメリカ人、ラフィン氏の住宅として建てられました。スパニッシュスタイルの洋館は、イギリス館南側に位置し、ローズガーデンを見下ろすように佇み、現在、地階は喫茶店となっています。 西洋館探訪3 山手資料館(横浜市認定歴史的建造物) 外国人墓地の向かいの山手本通り添いに建つこちらの洋館は、1909年(明治42年)に、中澤兼吉氏の邸宅として、本牧本郷町に建てられた和洋併設住宅の洋館の部分を移築したものです。現在、開港~関東大震災までの横浜や山手に関する資料を保存し展示しています。庭園には、洋館を背景にバラが数株植栽されています。 西洋館探訪4 山手234番館(横浜市認定歴史的建造物) 山手本通りを元町公園前に向かって進むと、間もなく見えてくるこちらの洋館は、1927年頃(昭和2年)に、朝香吉蔵氏の設計により建てられました。関東大震災で横浜を離れてしまった外国人に戻ってきてもらうための、外国人向けアパートメントハウスでした。当時は、3LDKの間取りが4セット、玄関ポーチに向かい合うよう設計されました。 こちらでは、ハンギングや寄せ植えなどがセンスよく配置されていました。 西洋館探訪5 エリスマン邸(横浜市認定歴史的建造物) 山手234番館の前の山手本通りを少し進み、向かい側にあるのがエリスマン邸です。1925~1926年(大正14~15年)に、日本の近代建築の父といわれるチェコ出身の建築家アントニン・レーモンド氏の設計により、生糸貿易商社シーベルヘグナー商会のスイス出身フリッツ・エリスマン氏の邸宅として建てられました。1990年(平成2年)には、元町公園内に移築されました。 西洋館探訪6 ベーリック・ホール(横浜市認定歴史的建造物) エリスマン邸のすぐ隣に建つスパニッシュスタイルの洋館は、1930年(昭和5年)、アメリカ人建築家であるJ.H.モーガン氏設計により、イギリス人貿易商B.R.ベリック氏の邸宅として建てられ、2000年(平成12年)まで、セント・ジョセフ・インターナショナルスクールの寄宿舎として使用されていました。 西洋館探訪7 旧山手68番館 1934年(昭和9年)に外国人向けの賃貸住宅として、山手68番に建てられ、1986年(昭和61年)に、山手公園内に移築されました。現在は、山手公園管理事務所になっています。 山手公園は、1870年(明治3年)、日本初の洋式公園としてこの地に誕生し、日本で初めてテニスが行われた場所でもあります。居留地外国人女性によってレディーズ・ローンテニス・アンド・クロッケー・クラブ(LLT&CC)が創設され、1998年(平成10年)には、LLT&CCが改称した公益社団法人 横浜インターナショナル・テニス・コミュニティ(YITC)創立120周年を迎え、テニス発祥記念館を同公園内に開設しました。 また、1879年(明治12年)にイギリス人のH.ブルック氏がインドよりヒマラヤ杉のタネを取り寄せ、日本で初めて植栽しました。2004年(平成16年)には、国の「名勝」指定を受けた公園でもあります。 西洋館探訪8 外交官の家(国重要文化財) 明治政府の外交官として、ニューヨーク総領事やトルコ特命全権大使を務めた内田定槌氏の邸宅として、1910年(明治43年)に、J.M.ガーデナー氏設計により東京・渋谷区南平台に建てられましたが、1997年(平成9年)に、現在建物があるイタリア山庭園内に移築されました。建物は、アメリカン・ヴィクトリアン様式です。また、幾何学模様にデザインされた整形式庭園も見どころです。 西洋館探訪9 ブラフ18番館(横浜市認定歴史的建造物) 外交官の家の隣に建つこちらの洋館は、大正末期頃に建てられた外国人用住宅で、1991年(平成3年)まで、カトリック山手教会司祭館として使用されていました。1993年(平成5年)に現在の山手イタリア山庭園内に移築されました。 なおブラフとは、かつて居留外国人たちが、山手の港寄りの切りたった崖の地を「ブラフ」と名づけたことに由来します。 ブラフ18番館からJR京浜東北線・根岸線「石川町」駅に向かう大丸谷坂の道に、懸崖仕立てにバラが植栽されていました。 各洋館の歴史がそれぞれにあるように、庭園もそれぞれの経緯を経て今に至ります。横浜開港150周年を記念して平成19年に市民投票により名前が選ばれ、平成21年に名づけられたピンクのバラ‘はまみらい’は、あちらこちらで目にすることができました。 現在、横浜では市をあげて、花と緑のフェア「ガーデンネックレス」が開催されています。また、5月は「横浜ローズウィーク」とメインイベントとなる「ばらフェスタ2019」も、横浜の大さん橋ホールにて初開催されています。 バラが最盛期の今、ぜひバラとの歴史が深い横浜で花咲く喜びを体感していただきたいです。 併せて読みたい ・横浜とバラの歴史を刻み続ける「港の見える丘公園」 ・新しい花のイベント開催スタート!「ばらフェスタ2019」in横浜 ・編集部厳選・国内名ガーデン案内「神奈川・横浜イングリッシュガーデン」の四季
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花の庭巡りならここ! 花と野菜の魅力を満喫できる「花菜ガーデン」
フラワー&アグリカルチャーに親しむスポット 品種改良の歴史を学べるバラ園は必見! 2010年3月にオープンした「花菜ガーデン」。実は正式名称を「神奈川県立花と緑のふれあいセンター」といいますが、一般公募でつけられた愛称のほうが浸透し、親しまれています。花と野菜から取り、神奈川県の「かな」をふり仮名にして「花菜(かな)ガーデン」と名づけられました。 園内は、季節の花木や草花が楽しめる「フラワーゾーン」、田植えや稲刈り、野菜の収穫体験ができる「アグリゾーン」、農業や園芸に関する知識を深める施設「めぐみの研究棟ゾーン」の3つに分かれています。 特に「フラワーゾーン」内のバラ園「薔薇の轍(わだち)」は、バラ専門家の河合伸志さんプロデュースによる、バラの品種改良の歴史が一目で分かる植栽が見どころです。約1,300種が揃うこのバラ園を目当てに訪れる愛好家も多く、春(5月〜6月上旬)と秋(10月〜11月上旬)にはローズフェスティバルが開催され、大賑わい。「バラがとてもきれいで、敷地が広く充実したひとときでした。再度来園したい」という声が多く寄せられています。 「花菜ガーデン」が理想とする園芸家に、カレル・チャペックがいます。エッセイ『園芸家12カ月』は、約90年経った今も世界のガーデナーがバイブルにする書物です。そのライフスタイルに共鳴し、「花菜ガーデン」でもプラスアグリ(農業)をコンセプトに掲げ、今も残る彼の家と庭のイメージを「チャペックの家と庭」として展示。また、体験学習として、田植えや稲刈り、野菜の収穫体験のほか、ハンギングバスケットづくりや苔玉づくりなど、さまざまな体験型プログラムも実施しています。 キッズビレッジ、キッズファームでは、あえて小型化したアーチやトンネルで子ども目線の異空間の入り口を演出するなど、エリアごとに工夫を凝らしたガーデン演出が楽しく、見応えがあります。「子どもも大人も楽しめる施設になっていると思いました」との感想も聞かれ、花と野菜の魅力をいっそう引き出す展示が、「花菜ガーデン」の魅力です。 エリアごとの華やかなガーデンは眼福! 田植えや野菜の収穫など体験型アグリも開催 写真は「球根ミックス花壇」で、チューリップやアネモネ、スイセン、ヒヤシンスなど62品種、約11万球を植栽。華やかな球根植物たちの競演は、見応えがあります。チューリップは3月下旬〜4月中旬が見頃。配色や植栽のデザインは年によって変わるので、毎春の楽しみとしてリピーターが多く訪れます。 また、2019年は11月中旬〜12月上旬にもアイスチューリップの開花が見られる予定。開花調整されたアイスチューリップは開花期間が長いのも魅力です。 写真は三日月山パノラマ大花壇の5月上旬の様子。ポピーやコーンフラワー、カリフォルニアデージーなどを、ワイルドフラワーのようにバランスよくミックスした花畑を作っています。年に2回の植え替えを行っており、2019年8〜10月は5色のニチニチソウで彩られる予定。植栽は毎年変更され、180度パノラマの迫力たっぷりの花壇は、写真映えする人気のスポットです。 写真は「アグリゾーン」にある「触れん土ファーム」での収穫体験の様子です。他に「花菜ガルテン」や「キッズファーム」「温室」でも収穫体験(有料・持ち帰り可)を実施。内容や時間は、農作物の生育具合やコンディションに合わせて、当日の朝、公式ホームページ上で発表されます。当日の入園窓口にて申し込む先着順で、定員になり次第締め切り。食育の場としても楽しめそうですね。 河合伸志さんプロデュースによる バラ園では品種改良の歴史が学べる 「花菜ガーデン」のバラ園「薔薇の轍(わだち)」は、バラの品種改良の歴史に沿って系統・分類ごとに展示している「バラの歴史園」です。大きくは野生種からオールドローズ、そしてモダンローズの順に植栽され、時代の流れとともに次々に華やかな花姿が誕生していった経緯を学ぶことができます。そこで、バラがたどってきた今日までの道のりを、車が通った両輪の跡、轍にたとえて「薔薇の轍」と名づけられました。 写真はオールドローズのコーナー。 リージャンロード・クライマー、ロサ・ダマスケナ・トリギンティペテラ、パークス・イエロー・ティーセンティッド・チャイナなどが見られます。 写真はモダンローズのコーナー。芳醇な香りを放つ‘薫乃’、病害虫に強く修景バラとして活躍する‘ノックアウト’、「世界バラ会連合」にて名花として最初の殿堂入りを果たした‘ピース’などが見られます。 香りのバラのコーナーでは、香りを強く放つ品種群を植栽しています。写真手前のピンクのバラが‘エル’、奥に見えるのが‘香貴’、‘快挙’など。バラは咲きたてほどよく香るので、午前中早めに訪れるのがオススメ。香り比べをして、それぞれのバラの魅力を満喫するのもいいですね。 写真のバラの名前は‘花菜ローズ’。花菜ガーデンのバラ園を設計・監修した河合伸志さんが育種したバラで、オープンの記念に贈られました。ニュアンスのあるアプリコット色と芳しい香りが魅力で、シンボルローズになっています。 2019年春のローズフェスティバルでは、普段は販売していないバラ苗を集めた「ローズマーケット」、詳しい解説を聞きながら巡る「バラ園ガイドツアー」、バラの専門家の解説が聞ける「プロに学ぶ! バラの講演会・ガイドツアー」、藤川志朗さんの「花のイラスト展」などを予定しています。 地元の名産品やオシャレ雑貨が充実のショップ& 旬の食材を使ったメニューに大満足のレストラン 「花菜ガーデン」内のショップ「ディア・チャペック」では、神奈川県の特産品や、バラや花をモチーフにした雑貨などが豊富に揃います。広い店内は通路の幅もたっぷりとってあるので、ゆったりとお買い物を楽しめるのがいいですね。旅の記念やお土産に、ぴったりのアイテムを探してみましょう。 ショップのオススメは、左のローズジュース(250ml)324円、右のローズシロップ(120ml )1,296円。ほかにバスフレグランス(入浴剤・1個)324円、ローズドロップクリーム(美容液・80g)2,760円も人気があります。 園内には、レストラン「キッチンHana」(室内約100席、テラス約80席)があるので、歩き疲れたら立ち寄って休憩を。営業時間は3月1日〜11月4日が10:30〜17:00(L.O.16:30)、11月5日〜2月末日が10:30〜16:00(L.O.15:30)、定休日は「花菜ガーデン」の休園日に準じます。神奈川県の旬の食材を使ったランチメニューやデザートセットなど充実のメニューに、どれにしようか迷ってしまうかも!? レストランのグランドメニューは、神奈川県産の「ヤマユリポーク」を使用したポークグリルスープつき1,400円や、牛肉100%のハンバーグスープつき1,200円など。メニュー内容は季節やイベントによって変わります。キッズプレートやペアランチセットなどもありますよ! デザートはシフォンケーキや自家製タルトが500円、ケーキとフリードリンクのデザートセットが700円です。
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素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪8 神奈川「Buriki no Zyoro湘南T-SITE」
グリーンライフをトータルコーディネートしてくれるショップ 湘南の海風が吹きわたる藤沢で、2014年にオープンしたカルチャースポット「湘南T-SITE」。大型書店を中心とした、新しいライフスタイルを提案するこだわりのショップが集まった注目の商業施設です。 3棟のモダンな2階建ての建物には、すべて書店が入っており、売り場は本の分野ごとにエリア分けがされています。各書店には、その分野と関連性があるものを扱うショップやレストランが隣接。本好きの人も、そうでない人も、感覚で楽しめるスポットとなっています。今回ご紹介する「Buriki no Zyoro」は、植物やフラワーアレンジ、庭づくりに関連する本が集まるエリアに面して展開しています。 普段の生活をワンランク上げるための 商品・提案を心がけて この店のコンセプトは「グリーンのある暮らしをトータル的に提案」すること。さまざまなガーデニングの旬をいち早く届けられるよう、草花や樹木、インドアグリーン、切り花、ドライ、多肉植物、雑貨など、生活に取り込みやすい身近なアイテムすべての「これぞ」というものだけをセレクトしています。 空間を巧みに使い、インドアグリーン、多肉植物などの緑に心地よく包まれる店内。什器には、アンティークテーブルやプランターシェルフなど、インテリアにそのまま使えるアイテムを選び、手軽に実践できるような参考にしやすい提案がなされています。 ウッドボックスを重ねて、今人気のビカクシダや銅葉のゴムの木など、個性的なグリーンを飾ったコーナー。ボックスの高さや向きを少しずつ変えることで、立体感のある空間を提案しています。売り場に置いていない植物は、取り寄せ可能。 基礎工事などに使う格子状のワイヤーは、丈夫で悪目立ちしない優れもの。店内の随所で、ディスプレイに活用しています。ここではガーデンツールとエアプランツのスパニッシュモスをハンギング。 コンテナは、グリーンをより美しく見せるフォルム、色、質感を備えた、厳選されたものが揃っています。 自身の感性と性分を生かし またたくまに人気のショップに成長 「Buriki no Zyoro」のオーナー勝地末子さんは、グリーンスタイリストとして、多方面で活躍中。華がありながらもナチュラルなスタイリングは、著名人にも多くのファンがいるほどの人気ぶりです。 勝地さんがショップを始めたのは今から23年ほど前で、当時3人の息子さんの⼦育てが一段落し、何か自身の感性を生かせる仕事を始めたいと思ったことから。20代で大好きなファッションを扱うアパレルメーカーを経営していた経験を生かし、長年学んでいたガーデニングとフラワーアレンジメントを生業に選びました。 オープンする前は、週1~2日でこぢんまりとやっていけたらと考えていましたが、いざ始めると順調に仕事が運び、ほぼフル回転でショップを営業。仕事だけでなく、勉強にも明け暮れました。 「なんでもやり出したら、とことんやりたくなるんです」と勝地さん。トレンドに敏感な勝地さんは時代に先駆け、グリーンや白を基調とした大人っぽい雰囲気のショップづくりを意識し、当時まだそれほど出回っていなかった多肉植物も充実させました。ワークショップもいち早く手掛けていたことで、おしゃれに感度が高い人が集まる場として、どんどん注目を浴びていきます。 多忙な毎日ですが、今でも自身で仕入れを行っています。「生産者さんと話したり、新しい変わった品種を見つけたりすると、どんなに疲れていても、仕事のモチベーションがぐんと上がるんですよ」と勝地さん。 勝地さんが最も大切しているのが、‘ディスプレイ’。スタッフと相談しながらこまめに模様替えをして、常に美しく新鮮な空間を提案するよう心がけています。「せっかく来てくださったのに、楽しく新しい提案がないとつまらないでしょう」。 勝地さんオススメの苔のテラリウム。蓋つきの瓶の中では苔に必要な湿度が保たれるので、このまま飾るだけで、苔が作る小宇宙を身近に楽しむことができます。詳しくはショップ、または勝地さんの著書『はじめてのテラリウム 多肉植物、エアプランツ、苔、蘭でつくる』(エクスナレッジ)で。 無機質でモダンな空間に 心落ち着く有機的な演出を 勝地さんが空間づくりで意識していることは、ディスプレイの美しさだけでなく、居心地の良さの追求。ここの建物は無機質でややハードな印象があるため、勝地さんの世界観を出すには、一工夫が必要でした。そこで勝地さんは、人の背丈を超えるほどの大きな木の幹や枝を要所にレイアウト。直線的な建物に曲線のデザインを加えることでやわらかさが出て、森の中にいるような囲まれ感も生まれています。 日々の暮らしに寄り添うよう 花選びを心がけて ショップの中央のテーブルでは、愛らしい切り花が軽やかな彩りを添えています。この店舗にはナチュラル志向の人が多く来ることもあり、あまり派手さがない自然体な花姿のものがメイン。自由が丘店では勝地さんの感性を求めて来る常連さんからの「贈り物用の花束」の依頼が多いのですが、ここ湘南では、これ! と思う1本、または数本を自分で選んで自宅用として購入していく方が多いのだとか。「生活に花やグリーンで潤いを添えようと思う人が増えているようです」と勝地さん。一輪でも絵になる花材を意識して仕入れています。 ドライフラワーで提案する 最後まで花を楽しむ方法 「Buriki no Zyoro」では、ドライのリースやスワッグも販売しています。飾られているものはスタッフが作ったもので、どれもあたたかみを感じさせるものばかり。植物の本来の魅力を伝えようとする思いが伝わってくる、シンプルで飽きのこないデザインが魅力です。 折れたり、盛りを過ぎたりした花を、スタッフが吊るして飾ったコーナー。「花を最後まで慈しむ気持ち・姿勢が嬉しいんです」と勝地さん。こういった花への思いが伝わり、これが欲しいというお客さまも。 ショップの前には、 厳選した苗ものが並ぶ 「Buriki no Zyoro」では、庭に植える植物ももちろん扱っています。ショップの前のウッドデッキまわりには、植栽をグレードアップさせてくれるイチオシの植物を陳列。また、庭の設計・施工の相談も受けており、こだわりのある美容室やマンションで施工したおしゃれな植栽が注目を浴びています。 今人気のオリーブやオーストラリア原産の樹木類も多数販売。クールな建物にサラサラと揺れる葉が美しく映え、訪れた人の目を潤しています。 リーフガーデンづくりに欠かせない、ユッカやシキミアなどの常緑プランツも充実しています。 今大人気のおしゃれなラナンキュラスやアネモネなど、華やかな花鉢や苗も扱っています。 勝地さんイチオシのグッズはコレ! ハンギングで飾るプランツやアイテム 今までガーデニングに興味のなかった人たちにも、グリーンの重要性が認識され始め、インテリアや玄関まわりなどに少しずつ植物が取り入れられるようになりました。現在需要が伸びているのが、吊るして飾るつる性のグリーン。丈夫で個性的なものが多く、一鉢あるだけで、空間につややかな潤いがもたらされます。 「単に植物を売るだけでなく、一歩先を行く新しい提案で訪れる人々の感性を刺激し、潤いに満ちたライフスタイルを発信し続ける」という施設のコンセプトに準じながら、ほかのショップにはない「瑞々しい癒しの空間」を提供している「Buriki no Zyoro」。ここには、23年間、東京・自由が丘で培った豊かな感性をさらに進化させた、勝地さんの新しい世界が広がっています。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、小田急線本鵠沼駅より徒歩15分 小田急線・JR藤沢駅より無料シャトルバス運行中。 【GARDEN DATA】 Buriki no Zyoro湘南T-SITE 神奈川県藤沢市辻堂元町6-20-1 湘南T-SITE 2号館 TEL:0466-53-8783 https://www.buriki.jp/ 営業時間:10:00~19:00(施設に準ずる場合あり) 定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪7 東京「渋谷園芸」 ・「私の庭・私の暮らし」インスタで人気! 雑木や宿根草、バラに囲まれた大人庭 千葉県・田中邸 ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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春のお出かけお花見スポット〜城山かたくりの里〜
待ちに待ったお花見の季節 御殿場ザクラ。 うららかな休日は、日帰り可能なお花見スポットに足を伸ばして、春を満喫したくなります。いくつかある気に入りのお花見スポットに、2018年の春、偶然インスタグラムで見つけた「城山かたくりの里」が新たに仲間入りしました。 「城山かたくりの里」は、神奈川県相模原市にある個人所有の山村で、カタクリの花が咲く春のみ一般公開されています。また、所有者で花守人の小林一章氏が、昭和50年頃から始めたカタクリの自生地保護と増植の努力で、今では400坪に30万株が自生し、南関東随一の群生地として知られています。 山の斜面に群れ咲くカタクリの花 カタクリやユキワリソウ、コイワウチワが寄り添うように咲く様子を間近に見ることができます。 「城山かたくりの里」を訪れたのは、2018年の4月1日。残念ながら、カタクリの花は満開を過ぎていましたが、山林のほぼ3分の1が群生地。そこには、今まで見たことのない景色が広がっていました。 山の斜面に咲いているカタクリの花は、散策路から見上げると一輪一輪うつむきがちな花の可憐な表情がよく見え、クルンと反り返った花びらのなんと可愛らしいこと。「春の妖精」と多くの人に親しまれていることがよく分かります。背景のツツジの花も色鮮やかで、満開時には辺り一面が赤紫色に染まり、さぞ美しい光景が広がることでしょう。想像するだけでうっとりします。 キバナカタクリが咲き始めていました。 赤紫色のカタクリの花に代わって、ちらほら咲き始めていたキバナカタクリも見ることができました。黄花はやや遅咲きの希少種だそうで、黄緑がかった透明感のある花が、柔らかな木漏れ日に輝いていました。その清らかさは、一株を今すぐにでも庭に植えてみたいと思ったほどです。 素朴で愛らしいアズマイチゲ。 とはいえ、恥ずかしながらこの時まで、わたしはカタクリの生態をほとんど知らなかったのです。調べてみると、カタクリは北海道や本州の北中部に自生しているユリ科の多年草。樹木が目覚める前の早春に花を咲かせ、春が深まり草木に葉が茂る頃には葉を落とし、再び土の中で長い眠りにつくのだとか。 ニリンソウ。 さらに、タネから花が咲くまでに最短でも7年かかるそうです。7年もかけてじっくりと球根に栄養を蓄えて花を咲かせる準備をするなんて驚きですね。また、日本では自生地が激減し貴重な花となっているようです。 生態を知れば知るほど、どこか神秘的でその健気さが愛おしく感じます。と同時に、約45年もカタクリの保護と増植に時間と手間を費やしてこられた花守人の方々の情熱に、只只、感服するばかりです。 山野草の愛らしさに魅せられて 林床に咲くユキワリソウ。 カタクリの花以外にも、山林のそこかしこにさまざまな山野草の花が咲いていました。例えば、ニリンソウ、ユキワリソウ、イワウチワ、アズマイチゲ、ユキワリイチゲ、ショウジョウバカマ、オオバキスミレ…。地面に積もったフワフワの枯れ葉の間から覗かせる可憐な花たちは、「わたしを見て〜!」と言わんばかり。その姿を、何度腰をかがめて覗き込んだことでしょう。 オオイワウチワ。 じつは、山野草といえば、園芸店で売られているポット苗や庭植えのものしか見たことがなく、こんな風に自然に咲く姿を見たのは、この時が初めてでした。顔を近づけて見れば見るほど、個性的で繊細な花に釘付けに。そのうえ、どの葉っぱも愛らしく、花が終わった後も十分楽しめそう。そう思うと、わが家の庭にも植えてみたいなと思いましたが、居心地良さげに咲いている姿をしばらく眺めているうちに、ちょっと可哀想な気もしてきました。やっぱり山野草は、自然の中で愛でるのが一番なのかもしれませんね。 咲き誇る春の花木 山野草の群生地を抜け、山林の奥へと散策路を進むと、今度はサクラやツツジ、ツバキ、ヤマブキ、ミツマタなど、花木が一斉に花を咲かせていました。赤、桃、黄、白…。 色とりどりの無数の花々が織りなす景色は、まさに春爛漫。中でも、清楚な一重咲きのおかめ桜や御殿場桜、ふくよかな花びらのヤシオツツジ、シベと花びらのコントラストがハッとするほど美しいト伴椿(ボクハンツバキ)など、ふだん滅多に見られない花木の種類の多さに胸が高鳴りました。 ト伴(ボクハン)椿。 紅ヤシオツツジ&ヒカゲツツジ。 それにしても、これほど春咲きの花木のみ植栽している場所は、他に見たことがありません。 さらにその先に広がっていたのは、目を見張るほどの箒桃(ホウキモモ)の群生。真っ直ぐ上に伸びた枝いっぱいの艶やかな大輪八重咲きの紅や白、桃色の花。それぞれが競い合って春霞の空をつかもうとしている壮観さは、感動の一言。その力強さに自然と心が奮い立ちました。 そんな箒桃の下では、写真を撮る人や椅子に腰掛けて絵を描いている人、お弁当をひろげてにこやかに寛いでいる家族の姿も。まるで名画のような幸せに満ちた光景でした。 30万株のカタクリと山野草、そして、春の花木が咲き誇る「城山かたくりの里」は、まさにこの世の桃源郷。今春も、この時季ここでしか見られない景色と感動を味わいに出かけたいと思います。 「城山.かたくりの里」公式ホームページhttps://www.katakurinosato.com/
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素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪3 神奈川「苔丸」
鎌倉の住宅街にある園芸ショップ「苔丸」を訪ねる 鎌倉駅からバスに乗り、長谷観音や大仏を通り越して揺られること約15分。緑豊かな住宅街の中のローカルなバス停で下車し、1~2分歩いたところに「苔丸」があります。ショップのシンボルツリーとなる大木のサクラが目印で、その奥に佇む古い平屋が店舗。どこか懐かしさ漂うノスタルジックな雰囲気が、訪れた人を奥へと誘います。 身近にあるものを使った 独創的なディスプレイが魅力 季節の草花が並ぶ店先の陰に隠れたショップのエントランスから、苔丸の世界が楽しめます。建屋の壁を利用して木を組んだ棚には、ノコギリやハサミなどの古びた道具類や、山に転がっているような木片や動物の骨などが、ディスプレイ。一見ガラクタに見えるようなものでも植物と巧みに合わせて、遊び心あふれる見ごたえのあるシーンをつくっています。丁寧なディスプレイからは、オーナーの細やかな人柄がうかがえます。 マニアも身震いする 珍奇植物がずらりと揃う 中庭の建物側に設置した手づくりのサンルーム内は、オセアニアやアフリカ、南米などのユニークな植物がずらり。マニアもうなるこの品揃えは、オーナーの赤地光太郎さんのこだわりの一つです。仲買い人を通すこともありますが、多くはプランツハンターである知人に依頼して入手したもので、一般的な園芸店には出回らないようなものばかり。珍奇植物を知らなかった人も十分楽しめる空間です。 冬の寒さが苦手な植物が多いので、2018年春にサンルームのような空間を製作。雨の日も、ゆっくり買い物ができます。 建屋の掃き出し窓を取り除き、木の素朴な扉を自身で設置。ちょっとした棚を付けて、盆栽のような仕立ての珍奇植物をかわいらしくディスプレイ。 ニュージーランドでの出合いを きっかけに、自身の世界が花開く 植物にまつわることなら大抵こなせるという器用な赤地さんは、もともと切り花業界の出身で、花の販売だけでなく室内装飾なども幅広くこなしていました。数年働いたのちに見聞を広めるべくニュージーランドに渡り、園芸店でアルバイト。そこのオーナーの独特なセンスと植物の世界の奥深さに触れた時間は、とても衝撃的で意義深いものだったといいます。その経験が赤地さんを大きく前進させ、‛苔丸’をオープンさせるきっかけとなりました。 今から約15年前に自宅から近い古い民家を借り、園芸植物や資材、切り花を扱う‘苔丸’をオープン。「好きに改装していい」という大家さんの好意で、さっそく知人の手も借りながら建物を大改造。ニュージーランドの体験をもとに、自由な発想でコツコツと自身の世界をつくり上げていきました。 もともとお母さまが自然な庭をつくっていたことから、植栽のセンスも備わっていた赤地さん。店の奥に広がる庭も見ごたえたっぷり、必見です。そよそよとした植物が多い植栽は、世界各地原産の植物が盛り込まれていているのに、とても自然な趣。茂みの中にさりげなく配した古道具などの雑貨類が庭におもしろみを与えていています。その気負いのない自然なスタイルが心地よさを生んでいるのか、ここ数年で庭づくりの依頼が急激に増加。「ここに植わっているものを使って、庭をつくってほしい」という依頼も多く、そのたびに植物が持ち出されるので、庭は頻繁につくり替えています。半年に1回のスパンで変わることが多いので、ショップを訪れるたびに新たな風景が楽しめます。 赤地さんの真骨頂! 創意工夫を凝らしたサンルーム 赤地さんがデザインを考え、知人に形にしてもらったというサンルーム。よく見てみると、大きさも雰囲気も違う窓枠が使われています。フランスの木製の窓やアイアンの窓、イギリスのステンドグラス、日本の古民家の扉など、どれも古くて味わいのあるものばかり。すりガラスも使われていましたが、見通しをよくするために透明のガラスに交換。また、レトロモダンなデザインのライトは、ノルウェーのプールサイドで使われていたものだそうです。雰囲気の異なるアイテムをしっくりと馴染ませながら味わいを出す空間づくりは、赤地さんだからこそなせる業といえるでしょう。 珍奇な植物だけでなく ナチュラルな草花も揃う 苔丸では、楚々とした山野草や草花も販売しています。これらは、赤地さんが自然な庭づくりをする際に、あるといいなと思うもの。花色は白や青、パープルが多く、ラインの細いものがメインです。古びた雑貨や構造物、野趣を感じさせる樹木などとナチュラルに調和する草花が選ばれています。 植物以外のアイテムも充実 ギャラリーのような陳列も魅力 雰囲気のある店内には、鉢や雑貨類が整然と陳列されています。アイテムはいずれも渋い雰囲気で、アイアン製のものは日本やインドなどの古い道具類がメイン。鉢はひとひねりしたデザインが多いので、個性的な植物と合わせれば、アートな世界が楽しめそう。 がらりと趣が異なる やさしく上品な雰囲気漂う切り花 生活全般を彩る提案をしている苔丸では、切り花も販売。花は白やライムグリーンをメインにした、シックでノーブルな印象のものが並びます。こちらは奥様がメインで担当。苔丸らしい渋い空間にマッチしつつ、女性的で上品なエッセンスも感じられる、ナチュラルなセレクトです。 より個性が際立つ ショップ兼作業場(アトリエ) サンルームに併設するやや薄暗い部屋は、アンティークや古道具が並ぶショップ兼クラフト用のアトリエ。古代の土器やインドの古い生活道具、ヨーロッパのアンティーク瓶などが個性的な植物に合わせて飾られ、不思議な世界を織りなしています。 かつて住居だったとは思えない空間。和風だった古い壁面には工事現場の足場で使っていたという長い木板を貼りつけ、山小屋のようにワイルドに仕上げました。庭側の掃き出し窓は取り外してアーチ状の出入り口を設け、スムーズな動線をおしゃれに確保。押し入れや天袋だった形跡が見受けられるものの、それがかえって面白みとして生かされています。思い切ったリノベーションを重ねた空間は赤地さんの感性が凝縮され、個性を表現するキャンバスになっています。 申し込みがやや困難 大人気のクラフト講座 アトリエでは、月の第1・3・4週目の木曜日、午前1回・午後2回の一日3回、クラフトの講習会が催されています。作るものはリースやスワッグなどが主で、その時の気分で選べます。花材はここにあるものから自由に選ぶことができ、でき上がりは人それぞれ。寄せ植えレッスンをお願いすることも可能です。少人数制で、すぐにいっぱいになってしまうそうなので、気になる人は事前に問い合わせを。 赤地さんイチ押しはコレ! 他ではまだ見られない植物 ベスト4 かなりマニアックで購入する人は限られてくるかもしれませんが、一見の価値ある植物4種をご紹介します。 見慣れない異国情緒漂う植物、昔ながらの素朴な草花、日常で使われていた味わいのある古い道具に、ひんやりとした質感の無機質な道具――古今東西、あらゆるものが混在し、独特な世界感が広がっている園芸ショップ「苔丸」。個性的だけどどこか懐かしさを感じる空間は、鎌倉山の立地と相まって、ここでしか感じられない居心地のよさがあります。ぜひ鎌倉観光を兼ねて訪れてみてください。アクセスは、鎌倉駅より鎌倉山行きバスで約15分、旭ヶ丘停留所下車徒歩約2分。 【GARDEN SHOP DATA】 苔丸 神奈川県鎌倉市鎌倉山2-15-9 TEL/FAX: 0467-31-5174 URL: http://www.kokemaru.net 営業時間:10:30~18:00 定休日:火曜日 併せて読みたい ・素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪2 東京・世田谷「toolbox世田谷」 ・小さな庭と花暮らし「苔の緑を楽しむ」 ・黒田健太郎さんに学ぶ 数株で素敵に! シンプル寄せ植え&コーディネートLesson1 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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横浜は「バラの街」! 3つのローズガーデンの魅力を紹介
花や緑が“ネックレス”のように人・街・時をつなぐ祭典 観光地として人気の横浜。近年はさらに横浜の豊かな自然を育もうと、「ガーデンシティ横浜」を目指す事業を推進しています。その中心的な取り組みとして展開されているのが、花と緑の祭典「ガーデンネックレス横浜」です。花や緑が“ネックレス”のように、人・街・時をつなぐというコンセプトで開催され、3月は桜、4月はチューリップ、5月はバラが、次々に横浜の各地を彩りました。異国情緒豊かな横浜の街並みとさまざまな植物たちが織りなす美しい景色は、地域の人々や観光客から人気を集めています。 横浜市の花“バラ”に出合える3つのガーデン バラは横浜の市の花であり、港の見える丘公園と山下公園にある次の3つのローズガーデンは、「ガーデンネックレス横浜」をきっかけに、異なるテーマでリニューアルされ、人々を魅了しています。 イングリッシュローズの庭 ご紹介する1つ目は、港の見える丘公園内にある「イングリッシュローズの庭」です。約120種、1,200株のイングリッシュローズが植栽されています。 “イングリッシュローズ”とは、イギリスの育種家、デビッド・オースチンが作出したバラの総称で、ブランド名でもあります。春の最盛期の後も繰り返し咲く性質をもった四季咲き性で、豊かな香りを持ち、とても人気があります。 こちらの庭では、イングリッシュ・ローズにさまざまな宿根草が組み合わされ、見事なハーモニーを奏でています。そして、庭の中央付近には、世界中で愛されている黄色の名花‘グラハム・トーマス’の回廊があります。この回廊に足を踏み入れると、バラに包まれ、きっと幸せな気持ちになりますよ。 香りの庭 2つ目は同じく、港の見える丘公園にあるバラ園「香りの庭」。バラを中心に、200種類以上の香りの植物が迎えてくれます。 こちらは沈床花壇で、周囲から一段低く、香りが溜まりやすい構造になっています。訪れるなら、特に香りがよい“ゴールデンタイム”とされる朝がオススメです。 バラは、ダマスク、フルーツ、ティー、ミルラの4つの香りに分類して植栽されていますので、ぜひこの庭でバラの香りの違いを体感してみてください。 未来のバラ園 そして最後は、山下公園にある「未来のバラ園」です。 近年、ドイツやフランスでは、環境への配慮から、無農薬で栽培できるバラの育種が盛んです。このバラ園も、自然環境を考えた未来のモデルガーデンを目指し、無農薬で栽培できる耐病性のあるバラを中心に植栽されています。これからバラを栽培してみたいと考えている人は、こうした耐病性のあるバラからお気に入りを見つけてチャレンジしてみてはいかがでしょう。 また、係留されている氷川丸を背景にしたこの庭では、まさに横浜ならではの素敵な景色も楽しめます。 「ガーデンネックレス横浜」は2019年も引き続き開催される予定で、5月には新たなバラのイベントも企画されています。 来年はどんなバラの花に出合えるのでしょう。今からワクワクしますね。ぜひ皆さんも足を運んでみてください。
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環境省『みどり香るまちづくり』を受賞したラベンダーの小径
公園から海まで約2km、草花が咲き香る散歩道 藤沢市の北部から、南にある相模湾に向かって流れる引地川沿いには、ウォーキングを楽しむのにうってつけの緑道が整備されています。そのうち、川沿いにある長久保公園から海までの約2kmにわたっては、ラベンダーに加え、ローズマリーやセージ、ハニーサックルやシャリンバイなど、香りのよい植物が多種植えられて、ことさら楽しみの多い散歩道です。 2014年、長久保公園を管理する「公益財団法人 藤沢市まちづくり協会」は、環境省が主催する第9回『みどり香るまちづくり』企画コンテストに、この香りあふれる散歩道の植栽企画を応募し、見事入賞を果たしました。そして翌年、「ながくぼグリーンサポーターハーブ部会」に属する市民ボランティアの協力で、約2㎞に及ぶ川沿いの花壇に苗の植えつけが行われ、香りの小径が実現したのです。 五感で楽しむ散歩道に込められた思い 雑草取りなどの日頃の管理は、総勢80名ほどが所属する市民ボランティアによって、3年に渡り行われてきました。植えたばかりの頃はとても小さかったラベンダーも、今では大きく生長し、遠くまでラベンダー色に染まるほどの見事な香りの小径となっています。この小径は、ラベンダーを見るだけに止まらず、香りを嗅いだり、風にそよぐ音やハチの羽音を聞いたり、手に触れるなど、五感すべてで味わうことができる場所。企画者と管理者による“植物をより身近に感じてほしい”という願いが込められています。 満開を迎えたラベンダーの小径には、どこから来たのか、驚くほどたくさんのミツバチやクマバチが、蜜を集めようと飛び交います。首都圏の市街地であるこの辺りは、普段これほど多くのハチを見かけることはありません。軽やかなミツバチの羽音を聞いていると、この小径が地域の生態系を守る、一助となっていることを感じます。 収穫したラベンダーでクラフトづくり 植え込みから3年が経過し、立派に咲くようになったラベンダー‘グロッソ’の花は、クラフトづくりの材料として収穫できるまでになりました。収穫時の6月、長久保公園では、ながくぼグリーンサポーターハーブ部会の会員でJHS上級ハーブインストラクターの池田貴美子さんを講師に招いて、市民向けのラベンダーバンドルズ講習会を開催しています。バンドルズとは、ラベンダーの束にリボンを編み込んでつくるクラフトのことで、作業をしていると部屋中が花の香りに満たされます。癒し効果もたっぷりの、楽しい香り体験です。 近隣の小学校に広がる香りの輪 ラベンダーバンドルズづくりの講習は、2017年からは近隣の小学校のPTAとの連携によって、児童向けにも行われるようになりました。この日参加したのは、高学年の児童30名ほど。「みなさん、ラベンダーを知っていますか?」。ボランティアで講師を務める、アロマテラピストの角本久美さんが、子どもたちに語りかけます。 それぞれ好きな色のリボンを選んで、児童のバンドルズづくりが始まりました。ながくぼグリーンサポーターハーブ部会のボランティアが側について、手ほどきします。子どもたちはみな熱心に、そして、器用にリボンを編み込んでいきます。 教室に広がるラベンダーの香りにうっとりする子もいれば、「うちの親はこの香りが苦手なんだ」と残念がる子もいます。中には、持ち帰ったバンドルズを家族中が喜んで、ラベンダーを庭に植えることにした、という子もいました。フレッシュな花の香りに触れることは、子どもたちの「植育」にもなっています。 *ラベンダーバンドルズのつくり方はこちら 取材協力: 公益財団法人 藤沢市まちづくり協会 http://f-machikyo.or.jp/ 藤沢市長久保公園都市緑化植物園 https://nagakubokouen.jp 角本久美 Herb & Aroma Kumincure主宰 https://ameblo.jp/kumincure/ 併せて読みたい ・‘ハーブの女王’ラベンダーの香りの楽しみ方 ・ガーデンセラピー活動レポート〜憩いの場となる屋上庭園づくり〜 Credit 写真&文/ 萩尾昌美 (Masami Hagio) 早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。ガーデン及びガーデニングを専門分野に、英日翻訳と執筆に携わる。世界の庭情報をお届けすべく、日々勉強中。20代の頃、ロンドンで働き、暮らすうちに、英国の田舎と庭めぐり、お茶の時間をこよなく愛するように。神奈川生まれ、2児の母。
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世界バラ会連合会議で「横浜イングリッシュガーデン」が栄誉ある賞を受賞!
2018年は世界バラ会連合発足50周年の記念の年 1968年にイギリス、ロンドンにて発足し、今年で50周年を迎えたバラ愛好家たちの世界的組織「世界バラ会連合(The World Federation of Rose Societies ※以下WFRS)」は、バラに関する知識や情報交換などを目的として、会議や展示会を行い、3年に一度、バラの歴史が長い国・都市で「世界バラ会連合会議(World Rose Convention)」を開催し、「バラの栄誉の殿堂」や「優秀庭園賞」などの賞の付与なども行っています。発足50周年となる2018年は、6月28日~7月4日にデンマーク・コペンハーゲンを開催地として大会が行われました。 大会で注目される権威ある賞「バラの栄誉の殿堂(Rose Hall of Fame)」 大会で授与される注目の賞の一つである「バラの栄誉の殿堂」は、世界中のどの環境でも育てやすいことや、誰が見ても美しい品種であること、多くの国で長く愛されていることなどが審査基準となり、第1回の‘ピース’をはじめ、‘アイスバーグ’や‘ニュー・ドーン’、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’など、日本でも人気がある品種が多数選ばれています。 2018年に「バラの栄誉の殿堂」に選ばれたのは、2000年にアメリカのラドラー氏によって作出された‘ノック・アウト’です。バラにとってダメージとなる黒星病やうどんこ病に強い抵抗力があり、地域によっては無農薬栽培で育てることができるほど耐病性に優れています。また、春から晩秋まで咲き続けるブッシュローズ(木立性)で、バラには珍しく花がら摘み以外のメンテナンスが少なくてよいので、バラ栽培の初心者だけでなく、公共空間の景観をつくるバラとしても活用されています。 優れた庭園に贈られる「優秀庭園賞」 大会で授与される「優秀庭園賞」は、数あるローズガーデンの中から、歴史的、教育的、景観的な各視点により特に優れた庭園に贈られるもので、庭園としての美しさに加え、メンテナンスの質がよいことや、学術的に価値がある品種を栽培しているなどの総合的な評価により選ばれます。 「優秀庭園賞」の表彰は、1998年からスタートし、2018年開催のコペンハーゲン大会までで世界各地の64カ所の庭園が受賞。日本では、岐阜県「花フェスタ記念公園」、広島県「福山市バラ園」、大阪府「靭(うつぼ)公園」、東京都「神代植物公園ばら園」、千葉県「京成バラ園」、千葉県「佐倉草ぶえの丘バラ園」、静岡県「アカオハーブ&ローズガーデン」の7つの庭園が受賞してきました。 日本で8つめの「優秀庭園賞」は神奈川「横浜イングリッシュガーデン」 日本ばら会から推奨を受けたWFRSのケルビン・トリンパー会長とヘルガ・ブリシェ元会長は、2017年11月に横浜イングリッシュガーデンを視察訪問しました。その際、ケルビン会長からあがった評価点は以下の項目でした。 6,600m² と小さな庭園であるが、バラだけでなく数多くの花木や宿根草、一年草などが組み合わされた美しいデザインである。 オールドローズ、つるバラ、シュラブ、各種の四季咲き性のバラや野生種のコレクションは、1,800品種を超え、どれも良好な生育をしていて、管理水準が非常に高い。 自国品種の保護の観点からも、その中に500種以上の日本のバラのコレクションが含まれていることは、とても素晴らしい。 品種プレートは正確に表示されていて、来園者にも分かりやすくなっている。 季節のテーマに合ったプログラムや子ども向けの教育プログラムを運営している。 これらの評価により見事受賞となった神奈川「横浜イングリッシュガーデン」から、2012年よりスーパーバイザーとしてガーデンデザイン、植栽管理を行っている河合伸志さんが、デンマーク、コペンハーゲンへ駆けつけ、第18回「世界バラ連合」、「優秀庭園賞」授与式に出席しました。 これまで「優秀庭園賞」を受賞してきた世界各地の庭園に、「横浜イングリッシュガーデン」が仲間入り。WFRSのホームページ内「Award of Garden Excellence」でも紹介されています。 この度見事受賞となった「横浜イングリッシュガーデン」では、先にご紹介した「バラの栄誉の殿堂」入りのバラも多数見ることができます。 横浜イングリッシュガーデンの一年を追った『横浜イングリッシュガーデンの四季【花巡り・ガーデン案内 〜神奈川〜】』の記事もご覧ください。